日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1990 巻, 5 号
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  • 櫻井 英樹
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 439-450
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペルシリル置換π電子系化合物についての最近の著者らの研究を総合的に報告する。ここでのπ電子系化合物としてはアセチレソ,エチレン,アレン,ブタトリエン,トリメチレソメタン,メチレンシクプロペン,シクロブタジェン,フルベン,ベンゼンおよびベンゼンの原子価異性体である。これらのロ化合物の若干の遷移金属錯体についても述べた。シリル基は電子的および立体的に,π 電子系に強い摂動を与えるので,時として異常とも思えるような興味深い性質を示す事がある。例えばテトラキス(トリメチルシリル)エチレンやヘキサキス(トリメチルシリル)ベンゼンは可逆的なサーモクロミズムを示すし,後者は容易に相当するDewarベンゼンやプリズマンへの原子価異性を起こす。ピスシリル置換アセチレソの遷移金属錯体上での容易な1,2-シリル転位も特筆すべきもので,その結果,フルベンやトリメチレンメタン0或いはメチレンシクロプロペンの遷移金属錯体が得られた。特にメチレンシクロプロペン錯体はこれまでに得られていないものである。以上の新規化合物のX線結晶解析による構造解析は興味ある結果をもたらした。これらについて詳述する。
  • 照沼 大陽, 山本 紀哉, 木崎 弘明, 野平 博之
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 451-456
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    抗ヒスタミン薬として知られるorphenadrine[N,N-dimethyl-2-[phenyl(o-to1y1)methoxy]ethanamine]のケイ素類似体(silaorphenadrine)の光学異性体の合成法について検討した。ジクロロジメチルシランを原料として4段階の反応により得た(methylphenyl-o-tolylsilyl)methanamineを 2-フェニルプロピオン酸により光学分割した。光学活性(methylphenyl-o-tolylsilyl)methanamineから不斉保持合成により4段階の反応で,光学活性シラオルフェナドリンの前駆体である光学活性methylphenylo-tolylsilaneを合成した。さらにパラジウムー炭素の存在下,2-(ジメチルアミノ)エタノールを作用させて光学活牲 silaorpbenadrineを得た。また,光学活性な xnethylphenyi-o-tolylsiianeの立体配置を立体配置既知の meihyl(1-naphthyl)phenylsilane誘導体に導くことにより決定した。
  • 爾山 幸三郎, 藤井 雅弘, 菅原 常年
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 457-462
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸無水物や酸塩化物とヘキサメチルジシラザン[HMDS]およびそのフェニル誘導体の反応について調べた。無水フタル酸〔1〕とHMDSおよびその誘導体との反応では,反応温度により,フタルアミド酸〔3〕またはフタルイミド〔2〕,〔4〕を与えた。この反応の詳細を検討した結果,一次生成物としてフタルアミド酸のビス(トリメチルシリル)化物を与え,反応温度により分子内脱ジシロキサン反応を起こして,二次生成物としてiフタルイミドを与えることがわかった。二塩化フタロイル〔5〕も同様に〔2〕や〔4〕を与えた。無水マレイン酸〔6〕との反応では同様にマレインアミド酸〔7〕,〔9〕を与えるが,用いた条件下では分子内環化反応は起こり難く,N-フェニルマレイミド〔10〕が微量検出されたのみであった。無水安息香酸誘導体〔12〕~ 〔14〕からは条件や基質によりアミド〔15〕,〔17〕,〔19〕またはジアミド〔16〕,〔18〕などを選択的に与えることがわかった。ジアミドは最初の求核攻撃によりシリルアξ ドとシリルェステルの2分子に解離するためにそれらの分子間縮合反応によるものと考えられたが,環状酸無水物からの生成過程とは異なり,シリルアミドが未反応の酸無水物を優先的に攻撃して生成することがわかった。
  • 佐野 寛, 武田 敏充, 阿部 恵子, 右田 俊彦
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 463-465
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第二級アルコールであるシクロドデカノールから誘導される酢酸シクロドデシルとジフェニルシランをラジカル開始剤ジ-t-ブチルペルオキシド(以下DTBPと略記する)存在下加熱すると,デオキシ化されたシクロドデカンを生成した。この反応においてラジカル開始剤は不可欠であり,DTBPなしでは反応はまったく進行しない。またエステルとしては酢酸エステルが最もよい収率を与えた。第一級および第三級アルコールの酢酸エステルもデオキシ化されるが収率は低下した。アセチル化糖のデオキシ化では収率は低く,多量の副生物の生成が認められた。この原因としてジフェニルシランが2原子の活性水素をもつこと,およびラジカル条件下で他のシランに容易に不均化することがあげられる。
  • 小中原 猛雄, 佐藤 光伸, 春山 智紀, 佐藤 謙二
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 466-471
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-メチル-5-(トリメチルシリルメチル)イソオキサゾールのアニオン〔1a〕とp-置換ベンゾニトリル〔2a〕~ 〔2e〕から生成するN-シリル-1-アザアリルアニオン〔3a〕~ 〔3e〕をペルフルオロ(2-メチル-2-ペソテン)〔5〕と反応させ,相当する4-フルオロ-2-ペンタフルオロエチル-3-(トリフルオロメチル)ピリジン誘導体〔6a〕~ 〔6e〕を46~70%収率で得た。この反応はトリメチルシリル基によりいちじるしく促進される。〔6a〕は含水テトラヒド0フラシ中室温で希水酸化ナトリウムにより容易に加水分解され,4-ピリドソ誘導体〔8a〕を高奴率で生成した。また,2-(トリメチルシリルメチル)ピリジンのアニオン〔1b〕と〔2a〕から得られるアニオン〔3f〕からは,相当する4-フルオロピリジソ〔6f〕は得られず,相当するN-シリルエナミン〔4f〕と〔5〕の反応で4-ピリドン誘導体〔8f〕が低収率で得られた。
  • 鈴木 久男, 永田 弘光, 斎藤 肇
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 472-477
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属アルコキシドの均一共重合反応によりコーディエライト(cordierite)とムライト(mullite)の前駆体溶液を調製した後,それぞれの前駆体溶液を混合して溶液レベルで均一なコーディエライトームライト複合前駆体溶液を合成することを試みた。この前駆体混合法により得られた複合前駆体粉末は,シリコンアルコキシドの部分加水分解法と複合アルコキシド法を併用して得られた複合前駆体粉末よりも均質であることがわかった。しかしながら,複合前駆体の結晶化過程を粉末X線法や示差熱分析により調べたところ,コーディエライト相はサフィリン(supphirine)と非晶質SiO2の反応により1200℃ 以上で析出した。一方,ムライト相はA1,Si-スピネル相を経由することなく,900℃ 付近で結晶化した.1300℃ 以上のか焼により,ほぼコーディエライトとムライト相からなる複合微粉体となった。複合前駆体を800℃ で12時間か焼し,1300℃ で2時間焼成することで,相対密度が95%以上のへコーディエライトームライト複合焼結体が得られた。この複合焼結体の強度は,ムライト含有量とともに増加した。
  • 鈴木 栄一, 田部井 一浩, 小野 嘉夫
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 478-482
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (C2H5O)3Si (CHO2)3Br [1 ] と (C2H5O)4Si [2] を共縮合重合して3-プロモプロピル基を有するポリシロキサン〔3〕を得,Na2SO3,水溶液中で〔3〕のプロモ基をスルホン化して3-スルポプロピル基を有するポリシロキサソ〔4〕を合成した。スルホン化は,仕込みモル比n(〔1〕/〔1〕+〔2〕)=0.2または0.3のものがよく進行し,1.0~1.3mmol.g-1の酸量をもつ固体酸〔4〕が得られた。これらの固体酸の酸反応に対する触媒活性ならびに熱安定性を調べた。気相話タノール転化反応では,酸反応に典型的な脱水反応が進行した。453Kにおいて,流通時間1~4時間にわたって定常活性が得られエタノール転化率は87%(n=O.2),70%(n=O.3)であった。あらかじめ窒素気流下543Kで加熱処理してもエタノール転化率には大きな変化はなかった。スルポ基を有する陽イオン交換樹脂であるAmberlyst-15では,加熱処理温度468Kまでエタノール転化率は変わらなかった.したがって,3-スルホプロピル基を有するポリシロキサン〔4〕の熱安定性は,Amberlyst-15に比較して高いことがわかる.[4]は・酢酸とイソブチノレアルコールの液相エステル化反応にも触媒活性を示し,触媒有効成分が液相にほとんど溶出しない優れた固体酸であることが明らかになった。
  • 古澤 清孝
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 483-486
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3',5'-0-(ジ-t-ブチルシランジイル)デオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシドについてTHF中フッ化物イオンによる加水秀解を検討したところ,両者の分解速度に大きな差が認められた。生成物を分析した結果,リボヌクレオシド誘導体の分解過程では2',3'環状ケイ素化合物が生成し分解を促進していることが示唆された。また水素結合性の強いフッ化物イオンを用いる分解では反応物質中のシラノール基やヒドロキシル基の有無および位置関係が分解速度に影響する重要な要因であることが明らかとなった。1,3-位の関係にあるヒドロキシル基を有する5'-0-(ジ-ロブチルヒドロキシシリル)チミジンの加水分解においては,3'-位の糖ヒドロキシル基をアセチル化することにより脱シリル化がきわめて容易となった。
  • 中井戸 靖明, 松浦 俊郎, 山下 大輔, 岡部 昌規, 石北 幸子
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 487-494
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    これまでに著者らは二つの方法でメチルシラザン類を得てきた。一つは,ヘキサメチルシクロトリシラザンの開環反応により得られたメチルシラザソオリゴマー,他は,MeSiCI3/Me2SiCI12混合系の共アンモノリシスにより得られるメチルシラザンオリゴマーである。これらを前駆体として繊維や薄膜など特殊形状の成形体製造の可能性を検討してきた,これらメチルシラザンオリゴマー類は生成初期には比較的低分子量であるが,いずれも分子末端に官能性のアミノ基をもち,そのため室温においても自己縮合し,時間の経過とともに高分子化することが可能である。しかしながら0長時間を必要とするうえ,最終段階で急激に分子量増加をきたすため利用適正条件を把握することがはなはだ困難であった。そこで,メチルシラザンオリゴマーの縮合時間の短縮を図るとともにその縮合物の主に軟化温度の把握に焦点を置き,初期分子量の異なるオリゴマー類に対して,処理温度,処理時間を変えた熱処理を行い,セラミックス前駆体として有効な熱変成メチルポリシラザンへの変換をはかった。この熱処理により原料オリゴマーは三つの領域,すなわち流動性領域,熱可塑性領域,熱硬化性領域を示す熱変成メチルポリシラザンに変換される。これら三領域中,特に熱可塑性領域にある試料を熱可塑性メチルポリシラザソとし・熱可塑性を与える処理温度範甲の確定と生成の再現性を求め,さらに与えられた軟化温度を指標として熱可塑性メチルポリシラザンを定義し,また特殊形状のセラミックス成形体への前駆体としての可能性を検討し効果のあることを確認した。
  • 藤代 博之, 古川 昌司, 山崎 義武
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 495-498
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Microcrystalline hydrogenated silicon (μc-Si: H) which consists of very small silicon microcrystals surrounded by hydrogen atoms can be fabricated by RF sputtering in pure hydrogen onto a low temperature (about 100 K) substrate. We propose the growth model for such Si: H material, in which the inicrocrystals have been partially formed in the gas phase by the reaction of SiH3 radicals, and then rearranged and reacted each other on the substrate by the light irradiation effect from the hydrogen plasma. This model can well explain our experimental results as well as the estimation from other fabrication methods such as plasma chemical vapor deposition.
  • 川内 進, 立花 明知, 山邊 時雄
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 499-508
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本論文では,ケイ素化合物の持つ特異的な結合と反応性を量子化学的に明らかにするために,ケイ素化合物の原形としてシランを選択した。シランの分解によるシリレンの生成反応(1)SiH4→SiH2+H2と,シリ.レンのσ結合への挿入反応(2)SiH2+R-X-→R-SiH2Xは,化学蒸着(CVD)において重要な反応である。これらの反応は,反応(3)SiH4+R-X-→R-SiH2X+H2をシリレンの生成を経る2段階反応として考えていることに対応する。そこで,反応(1)と(2)について個別に行われた量子化学的研究を反応(3)の2段階反応として見直し,1段階反応であるシランの直接反応(R-X=SiH4,NH3,H20,SiH3OH)について得た著者らの結果と比較した。その結果,R-X=SiH4の場合はシリレンを経る2段階反応が,R-X=NH3,H2O,SiH30Hの時はシランの直接反応の方が速度論的に有利であることがわかった。シランの直接反応の有利性は,温和な条件下でのケイ素化合物の生成の可能性を示唆するものである。そして,Bader-Pearsonの摂動論からケイ素化合物の結合と反応性の特異性を説明することを試みた。
  • 玉尾 皓平, 林 高史, 伊藤 嘉彦
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 509-515
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ケイ素-炭素結合の過酸化水素酸化によるアルコール合成の反応機構の解析を行った。有機基の反応性,官能基の数,フヅ化物イオンの重要性,過酸化水素の濃度依存性,立体化学,五配位ケイ素化合物の反応における電子効果および立体効果などを基に,五配位ケイ素種が中間体であり,これに過酸化水素が攻撃して生ずる六配位ケイ素種を遷移状態とする機構を提出する。電子効果は,六配位ケイ素遷移状態において,有機基は炭素陰イオン性を帯がて隣の酸素上へ転移する機構を支持している。また,立体効果を基に,五配位ケイ素種に対する過酸化永素の攻撃経路の解析についても議論する。
  • 閑 春夫, 平塚 浩士
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 516-530
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機ケイ素化合物の光化学,光物理過程について研究した。励起フェニルジシラン類は,局在励起状態(LE,1Lb)の発光のほかに,長波長部に幅広い分子内電荷移動(CT)発光を与えることを見いだした。このCT状態は,2Pπ*(ベンゼソ環)→3dπ 空軌道(Si-Si結合)への電荷移動であると帰属した。分子内CTは,極めで速く起とり(<10ps),CT状態力・ら30psの時定数で中間体シレンを生11もずることを見いだしお。フェニルジシランの反応の量子収率は,0.86と極めて高い。シクロテトラシラ,ンの光分解反応は,その反応様式が今子構造に依存することが示された。レーザー光分解により,平面型分子は二つのジシレンを生じ,折れ曲がり型はシリレソと三員環を生ずることが明らかとなった。シ0 クロヘキサシラソから生ずるジメチルセリレンの吸収は470nmにあり,そめ動的挙動を検討した。フェニルトリメチろレシランは低温光牙解に考りフェニルジン読ルシリルラジカルを生じ,その発光はベンジルラジカルと類似した振動構造を持ち1μSの寿命を持つことがわかった。
  • 佐藤 浩太, 内山 昭彦, 大出 泰, 島津 省吾, 上松 敬禧, 小嶋 邦晴, 平野 恒夫, 鯉沼 秀臣
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 531-535
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビニルシランの励起状態の電子構造とプラズマ反応性の相関について検討した。MNDO分子軌道法による二中心結合エネルギーと局在化分子軌道エネルギーの計算結果から,最低励起状態では,オレフィン結合のπ部分が開裂し,第二励起状態では,Si-C結合が伸びて弱くなることが示唆された。特に三重項励起状態において,その傾向が強い。最低励起三重項状態への励起エネルギーは,他の励起状態よりかなり低く,ビニルシランの化学反応を誘起する励起エネルギーを低エネルギー側に絞れば,この励起状態を経由する反応がかなり選択的に起こることが予測される。高周波プラズマによるグロー放電分解の実験結果は,この計算による予測によく対応した。生成薄膜のXPSおよびIRスペクトルから,低パワーにおいてはオレフィン結合のπ部分の開裂により炭素骨格が形成され,パワーを上げていくとSi-C結合の切断が起こり,C/Si比を連続的に変化させてa-Sic膜を形成することができた。
  • 榊原 章人, 円谷 健, 加部 義夫, 安藤 亘
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 536-540
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環状芳香族シラソの光化学に関しては,三員環化合物の化学以外はほとんど報告がなく,その反応性およびヘテロ原子を含む化合物との反応に大変興味が持たれる。本研究は,オクタフェニルシクロテトラシランおよびシロテトラゲルマンの光機能性物質としての可能性を検討することを目的とし,ケイ素-ケイ素結合およびゲルマニウム-ゲルマニウム結合との強い相互作用が期待されるアゾ化合物存在下での光反応を検討した。オクタフェニルシクロテトラシランとアゾベンゼンおよび4.4'-ジメチルアゾベンゼンの光反応においては,1-(1,2-diarylhydrazo)-1,2,2,3,3,4,4-heptapheny1-1,2,3・4-tetrasila--1・2・3・4-tetrahy・dronaphthalene〔1〕,〔2〕を良好な収率で与えた。また,オクタフェニルシクロテトラゲルマソとアゾベンゼシとの反1芯においては,ゲルマニウム-ゲルマニウム結合ヘァゾ基が導入したような・1,2,3,3,4,4,5,5,6,6-decaphenyl-1,2-diaza3,4,5,6-tetragermacyc1.[3]が得られた.これらの反応における反応中間体として,現在のところシクマテトラシランおよびシクロテトラゲルマンとアゾ化合物の光励起錯体の生成を考えている。
  • 原 保昭, 入船 真治
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 541-546
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリコ_ソポリマーにおける,ヒドロシリル化反応で,触媒として白金錯体を使用したときの・硬化性とポツトトライフ性能を高めるために制御剤の研究を行った。示差熱量測定装置(DSC)を用いて得られるヒドロシリル化反応の発熱曲線のピーク温度と最大発熱速度,半値幅から・化合物の制御剤としての性能を判定できることカミわかった,また有効な制御剤の構造としては多重結合を持ち・α位に極性基を持つもので多重結合と極性基の原子間距離が2.7~3.Åの間にあることがわかった。
  • 井上 義文, 斎藤 欣, 荒井 正俊
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 547-550
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-シリルエステルは,そのSi-C結合が比較的温和な条件下でも開裂する特異なケイ素化合物として知られている。本研究では,Reformatsky反応により種々のα-シリルエステルを合成し,それぞれ一定の条件下でメタノールと反応させた。そしてα-シリルエステルの構造がSi-c結合の反応性におよぼす影響について検討した。その結果,以下に示す知見を得た。α-シリルエステル(R1Me2SiCH2COOR2)のSi-C結合の開裂は,(1)R1, R2基の電子求引性が大きいほど捉進される。(2)R1, R2基の立体障害が大きいほど挿勧される。(3)R1Me2SiCH2COOR2におけるR1, R2の置換基効果は,以下の順である。R1: H>C1CH2>Ph>CH2,=CH>Me>n-Pr>n-C8H17>i-PrR2 : Ph>Me>Et>n-C8H17
  • 袖沢 利昭, 森岡 昌邦, 佐藤 智司, 野崎 文男
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 551-553
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    SiO2-supported Cu catalysts were prepared by alkoxide method employing copper(II)nitrate, ethylene glycol and ethyl silicate, followed by calcination in a static atmosphere and reduction in a flow of hydrogen, and then applied to dehydrogenation of methanol leading to methyl formate. During the preparation of catalysts, it was found that the organic compounds containing Cu decompose on heating near 250°C, and the compounds related to Si decompose at about 320°C. Prior to the reaction, CuO and Cu2O were completely reduced to Cu metal in and/or on SiO2. These Cu/SiO2 catalysts prepared by alkoxide method showed higher activities for the reaction than those prepared by ion exchange method.
  • 佐藤 光彦, 山村 武民, 瀬口 忠男, 岡村 清人
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 554-556
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The behavior of radicals produced in polycarbosilane fiber by γ-ray and electron irradiations was investigated by ESR measurement. The produced radicals were Si and C radicals. At room temperature, most of the radicals reacted with each other, and polycarbosilane molecules were crosslinked under vacuum. Some of radicals, which didn't contribute to the crosslinking, were fairly stable under vacuum, but were well oxidized by the exposure in air. A lot of oxygen was introduced into polycarbosilane fiber with oxidation of the radicals. The radicals decreased by the heat treatment under vacuum. The radical concentration of polycarbosilane fiber heat-treated at 513 K for 10 min under vacuum was below 1% for that before the heat treatment.
  • 松本 信雄
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 557-565
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリシラソは,ケイ素原子間のシグマ共役により,主鎖に沿って非局在化した電子軌道が伝導帯.価電子帯を形成する新しいタイプの高分子半導体である。本論文では,最初に,シグマ共役がどのようにしてパンドを形成するか.そして,そのバンド構造が,側鎖基の種類(アルキル基およびアリール基)や,主鎖の立体構造の変化(トランメからゴーシュへ)にどのように影響されるかを,理想的な均一構造をもつポリシランに対して論じる。次に,トランス構造とゴーシュ構造がミクロに混在している場合,および,複数の立体構造がマク冒に混在している場合の二つについてバンド構造の変化を計算する。これらの結果は,光・電子物性に関する測定結果によりその妥当性が示される。最後に,シグマ共役領域を三次元にまで拡張し,結晶シリコンまでを含むシリコン高分子の次元階層構造の存在を主張する。そして,4種類の骨格次元をもつ物質を合成し,その発光スペクトルの系統的変化からこれを確認する。
  • 藤田 晴久, 福島 紘司, 桜井 敏晴, 福間 真理子, 瀬戸 淑子, 藤田 知信, 伊藤 光一, 篠原 紀夫, 由本 靖, 石原 俊信
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 566-574
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機ケイ素化合物の抗腫瘍活性を培養細胞系と実験動物移植腫瘍系を用いて検討した。50種類の化合物には培養細胞系においてEhrlichがん,肉腫-180.Lewis肺がんおよびB-16メラノーマに対して細胞増殖抑制効果を示す化合物が認められ,また,マウス移植腫瘍系においても上記の各固形腫瘍に対して経口投与によって有効な抗腫瘍活性を現わす化合物が見いだされた.中でも2-(2-Trimethylsilylethy1)thiaethylamine(SDK-12A)は最も強い活性を示し,その効果は抗がん剤5-FUのそれに匹敵するものであった。さらに,SDK-12AはLewis肺がんの転移を有意に抑制し.遅延型免疫機能賦活化作用も認められた。またSDK-12Aは実験動物において毒性面では安全性の高い化合物であった。これらの結果は,SDK-12Aが多面的作用を持った特異な化合物であり,抗がん剤開発の研究領域からみて興味ある物質である。
  • 榎田 年男, 廣橋 亮, 倉田 隆一郎
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 575-582
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(メチルフェニルシリvン)を電荷輸送層に用いた機能分離型電子写真感光体の電子写真特性を測定して,従来まで研究されてきたポリ(N-ビニルカルバゾール)との比較を行った。τ型無金属フタロシアニンを電荷発生層に使用した場合,600~800nmの領域で0.5(μJ/cm2)以上の分光感度をもっていた。帯電特性も優っており,その測定値から静電容量,比誘電率,暗減衰時定数および暗抵抗値を求めて検討した。紫外光に対する光疲労性はポリ(メチルフェニルシリレン)の方が大きく,分子量分布測定の結果,紫外光照射による鎖の切断と重合が原因であることがわかった。
  • 鈴木 久男, 池田 利正, 齋藤 肇
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 583-588
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陽イオソ組成比を一定にして,窒素含有量にともなうY-Si-AI系酸窒化ガラスの機械的性質を調べた。その結果,酸窒化ガラスの密度は7at%付近まで窒素含有量とともに増加したが・それ以上窒素含有量を増やしてもほぼ一定となった。一方.酸窒化ガラスの硬度,Young率および破壊靱性値は窒素含有量とともに増加した。また,窒素含有量にともなうFT-IRスペクトルの変化から・窒素含有量が少ない酸窒化ガラスと多いガラスとでは・ガラスの微構造が異なることが予想された。次に,窒素とケイ素の含有量を一定にして,Y/AI比の変化にともなう酸窒化ガラスの機械的性質を調べた。窒素含有量が一定の場合,Y/A1比の増加とともに硬度とYoung率は若干増加する傾向にあた。一方,破壊靱性値はY/AI比が増加すると単調に減少することがわかった。っまた,同じ窒素含有量の酸窒化ガラスでも,溶融温度によりガラス構造が異なるものと推察された。
  • 吉村 匡史, 田村 文孝, 越 光男, 松為 宏幸
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 589-593
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Q-スイッチCO2レーザーを用いてシランおよびそのフヅ素置換体の基本振動-回転帯を励起し・時間分解光音響法によりこれらの分子の振動緩和時間を測定した。得られた結果をメタンおよびそのフッ素置換体の振動緩和時間と比較した。SiH2F2の最低基準振動数はCH2F2より低いにもかかわらず・その振動緩湘時間はCH2F2より長く,この結果はSSH理論では説明されない.Nikitinらにより提案された振動-回転および並進自由度間のエネルギー移動の理論を適用する事により・SiHnF4-nおよびCHnF4-nの振動緩和は分子回転の寄与を大きく受けていること,および有効換算質量が緩和速度を決める重要な因子の一つであることを示した。
  • 菅野 東明, 関 一彦, 太田 俊明, 藤本 斉, 井口 洋夫
    1990 年 1990 巻 5 号 p. 594-598
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最も基本的なポリシロキサンであるポリ(ジメチルシロキサン)について紫外光電子スペクトルを測定し,関連化合物のデ-タや,武田と白石による無置換ポリシロキサンのバソド計算と比較して被占価0電子準位の電子構造を明らかにした。イオン化のしきい値は8.3eVと大きく,この物質のよい絶縁性と対応している。前に著者らが報告したポリ(シリレソ)類についての結果や,対応する三次元系であるケイ素,二酸化ケイ素についての報告との対比から,Si-0系では酸素がポリ(シリレン)類やケイ素で見られるケイ素間のσ共役をよく断ち切っていることがわかった。このような電子構造の特徴が電子スペクトルや電気的性質にどのように反映しているかについても考察した。
  • 1990 年 1990 巻 5 号 p. 599
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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