日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1989 巻, 9 号
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  • 飯田 芳男, 代島 茂樹
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1487-1503
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    負イオン化学イオン化質量分析(NCIMS)法について,分析花学的立場から行った基礎的検討およびこれ縞感度かつ(または)高選択的な分析方法として実際試料に適した例について述べる。ハロゲン化物を用いた電子捕獲によるNCIでは,ECDとの応答の相関,生成イオン種とイオン量,正負イオンの生成量比などを検討し, 負イオンの生成効率が分子の電子親和力,反応の活性化エネルギーに支配され,それらの値の大小により生成イオン量が1000倍以上も違うことを明らかにした。C1-を反応イオンとする系ではクロロホルムがもっとも使いやすく,またメタンと混合するとイオン化が安定し熱的に不安定な化合物でもそのスペクトルから分子量を容易に推定することができた。多環芳香族炭化水ニトロアレーン,有機ハロゲン系化合物についてメタンを素,ダイオキシンについて酸素をそれぞれ試薬ガスとしたときのNCIスペクトルの特雛明らかにし,それらを高感度・高選択的に検出するためのデータを得た。またそのままではNCI法の適繭瞬なアルコ一ル,フェノール,アミン,カルボン酸アミノ酸などについて種々の含フッ素誘導体化剤による誘導体化を行い,最適誘導体化剤,正負イオン量比などNCI法を適用するために有用な知見を得た。この方法の応用として,環境汚染物質や代謝関連物質を中心測定方法を検討し,実際試料の測定を行った。
  • 小宮山 真
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1504-1511
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロデキストリン(CyD)を触媒として使用することにより,モノリボヌクレオシドの2',3'-環状リン酸を位置選択的に開裂することに成功した。位置特異性は用いるCyDの種類に顕著に依存し,α-CyDの存在下では,P-O(2')結合の開裂による3'-リン酸の生成が選択的に進行した。それに対し,β-およびγ-CyDはtP-O(3')結合の開裂による2'-リン酸の選択的生成を触媒した。また,α-CyDを触媒としてリボヌクレオチドのダィマーならびにポリマーを開裂すると,酵素リボヌクレアーゼを用いた場合と同様に,末端の3'位にリン酸基をもつRNAフラグメントが選択的に生成した。一方,β-CyDを触媒として用いると,末端の2'位にリン酸基をもつフラグメントが選択的に得られた。さらに,CyDに化学修飾を加えることにより,一層効率的にRNAを開裂することにも成功した。
  • 藤田 英夫
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1512-1515
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,2-ジメトキシエタン(DME)は,自動酸化反応によって,2,3-ジメトキシオキシラン〔1〕などを生成する,これらを低温でゆっくり電解還元を行うと,〔1〕のアニオンラジカル〔1〕のESRスペクトルが観測された。このことは,〔1〕のMO計算結果によっても支持された。さらに,〔1-〕のESRスペクトルは室温以上で急速に消滅するが,0℃ から-80℃ では高分解能の良好なスペクトルを得ることができた。これらのスペクトルを詳細に解析すると,トランス形とシス形の平衡関係が認められる。温度依存スペクトルから両者間のエンタルピー変化を含む運動エネルギーが見積られた。
  • 船越 仁, 羽場 かおり, 小原 加奈江, 谷口 博美, 玉懸 敬悦, 藤田 勇三郎
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1516-1522
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光照射によって生じたジメチン型メロシアニン(MD)の光異性体が,安定体にもどる速度過程を4種の誘導体について測定し,熱異性化速度定数(ka),活性化エネルギー(Ea)に対する複素環効果とプロトンの触媒作用の機構について調べた。kdは複素環の種類,とくに硫黄の導入数によって5ケタもの差となって現われた。溶媒の種類およびpHの変化によって島はいちじるしく変わるが,Eaはほとんど変わらないこと,Arrheniusの頻度因子はほとんど複素環効果を示さないことなどから,異性化の中間体としてプロトン化メロシアニンが重要な役割を果たしており,かつ,活性化エネルギーはプロトン移動過程の障壁ではなくプロトン付加体の内部回転の障壁を反映しているという結論を得た。メロシアニンの熱異性化速度はプロトン性非水溶媒における潜在的プロトン活動度の定量化に役立つと提案し,純メタノールの塩酸等価水素イオン濃度として2×10-6mol・dm-3を得た。
  • 鳥羽 誠, 丹羽 修一, 清水 一男, 水上 富士夫
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1523-1530
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカーアルミナの物性を制御することを目的に,種々のジオールを溶媒に用いて化学混合法によりシリカ-アルミナを合成し,ジオールの構造とシリカーアルミナの比蓑面積や酸性度の関係について調べた。X線回折からいずれのシリカーアルミナも合成時の溶媒によらず非晶質であり,また,未焼成試料のDTAの結果から連続的に吸熱ピークがみられるものと2ヵ所で吸熱ピークがみられるものがあることがわかった。シリカ-アルミナの比表面積は一般にジオールのアルキル側鎖の数や長さが増すにつれて増加するが,エチレングリコール1,3-プロパンジオールは分子径が小さいにもかかわらず大きな比表面積を与え,ヒドロキシル基をもつ炭素が第一級および第ご級の1,4-ジオール綜非常に小さな比づロ表面積を示した。指示薬を用いる酸度灘定で,1,2-ジオールは構造に依存して酸章が変化することがわかった。NH3-TPD法による酸測定さほ工盛ジオールは化学結合したジオールが多く残存しているものほど酸強度は強ぐ,1,3-ジオールでほ遊の傾向を示した。
  • 宇津木 弘, 遠藤 敦, 鈴木 昇, 飯倉 義満, 相場 勝也, 松葉 輝夫, 野津 敬
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1531-1539
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    未処理が,疎水(親油)化表面処理熱線反射ガラス,ラフロンおよびポリ塩化ビニル板上の水,表面張力が水より小さいキノリンおよコンクリート浸出水溶液滴蒸発を,接触および液滴底長の時間変化を測定することにより検討した。液滴蒸発には2種の型のあることが認められ泥。(1)蒸発にともない液滴底長は変化せず接触角が減少する。(2)接触角は一定で液滴底長する。未処理熱線反射ガラス表面への水および黍再処理熱線反射ガラス表面へのコンクリート浸出水溶液液滴(1)の型の蒸発,表面処理熱線反射ガラス,テフロン,ポリ塩化ビニル板への水滴およびキノリン(2)の型の蒸発をを示す。これらの2種の型の液滴蒸発につき速度式を導いた。これらは実験結果をよく説明することが認められた。蒸発機構(2)についての後退接触角について検討した。
  • 宇津木 弘, 遠藤 敦, 鈴木 昇, 木村 幸恵, 関 篤, 松葉 輝夫, 野津 敬, 荒川 正夫
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1540-1549
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    未処理および表面処理熱線反射ガラス上の種々な濃度のNaCl水溶液および0.2wt%Na2SiO3水溶液の液滴の蒸発析出過程を接触角および滴底長変化から検討した。未処理ガラス表面上の液滴は蒸発に際し滴底長は変化せず接触角は減少し,液滴の縁に結晶が析出し蒸発乾固後はカルデラ状になる。ただし表面エネルギーの小さい表面処理ガラス面上では滴底長を一定に保ちつつある接触角まで減少するが,この角度に達すると今度は接触角を一定に保ちつつ滴底長が減少した。NaCl水溶液滴は単一結晶集合体を形成したが,Na2SiO3水溶液の液滴は滴下初期の液滴よりは滴底長の小さいカルデラ状析出模様を示した。以上の機構を検討した。
  • 佐藤 洋, 広瀬 賢一, 北村 勝
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1550-1557
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゼオライト(ZSM-5)の酸性質測定に汎用される(1)アミン滴定法,(2)NH3昇温脱離(TPD)法,(3)Pyridine(Py)m4--Methylquinoline(4MQ)のGCパルス吸着法および(3)FT-IR法なる4方法を総合的に比較検討し,湘定結果を,(1)AI含有量と酸量,(2)Al含有量とBrφnsted酸/Lewis酸比,(3)細孔外表面積と細孔外酸量の相関,(4)Na-ZSM-5における弱酸性点の有無といった観点から考察した。さらに(5)酸性質と深い関係にあるH-ZSM-5のシラノール基の識別(酸性/中性,細孔内/細孔外),定量を行った。
  • 高橋 一暢
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1558-1563
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原子吸光分析法(以下,AASと略記する)により三重県志摩郡磯部町の的矢湾における底質土中の微量金属元素(銅t亜鉛,鉛,マンガンおよびスズ)の含有量とその分布特性とを明らかにし,港湾海域におけるそれぞれの微量金属元素の化学的挙動について検討した。底質土を王水で湿式分解したのち,底質土中の銅,亜鉛,鉛,マンガンおよびスズをAASで定量した。その結果,三重県的矢湾における底質土中の銅,亜鉛,鉛,マンガンおよびスズの含有量(乾重量あたり)は,それぞれ1.9~49.9,26.3~146,7.3~40.9,86.2~350および2.4~10.8μ9/9の濃度範囲を示した。さらに,それぞれの微量金属元素の分布特性についてみると,銅,亜鉛,鉛は港湾の内部に入るにしたがって次第に増加したが,マンガン,スズは他の微量金属元素(銅,亜鉛および鉛)の分布特性と異なることがわかった。
  • 国谷 譲治
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1564-1570
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    110K以下に急冷した2種類のフェニル基を含むポリメチルシロキサン,ポリジメチルジフェニルシロキサン(PDMDPS)およびポリジメチルメチルフェニルシロキサン(PDMMPS)について,それらのガラス転移温度(Tg)およびガヲス転移領域での比熱変化量(δCp)とフェニル基を含むシロキサン単位の含量との関係を,示差走査熱量計(DSC)を用いて検討した。その結果,いずれの系のポリシロキサンでも,TgとδCpはフェニル基を含むシロキサン単位の重量分率で整理できた。,Tgは,Pochanらの式,すなわち,
    1nTg=(1-x)lnTg1+xlnTg2
    で表されることがわかった。ここで,xはフェニル基を含むシロキサン単位の重量分率,Tg1およびTg2は,それぞれ,ポリジメチルシロキサンおよびポリジフェニルシロ悲サンまたはポリメチルフェニルシロキサンの丁麟である。この取りあつかいにより,ポリジフェニルシ揖キサンおよびポリメチルフェニルシロキサンのTgを,それぞれ,388Kおよび330Kと求めた。ガラス転移が自由エネルギー変化に基づく関数で表されるのでδCpにもこの自由エネルギー変化が適用できるとして,
    δCp∝δG=-RTlnf(x)
    と仮定すると,PDMDPS,PDMMPSいずれの系でも,δCp・Tg-1がフェニル基を含むシロキサン単位の重量分率紅もとづく関数f(x)で整理できることがわかった。この取りあつかいから,ポリジフェニルシロキサンおよびポリメチルフェニルシロキサンそれぞれのδCpを,0.291および0.371J・g-1もK-1と求めた。
    δCpの取りあつかいから,ジフェニルシロキサンまたはメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合系において,これらのフェニル基を含むシロキサンの共重合体の分子の配列におよぼす効果には大きな差のないことがわかった。Yまた,PDMDPS,PDMMPSのシロキサン単位モルあたりのδCpは,いずれの系でも,フェニル基を含むシロキサン単位量が10%モル前後で量も小さい但を示した。しかし,ガラス転移領域よりも低い温度範囲でのδCp値は逆の傾向を示した。
  • 高橋 一正, 宇田川 毅, 草葉 義夫, 村松 岳彦, 天野 壮泰, 谷岡 慎一, 市野 富雄, 中野 清志, 村上 一方, 畔 和夫, 奈 ...
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1571-1575
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    波長可変レーザー装置を用いてcis-ビタミンK2(cis-VK2)→trans-ビタミンK2(trans-VK2)の光異性化反応を試みた。cis-VK2またはtrans-VK2の溶液に紫外から可視領域のレーザー光を照射し,それぞれの異性化量を測定した。その結果,cis-5-VK2→trans-VK2の異性化に有効な波長は280~460nmであり,とくに435と355nmが高い異性化率を示した。trans-VK2→cis-VK2の異性化反亦も同時に進行するがその速度は遅く,光平衡組成はtrans-VK2/cis-VK27/3となった。また異性化反応は溶媒の影響を受け極性溶媒よりも無極性溶媒が有効であった。cis-VK2→trans-VK2の異性化はテトラプレニル側鎖中のナフトキノン骨格にもっとも近い二重結合で起こり,他の二重結合部では起こらず選択的反応である。窒素雰囲気下でのおもな副生成物はメナクロメノロ一ルであった。これらの結果から異性化反応過程を推定した。
  • 久保田 俊夫, 近藤 康夫, 大山 敏広, 甲中 竜雄
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1576-1586
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含トリフルオロメチル化合物の合成試薬として2位に2-テトラヒドロピラニルオキシ基あるいは(2-メトキシエトキシ)メトキシ基をもつ1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(〔2a〕,〔2b〕)を合成した。〔2a〕および〔2b〕に対するアルコキシド,アミドあるいはアルカニドアニオンの付加反応とそれにつづくフッ化物イオンの脱離反応により,対応するオレフィン〔3〕が生成した。〔2a〕とアミドアニオンとの付加脱離反応とそ況につづく加水分解により各種トリフルオロラクトアミド〔5〕を合成した。リチウム=(S)-(-)-1-フェニルエチルアミドを用いた場合には,生成したトリフルオロラクトアミド〔6〕を2種のエピマーに分離し,これらの立体配置をX線解析により決定した。
    さらに,〔2a〕あるいは〔2b〕と各種アリルアルコキシドとの付加脱離とそれにつづく[3,3]-シグマトロピー転位を経由して2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチル-4-アルケン酸〔10〕のおよびそのアリルエステル〔11〕を合成した。
  • 山本 二郎, 中根 勲, 中島 充晴, 浅野 光弥, 赤松 宏, 岡本 勇三, 杉田 嘉一郎
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1587-1592
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー

    =
    クロロベンゼン中塩化アルミニウム(AlCl3)とともに3時間還流するとm=ニトロ安息香酸p-トリル〔4〕のほかは,いずれもFries転位により82%以上の収率で根当する2-ヒドロキシ-5-メチルフェニルケトンが得られた。溶媒として高沸点の塩素置換ベンゼンを用いると,一般に高収率で2-ヒドロキシ-5-メチルフェニルケトンが生成し,反応が短時間で完了した(表1,図ほ1)。一方,p-クロロフェニステル
    =
    を沸騰ペンゼン中4時間Fries転位を行っても,2-ヒドロキシ-5-クロロフェニルケトンの収率は28%以下であった(表2)。
    2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾフェノン〔10〕と2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル=ベンジル=ケトン〔11〕は,沸騰クロロベンゼン中AlCl3と反応して安息香酸p-トリル1〔1〕とフェニル酢酸p-トリル〔2〕が生成し逆Fries転位が起こったが,他の2-ヒドロキシケトン類からは逆Fries転位が観察されなかった(表3)。〔4〕およびm=ニトロ安息香酸p-クロロフェニル〔9〕は,Fries転位進行中において解離することなく,分子内的に反応が進行すると考えられる(表4)。
  • 太田 和子, 岩岡 純子, 上條 裕子, 岡田 みどり, 野村 祐次郎
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1593-1600
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソオキサゾール類とエナミン類との反応により,ピリジン誘導体が生成することを見いだした。たとえば,イソオキサゾールと1-(1-シクロヘキセニル)ピロリジンを,THFまたはジオキサン溶液中,低原子価チタン塩(塩化チタン(IV)と亜鉛末から調製)の存在下還流して,1,2,3,4-テトラヒドロキノリンが得られた(収率75%)。同様の方法により,イソオキサゾール類とβ(またはα)-置換エナミンから,種々の3(または2)-位置換ピリジン類が得られた。しかし,5-メチルイソオキサゾール類との反応では,ピリジン類の収率はきわめて低かった。
  • 久留 正雄, 山川 浩司
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1601-1608
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    それぞれ数種の[3]フェロセノファン-6-オール〔3〕,〔4〕フェロセノファン-6-オール〔4〕および[4]ユフェロセノファン-7-オール〔5〕を合成し,トリフルオロ酢酸-d(TFA-4)中における1H -NMRスペクトルを測定した。測定溶液を加水分解して得られる化合物の構造も調べた。〔3〕と〔4〕では,6-位プロトンまたは6-位メチル基の低磁場シフト,シクロペンタジエニル環プロトンの分裂と結合定数,6-位プロトンと環プロトンの遠隔スピン結合などから,TFA-d中で母体アルコ_ルの立体構造を保持した安定な力空ボカチオンを生成することが判明した。〔5〕のうち第三級アルコールはTFA-4中で1,2-ヒドリドシフトを起こし,カチオン中心が7-位から餅位に転位して,相当する6-位カルボカチオンとなって安定化することが明らかとなった。これは,1H-NMR澱定溶液の加水分解生成物ぶ対慈する6-位アルコールであり,しかもこれをふたたびTFA-dに溶解すると〔5〕から得ら雛スペクトルと一致すること証明された。〔5〕のうち第二アルコールはTFA-dで完全なカルボカチオンにはならないが,母体アルコールとぽ異なる化学種が生成しており,フェロセン核による安定化が示唆された。
  • 大植 弘義, 吉川 彰一
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1609-1615
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融金属カリウムを用いる石炭の還元アルキル化法を石炭化度の異なった種々の石炭に適用したところ,歴青炭は夕張炭と同様に高い可溶化率を示したが,褐炭や無煙炭は低い値を示した。アルキル基導入数と可溶化率の間には顕著な関係は見られなかったが,可溶化率と単位ユニットを結ぶエーテル結合の含有割合との間には,良好な直線関係があり,エーテル酸素/全酸素の値と可溶化率との間には,さらに良好な直線関係が認められた。この様に可溶化率と石炭の化学構造とは深い関係があり,エーテル結合の切断による低分子化が石炭の可溶化に射する主要な因子であり,また単位ユニットの化学構造もかなりの影響をもつことがわかった。
  • 五十嵐 喜雄, 〓上 奎介, 知久 幸宏, 今井 良子, 渡辺 昭次
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1616-1619
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のN-(置換フェニル)マレイミドを合成し,3種のかびについて抗かび試験を行ったところ,いずれも活性を示し,とくにN-(ジアルキルフェニノ)マレイミドは良好な結巣を与えた。ケルキル置換の位置と活性の闘係を調べるために,N-(ジメチルフェニル)マレイミドの各異性体の抗かび試験を行い,2,6に置換体および2,4-二置換体が多くのかびに対して活性を有することを知った。さらに,この2種のN-(ジメチルフェニル)マレイミドとN-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミドは多くの細菌類,酵母類に対しても高活性であった。N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミドは,1グラム陽性菌に対しては活性を示すものの,グラム陰性菌に対して活性を示さなかった。数種のN-(置換フェニル)マレイミドとフランのDiels-Alder付加体を合成し抗かび活牲を調べたが,無置換の化合物が弱い活性を示すものの,置換された化合物は活姓を示さなかった。
  • 国枝 紀夫, 漁士 弘人, 山形 一雄, 木下 雅悦
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1620-1627
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水相-有機相(クロロホルムーリグゴイン,容積比1:4)からなる二相系でのアクリルアミド(AAm),アクリル醗メタクリル酸,それにスチレソスルホン酸ナトリウムなどの水溶性モノマーの油溶性ラジカル開始剤による重合において,親油性のアルキル化β-シクロデキストリン,ヘプタキス(2,3,6-O-トリアルキル)-β-シクロデキストリン[アルキル基:(CH2)CH3,n=0~11]をこの系に添加することによりこの重合が大きく促進されることを見いだした。ラジカ開始剤としてはアゾ系開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル,2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル),それに1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル),過酸化物開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を用いたが,いずれの場合もアルキル化β-シクロデキストリンの顕薯な添加効果がみられた。たとえぱAAmのBPOによる二相系重合においてn=11のアルキル化,β-シクロデキスリンのBPOに対して約2倍モル量の添加は無添加の場合にくらべて10.6倍高い重合率を示した。この二相系重合の機構を解明するため,これらアルキル化β-シクロデキストリン存在下におけるBPOの二相間の分配係数,それにBPOの分解速度定数,BPOとこれら化合物との包接化合物の解離平衡定数などの測定を行った結果,この重合においてアルキル化β-シクロデキストリンの親油性と開始剤に対する包接能が重要な役割を果しており,これら化合物が開始剤キャリヤーとして作用していることが明らかになった。さらにアルキル鎖の長さと開始剤の有機相から水相への輸送能,および重合効率との関連を検討した。
  • 阿部 孝司, 江川 博明, 伊藤 博, 新田 敦彦
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1628-1634
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-アクリロィルピロリジンを基体とした不溶性高分子は,水中において低温で膨潤し,高温で収縮する可逆的熱応答性(感温性)を示した。この膨潤容積変化は,橋かけ度,疎水性モノマー含量の増加にともない小さくなった。安息香酸の吸着は,温度の上昇,疎水性モノマー含量の増加にともない増加したが,膨潤にともなうとり込み効果は作用しておらず,橋かけ度による影響はほとんどなかった。樹脂の親疎水性のバランスを制御するどとにより,安息香酸の吸脱着が温度変化させることで可能となった。また,吸着される基質が未解離状態においてのみ吸着が行われた。中性,塩基性物質においても酸性物質よりは低いが疎水性の強い未解離状態において相互作用が生じた。ジオキサンまたはエチレングリコールの添加により吸着は低下したことから,吸着がおもに疎水性相互作用に基づいていると考えられる。
  • 浦野 紘平, 阿部 欣文, 川本 克也
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1635-1641
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機塩素化合物による地下水汚染が問題となっている。これは,排水や廃棄物などの中の有機塩素化合物が土壌を通して地下水を汚染したためと考えられている。しかし,廃棄物や土壌中の有機塩素化合物を分析する簡便で正確な方法はない。本磁究でほ,廃棄物療鑛中の全有機塩素や個別の有機塩素化合物を分析する方法を開発した。すなわち,つぎの操作と条件によれば,簡便かつ正確に有機塩素化合物が分析できることを明らかにした。(1)10gの固体試料に20mlの酢酸エチルと5ml程度の水を加えて,超音波をかけながらふりまぜ抽出する。(2)残留物に20mlの酢酸エチルを加えて抽出する。(3)両方の酢酸エチルを合わせる。(4)少量の硫鹸チトリウムで酔酸エチルを説水する。(5)酢酸エチルを50mlにする。(6)指定したガス流量と試料液注入速度でTOX計によって全有機塩素濃がをげノ度を測定するか,ECD付きのGC個別偽合物濃度を測定する。この全操作での各種有機塩素化合物の画収率は,TOX計で73~102%,GC-ECDで85~101%であった。
  • 酒井 睦司, 安井 敏和, 藤本 真平, 富田 昌宏, 榊原 保正, 内野 規入
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1642-1644
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Colloidal nickel was easily prepared by reaction of nickel bromide with zinc powder. It was an active catalyst for hydrogenation of aromatic nitro compounds and of halobenzenes. Aromatic nitro compounds were hydrogenated to give the corresponding amines in high yields in the presence of the colloidal nickel under an atmospheric pressure of hydrogen. p-Bromonitrobenzene was hydrogenated successively to afford aniline via p-bromoaniline. p-Bromoaniline and p-chloroaniline were reduced to aniline in good yields. It is suggested that the amino moiety assists the adsorption of the substrate on the surface of the metal and that it acts as an acceptor of hydrogen halide. The hydrogenation of halobenzenes gave benzene in the presence of aniline. The reactivity of halobenzenes was in the following order;1>Br>Cl.kn-abstract=
  • 坂本 政臣, 土居 辰也, 石森 富太郎
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1645-1647
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The {ZrO(IV), Cu(II)}- and {ZrO(IV), Ti(IV)}-mixed oxalato compounds were obtained as powders by the homogenous reaction in aqueous solution of ZrOCl2 with K2[Cu(OX)2] or K2[TiO(OX)2]. The compositions of these compounds were found to be (ZrO)5Cu8(OX)12(OH)2(H2O)25 ([Zr-Cu]) and (ZrO)(TiO)2(OX)2(OH)2(H2O)7 ([Zr-Ti]), respectively. Both compounds released almost all water molecules at 200°C. In the range of 350 to 450°C, [ZrCu] formed the intermediate which had the composition of (ZrO2)5(CuO)725010.75(CO3)0.75 or (Zr0)0.75(ZrO2)4.25(CuO)8, (CO3)0.75 and, above 600°C, gave (ZrO2)5(CuO)8 which was merely a mixture of each metal oxide. [Zr-Ti] was found to form an intermediate of (ZrO)0.8(ZrO2)0.2(TiO2)2(CO3)0.8 or (ZrO2)(TiO)0.8(TiO2)1.2(CO3)0.8 in the range of 350 to 550 °C. This intermediate contained a small amount of CO2. Further heating to 650°C gave the mixed oxide, (ZrO2)(TiO2)2, the structure of which was similar to that of the orthorhombic ZrTiO4.
  • 八尋 信英
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1648-1651
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ring-opening reaction of optically active 2-ethylaziridine in water was found to give 1-(2-ethy1-1-aziridiny1)-2-butanaminek N-(2-aminobuty1)-1-(2-ethyl-1-aziridinyl-2-butanamine, and oligomers of 2-ethylaziridine. The structures of the products were elucidated on the basis of their infrared spectra and mass spectra. In this ring-opening reaction, the original configuration in the starting aziridine was retained in these products, suggesting the occurrence of N-CH12 bond cleavage in 2-ethylaziridine.
  • 藤生 知久, 新居 芳香, 橋田 洋二, 松井 弘次
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1652-1654
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Oxidation of hydrazino-1, 3, 5-triazine [1] with s everal oxidizing agents was investigated. Oxidation of [1] with nitrous acid in aqueous-chloroform media afforded triazinyl azide [2] as the sole product. On the other hand, the oxidation with such agents as mercury(II)oxide, irona(III) chloride, or bromine afforded chloro- [3], hydrazo- [4], bromo- [ 6 ], hydroxytriazine [7] and triazine [ 5 ] as products, depending on the oxidizing agent and the conditions employed. The formation of these products can be explained in terms of the formation of triazinyldiazene and its subsequent oxidation to triazinediazonium ion as reaction intermediates.
  • 岸本 諭, 原田 裕昭, 大串 恒夫, 平嶋 恒亮
    1989 年 1989 巻 9 号 p. 1655-1657
    発行日: 1989/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The tautomerism of 2-(4'-substituted phenylazo)-1-naphthol (2-azo dyes) has been examined by means of electronic spectra in various solvents. With hydrogen and electron-withdrawing groups as the 4'-substituents, the hydrazone form is favored (almost 100%), while with electron-donating groups the azo form is favored to some degrees (0-58%). As examined for the 4'-OCH3 derivative, the azo form is stabilized in pyridine, acetonp, ethanol, and methanol compared with the equilibrium in benzene, while the hydrazone form predominates in chloroform and acetic acid. Above effects of substituents and solvents have the same tendency to those observed for 4-(4'-substituted phenylazo)-1-naphthol (4-azo dyes). However, for all cases the hydrazone/azo ratios observed for 2-azo dye are much larger than those for 4-azo dye.
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