日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1991 巻, 8 号
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  • 青山 安宏
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1041-1049
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非極性有機溶媒中での多点水素結合に基づくホストーゲスト相互作用について検討した。用いたホストは2-ヒドロキシ-1-ナフチル基をもつポルフィリン誘導体および四つのアルキリデン基で橋かけした環状テトラキス(レゾルシノール)誘導体であるが,これらはいずれもフェノール性ヒドロキシル基(対)を単位水素結合部位としてもっている。ゲストはアミノ酸,キノン,ジカルボン酸,ジオール,糖,ヌクレオチドなどの生体関連物質である。多点相互作用に組み込まれた「分子内」水素結合は最適ゲストの捕捉に大きな選択性を与えるのみならず,いちじるしい鎖長選択性・立体選択性をもたらす。また,「分子内」水素結合の分子間水素結合に対する優i位性は約1 .5kcal/molである。このような相互作用を利用して糖類を有機溶媒に可溶化することができる。この場合,アノマー位に関して大きな立体選択性が認められる。一方,どのような糖が有効に抽出されるかについての選択性は糖分子全体の疎水性(脂溶性)に支配されている。多点相互作用の応用についてもいくつかの例で検討を加えた。最も重要なのは,非共有結合に基づくホスト-ゲスト相互作用が,機能性分子錯体の自発的な構築や光学活性ゲストの立体化学の決定に利用できる点である。その他,糖の合成化学にユニークな方法論をもたらし,多官能性有機触媒の開発にも新たなみちを拓いた。
  • 堀尾 正和, 鈴木 憲司, 増田 浩之, 森 聰明
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1050-1058
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    あらかじめカチオン交換容量(CEC)を変えてある(Na/Ni)0モンモリロナイトを,アルミナもしくはジルコニアのビラ0前駆体を含む水溶液中でイオン交換することにより,ピラー分布の異なった架橋粘土を合成した。アルミナ架橋粘土およびジルコニア架橋粘土いずれの場合も,シリケート層問にピラーとして取り込まれたアルミナあるいはジルコニアの量は母材粘土のCECに依存して変化し,CECの大きい粘土ほど多量のピラーが取り込まれた。一方,シリケート層問の距離は母材粘土のCECには無関係にほぼ一定に保たれたままであった。これらの事実から,母材粘土のCECが大きくなるほどピラーが密に分布し,その結果ピラー間の距離が小さくなると推定された。また,ピラー前駆体の構造と電荷を考慮すると,ジルコニア架橋粘土のピラー間距離はアルミナ架橋粘土のそれより一層小さい領域で変化していると結論された。トルエンのメタノールによるアルキル化反応とyiL一キシレンの転化反応を試験反慈として,ピラー分布の異なる架橋粘土の触媒特性を調べた。トルエンのアルキル化反応ではキシレン(約80%)とトリメチルベンゼン(約20%)が主に生成するが,触媒活性に経時的な劣化が認められた。アルミナ架橋粘土の場合,ビラ.__.分布の密なものほど,初期活性が小さいにもかかわらず,活性劣化が顕著であった。一一方,ジルコニア架橋粘土の場合は,活性劣化の程度がピラーの分布に依存しなかった。物一キシレンの転化反応の場合,アルミナ架橋粘土では異性化と不均化の両反応が起こるのに対して,ジルコニア架橋粘土ではもっぱら異性化反応のみが進行した。また,アルミナ架橋粘土の場合,ピラーの分布が密になると異性化反応および不均化反応ともに促進されるが,不均化反応は異性化反応ほどには促進されなかった。このようなビラ0の種類や分布の触媒特性への影響に関して,活性劣化原因物質であるコークあるいは不均化反応中間体の分子サイズと,合成された架橋粘土の細孔径との相対的大きさの観点から考察した。
  • 井筒 雅, 塩谷 敏明, 福島 正義, 種谷 新一
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1059-1065
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    繊維構造チーズは,延伸方向に沿って引き裂くことができ,引き裂いた時に観察される繊維性とともに,レオ0ジー的性質が他の種類のチーズと異なることが特徴的である。このレオロジー的性質を明らかにするとともに,レオロジー的性質と繊維性との関係を考察した。延伸方向に沿って,平行に切り出した試料のせん断強さと動的弾性率は,いずれも延伸方向に直角に交差する方向に切り出した試料のそれより大きく,測定値には2倍以上の差が生じ,力学的な異方性のあることがわかった。引き裂いた時に現れる糸状物の太さ,または糸状物が試料となす角度は,四つのレオロジーパラメーター・,すなわち引張試験から得られるYoung率,破壊強度,破壊ひずみ,および引裂き試験から得られる引裂き強さから算出できることがわかった。
  • 水野 哲孝, 横田 静昌, 宮崎 一朗, 御園 生誠
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1066-1072
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    中心,配位原子の異なる種々のヘテロポリ酸を触媒としてシクロヘキセンの過酸化水素による酸化反応を検討した。反応はシクロヘキセンがシクロヘキセンオキシドに酸化されるステップと,これがさらに水和されてtrans-1,2-シクロヘキサンジオールを生成するステップおよび2一ヒドロキシシクロヘキシルヒドロペルオキシドを経由してアジポアルデヒドにいたるステップからなるものと推定した。12-モリプドリン酸のシクロヘキセン酸化触媒活性および選択性は,水に大きく影響された。ヘテロポリ酸の触媒活性は,中心原子の原子価とともに増加し(B3+<Si4+<C4+≦P5+),また,配位原子がモリブデンのものがタングステンよりも高かった。これらの活性序列はポリアニオンの酸化還元電位の序列と一致しており,ポリアニオンの酸化力の大きいものほど過酸化水素酸化反応活性が高いことが示唆された。
  • 山口 一裕, 草野 圭弘, 福原 実, 土井 章
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1073-1077
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    備前焼の代表的な模様である火だすきの形成過程における鉄分の挙動について詳細に検討するため,本研究では備前焼粘土を加熱した場合に生成するムライトにあらかじめ酸化鉄(III)および塩化カリウムを添加した混合試料を備前焼の焼成温度である1300℃ で加熱した焼成物についてXRD,EDX,熱分析などにより考察した。ムライトに塩化カリウムを添加して焼成した場合,塩素分は900℃ 付近ですべて気散し,焼成物中には薪たに少量のコランダムの形成が認められた。ムライトおよびコランダムの格子定数には添加量の影響はみられなかった。ムライトに酸化鉄のみを添加した場合,添加量の増加とともにムライトの回折線の強度が減少し,またその格子定数に増大の傾向が見られ,ムライトへの鉄の固溶が考えられた。塩化カリウムの含有量を一定とし,ムライトに種々の割合で酸化鉄を添加して焼成した場合,添加量の増加とともにムライトの残存量が減少し,コランダムの形成量が増加した。またムライトおよびコランダムの格子定数は酸化鉄の添加量の増加とともに増大する傾向が認められた。EDXにおいても粒子中に鉄の存在が確認され,鉄は残存するムライトおよび新たに形成されたコランダムの両方に固溶すると考えられた。備前焼中のムライトの格子定数の増加は鉄の固溶によるもので,また火だすき中のヘマタイトはガラス相に融解していた鉄分が再結晶化により形成したものと思われた。
  • 分島 郁子, 鴨川 秀幸, 木島 一郎
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1078-1082
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルコール中での二塩化酸化ジルコニウム(IV)八水和物とβ-ジケトン類とからのテトラキス(β-ジケトナト)ジルコニウムの合成に有効な添加剤の検索を目的として,添加剤として酢酸ナトリウムおよびアンモニウム,炭酸アンモニウム,およびアミン類(R3N,R=H,Et,i-Pr)について検討した。また,テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム[Zr(acac)4]とC4-C6のアルコール類およびフェノール類との反応についても=検討した。その結果,添加剤としてはアミン類がもっとも優れており,また,Zr(acac)4とアルコール類との反応ではアセチルアセトナト環のアルコリシス反応をともないながら部分置換体Zr(acac)4-n(OR)n[n=2,3]が生成するのに対して,フェノール類との反応では単純な配位子交換反応により二置換体Zr(acac)2(OR)2やZr(OR)4が生成することがわかった。
  • 三浦 恭之, 米村 康信, 康 智三
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1083-1087
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸イオン,チオシアン酸イオン,チオ硫酸イオン,ジチオン酸イオンおよびポリチオン酸イオン(トリ,テトラ,ペンタチオン酸イオン)混合物の溶離剤としては,フタル酸塩が適当であることがわかった。分離カラムのHPIC-AG4A(5cm)を用いたとき,2×10-4mol/l フタル酸塩溶離液(pH5.7)によって上記7種の硫黄化学種混合物から硫酸イオン,チオシアン酸イオン,チオ硫酸イオンおよびジチオン酸イオンを良好に溶出分離することができた。また,トリ,テトラ,ペンタチオン酸イオンの3種のポリチオン酸イオンは5×10-3mol/lフタル酸塩溶離液(pH5.7)を使用することによって分離することができた.一般にイオン交換膜型サプレッサー(AMMS)は,アルカリ性の溶離液を使用するイオンクロマトグラフィーに用いられているが,酸性のフタル酸塩溶離液(pH5.7)を使用したときも試料イオンの検出感度を増大させることができた。ペンタチオン酸イオン以外の各硫黄化学種の検量線は,それぞれ5×10-4mol/lまで濃度とピーク高さとの間に良好な直線関係を示した。本法を温泉水中の硫酸イオンとチオン硫酸イオンの定量に応用したところ,満足な定量結果が得られた。
  • 長尾 幸徳, 佐藤 裕樹, 阿部 芳首, 御園 生尭久
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1088-1093
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    8-プロモメチル-1-メチルイソキノリン臭化水素酸塩1と水酸化ナトリウムおよびナトリウムアルコキシド(アルコキシド=メトキシド,エトキシド,プロポキシド,およびイソプロポキシド)の反応により8-ヒドロキシメチルおよび各8-アルコキシメチル置換の1-メチルイソキノリン類(3aおよび3b-e)を合成した。また,1,8-ビス(プロモメチル)イソキノリン臭化水素酸塩2とナトリウムアルコキシドとの反応では1,8-ビス(アルコキシメチル)イソキノリン類4a-dが得られた。一方,化合物1とアンモニアおよびアルキルアミン類(アルキル=メチル,エチル,プロピル,およびイソプロピル)との反応では8-アミノメチルおよび8-アルキルアミノメチル置換の1-メチルイソキノリン類(5aおよび5b-e)がそれぞれ合成されたが,化合物2とアミン類との反応では閉環が起こり1H-ベンゾ[de][1,7]ナフチリジン誘導体6a-eが得られた。
  • 阿部 芳首, 金丸 哲也, 山崎 敏夫, 長尾 幸徳, 御園 生尭久
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1094-1101
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸または塩基存在下におけるイソシアナトシランのアルコールとの反応を検討した。エーテル中におけるトリメチルイソシアナトシランとアルコールとの反応結果から酸または塩基が存在しない場合にはトリメチルエトキシシラン(TMES)の生成率は,基質濃度に依存し,約1-2mol/lで2-10%であり,無溶媒で63%であった。HC1存在下ではトリメチルクロロシランとヘキサメチルジシロキサンが副生し,それらの収率はHCI濃度の増加とともに増加するが,TMESのそれは30-40%であった。一方,トリエチルアミン存在下ではTMESが定量的に生成した(96%)。これらの結果に基づき,トリエチルアミン存在下でのジメチルジイソシアナトシランとエタノールとのモル比=1の反応により定量的な収率でジメチルイソシアナトエトキシシラン1が得られた。同様にして,メチルトリイソシァナトシランからメチルジイソシアナトエトキシシラン2,メチルジイソシアナトイソプロポキシシラン3およびメチルイソシアナトジエトキシシラン4が約80%の収率で得られた。さらに,1,2および4のアンモニアとの反応によりシラザン誘導体1a,2aおよび4aを合成することができた。
  • 牧野 千里, 木村 登, 長谷川 悦雄, 土田 英俊
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1102-1107
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    脂肪鎖に不飽和基をもつ合成リン脂質1,2一ジ[(2E,4E)-2,4-オクタデカジェノィル]-sn-グリセロ-3-ホスホコリン,コレステロール,および(2E,4E)-2,4-オクタデカジエン酸(モル比7:7:2)からなる二分子膜小胞体(粒径0.2μm)をγ線照射により重合し,得られた高分子小胞体懸濁液の流動特性をE形回転粘度計を用い測定した。高分子小胞体分散液は総脂質濃度8w/v%以下ではニュートン流体,高濃度では非ニュートン非ビンガム塑性流体と見なすことができる。デキストランを添加した小胞体懸濁液は,溶液粘度増大が観察され,流動特性は非ニュートン非ビンガム塑性となる。これらの結果から高分子小胞体とデキストランの相互作用を推察した。
  • 松井 哲治, 山岡 昭美
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1108-1114
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンフィルムをオゾン酸化することにより活性点を生成し,これにメタクリル酸メチルをグラフト共重合し,グラフト共重合に関する基礎的な知見を得た。また,グラフト共重合性におよぼす内部構造の影響を検討するため,ポリプロピレンフィルムを一軸または同時二軸延伸し,これにメタクリル酸メチルをグラフト共重合させた。これらの結果を結晶化度,微結最粒子径,配向係数,ヒドロペルオキシド量および比表面積の観点から検討した。以上の実験によりつぎのことが判明した。オゾン酸化およびグラフト共重合の開始機構は先に粉末ポリプロピレンに対して提出したのと同様である。しかし,全重合率およびグラフト率は粉末にくらべて低い値を示すが,グラフト効率はほぼ等しい値であった。分岐数は10-2オーダー・であった。グラフト共重合の活性化エネルギーは11.9kca・mo1-1であった。また,延伸したポリプロピレンフィルムのグラフト率は未延伸のものより大となった。これは延伸により結晶化度,配向係数,微結晶粒子径が大きくなるなど内部構造が緻密化され,メタクリル酸メチルの拡散が抑えられグラフトしにくくなるが,表面積の増大による活性点としてのヒドロペルオキシド量の増加の効果の方が大きく寄与するためと考えられる。
  • 瀬尾 利弘, 三和 敬史, 飯島 俊郎
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1115-1126
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性な求核基(アミノ基)をもつポリアリルアミン(以下PAAと略記する)の側鎖に各種アルキル基およびベンジル基を導入し,そのエステル分解活性とポリマーのミクロ環境や配座との関連を調べた。両親媒性を示すこれらポリマーは,水溶液中でミセル状の分子形態をとり,疎水的ミクロドメィンを形成することがわかった。また疎水度の高い構造ほど界面活性能が増大することが認められた。N-オクチル化およびN-ベンジル化PAAは,ρ -ニトロフェニル=アセタートの加水分解をPAAにくらべいずれも促進し,置換度の増加とともにその効果は増大した。これは,ポリマー鎖がよりコンパクト化し,ミクロドメィンの環境も低極性になることから,疎水性相互作用による基質濃縮が容易になるためと考えられる。一方N-ドデシル化PAAは,置換度0.12でも疎水的環境を保持し,大きな加水分解速度を示した。しかしその触媒能は,E7値で55程度の極性と最小粘度をもつ置換度0.2で最大となり,それ以上では逆に低下する傾向がみられた。さらに,pHやエタノールあるいは塩添加などの外部因子によって反応場の特性が影響を受け,それにともなう活性の変化が観察された。
  • 隅田 卓, 安井 三雄, 山本 忠弘, 垣内 欣二, 高木 俊夫
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1127-1130
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゼラチンの酸による加水分解はその速度論についてはくわしく検討されているが,生成物の分子量分布についての研究はほとんどなされていない。著者らはゼラチンを比較的穏やかな条件で酸加水分解してその生成物の分子量分布をゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定した。α およびβ ゼラチンの光散乱法で求めた分子量,プルランの公称分子量,ペプチドの超遠心沈降平衡法で求めた分子量などを用いて検量線を作成したところ,検量線は10万-3000の分子量範囲では1本の直線にのった。αゼラチンに富む骨ゼラチンの1%溶液を50-70℃ の一定温度で0 .1M壇酸で処理した。加水分解生成物の分子量分布をGPCにより測定した。求められた分子量分布は桜田。岡村により導かれた単分散の線状ポリマーの無秩序な切断モデルによる分布とほぼ一致するとみなされた。このことからゼラチンの加水分解は見かけ上ペプチド鎖の無秩序な切断によって進行すると考えられる。
  • 岩崎 孝志, 林 拓道, 小野寺 嘉郎, 鳥居 一雄
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1131-1137
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    加熱による脱有機物処理を行うと,多孔体となるヘクトライト-有機複合体の熱分解挙動を熱分析,比表面積,赤外(IR)分光およびX線回折(XRD)により調べた。この有機複合体は水熱合成したヘクトライトに主としてオクタデシル基をアルキル基としてもつジメチルジアルキルアンモニウムィオンをインターカレートして作製した。比表面積は600℃加熱試料で最大値を示す。この温度は赤外吸収により層間有機カチオン中のアルキル基の分解が終了する温度と考えられ,それを鋳型として多孔体が生成したと思われる。分解生成物は雰囲気により異なり,窒素流通下では炭化水素ガスなどとして400℃程度の比較的低温で揮発してしまうのに対し,空気流通下では400℃前後で酸化物も一部生成し,それがさらに高温まで存在し層間に残留する。また,有機複合体のケイ酸塩層構造中のOH脱水は,ヘクトライト単独の場合にくらべて90℃程度高温側へ移動し耐熱性が向上した。これは400-700℃の範囲で赤外吸奴においてN-H変角振動の吸収バンドが認められることから層間陽イオンとしてアンモニウムイオンが高温まで存在してケイ酸塩層との電荷バランスをとり,多孔体としての耐熱性に寄与していると考えられる。
  • 石野 二三枝, 宗森 信
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1138-1142
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    検水に硝酸鉄(III)と塩化ビスマス(III)を加え,水酸化ナトリゥムでpHを7-8に調節したとき生ずる鉄(III)とビスマス(III)との混合水酸化物にリン酸はほぼ100%共沈した。濾別した沈殿を硫酸に溶解後,水酸化ナトリウム溶液を過剰に加えてpH>13で再び水酸化物を生成させるとリン酸は脱着した。遠心分離後,上澄み液に硫酸を加えてpH3-4の範囲内に調節し,モリブデン試薬と塩化スズ(II)を用いて発色させた。検水1lを用い,3ppbから100ppbまでのオルトリン酸を定量できた。100PPmまでのSO42- ,Cl-, 10ppmまでのNH4+,Ca2+,Mg2+,CO32-,1ppmまでのBa2+,BO33-,NO2-,I-,Br-,F-は20ppbのリン酸の定量には影響しなかった。80ppm以上のSiO32-は妨害した。河規水中のリン酸の定量に応用した。1
  • 岡田 實, 今泉 洋, 伊藤 智子
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1143-1145
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hydrogen isotope exchange raction between HTO vapor and one of the sodium salts of a-, m-, and p-aminobenzoic acid (solid) was observed at 50-80°C. The acidity (acidity based on kinetic logic) for the materials at each temperatur has been obtained with the A"-McKay plots based on the respective data obtained. The followings have been clarified by comparing these acidities (and the acidities obtained previously).1) The acidity of aromatic amines can be expressed in terms of the acidity based on kinetic logic.2) The reactivity of aromatic amine is strongly affected by both I-effect and R-effect.3) It can be deduced that aromatic amines are more reactive than aliphatic amines.
  • 米森 重明, 林 泰夫, 熊井 清作, 和田 明宏
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1146-1148
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Transformation of tetrabutylphosphonium bromide, whic h worked as a phase transfer catalyst in chloride-fluoride exchange reaction of 1, 2-dichloro-4-trifluoromethylbenzene using potassium fluoride, was investigated by 13C- and 31P-NMR. The phosphonium salt exclusively changed into tributylphosphine oxide in the halide exchange reaction. About 10% of the catalyst turned into the phosphine oxide through dehydration at 150°C for 3 h and halide exchange reaction at 185 °C for 16 h. After the reaction was repeated five times, approximately 50% of the phosphonium salt remained. The residual amount of the phosphonium salt had good correlation with repeated number of the reaction.
  • 尾崎 富生, 吉村 哲彦, 奥野 年秀
    1991 年 1991 巻 8 号 p. 1149-1152
    発行日: 1991/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to understand the behavior of chromium at the confluence of the river and sea waters, the surface distributions of several chromium species have been investigated at the Ibo River with the influence of tannery effluents and Harima Nada (see Fig.1). The concentrations of particulate Cr, dissolved inorganic Cr (III) and dissolved organic Cr(III) gradually decreased from the upper stream in the Ibo River to the estuary, rapidly decreased from the estuary to O.5 km offing from the estuary and gradually decreased from O.5 km to 20 km offing from the estuary. These results indicate that the chromium species in the river waters rapidly diffuse into and are diluted with the sea water near the estuary. The concentrations of Cr(VI) in the sea waters at several sites fell within a narrow range (0.06-0.11 μg/l).
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