日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1989 巻, 2 号
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  • 砂本 順三, 佐藤 智典
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 161-173
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    卵黄レシチンリポソームの構造強化と標的指向性を達成するために, 本研究では疎水性アンカーとしてパルミトイル基やコレステリル基で一部修飾した天然由来多糖でリボソーム表面を被覆した。多糖被覆リボソームの構造安定性は, 内包蛍光ブローブの流出抑制およびリボソームの酵素的分解抑剃により確認された。また多糖の構造に依存した標的指向性も発現した。すなわち, アミロペクチンやマンナン誘導体で被覆したリボソームは貧食細胞との親和性に優れ, 動物に静脈投与したのち肺への特異的な集積がみられた。この特異性を利用して, 抗菌剤 (アンホテリシンB, ミノサイクリンおよびシソマイシンなど) や免疫賦活剤 (ポリアニオンポリマー) をこれらの多糖被覆レポソームにカプセル化することで, それぞれ, 細胞内増殖菌に感染した動物モデルでの抗菌活性およびマクロファージの活性化を顕薯に向上することに成功した。つぎに, がん細牌への特異牲を付与するために, プルラン被覆リポソームへ抗体を化学的に結合した immunoliposomeを作製した。認識素子として CSLEX1 のサブユニット IgMs を結合したリボソームは, 特異がん細胞との高い結合性および, PC-9 肺がん移植マウスでの腫瘍指向性を示した。また, 抗がん剤アドリアマィシンを immunolipasame にカプセル化することで, 動物モデルでの顕著な腫瘍増殖抑制効果も観察された。
  • 田坂 明政, 木村 晃, 田口 智之, 三本 敦久
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ性溶液中で次式の反応, すなわち, Cl0- とClO2- の溶液内化学反応による ClO3- 生成反応の速度定数を求めた。
    ClO- + Cl02- → Cl03- + Cl
    それは, イオン強度に鮪し, イオン強度 4.00 の溶液中では, 温度が40.0, 45.0および50.0℃で, それぞれ, 8.3×10-2, 1.3×10-1 および 2.3×10-1 dm3・mol-1・h-1 であった。得られた値をもとに, 溶液内化学反応による全塩素酸塩生成反応に対する上記の酸化還元反応の寄与を求めると, アルカリ性溶液中では大きかったが, 塩素酸塩電解製造条件下での全塩素醗塩生成反応に対する本反応の寄与は無視できることがわかった。
  • 上岡 龍一, 松本 陽子, 松尾 成人, 田口 貴啓, 姥田 伸二
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベシクル分子とミセル分子を混合したハイブリッド分子集合体は素材や組成を変えることにより, 活性トリペプチド触媒 (N-ベンジルオキシカルボニル-L-フェニルアラニル-L-ヒスチジル-L-ロイシン) によるアミノ酸エステル基質 (N-ドデカノイル-D-および-L-フェニルアラニン=p-ニトロフェニルエステル) の L 体優位の不斉加水分解を制御できることが明確になった。
  • 山崎 達也, 綿貫 勲, 安倍 由貴, 荻野 義定
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 186-195
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ZSM-5系ゼオライトを中心に18種の試料について,XPスペクトル (MgKα X線源) を測定しその結果を整理考察した。
    表面組成のうち (Al/Si)s 値は概してバルク値に近いが, やや Al 分の偏析が認められた。HZSM-5は例外的に (Al/Si)s 値が小さく, 陽イオン交換時の Al の溶出を示唆した。表面陽イオン濃度 (陽イオン/Si)α は, 試料によって程度は異なるが, バルク値にくらべて大きい。ただし KZSM-5, RbZSM-5, CsZSM-5 のグループと CaZSM-5 , SrZSM-5, BaZSM-5 のグループでは, 比較的バルク値に近い陽イオン表面濃度であり, 両グループの (陽イオン/Si)s 値を比較することにより, イオン交換サイトについてある程度考察できる。
    Si(2p), O(1s), O(2s) などの束縛エネルギーに, 表面の (Al/Si)s 比の増加とともに減少し, 表面 Al-O 結合の形成があることと符合した。この点は, 価電子帯 XP スペクトルの解析結果とも符合した。すなわち, ZSM-5 系ゼオライトの価電子帯スペクトルとシリカライトのそれの差スペクトルに, Al-O の酸素に帰属すると思われるシグナルが現われた。
    C (1s) の XP スペクトルの半値幅は, Si(2p), Al(2p), および O(1s) の半値幅と一定の相関をもち, 表面炭素種が陽イオンサイト Al-OH+-Si と相互作用していることを示唆した。
  • 石原 達己, 堀内 伸彦, 江口 浩一, 荒井 弘通
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    SiO2 担持および TiO2 担持 Fe-Co-Ni 系合金触媒ではいずれも Mn, Cr, Mo の添加により一酸化炭素の水素化活性は低下したが, 選択性は大きく変化した。Mn 添加により 50 Co 50 Ni 触媒では高級炭化水素の選択率が高くなり, 50Fe50Ni 触媒では含酸素化合物生成の選択率が高くなった。一方, Cr, Mo の添加は CO 結合の解離を抑制するため含酸素化合物が高選択的に生成する。吸着 NO の IR 吸収は Mn, Cr, Mo の添加により高波数側にシフトすることから合金触媒の電子濃度は減少することが示唆された。昇温脱離実験によって 50 Co 50 Ni 触媒では H2 の吸着が, 50 Fe 50 Ni 合金触媒では CO の吸着が Mn, Cr, M0 の添加により変化しており, CO の水素化反応において活性, 選択性が変化する要因であると推定される。
  • 森 利克, 武内 瀞士, 松田 臣平
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表面が溌水性を有する触媒を用いて, 常圧下で水溶液中の銅(II)イオンを水素ガスにより直接還元した。多孔質の PTFE ( ポリ(テトラフルオロエチレン) ) に白金を担持した触媒を硫酸銅の水溶液に入れ, 水素ガスをバブリングさせたところ, 室温でも触媒の表面に金属銅が析出した。その析出状態は反応の初期に鍾乳石状であるが, 最終的に金属銅は膜を形成した。バブリング時に気泡が触媒表面に多数付者すること, 硫酸銅不存下であらかじめ水素をバブリングしたのち硫酸銅を添加すると pH が低下することから, 水素が触媒に吸着するものと判断した。銅の析出量 1.5mg/cm2以下における反応速度は硫酸銅の濃度 (2~20mmol/l) の一次および水素ガス分圧 (10~90kPa) の0.5 次に比例し, pH (1~5) の影響は認められなかった。
    反応の初期には二価の銅イオンが白金上に解離吸着した水素と反応し, 一価の銅イオンを経て金属銅へ還元される。反応の後期には, 白金をアノード, 銅をカソードとする電池反応で, すでに析出した銅の上にさらに析出して成長するものと考えられる。
  • 森 利克, 武内 瀞士, 松田 臣平
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表面が揆水性を有する触媒を用いて, 酸素により水溶液中の硫化物イオンを酸化した。PTFE (ポリ(テトラフルオロエチレン)) で処理した活性炭を硫化ナトリウムの水溶液に懸濁させながら空気ガスを通気したところ, 硫化物イオンはポリ硫化物イオンを経てチオ硫酸イオンへ変化した。硫化物イオンの酸化速度は PTFE 量 3wt% のとき最大となり, 触媒不存時および PTFE 処理しない活性炭存在時の 10 倍以上であった。アルミナおよびチタニアは PTFE 処理しても触媒活性を示さなかった。
  • 趙 小夫, 浦野 紘平, 小笠原 貞夫
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モンモリロナイト系粘土鉱物を水中の有機物の吸着除去などに利用するための基礎研究として, モンモリロナイト, ベントナイト, 酸性白土, 活性白土など5種類の粘土鉱物について, 湿潤状態での性状を調べ, 乾燥状態と比較検討した。
    湿潤状態における粒径と表面形態を電子顕微鏡を用いて調べたところ, 層間イオンが Ca や H の水中膨潤性の小さいものは平均直径が数 μm の粒子になったが, 層間イオンがNaの水中膨潤牲の大きいものは数百Å以下の微結晶まで分散した。湿潤状態における結晶底面間隔をX線回折法で測定したところ, いずれも従来の報告とほぼ同じ約20Åとなることが確認された。湿潤状態における細孔分布と比表面積を水蒸気吸着等温線から求めたところ, 直径100Å以下の細孔容積は 240~340mm3/g となり, 窒素吸着等温線から求めた乾燥状態の細孔容積にくらべて 2.3~13 倍に増えた。また, 比表面積は 300~450m2/g となり, 乾燥状態にくらべて 2.3~28 倍に増えた。なお, 円筒モデルおよび平行板モデルによる細孔分布の計算結果から両モデルの間に本質的な差異がないことがわかった。
  • 平尾 穂, 島ノ上 誠司, 酒井 康司
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 216-226
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    !バリウムフッ素雲母とカリウムフッ素雲母との2種類の系 [バリウムフッ素雲母, Ba0.Mg3AlSi3O10F2(Ba-Ph)-フッ素四ケイ素雲母, KMg2.5Si4O10F2(TSM); バリウムフッ素金雲母-フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2; F-ph)]における固溶関係を単結晶, 多結晶及び配合物試料を用いて固相反応により検討した。両系の単結晶および多結晶試料とも両雲母間でよい接合状態が認められ, 固相反応は通常の固相反応と同様に拡散律速で進行した。両系における固溶体は, 雲母の結晶構造における層間 (Ba0.5〓K), 八面体[(Mg3.0〓Mg2.5) または (Mg3〓Mg3)] および四面体 [(Al・Si3〓Si4) または (Al・Si3〓Al・Si3)] の各位置の陽イオンの相互拡散により生成するものと考えられた。各試料における見かけの活性化エネルギーの値は, Ba-ph-TSM系よりもBa-ph-F-ph 系の方が, また, 両系とも単結晶よりも多結晶の方がそれぞれ大きく, また多結晶試料では, 粒径が小さくなるほどその値は小さくなる。配合物 (1:1mol%) 試料については, 両系とも固相反応の完了時間の対数値と焼結温度との間にはよい直線関係が認められ, また反応の完了点では雲母の自形をもつ六角板状結晶が生成するのが観察された。
  • 中村 優, 松薗 義明, 田中 茂, 橋本 芳晶
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体窒素コールドトラップを組み合わせた還元気化原子吸光法を用いて, 海洋大気中における有機ヒ素化合物 (メチルアルソン酸(MMAA), ジメチルアルシン酸(DMAA), トリメチルアルシンオキシド(TMAO)) および無機ヒ素の濃度分布を測定した。
    その結果, 北太平洋上のハワイオアフ島で, 無機ヒ素の大気濃度は 40~520pg/m3, DMAAの大気濃度は 0.8~5.5pg/m3, TMAOは 0.2~8.8pg/m3であった。MMAAはすべて検出限界以下 (<0.7pg/m3) であった。一方, 日本本土の横浜の大気中無機ヒ素濃度は 920~5900pg/m3であり, 有機ヒ素化合物濃度は, MMAA 1.1~22.8pg/m3, DMAA 0.8~5.3pg/m3, TMAO 1.6~48pg/m3 であり, ハワイオアフ島では検出されなかったMMAAが横浜において検出された。また, DMAAおよびTMAOは横浜とハワイオアフ島においてあまり濃度差が認められずほぼ同じレベルであった。これは, MMAAが農薬などの人為的発生源をもつのに対し, DMAAやTMAOは環境中で無機ヒ素が生物活動によってメチル化されて放出されるため, これらの有機ヒ素化合物の濃度分布には地域差はあまり見られず, きわめて微量ではあるがほぼ均一に分布していると考えられる。
  • 角田 欣一, 野村 明, 山田 約瑟, 西 末雄, 小島 勇
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは, 吸光光度法における信号の増幅のために, セル外壁面での全反射を利用する長光路キャピラリーセル (LCC) を開発した。本論文では, そのLCC中での光源光の光路と分布を, 光線理論による光伝達モデルに基づき, パーソナルコンピューターを用いて, Monte Carlo シュミレーション法により計算した。さらに, その結果を Markov 連鎖を用いる確率論による結果や, 実際の実験と比較した。そして, (1) 本質的に確率論による解析の結果と一致する。(2) 実際のLCCでは, 検訊た光伝達モードからの光の[漏れ]が, 無視できない。(3) 増幅率 (ALCC/Alcm) や, 検量線については,本シミュレーションの結果と, 実験の結果が, よく対溶する。(4) 鏡反射を用いる方式では, 曲率のあるLCCを形成させることは不可能に近い。などの結論を得た。
  • 碓井 正雄, 西脇 徹, 案田 欣二, 飛田 満彦
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    黄緑色で水色蛍光を発するジアザバラシクロアントラセノファン[1] は光照射によって無色で無蛍光性の分子内光環化物となり, 加熱あるいは短波長光照射によってもとのシクロファンに復帰した。それらの反応性は橋かけ鎖上の置換基(R)の種類によつて大きく異なった。すなわち, 光環化反応の量子収量(Φr(N2))および光環化反応過程の速度定数 (kr)は R=-CHO, -H, -SO2φ, -COCH3, -CO(CH2)3CH3, -COCF3, -CH3, -COC(CH3)3 の順序で増加したが, 加熱による逆反応の速度定数 (k)はこの順序で減少した。誘導体間での Φr(N2), kr およびkの違いはそれぞれ, 最大61倍, 600倍および570倍であった。これらの反応性の順序は前報で報告した電子スペクトル上の微細構造の消失の程度および蛍光量子収量の低下の順序と一致した。反応性およびスペクトル特姓におけるこれらの違いの要因としては置換塞の立体効果および橋かげ鎖上の窒素原子の混成の違いが考えられる。
  • 中沢 利勝, 古川 博章, 鳥井 克俊, 板橋 国夫
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 244-250
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ナフト-ルとアクリルアルデヒドをベンゼン中水酸化ナトリウムの存在下で反応させると,付加につづいて閉環反応が容易に起こり,2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]ピラン-3-オ-ル〔1a〕が高収率で得られた。またクロトンアルデヒド,メタクリルアルデヒドとの同様反応でも〔1a〕に対応するモノメチル置換体が生成した。しかし,trans-シンナムアルデヒドとの反応では,主生成物として1-フェニル-1H-ナフト[2,1-]ピランが得られ,1-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]ピラン-3-オール〔1d〕の生成は少量であった。
    また,1-ナフト-ルとアクリルアルデヒドとの反応では3,4-ジヒドロ-2H-ナフト[1,2-6]ピラン-2-オ-ルが得られた。
    〔1a〕は酸性条件下では比較的安定で,脱水.あるいは開環しがたいが,68%硫酸中135~137℃に加熱すると,開環,転位反応が起こりフェナレハン〔3a〕が生成した。
    〔1a〕は酸触媒の存在下アルコールによりアセダール化,チオールによりモノチオアセタ-ル化され,アミンとは無触媒下でアミノ化がほぼ定量的に進行した。
  • 宮田 定次郎
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 251-256
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面活性剤として硫酸ドデシルナトリウム(SDS)およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム=クロシド(CTAC)を, また反応の開始手段としてガンマ線を用いて, 水酸化カリウム(0.2~1mo1・dm-3)を含むアルカリ性2-ブロバノール(25vol%)水溶液中でのラジカル連鎖機携による四塩化炭素の脱塩素反応におよぼす界面活性荊の影響について検討した。
    水酸化カリウム0.4mol・dm-3を含む場合, SDS 30mmol・dm-3あるいはCTAC 12mmol・dm-3の添加により, 脱塩素反応の速度は1/1.7あるいは1/2.4に低下したが, 水酸化カリウム濃度の増加とともに減少したヘキサクロロエタン (連鎖担体 ・CCl3の再結合で生成する) の収量は逆に1.7あるいは1.2倍増加した。
  • 坪井 正毅, 田中 興一
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 257-261
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルケンおよびシクロアルケン存在下, フェニルヒドラジンの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中での酸化反応を行なったところ, ベンゼン[1], フェニルアジド[2], ヨードベンゼン[3], アニリン[4], ビフェニル[5], アゾベンゼン[6] および少星のフェノール, ジフェニルアミンの生成が認められた。
    上記の生物以外に, 2-ペンテンを除くすべての場合にフェニルアルカン[7]が得られた。
    1-ヘキセジを用いた場合に 5,6-ジベンジルデカン[8a], シクロヘキセンを用いた場合には二量体ビ-2-シンロヘキセン-1-イル[8b]の存在が確認された。また, ジクロペンテンならぴにシクロヘキセンを用いた場合に3-アニリノシクロアルケン[9]の生成が認められたことは, 以前著者らが本反応系の中間体として仮定したフェニルナイトレインの存在を強く示唆している。さらに, シクロアルケンを用いた場合に, アリル位の炭素原子上の水素引き抜きにより生成した2-シクロアルケン-1-イルラジカルと, フェニルアゾラジカルとのカップリングにより生成したと思われる 3-(フェニノレアゾ)シクロアルケン[10]が得られ, 1-アルケンならびにシクロアルケンを用いた場合には, フェニルラジカルがアルケンの 1-位へ付加して生成したアルキルラジカルと, フェニルアゾラジカルとのカップリングにより生成したと推定される 1-フェニル-2-(フェニルアゾ)アルカン[11]が認められたことは大変興味深い。_
  • 久住 眞, 乾 智行
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 262-267
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ブロモトリフルオロメタンと C1~C3パラフィンまたは水素との混合物を, 高温にした水蒸気で加熱して反応温度にさせる常圧気相流通法によって, 660~866℃ の範囲で共熱分解し, 生成物を調べて, トリフルオロメチル基の挙動と, パラフィンに対するプロモトリフルオロメタンの反応性について検討した。全体を通して, おもな生成物はトリフルオロメタン (65~100%, 転化ブロモトリフルオロメタン基準モル百分率) であった。プロモトリフルオロメタンの転化率と, パラフィンの種類や熱的脱水素のしやすさとの相関は, ほとんど現われなかった。プロモトリフルオロメタンの共存によって, パラフィンの単独熱分解生成物の生成がいちじるしく多くなることを認めた。エタンまたはプロパンとの共熱分解で有機基にトリフルオロメチルを結合した生成物として, 3,3,3-トリフルオロプロペンと 1,1,1-トリフルオロプロパンがそれぞれ 4~12, 0.2~9% の範囲で生成したのに対し, メタンとの共熱分解では, それぞれ2%以下, 0%であった。水素との熱反応では, パラフィン類との共熱分解にくらべて高転化率となり, 760℃での生成物としてトリフルオロメタンのほか, 10種類以上におよぶ含フッ素化合物を認めたが, 675℃ では, トリフルオロメタンのほかには微量のヘキサフルオロエタンが検出されただけであった。
  • 田中 寿一, 安達 和良
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 268-274
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノール性セスキテルペン, curcuphenolは酸触媒による環化反応で8-hydroxycalamenene[5]とともに5-hydroxyisocalamenene[6]を生成することをすでに明らかにした。テトラリン誘導体[6]は自然界に未発見の新しいフェノール性セスキテルペノイドであるので, 構造を確認するためにm-クレゾールから出発して合成し, さらに, その脱水素反応についても検討した。
    4-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-4-オキソ酪酸[7]から 3,4-ジヒドロ-5-メトキシ-4-イソプロピル-7-メチル-1(2H)-ナフタレノン[10]を経て合成したジヒドロナフタレン[12]の接触還元によって得られた[6b]の立体化学は cis-配置であった。5-Hydroxyisocalamenene[6a]は[6b]を臭化水素酸で脱メチル化して合成した。[6a]は, Pd-Cを触媒として脱水素したとき, daucalehe[16]とともにその誘導体[17], [18]および[19]などが生成した。
    [12]の脱水素で得られた5-methoxydaucalene[20b]は臭化水素酸で脱メチル化すると, 異性化も起こり 7-イソプロピル-3,5-ジメチル-1-ナフトール[21a]を生成した。
  • 阿部 修実, 神崎 修三, 田端 英世
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 275-281
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    窒化ケイ素の熱分解過程と粉末粒子中の酸素の存在状態の関係,および, 比表面積など他の粉末物性値との関係を検討した。窒化ケイ素の真空中での熱分解反応は1400℃まではおだやかであった。1450℃以上では一定期間の初期過程ののち, 急激に分解して遊離のケイ素を生成した。初期過程においては粉末の酸素含有量は減少したが, これをすぎると, 分解生成物中の窒化ケイ素に対する酸素のモル比はほぼ一定になった。このモル比からα-窒化ケイ素中への酸素の固溶限界は組成式Si3N3.932-3.94200.101-0.086で表わされた。熱分解の初期過程においては,窒化ケイ素粒子の酸素に富んだ表面層の分解除去によって遊離のケイ素の生成をともなうことなしに酸素含有量を低減することができた。しかしながら, 酸素含有量を固溶限界以下にすることは, 熱処理雰囲気を変えても不可能であった。また, 初期過程では窒化ケイ素のα→β転移は起こらなかった。非晶質粉末では,初期過程においても結晶化してα相になったが, 結晶性は悪かった。比表面積は熱分解反応の進行にともなって減少した。
  • 大河内 正一, 三井 敏成
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 282-287
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オゾンの水への吸収速度を表わす物質移動容量係数 (液相基準) を酸素の物質移動容量係数とともに気泡塔で測定した。物質移動容量係数を測定するにあたり, 測定上および解析上容易なことからオゾンを水へ吸収させるよりも, 水に溶解させたオゾンを気相に揮散させる方法を採用した。さらに, 水から揮散してくるオゾンの連続的な吸光度測定法を用いたことから,従来の試料採取一分析という方法よりも, より誤差も少なく, より速くオゾン濃度の経時的変化を追跡することができた。また, オゾンの水中での自己分解速度を検討し, オゾン濃度に対しほぼ二次反応となる結果を得た。この知見に基づいて, オゾンの気液界面を通しての物質移動速度に比較してオゾンの自己分解速度が無視できる条件を求め, これらの条件下でオゾンと酸素の物質移動容量係数比を決定した。その値として, 気液混合状態, 温度 (283~313K) およびイオン強度 (μ=0.1~1.0) によらず一定の 0.84 ± 0.03 を得た。したがって, この値に水処理装置における酸素の物質移動容量係数を掛け合わせることにより, その装置でのオゾンの物質移動容量係数が推算でき, 吸収速度が決定できることになる。
  • 青木 豊明, 大久保 順太, 佐々木 茂明, 宗森 信
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 288-291
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩素代替殺菌剤であるクロラミンおよびジクロラミンと自然水中に存在する有機および無機物質との反応速度を求め, 得られた反応速度定数櫨からクロラミンの反応性を検討した。クロラミンはpH10.0ジクロラミンはpH5.0でそれぞれ調製したが, この条件ではすくなくとも3時闘は安定に存在した。25℃におけるクロラミンと種々の物質との反溶速度が微孔性テフロン膜分離-紫外吸光法によって測定され, 反応速度定数値が算出された。この膜分離過程を用いることによりクロラミンとの反応生成物であり, 紫外光を吸収する有機塩素化物および無機イオンの干渉を受けることなく, 精度よく測定することができた。反応はクロラミンおよびジクロラミンに関しそれぞれ一次, 各化学種に関して一次の二次反応であった。化学反応性はクロラミンの方が, ジクロラミンよりも数十~1000 倍, 高かった。
  • 青木 豊明, 大久保 順太, 宗森 信
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 292-295
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化塩素が微孔性テフロン膜管を透過すること, および360nmに極大吸収波長を有することを利用して, 二酸化塩素の連続流れ分析装置を試作し, 本法を用いて二酸化塩素と自然水系に存在しうる種々の化学種との化学反応性を測定した。本法の検出限界 (S/N=3) は 2.7× 10-7Mであり, 長さ 10cm の微孔性テフロン膜管を用いた場合の応答時間ぱ1分であった。本法を用いて種々の化学種との反応速度定数を pH6.89 (25℃) において調ベ, アミノ酸および有機酸との反応が遅いにもかかわらず, 天然有機高分子化合物であるフミン酸および血清アルブミンとの反応が非常に速いことが明らかになった。
  • 深尾 謹之介
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 296-298
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The heat of immersion of carbons with different activation was measured in the homologous series of fatty acids(C3-C6, C8) and was compared with that of the same carbons in normal alcohols reported previously. The heat of immersion per unit of the surface area decreased slightly in both acid and alcohol with the progress in the carbon activation. On the contrary the difference in the heat of immersion between the alcohol and the acid increased with the activation of carbon. This result indicates that the polarity of the carbon surface increased with the activation. The decrease in the heat is assumed to be due to the increase in the portion of the carbon surface area which contributes little to the heat of immersion.
  • 澤本 博道, 桂木 浩文
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 299-301
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Two stripping methods of analysis of riboflavin were proposed by square w ave polarography in which preconcentration is achieved by the adsorption of riboflavin or its reduced form. The supporting electrolyte used was O.1 M ammonium acetate, the preconcentration potentials were -O.65 V (anodic stripping) and 0 V (cathodic stripping). Preconcentration time was 5 min, and scan rate was 5 mV/s. Square wave amplitude and frequency were 50 mV and 25 Hz, respectively. Sample time was 3 in 10 and temperature was 25°C. Caliblation curves for anodic and cathodic stripping were linear up to 100 nM. The detection limits were 1 nM (anodic stripping) and 0.5 nM (cathodic stripping). Riboflavin in a soft drink was detc mined by the proposed cathodic stripping method.
  • 坪井 正毅, 武部 和男, 藤田 伊代美
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 302-304
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pyrolysis of the phenylhydrazones of aliphatic aldehydes and ketones was investigated at 225-265°C. 3-R1-4-R2-5-Methyl-1-phenyipyrazole, 3-R-4-methyl-1-phenylpyrazole, 3-R-5 methyl-1-phenylpyrazole, and 4-methyl- and 4-propyl-1-phenylpyrazole were obtained from PhNHN=C(R1)CH(R2)CH2CH3, PhNHN=C(R)CH(CH3)2, PhNHN=C(R)CH2CH(CH3)2, and PhNHN=CHCH(CH3)CH2CH2CH3, r espectively. The results indicated that various types of pyrazoles can be synthesized by pyrolysis of phenylhydrazones. N-Alkylideneanilines were also obtained in all cases, except for butanal phenylhydrazone.
  • 山本 浩之, 川浦 利之, 西田 綾子
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 305-308
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Cationic polyallylamines containing 92-95 mol% of aromatic azo moieties as pendant groups were synthesized. The reversible photochromism and solubility change of poly [N-[p-(phenylazo)benzoyl] allylamine] due to the trans-cis photoconversion of azo moieties were studied. On irradiation at different wavelengths, the above-cited azo-substituted polyallylamine are soluble under ultraviolet light (cis) and precipitate under visible light (trans) in such mixed solvents as 1, 1, 1, 3, 3, 3-hexafluoro-2-propanol (HFIP)-water and HFIP-acetone. The dipole moments of the solvents used are considered to play a role in the reversible solubility change.
  • 内山 征洋, 川本 博, 板橋 英之, 赤岩 英夫
    1989 年 1989 巻 2 号 p. 309-311
    発行日: 1989/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The easy and useful back-extraction method using cop per bis(benzoyltrifluoroacetonate) for measuring the copper(II) complexing capacity (CuCC) was established and applied to the evaluation of the contamination of small river waters in the urban area by human activities.
    The change in the CuCC of river waters were coincident with the change in the c oncentration of PO43- and ABS, and good relationships were found between the CuCC and the concentration of PO43- and ABS. From these results, it was concluded that the CuCC reflected the human activities.
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