日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1992 巻, 1 号
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  • 下野 彰夫, 篠塚 則子, 岩元 和敏, 妹尾 学
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水の塩素処理によるヒドロキシ安息香酸類からの有機塩素系化合物の生成におよぼすゲータイト(GT)の影響を明らかにするため,ヒドロキシ安息香酸類のGTへの吸着量および吸着状態を調べたのち,GT上への吸着状態でのヒドロキシ安患香酸類の塩素化の結果を,遊離の状態での結果と比較した。ヒドロキシ安息香酸類の吸着挙動とFT-IRスペクトルから,化学吸着の存在が示された。r12一ヒドロキシ安息香酸(MHBA)およびρ-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)では,カルボキシル基のみがGT表面の鉄に配位するが,サリチル酸(SA)では,低濃度領域において,フェノール性ヒドロキシル基とカルボキシル基の両方で鉄に配位するキレート吸着が支配的である。塩素化におよぼすGTの影響として,一つには表面ヒドロキシル基の交換によるものがあり,これはすべてのヒドロキシ安息香酸で認められた。吸着状態に起因する影響は,MHBAおよびPHBAの場合にはあまりみられないが,SAではpH4緩衝液においてGTの存在によりクロロホルム(CF)およびトリクロロ酢酸(TCA)生成量が減少した。この結果は,SAがGTに強くキレート吸着するためと考えられた。
  • 滝田 祐作, 山田 啓司, 吉田 浩二, 水原 由加子, 石原 達巳
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ化物に担持されたNi,PdPt,Au触媒上でCFC113は水素の共存下,200~5500℃ で水素化脱塩素反応,脱塩素水素化反応,異性化反応が進行した,Ni/CeF3,Ni/LaF3,Ni/CaF,では<350℃でC2CIF3(I)が,>450℃ でCH4が選択的に生成した。Ni/PbF2,Ni/MnF2では250~550℃ で(1)が選択的に生成した。Pd/CeF3,Pd/LaF3では150~200℃ で反応が開始し,転化率は300℃で85%の極大となった後,450~500℃ の10~15%まで低下し,550℃ では再び増大した。Pd/CeF,では<350℃ でCF3CCIH2(II)とCF3CC12H(III)が全温度域でCF2HCFH,(IV)が50~70%で生成した。Pd/LaF3では低温側から順に(II)+IV,C2F3H,(I)がかなり選択的に生成した。Pd/MnF2の活性は低かった。Pt/CeF3では<250℃で(II)と(III)が,300~500℃ でCFHCFH(V)が選択的に生成した。Pt/LaF3では<250℃ で(III)が,250~500℃ で(V)が選択的に生成した。Pt/MnF2の活性は低いが(I)が80~100%の選択率で生成した。Au/MnF2,Au/CeF8の活性は低いが>350℃ で主に(I)が生成した。Ni/Ca馬では300℃,55時間反応を行っても活性,選択性はほとんど変化しなかった。XRD分析より550℃ での反応後β-PbF,はPbC12に変化したが,他のフッ化物は変化せず担持金属と反応することもなかった。Pd/CeF3,Au/CeF,では反応後BET比表面積が4~5m2/gから13~14m2/gへ増大した。またフッ化物担体上ではPdは反応中に分散度が増大した。
  • 木枝 暢夫, 張 玉媚, 水沼 昌平, 篠崎 和夫, 水谷 惟恭
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    BaCO3とCuOの約2:1の混合物にMgO,CaCO3またはSr(NO3)2を10mol%程度添加して空気中900℃ で焼成し,立方晶ないし正方晶の新化合物を合成した。これらの新化合物の単相組成は添加元素によって異なり,その組成範囲は狭い。また,CO2を含まない雰囲気中や,Ba原料にBaO2を用いた場合には合成が困難であった。新化合物の安定性は雰囲気中のCO2分圧に依存し,900℃ではCO2分圧が10-4~10-3atm程度の範囲内でのみ安定で,これより高いCO2分圧下では炭酸化してBaCO3を生じ,低い場合にはCO2を放出してBa2CuO3へと分解する。化学分析の結果,新化合物の単栢試料は7~8wt%程度のCO2を含んでいた。CO2含有量に試料の履歴によらず再現性があることや,CO2分圧の変化による分解挙動が可逆的であることから,新化合物は結晶構造中に炭酸イオンなどの形でCO2を含んでいると推測される。
  • 越 智秀, 渋谷 康彦, 矢ケ部 憲児, 庄野 利之
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属塩基結合におよぼす配位子の熱的性質の影響を検討するために,アニリン誘導体を軸配位子とするジオキシムーコバルト(III)錯体のCo2PおよびNlsのX線光電子スペクトルを測定した。まず,アニリン誘鴬体のアミノ基に基づくNlsピークを帰属し,ついでCo2P1/2の結合エネルギーとアニリン誘導体のN1sの結合エネルギーとの差(ΔEco-N)を求めた。各錯体にみられるΔEco-Nの相違は,軸配位子の電子供与性および融解熱蒸発熱に反映される軸配位子の熱的性質に対応すると考えられtその度合については,仮定式ΔEco-N=ασ+βΔH(sub)(α,β は反応系によって決まる定数,σはHammettの置換基定数,ΔH(sub)は配位子の熱的性質として融解熱と蒸発熱の和とする)で表されることがわかった。
  • 渡部 清勝, 棟田 寛之, 前田 和宏, 北村 揚一
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    先に報告してあるtrans(O)-[Co(taud)(H2O)]ClO4(taud:-OCCH2NH(CH2)2NH(CH2)ZNHCH2COO-)を原料とする[Co(taud)a]型錯体の合成において,新しい4種類のtaud-CO(III)錯体が結晶としてそれぞれ好収量で単離できることを見いだした。元素分析結果は各結晶が[Co(taud)a]X;nH2O{(a=C1-;X=0;n=0.5),(a=Bf,NCS-;X=0;n=0),(a=NH3;X=ClO4-;n=0)}の組成であることを示した。[Co(taud)C1]と[Co(taud)Br]の吸収(あるいは拡散反射)スペクトルの解析結果および合成経路を考慮すると,これらの錯体がtrans(O)構造をとっており,したがってtaudの配位様式は必然的にtrans(O)であることが推定される[Co(taud)(NCS)]の吸収スペクトルに基づくとf単座配位子NCS鵜の配位原子はNであり,錯体の構造はtrans(0)構造となる。[Co(taud)(NH3)]ClO4においても,錯体の構造は同様にtrans(O)溝造に帰属される。
  • 柴田 康久, 宮城 宏行
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビス(12-クラウン-4)を用いた高分子支持液膜型ナトリウムィオン選択性電極に対する陰イオン妨害について感応膜表面の観察によりその機構を明らかにし,さらに膜材料の選択により妨害の排除法について検討した。このナトリウムイオン選択性電極は比誘電率(εr)の高い可塑剤を用いるとスロープ感度は低く,親油性陰イオンによる妨害が大きい。減衰全反射法を用いたフーリエ変換赤外分光光度法による感応膜表面の観察から,この妨害は親油性陰イオンの感応膜内への拡散により発生することを確認した。陰イオン妨害の排除には感癒膜材料として比誘電率の低い可塑剤と脂溶性の高い添加剤を併用することが効果的であった。そこで,可塑剤と添加剤にはそれぞれアジピン酸ジオクチル(εr=4)とテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウムを用いた。これらの感応膜材料を用いて親油性陰イオンによる妨害を排除したナトリウムイオソ選択性電極は良好なNernst応答(スロープ感度156rnV/dec,直線範囲:5×10-5~100mol/l)を示し,高精度な血清分析が可能であった。
  • 掛本 道子, 村上 和雄, 原田 敏勝, 小川 裕康
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酵素の反応特異性を利用した固定化酵素バイオリアクターと電気化学検出器を用いたHPLCによるラクトースとグルコースの同時定量法を確立し,市販の牛乳,乳酸菌飲料中のラクトース,グルコースの定量に応用した。ガラクトシターゼとグルコースオキシターゼを化学結合により固定化したガラスビーズをミニカラム(4.6mmid×10mm)に充填したバイオリアクターを作り,分離カラムと検出器の問に接続した。分離カラムで分離したラクトースは固定化酵素リアクターのβ-ガラクトシターゼによりD-ガラクトースとβ-D-グルコースに加水分解され,c.グルコースはグルコースオキシターゼの触媒作用によりグルコノラクトンと過酸化水素になる。この過酸化水素を電気化学検出器で電流測定した。またこのシステムで飲料中に含まれるアスコルビソ酸も同時に定量できた。ラクトース,グルコースの最小検出量はそれぞれ10,5ngであり,示差屈折率検出器にくらべて1000倍ほど高い感度が得られた。分離カラムで分離することによりFIA法とくらべ妨害成分の影響を受けず,また固定化酵素リアクター,電気化学検出器を利用することにより,高度の選択性が得られた。したがって本法は簡単な前処理で選択的に飲料中のラクトース,グルコースを定量できる有用な方法であることが明らかになった。
  • 井上 誠一, 小杉 千香子, 陸 占国, 佐藤 菊正
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    [2,3]シグマトロピ-転位反応によりオリベトールモノアセタートのヒドロキシル基のオルト位にメチル-3-ブテニル=イソプロピル=スルフィドを導入した結果,ほぼ1:1の比率で2種類の生成物すなわちかアルキル体と6-アルキル体が得られた。この2種類のアルキルオリベトール誘導体を原料とし,カンナビノールの全合成を試みた。まずそれぞれをアシル化し,酸化して得られたスルポキシドのキシレン溶液を加熱還流すると,スルポキシドのβ-脱離の後,分子内Diels-Alder付加環化反応が起こり,ラクトン環を含む三環性化合物であるΔ9-テトラヒドロジベンゾ[b,d]ピラン-6-オンをシス体優勢に得た。この三環性ラクトンは,メチル化,脱水を経てカンナビノールの前駆体`証4翫テトラヒドロカンナビジオール(CBDと略記する)とabn-cis-Δ9-CBDに収率よく導かれた。このcis-Δ9-CBDにBF3触媒を作用させると,定量的にcis-Δ9-テトラヒドロカンナビノールが得られた。もう一方のabn-cis-Δ9CBDをかトルエンスルホン酸共存下ベンゼン中で加熱還流させると,71%(GC)収率(単離収率37%)でtrans-Δ8-テトラヒドロカンナビノールが得られた。
  • 橘 陽二
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の活性型ビタミンD誘導体合成の中聞体として用いることができる1α -位にヒドロキシル基が導入された5,7-ジエン構造を有するステロイド化合物([1]-[4])を合成した,22-アセトキシ-23,24-ジノル-1,4,6-コラトリエン-3-オン[5]を酢酸イソプロペニルと酸性条件下処理してエノールエステル化を行いテトラエニルアセタート[7]を得た。Ca(BH4)2による還元にて生成したトリエノール[9]を4フェニル-3H4,2,mトリアゾ-ル-3,5(4H)-ジオンと反応させDiels-Alder型の付加体[II]を得た。[11]の3位ヒドロキシル基をt-ブチルジメチルシリル基で保護して得られる[13]加水分解(化合物[15]),ういでジヒドロピランと処理して[17]を得た。[17]をm-クロロ過安息香酸と処理してα 一エポキシド[19]を得た。t-ブチルジメチルシリル基を除去後(化合物[21])LiAIH,で還元し,1,3-ジオール[23]を得た。[23]をアセチル化(化合物[25]),次いでテトラヒドロピラニル基を脱保護し目的化合物[1]を得た。コレイン酸より得られる[6]を同様の方法で処理して[3]を得た。[1]および[3]はピリジニウムクロロクロマートで処理して対応するアルデヒド[2]および[4]を得た。
  • 野村 正人, 藤原 義人, 高田 秀和, 広川 隆志, 山田 昭朗
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体酸触媒としてのゼオライトは,従来の無定形シリカ,アルミナあるいは活性白土触媒よりも多くの反応において高い活性を示す一方,ゼオライトが持っている固体酸性は,プロトンあるいは金属カチオンと共存するカチオンの量と種類によっても影響を受けることが明らかにされている。そこで,著者らもこのようなゼオライトが持っている酸を利用し,モノテルペン炭化水素類である4-リモネン[1],2-ピネン[2],2(10)-ピネン[3],カンフェン[4]およびトリシクレン[5]の水の存在下における水和反応について検討した。
    その結果,[1]の場合にはフェリエライト形ゼオライトであるHSZ-710HOA合成ゼオライトを用いた反応において,4-ヵルボン[8]を主成分として得ることができた。また,[2]の場合においてもHSZ-710HOA合成ゼオライトを用いた反応においてα-テルピネオール[7]を主成分として得ることができた。一方,[3]の場合には天然ゼオライトである2020AH(モルデナイト型)ゼオライトを用いた反応において,trans-ベルベノール[11]を最高71%の生成比で得ることができた。つぎに,[4]および[5]の場合には助触媒として塩化亜鉛あるいは水酸化アルミニウムを添加し,Y型ゼオライトに属するHSZ-330HUA合成ゼオライトあるいはモルデナイト型ゼオライトに属するHSZ-620HOA合成ゼオライトを用いた反応において,イソボルネオール[16]とn-ボルネオール[17]の2成分のGLC組成比が2:3あるいは1:1の割合になることがわかった。このように,基質の構造によりそれぞれのゼオティトの組合せを考慮することにより,生成物の選択性に大きな相違が認められるなどの新しい知見を見いだすことができた。
  • 野村 正人, 井上 俊夫, 濱田 敏正, 藤原 義人
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種合成ゼオライトを触媒として,二環式および三環式モノテルペン炭化水素であるカンフェン[1]トリシクレン[2],2カレン[3]および3カレン[4]とC1~C4直鎖アルコールとの付加反応を検討した。[1]とメタノールとの反応では,US-Y型に属するHSZ-330HUA合成ゼオライトを触媒として,1,7,7-トリメチル-2-メトキシビシクロ[2.2]ヘプタン[5]を最高97.5%の生成比で得ることができた。つぎに,[2]と1-ブタノールとの反応では,HS-USY型であるHSZ-360HUA合成ゼオライトを用いた条件で,1,7,7-トリメチル-2-ブトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン[8]が転化率99%,生成比82%と高選択的に得られた。さらに[3]および[4]の反応では,US-Y型およびHS-USY型合成ゼオライトを用いた条件でアルコキシ-1-p-メンテンを主成分として得ることができた。また,得られたテルペニルエテル類の匂い評価を実施したところ,[1]あるいは[2]から誘導される[5]および1,7,7-トリメチル-2-プロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン[7],そして[3]あるいは[4]から誘導される8-メトキシ-1-p-メンテソ[12]は香料基材として有用であるとの評価を得た。
  • 明石 寛之, 加藤 良樹, 渡辺 正義, 讃井 浩平, 緒方 直哉
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)共重合体からなる橋かけ体に過塩素酸リチウムを溶解した高分子固体電解質を作成し,そのイオン伝導特性におよぼす共重合体組成およびシークエンス分布の影響を検討した。ポリエチレンオキシド(PEO)鎖中へのPO単位の導入,さらに電解質の溶解によって,得られた高分子固体電解質は,いずれも完全な無定形体になった。電解質溶解にともなう橋かけ体のガラス転移温度(Tg)の上昇は共重合体のシークエンス分布の違いの影響を顕著に受け,ブロック共重合体よりランダム共重合体のほうが上昇が大きく,かつその度合はx前者ではPEO橋かけ体のそれにほぼ一致し,後者ではPO組成の増大とともにポリプロピレソオキシド(PPO)橋かけ体のそれに近づいた。イオン伝導率は,低電解質濃度では共重合組成の影響が強く,EO組成の高い共重合体系橋かけ体がより高い伝導率を与えたが,高電解質濃度ではシークエンス分布による丁霧の違いの影響も大きかった。EO組成が0。8のランダムおよびブロック共重合体系橋かけ体は,完全な無定形であることを反映し,従来特性が良好とされるPEO橋かけ体よりも,低温特性の優れたイオン伝導性を示した。また,リチウムイオン輪率は,0.15~0.4であった。
  • 辰巳 正和, 松永 隆延, 揖斐 秀実, 山本 清香
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外線を照射したメタクリル酸メチル(MMA)は暗所で後重合を開始する。本研究はMMAの光後重合の開始反応について検討した。紫外線を照射したMMA気相からジメチルケテン(DMK),ホルムアルデヒド,および1,4-ジメトキシ-2,mジメチルベンゼンが得られた。得られたこの混合物はMMAの重合を速やかに開始した。一方,テトラメチル-1,3-シクロブタンジオン(TMBO)が存在するMMAに紫外線を短い時間照射すると,TMBOがDMKに光分解してi暗所での重合が開始された。これらの結果から,紫外線を照射したMMAは光化学反応によってDMKを生成し,それによって後重合が開始されると推定した。
  • 松井 哲治, 山岡 昭美
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン繊維を=オゾン酸化することにより活性点を生成し,これにメタクリル酸メチルを気相でグラフト共重合し,気相グラフト共重合に関する基礎的な知見を得るとともに,通常の液相法とのグラフト共重合挙動の違いを調べた。また,両者の枝ポリマーの分子量,分岐数などのグラフト体の構造を調べ,これらと結晶化度,複屈折,機械的性質およびDSCの融解挙動などとの関連性について調べた。その結果,つぎのことが判明した。気相法によっても液相法と同様にメタクリル酸メチルのグラフト共重合が可能である。また,両者はそのグラフト率がオゾン酸化時間,重合時間および重合温度とともに増加するのに対して,グラフト効率は減少するなどグラフト共重合挙動においては同じ傾向を示した。グラフト率はオゾン酸化時間が短い間は液相法の方が大きいが,2時間程度でほぼ等しくなるのに対し,両者のグラフト効率はこれらとはかかわりなくほぼ等しい。ほぼ同じグラフト率をもつ試料の構造には,気相法によって得られたグラフト体の枝ポリマーの分子量が液相法のものより小さいがs分岐の数は多いという相違点が見いだされた。この違いはグラフト体の結晶化度,複屈折,機械的性質,DSCの融解挙動にも現れている。この事実は気相グラフト共重合法ではグラフト化が繊維表面近傍で進み,内部はほとんど変化していないことを示唆するものである。
  • 堂野 礼三, 三浦 智弘, 白子 忠男
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分子の両末端にピリジン環をもつ非環状ジアミドを合成し,その分子構造と遷移金属イオンの抽出能および液膜輸送能との関連を検討した。配位子L1,L2およびL4は酸性領域においても二つのアミド水素を解離してCu2+イオンと選択的に非イオン性錯体を形成し,脂溶性陰イオンを必要とせずに抽出や輸送の可能なことが認められた。L3はpHが中性付近においてのみアミド水素を解離してCu2+イオンと錯形成した。L1,L2では高い抽出率を示したが輸送能は低く,これらの配位子の抽出能はL2>L1>L4>L3,輸送能はL3>L4>L1>L2の順に低下することが認められた。この両者の不一致はCu肝イオンの取り込みと放出速度の測定から輸送能が取り込みよりも放出速度に依存しているものと推定した。さらに,L1とL2はピクリン酸イオンが共存する場合にはNi2+,Zn2+iCo2+ イオンも抽出したが,これらのイオンもCu2+ イオンとの混合溶液ではCu2+イオンのみを抽出して他のイオンはまったく抽出しない。
  • 円満字 公衛, 高橋 健造
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ローダミン6G(R6G)は2.5×14-4moldm-3以上の濃度範囲で二量化し,その蛍光強度は顕著に減少する。R6Gの二量体水溶液に界面活性剤や錯体形成物質を添加すると蛍光強度はアルコール溶液中における値にまで回復する。Kashaの理論をR6Gの二量体と単量体の差スペクトルに適用すると二量体の面一面距離が6.28Å であり面間角は40°であることが推定された。
    界面活性剤のR6G水溶液への添加において二量体から単量体への過程が明らかになった。界面活性剤のミセルの大きさはこの過程に影響を与える。
    シクロデキストリソやその誘導体などの添加ではR6Gの単量体に対しての平衡定数の大きな添加剤が蛍光強度の回復により効果的であるとは必ずしもいえない。
  • 太田 道也, 大谷 杉郎, 飯塚 晋司, 小島 昭
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-メチルナフタレン(α-MN)とその2.5倍モル量の1,4ベンゼンジメタノール(PXG)とから調製した軟化点が約45~65℃ のBステージ樹脂(通称:COPNA樹脂)を甫いて連続繊維を紡糸した。ついで,この繊維を高温で溶融したり,反応したりしないようにするため,95%以上の濃硫酸浴に数分間浸して硬化処理した。その後,この硬化処理繊維を水洗し乾燥させた。この硬化処理繊維は,不溶不融で空気中で300℃まで加熱しても繊維の変形がみられなかった。機械的強度は,引張強度が約250MPaで引張弾性率が約6GPaであった。この繊維を2500℃までアルゴン気流中で加熱炭素化したところ,機械的強度はもろいが,炭素繊維が得られた。ピッチを原料とした場合には,2,5-ジメチル-1,4-ベンゼンジメタノール(DMPXG)を連結剤として使用することで連続繊維を紡糸することができた。この繊維もα-MNを原料とする樹脂繊維と同様に濃硫酸浴中で安定化処理することで,引張強度が約490MPaで引張弾性率が約5GPaの繊維が得られた。
  • 井藤 肚太郎, 山口 登志子
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 114-117
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素系土質安定剤ゲルの化学的分解の可能性を検討する目的で,土質安定剤ゲルを一定量の水に浸漬したとき溶出する水溶性物質の濃度を測定した。浸漬液中の尿素,遊離ホルムアルデヒド,ヒドロキシメチル基,メチレン基ならびに過マンガン酸カリウム消費物質の存在比の解析から,これらの物質のゲルからの溶出が,物理的な溶解ではなく化学的分解に起因するものであることを明らかにした。
  • 加藤 尚之, 高松 信樹, 今橋 正征, 相川 嘉正
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グラファイトファーネス原子吸光分析(GFAAS)法による天然水中の微量ルビジウムの定量方法について詳細に検討を行った。その結果,灰化温度400℃,原子化温度1900℃ のときルビジウムの吸光度は最高値を示した。共存成分の中で塩化物イオンはルビジウムの吸光度をいちじるしく低下させた。この干渉は試料溶液を02mol・dm-3硝酸および100ppmナトリウム溶液に調製することで抑制された。1回の測定に用いる試料の量は20μlで,定量値は各試料につき5回測定し,最高および最低値を棄却して3回の値を平均して求めた。ルビジウム10PPb,0.2mol・dm髄3硝酸および100PPmナトリウム溶液を40回繰り返し測定した結果,相対標準偏差(RSD)は1.45%で満足できる結果が得られた。本法による検出限界はS/N=3で0.03ppbであった。天然水の分析への応用として共存成分の少ない雨水,湖沼水および河川水と比較的共存成分を多く含有している温泉水について本法を適用し,回収実験を行った結果,96~99%の回収率が得られた。さらに,天然水の中でルビジウム含量の高い試料については,本法によるルビジウムの値とフレーム原子吸光分析法の値はよい一致を示した。
  • 大野 弘幸, 日向野 正徳
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 124-126
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Concentrated aqueous solutions of starch and poly( ethylene oxide) were prepared at 80 °C, and they were mixed to form simple coacervates of starch through the phase separation. This suspension was immediately cooled in an ice-containing water bath to get spherical starch microgels. The average diameter was measured to be 35 pm by particle size analyzer. The average diameter was revealed to increase with incubation time as coacervates before cooling. For example, starch microgels with average diameter of 180 pm were obtained by the cooling of the coacervates incubated at 80 °C, for 10 min.
  • 宍戸 統悦, 進藤 大輔, 岸 浩, 福田 承生
    1992 年 1992 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 1992/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Holmium rhodium borides were analyzed by analytical electron microscopy. In addition to electron diffraction and electron microscopy studies, electron energy loss spectroscopy (EELS) was performed on HoRh3131.333 (nominal composition, B; 25 at%). It was found that HoRh313, 333 consists of two phases, i. e. HoRh3B (B: 20 at%) and HoRh3B2 (B: 33.3at%). These results indicate that EELS of analytical electron microscope is very useful to detect and analize for various boron compounds.
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