各種塩橋電解質について,強酸溶液およびpH標準液中における液間電位差を検討した。陽イオン輸率がKCIのそれより小さい塩橋電解質は,水素イオンに起因する液間電位差の変化を減少させるため,酸溶液中の水素イオン濃度の測定に推奨される。二つのpH標準液(フタル酸塩と中性リン酸塩)を用いて求めたガラスー比較電極対の見かけの応答勾配は,塩橋電解質の輸率にほぼ比例した。中間pH領域で液問電位差を最小にするためには,対称電解質の輸率はほぼ0.5でなければならないという衆知の必要条件が,酸溶液中での液間電位差および見かけの応答勾配についての二つの異なる実験から確認された。3.03mo1.dm
-3KC1と0.97mo1・dm
-3CH
3CO
2Naの混合物は,25℃,三つの標準液(フタル酸塩,中牲リソ酸塩,ホウ酸塩)についてNernst勾配が得られるため,中間pH領域での一般測定に適している。3mo1.dm
-8KNO
8も,その応答勾配はNernst値よりも低いが,三つの標準液について実験誤差範囲内で直線検量線が得られるのでt単一電解質の塩橋液として有用である。これら塩橋液は,約0.01pHの誤差を許容すれば,KCI-CH
3CO
2Naにっいて炭酸塩標準液,KNO
3にっいてシュウ酸塩標準液を含めた四つの標準液のpH範囲にわたって使用されうる。標準液を用いて得られる検量線の直線性という点で,KNO
3塩橋液は,広く用いられるKC1塩橋液よりも実用的にすぐれている。
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