スルホン酸残基または硫酸エステル残基をもつビニルポリマーと二分子膜形成能をもつカチオン性両親媒性化合物,[CH
3(CH
2)
n-1]
2N
+(CH
3)
2・Br-(2C
nN,n=14,16,18)からポリイオンコンプレヅクス(PolyionComplex,以後PICと略称する)を調製し,溶媒キャスト法により製漠した。PIC中の二分子膜に与えるポリマーの影響を明らかにするために,二分子膜の結晶液晶相転移温度(
Tc),PICフィルムの弾性率,およびスピンプローブでポリマーをラベルしたPICのESRスペクトルを測定した。両親媒性化合物のアルキル基の鎖長が短いPICほど(2C
14N),二分子膜の乱れが引き起こされやすく,対応する懸濁状態の両親媒性化合物にくらべてT,と相転移でのエンタルピー変化は低下した。中でもポリスチレンスルホン酸(PSS)は二分子膜に大きな影響を与えた。二分子膜が結晶状態ではポリマーの構造にかかわらず,フィルムはいずれも比較的高い弾性率を示した(200-400MPa)。一方液晶状態ではフィルムは測定できないほど軟らかくなったが,PSSのPICは例外的に10MPa前後の弾性率を示した。ポリマー鎖をニトロキシドラジカルでスピンラベルしたPICのESRのr大分離幅(
W)は結晶状態では6mT以上の高い値を示し,ポリマー鎖の運動性はこの状態では抑制されていた。しかし
Tcを越えると
W値は不連続に低下し,液晶状態ではポリマーの運動性が高まることが確iかめられた。同じ液晶状態でもPSSを用いたPICの
V値はアクリル酸型ポリマーを用いたものより大きく,PSSの運動性は相対的に小さいことが推定された。PSSはかさ高いフェニル基を側鎖にもつためにi分子が國直であり,そのために液晶状態の運動性は他のPICにくらべ相対的に小さくなったものと考えられる。PSSを用いたPICの
Tcや弾性率の挙動もPSS分子の剛直性により説明された。
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