日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1992 巻, 10 号
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
  • 谷 忠昭
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 985-997
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銀塩写真の感光素子は,青い光に感光するハロゲソ化銀という無機め光機能材料と,分光増感という技術でこれを緑や赤い光にも感光させる増感色素と呼ばれる有機の光機能材料からなる。増感色素は光を吸収して電子をハロゲソ化銀の伝導帯に伝達することにより,色素の吸収波長でハロゲン化銀を感光させる。本報ではf分光増感における電子移動の機構を種々の角度から研究した成果を紹介し,その全体嫁を描写する。
    色素のハロゲン化銀への吸着は両者間のクーロンおよびvander'Waals相互作用に基づいていた。色素の電子エネルギー準位に関する最も信頼出来る知見は0位相弁珊第二高調波ボルタソメトリーによる還元電位と酸化電位で与えられた。励起色素からハロゲン化銀への電子移動のエネルギーギャップ依存性は急峻で,Marcus理論で再配列エネルギーが小さく,反転領域がないものに相当した。ピコ秒分光によりf電子移動過程と競合過程の速度定数を求め,電子移動の動力学的特徴を明らかにした。一方,電子移動の逆反応が活発であり,色素分子が電子を1個失った状態のESRの測定などにより,逆反応の機構の詳細を明らかにした。
  • 横山 泰, 栗田 雄喜生
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 998-1006
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フルギドとは,少なくとも一つの芳香環を置換基として有するビスメチレン無水コハク酸の総称である。紫外光によって環化着色し,可視光によって開環消色する。置換基を工夫することによって, 熱による開環,閉環反応を抑えることができる。
    フルギドを書き換え可能な光記録材料に使うために必要ないくつかの条件のうち,反庵の高速性と環化体の吸収極大の長波長化を,フルギド分子の立体的および電子的要因を利用して達成することができた.さらに,最も長波長に吸収をもつ(5-ジメチルアミノインドリル)フルギドとトリクロロ酢酸の酸塩基平衡を利用した,光記録材料への応用において必要不可欠である非破壊読み出しの薪しい方法を発見した。すなわち,半導体レーザーの発光波長780nmに吸収のある(5-ジメチルアミノインドリル)フルギドの環化体は554nm光照射によって開環体にもどらないが,半導体レーザーの発光波長域に吸収のないプロトン付加体はもどる。したがって,少量の酸を含む(5-ジメチルアミノインドリル)フルギドの系は,780nm光を読み出しに,554nm光を消去に,紫外光を書き込みに用いる, 非破壊読み出しの系となる。
  • 中沢 享, 武藤 成昭, 水田 泰史, 川原 在彦, 宮本 栄一, 堤 真洋, 池田 利光, 永橋 啓一
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1007-1018
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回,著者らが開発した電子写真用正帯電単層有機感光体(以下正帯電単層OPC:organicphoto-conductorと略)は,従来のセレン系感光体,あるいは負帯電積層有機感光体にはない種々の優れた特性を有するとともに,有機高分子材料の優れたフレキシビリティーと成形性を兼ね備え,かつエコロジーに対応した機能性有機電子材料デバイスである。本正帯電単層OPCは,電荷発生材料としてベリレン系顔料,電荷輸送材料としてヒドラゾン誘導体,ヒドラゾン誘導体の光励起一重項エネルギー失活剤としてのフルオレン誘導体等の組成物からなり,優れた電子写真感度,安定性および寿命をもつ。本報では,正帯電単層OPCの技術について,化学的側面を中心に材料設計の考え方や感光体の諸特性などを含め総合的に報告する。
  • 梶山 千里, 菊池 裕嗣
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1019-1028
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子/液晶複合膜の相分離構造に由来する強い光散乱の原因について考察し,液晶チャンネル中のネマチックダイレクターの空間的ひずみ,液晶チャンネル間のネマチックダイレクターの不連続性,高分子相と液晶相の屈折率のミスマッチングが主な原因であることを提案した。高分子/液晶複合膜の絹分離構造は,溶媒蒸発過程のスピノーダル分解を経て形成され,相分離の構造周期は溶媒蒸発速度が大きいほど小さくなった。光スィヅチングにおける立ち上がり時間,立ち下がり時間,およびしきい値電圧は液晶チャンネルの大きさに依存し,液晶チャンネルが大きくなるほど,それぞれ短く,長く,および小さくなった。高分子/液晶複合膜中の液晶相に印加される電界強度を複合誘電体モデルを用い,広い周波数領域で高速応答することのできるモデル設計を行ない,実験的にも立証した。また高分子液晶/低分子液晶複合系のスメクチック相において二周波駆動によるメモリー性の光スイッチング機能が見いだされた。誘起スメクチック相の形成概念を利用し,安定なスメクチック層構造を維持したまま系の粘性を低下させ,応答速度を向上させることに成功した。複合系に光応答性分子を導入し,光透過一光散乱の臨界周波数を光により可逆的に変化させることにより,光惰報の書き込み消去が可能となった。
  • 田辺 譲
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1029-1043
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光ディスクの高密度化およびレーザープリンターの高精細化を達成するために,小型・高性能な青色レーザーの実用化が望まれている。小型青色レーザーは,いくつかの方式が提案されているが,その中で, 赤外半導体レーザーの出力光を非線形光学結晶を用いて波長変換する方式が最も実用に近いと考えられている。
    本報告では,いくつかの非線形光学結晶材料とそれらを用いた波長変換方式について述ぺた後,現在著者が開発を行っている,非線形光学結晶KNbO3を用いた外部共振器法による青色レーザーについて織する。この方式を恥て,50×30×20mm3の小型龍レーザーモジゴルを試作した。青色レーザー出力は,100mWの赤外半導体レーザーに対して14.6mWで,ビームプ口ファイルはガウシアンタイプ・相対強度雑音は-136dBIHz以下で,光ピックアップ光源として用いた場合, 静止画像の再生に十分な特性を持っている。また,出力5.5mW時に,5時間以上に渡って変動率±5~6%の安定性が得られている。さらに,レーザープリンター,光磁気ディスク用途で重要と考えられるレーザー出力の高速直接変調に関して,半導体レーザーの注入電流変調方式および電気光学効果を利用した方式について報告する。
  • 上田 壽
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1044-1051
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    可視光によって作用する無機光触媒を作成する目的で金属アルコキシドポリマーを共重合体にして光応答性と光触媒活性を測定した。共重合体は金属アルコキシド同士の組み合わせでできるものと金属アルコキシドと有機化合物の組み合わせでできるものがあることを予想し,前者としてはチタンのブトキシドおよびニオブのエトキシドを使い,後者としてはジクロロベンゼン,ピロール, 無水マレイン酸などを使った。重合はテトラヒドロフラン溶液で行い, 触媒活性の測定は99.5%エタノール/水を使い,480nmより長波長の光で分解を行った。
    得られた重合物の吸収スペクトルは,ポリマーの組成に対する構造敏感性を示しており,2種の重合成分の間に結合が生じていることを示している。これら安定ラジカル型無機高分子による可視光吸収の機構としては,基底状態および励起状態ともにスピソ多重度があるために両者の間隔が狭まるというモデルを提出した。
    三次元の(原子価が飽和している)結晶からなっている触媒系では,-Ti(=O)O-という単位を3あるいは4個で孤立させるとか,あるいはこのような単位9個に対して,-Nb(=O)O-という単位を1個結合させるというようなことが難しいが,共重合系では比較的に容易である。このような見地から,安定ラジカル型無機共重合体高分子材料は有意義である。
  • 岩崎 仁, 熊谷 学, 田中 俊夫
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1052-1056
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カチオン型シアニソ色素1,1'-diethyl-2,2'-carbocyanineヨウ化物(Dye2)の二分子会合体(二量体)の解離平衡について調ぺた。2vo1%のエタノールを含む濃度の異なるDye2水溶液を用いて,25℃ から60℃ の範囲で吸収スペクトルを測定し,単分子(単量体)吸収ピークである600nmの吸光度の温度変化から二量体の解離定数として4.3(40℃)-12(60℃)×10-5mol・dm-3,解離熱として10.4kcal・molを得た。メチン炭素の数が二つ少ない以外は同じ化学構造を持つ1,1Ldiethy1-2,2'cyanine塩化物(Dye1)と解離定数を比較するとDye2のそれは一桁以上小さくこの色素が二量体を形成しやすいことが数値的に示された。他の類似シアニン色素の解離定数,解離熱の文献値とも比較し,色素の構造とこれらの数値の関連について議論した。
  • 大岡 正孝, 伊藤 紳三郎, 出本 雅英
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1057-1063
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,6-ジ(9-カルバゾリル)-2,mヘキサジイソ(DCHと略)と1-(9-カルパゾリル)-6-(9-アントリル)-2,4一ヘキサジイン(CAHと略)の混晶をCAHの濃度をかえて調製し,混晶の光重合機構を,光重合速度およびDCHの励起挙動を測定することにより検討した。光重合速度の測定結果,および時間分解蛍光スペクトルや蛍光寿命の測定結果を考え合わせるとエネルギー移動と光重合は競争反応ではなく,カルバゾール(Cz)環で吸収したエネルギーは一定の割合でジアセチレソ部にエネルギー移動することによって,ジアセチレン部が1,4一付加重合すると結論された。
    なお,観測されたCz蛍光はCz基からアソトリル(An)基へ,An基からAnエキシマーサイトへと段階的にエネルギー移動が起こることが明らかとなった。また,混晶による光重合の抑劉はエネルギー移動によるものではなく,CAH濃度の増加にともなう結晶構造の変化によると考えられた.また放射線重合と異なり,光重合では誘導期がないことがわかった。
  • 福永 公寿, 御手洗 計治, 三戸口 博三
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1064-1067
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Polymers having photosensitive nitroaryl groups were synthesized by the nitration of polyacenaphthylene or by the ionic polymerization of 5-nitroacenaphthylene. The photoisomerization of trans-cinnamic acid in the presence of photosensitizers was carried out in DMF. From the results obtained, it was found that the partially nitrated polyacenaphthylene reveals an excellent photosensitizing activity compared with that having 100% photosensitizer unit and that its sensitivity depends on the content of the nitro group.
  • 角岡 正弘, 川村 和之, 丹生 貴也
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1068-1070
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pendant acyloxyimino (A0I) groups in photoresists can be photochemically changed into amino groups and by the transformation of amino groups to ammonio groups, the polarity of photoresists can be increased. In this study, effects of comonomers on polarity alteration of photoresists before and after irradiation were investigated. Copolymers of acetophenone oxime Ο-acryloyl ester (AAPO) with styrene (St) or methyl methacrylate (MMA), AAPO (45.6)-St and AAPO(50.3)-MMA, were used as copolymers bearing the pendant AOI g roups. Solubility changes before and after irradation of their films with benzophenone as a sensitizer were examined. Although their films did no dissolve in methanol before irradiation, the AAPO(45.6)-St films treated with an aqueous solution of HC1 after irradiation becam e soluble in a mixture of methanol and water (1: 1 (v/v)), and those of AAPO(50.3)-MMA similarly treated after irradiation dissolved in water. Furthermore, it was found that by the addition of a small amount of the third component, N, N-dimethylacrylamide (DMAA)to a AAPO-St copolymer a difference in polarity of terpolymer before and after irradiation became much greater than that of the AAPO-St copolymer and that the terpolymer showed very high sensitivity as the photoresist.
  • 友田 昭彦, 坪井 秀樹, 金子 窮, 松島 良華
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1071-1077
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱的安定性に優れたホトクロミック化合物であるフルギド(オキサゾール環型[1]~ [3]およびフラン環型[4],[5])を用いて,スピンコート法によりディスクを作成し,アルゴンレーザーによる動的記録評価を行った。高いモル吸光係数(26000M一二cm-1)を有するフルギド[3]は6.4wt%濃度で47dBの再生信号を得ることができた。一方,フルギド[5]では,モル吸光係数が低い(6200M蜘1cm葡ユ)ために十分な再生信号CNRを得ることができなかった。また,光記録応答性は,ほぼフルギドの消色反応量子収率に依存しており,量子収率が0.26であるフルギド[5]では5mWの書き込みパワーで記録を行うことができ,量子収率の小さなフルギド[3](φ:1.8×10-4)においてもパワーを高めることにより記録を行うことができた。フルギド[5]を用いた高周波数での記録ではi1.5MHzまでは再生信号CNRの低下は認められなかった。一方,記録読み出し安定性では,消色反応量子収率に依存しており,低い量子収率を有するフルギド[3]が最も安定であった。
  • 中尾 廉, 阿部 康夫, 堀井 豊一, 北尾 悌次郎, 井上 博夫
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1078-1082
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-位に3-(トリエトキシシリル)プロピル基をもつインドリン-スピロ-ベンゾピランとスピロ-ナフトオキサジンを合成した。ゾルーゲル法に準じて,これらホトクロミック化合物を単独で,あるいはトリエトキシシラン類(RSi(OC,H5)3)を併用してガラスをコーティングした。コーティングガラスはホトクロミズムを示す。スピロピランの場合,併用したケイ素化合物のRがC2H5,n-C3H7,n-C3H6Cl,C6H5とかさ高くなるにともない,着色種の熱安定性がよくなる。C6H5のときの消色反応の半減期は約200日であり,エタノール中のそれに比べ10`倍改善される。 ナフトオキサジンを単独でコーティングしたものの半減期は約50分であり,同じく103倍安定化する。
  • 富岡 秀雄, 佐藤 裕紀
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1083-1090
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1´位側鎖にカルボキシル基を持つスピロピラン(SP)を合成し,そのカルボン酸ナトリウム塩とカチオン性ポリマー,ポリ(塩化ジアリルジメチルアソモニウム)(PDDA+Cl-)を水中混合することによって標記ポリイオンコンプレックスを合成した。このポリイオンコンプレックスは1H-NMR,IRによってSPがカルボキシレートの形でPDDA+ に取り込まれることを確認した。ポリイオンコンプレックスはそのクロロホルム溶液をスピンコートすることによって無色透明な薄膜を形成し,これは光照射によって着色し,加熱によって消色する正ホトクロミズムを示した。着色体メロシアニソ(MC)の吸収極大から,ポリイオンコンプレックスではSPは比較的非極性な部分に取り込まれていることを示し,またMCの熱消色速度は速い過程と遅い過程の二つの一次速度の和として解析できることから,SPはPDDA+主鎖にそって取り込まれたものと主鎖からはずれて取り込まれたものとの二成分からなることも示した。ポリィオソコソプレックスの挙動をSPの溶液中およびポリ(メタクリル酸メチル)フィルム中でのそれと比較し,ポリィオンコンプレックス中のSPはその着色体がかなり安定化されていることを明らかにした。
  • 伊藤 仁, 三ッ橋 和夫, 前田 修一, 村山 徹郎
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1091-1096
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    臭素やヨウ素のような重原子に置換された溶媒存在下での光反応プロセスでは項間交差(S1→T1)が促進され,励起三重項(S1)からの反応が抑制されたり,励起三重項(T1)から反応が促進されたりする重原子溶媒効果が知られている。本研究では,1,3,3-trimethylspiro[indoline-2,3'[3H]naphth[2,1-b][1,4]oxazine]のシクロヘキサン中のホトクロミズムに与える重原子溶媒効果を検討した。重原子溶媒として用いたハロゲン化アルキルの濃度上昇にともなって,ホトクロミズムにともなうメロシアニンの生成は抑欄された。シクロヘキサン中の重原子溶媒の濃度と,550nmにおける吸光度の差から計算されるメロシアニン生成の相対量子収率の比との関係を表すStern-V'almerプロヅトは,直線関係を示した。得られたデータから重原子溶媒存在下におけるスピロオキサジンの光反応機構を提案した。また,重原子置換基(ハロゲン置換基)に対する挙動を調べるために種々のハロゲソ化アルキルについて調べた結果,重原子置換基の原子量増加に従ってメロシアニンの生成は強く抑制されることがわかった。
  • 時田 澄男, 石井 隆男, 新井 剛, 小林 康寛, 中津 和三
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1097-1101
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノールのカリウム塩[6]と,1,5-ジクロロアントラキノン[15]を1:1のモル比でUllmann縮合させ,カラムクロマトグラフィーで精製することにより1-フェノキシ-5-クロロアントラキノン[17]を合成した。つぎに,チオフェノールのカリウム塩[18]と,[17]とをUllmann縮合させ,1-フェノキシ-5-(フェニルチオ)アントラキノン[19]を合成した。塩化アルミニウム-塩化ナトリウム溶融塩中で[9]を閉環すると,チオキサンテノ[1',9':4,5,6]ベンゾ[kl]キサソテン[5]が得られた。同様にして,[17]と,1-ナフトール[20]または2-ナフトールのカリウム塩[22]をUllmann縮合させた後,閉環させることにより,ベンゾ[1,2,3-kl:4,5,6-k'l']ジキサソテソのジペソゾ縮合体[6]または[7]を合成した。[5],[6],[7]はいずれも赤色で光酸化によってそれぞれ無色のエンドペルオキシド体[12],[13],[14]に変化した。これら着色体および消色体のホトクロミック特性について検討した。
  • 島田 俊之, 鈴木 博之
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1102-1108
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    永続的スペクトルホールバーニング(PSHB)現象を応用した光記憶における色素分子の対称性に起因するホール埋込みを回避することを目的として,対称牲の低い色素分子の特性を検討した。
    分子面に垂直なC2軸を持たないポルフィリンをポリメタクリル酸メチル(PMMA)マトリヅクスに分散した材料を作製し,性能を検討した。PSHB反応前後の透過差スペクトル測定により,ポリメタクリル酸メチルにクロリンe6トリメチルエステルを分散した試料(Che6TME/PMMA)で,生成物と反応物の吸収スペクトルの分離を確認した,ホール埋込みは,吸収スペクトルの重なりがある場合にのみ起こるので,Che6TME/PMMAではホール埋込みが回避できることがわかった。テトラフェニルポルフィリソのような,分子面に垂直なC2軸を持つ色素分子では,ホール埋込みの回避は原理的に不可能だが,Che6TMEのような非対称な分子ではプロトン移動型でもホール埋込みの回避が可能であることを示した。
    PSHB効率の濃度依存性から,エネルギー移動を無視し得る濃度は,これらの系でも~10-3M以下であることがわかった。また,蛍光寿命などの測定から,これらの系での光励起後の緩和過程を解析し,蛍光,内部緩和,項間交差などがPSHBと競合していることを明らかにした。
  • 坂口 三知代, 詫摩 勇樹, 三ツ橋 和夫, 中村 振一郎
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1109-1116
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペンタフルバジエン系化合物について,分子軌道法により吸収スペクトル,軌道相関および熱力学的相対安定性を求め,この系統の化合物のホトクロミック性を議論した。置換基の種類と位置によって熱力学的相対安定性が大きく変わることがわかった。比較として,CN基が熱力学的相対安定性に及ぼす効果についてはジヒドロアズレソの例についても計算した。また,光反応の際に考えられる副生成物についても考察した。
  • 村瀬 至生, 堀江 一之, 寺尾 元康, 昆島 正啓
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1117-1124
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    再生時間10ns/bitでSN比20を得るという実用的条件での光化学ホールパーニングメモリーの実現可能な記録密度を,理論と実験を併用して求めた。1度,深くあいたホールが,多重ホール形成により埋まる現象(レーザー誘起ホールフィリソグ)の程度が記録密度を決める主要な要因であった。ホール間隔が狭まるにつれて,ホールフィリングは著しくなった。このようなホールフィリングは今まで知られていない。この現象のため,記録密度を最大にする多重度(あるいはホール間隔)と,1ホールあたりの記録光量の組み合わせが存在することがわかった。最もホールフィリソグが起きにくいとされるポリビニルアルコール中に分散させたスルホン酸塩置換型ポルフィリンを記録媒体として,この最大記録密度を求めた。温度20Kのときには多重度130(ホール間隔0.21nm),記録光量29mJ/cm2/holeで最大記録密度1.OGbit/cm2が得られる計算となった。これをもとに液体ヘリウム温度(42K)で現状で最も適当と思われる材料を用いた場合の記録密度を換算すると,20Gbit/cm2弱になる。ここで見られたレーザー誘起ホールフィリングのより起きにくい材料を探すことが,記録密度を上げるためには最も重要である。
  • 日比野 純一, 鈴木 正明, 岸本 良雄
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1125-1130
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2本の炭化水素鎖とインドリン環の5´-位と7´-位に臭素を有する新規なホトクロミヅクィンドリン-スピロ-ピランBSP1822がジオクタデシルジメチルアンモニウム=プロミド(2C18N2qBr)を含むポリイオン錯合体複合膜およびLB膜においてJ会合体を形成することを見いだした。このポリィオン錯合体複合膜は2C18N2C1Brをカチオン成分とするポリイオン錯合体とステアリン酸メチル(MeSt)とをマトリックスとした組成からなる。J会合体の形成には,MeStのような40℃ 付近に融点を有する添加剤が必須であることがわかった。このJ会合体の吸収極大は650nmで,臭素のないスピロピラソと比較して32nm長波長側に着色し,またこのJ会合体の室温暗所での安定性は高く,単量体と比較して約104倍向上した。
  • 垣下 智成, 松村 賢次, 細田 雅弘, 松本 喜代, 清造 剛事
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1131-1137
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,3,3-trimethylspiro[indoline-2,3-[3H]naphtho[2,1-b][1,4]oxazine](TM-SNO1)とその9'-ヒドロキシ置換体(TM-H-SNOm),さらには1aとhexafluoropropenetrimer(HFP-T2)の反応物(TM-HFP-T-SNOlb)および1aと4-[perfluoro(2-isopropy1-1,3-dimethy1-1-buteny1)oxy]benzoylchlaride(HFP-T-OB3)の反応物(TM-HFP-T-OB-SNOlc)の紫外線による着色機構(ホトクロミズム)を1H-NMRによって調べた。
    その結果,いずれの化合物も着色によって3'一位の二つのメチル基プロトン(9-H,10-H)スペクトルが低磁場にシフトし1本となり,N-メチル基プロトソ(8-H)のそれも低磁場にシフトした。この変化は6一nitro-1',3',3’-trimethylspiro[2H-1-benzopyran-2,2´-indoline](6-nitroBIPS(4)と同様であり,開環着色し,両性イオン構造となるものと推定した。さらに,2'-Hプロトンのスペクトルが大きく低磁場にシフトし,上記構造変化に基づく電子求引効果のほかにキノノイド型携造の異方性効果を示唆すると考えられ,ナフトオキサジン誘導体の開環着色の特異性についてソルパトクロミズムの観点から検討した。ついで, 上記化合物の結晶融解と着色について,顕微鏡観察,DSC曲線およびX線回折曲線によって検討し,それぞれ異なった凝集性と結晶形状を持ち融解によって着色することを明らかにした。
  • 谷口 均志, 神宝 昭, 岡崎 庸樹, 松井 文雄, 入江 正浩
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1138-1140
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Degradation mechanism of 1, 2-bis(2, 4, 5-trimethyl-3 -thienyl)-1, 2-dicyanoethene (TECN)was studied by product analysis. When TECN was irradiated in dichloromethane with 420nm light, the closed-ring isomer with absorption maximum at 520 nm was the sole product. O n the other hand, when irradiated with 370 nm light, oxygenated products were detected. Photogeneration of such products, possibly endo-peroxide moieties on thiophene rings, caused the degradation of TECN.
  • 柳沢 秀一, 松井 文雄, 岡崎 庸樹
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1141-1143
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Thin films for optical recording media made from cyanine dyes are constantly exposed to near-infrared rays used to carry recording and reading signals. After repeated and intense exposure to the high-density energy of near-infrared rays focused by lenses, cyanine dye thin films undergo severe photodegradation, and as a result, the written data is destroyed. A quencher, however, can very effectively suppresses this phenomenon.
    We recently synthesized a new quencher consisting of bis[3 -methoxy-4-(2-methoxyethoxy)2'-chloro-α, β-stilbene-8ithiolato]nickel.
    The photod egradation of cyanine dye thin film cause by exposure to near-infrared rays is well-controlled by this new quencher.
  • 岩田 理, 諸井 長広, 三橋 啓了, 田中 潔
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1144-1147
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    As a part of our study on the synthesis and application of the fluorine-containing fulgides and diarylethenes, we now demonstrate the synthesis of (trifluoromethyl)pyrazoles via 1, 3-dipolar cycloaddition reaction and their derivation to the fulgides.2, 2, 2-Trifluoro-1-(phenylhydrazono)ethyl bromide [1 ] cycliz ed with β-diketones or /β-keto esters [ 2 ] under alkaline conditions to give the corresponding 3-(trifluoromethyl)pyrazoles [3] (Table 1). The Stobbe reaction of 3 with diethyl isopropylidenesuccinate was influenced by the substituent at 5-position of pyrazole ring; that is, 4-acetyl group of the pyrazole having electron-withdrawing group at 5-position was eliminated, whereas 4-acetylpyrazole substituted by 5-methyl group gave the expected fulgide [ 7 ]. Photoirradiation of a hexane solution of 7 with 330 nm light caused absorption at 500 nm, which disappeared on exposure to light longer than 390 nm. According to the 11-I-NMR analysis, stereochemistry of 7 was assigned to be the Z-configuration and it was isomerized to the E-configuration and further to the ring-closed form by photoirradiation with 330 nm light. The ring-closed form reverted only to the E-configuration by irradiation with>390 nrn light.
  • 久保 伸夫, 小林 範久, 池田 幸治, 廣橋 亮
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1148-1153
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オリゴ(オキシエチレン)側鎖を有するポリメタクリル酸誘導体に,過塩素酸リチウムとホトクロミック化合物であるスピロベンゾピラン(SP)誘導体を複合した固体膜を作製し,色素の光異性北反応とそのときのイオン伝導度変化について検討した。
    高分子側鎖末端にヒドロキシル基をもつポリマーとしてメタクリル酸のα-ヒドロオリゴ(オキシエチレン)エステルポリマー[P(MEO)OH]を試料とし,このポリマー中で,紫外線照射によって,SPが無色種からホトメロシアニン体(PMC体)に異性化することを可視吸収スペクトルの変化より確認した。これにともないr固体膜のIRスペクトルにおける,O-H伸縮振動のピーク波数が低波数側にシフトし,高分子側鎖末端のヒドロキシル基-PMC体間に水素結合が存在することが明らかとなった。さらに, 紫外線照射時の水素結合の形成に基づき高分子固体膜のイオン伝導度が低下し,暗所下では,この相互作用の低下に基づきイオン伝導度が増加することから,スピロベンゾピラン誘導体の光異性化反応によりイオン伝導度が剃御できることを見いだした。
  • 藤田 悦昌, 安達 千波矢, 筒井 哲夫, 斎藤 省吾
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1154-1161
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属フタロシアニン(MPc)またはポルフィリン誘導体(Por)とペリレン誘導体を組み合わせた有機積層型太陽電池を作製し,用いる色素の化学構造が光電変換特性に与える影響について調べた。フタロシアニンとしては,CuPc,CoPc ,TiOPc,VOPc,InCIPcxSiCl2Pc,GeCl2Pcの7種類を用いxポルフィリンとしては,メタルフリーポルフィリン並びに銅ポルフィリン合計4種を用いた。ペリレン誘導体としては,ベリレンの3,4:9,10-ビス(イミダゾ[1,2-a]ピリド)縮合体(PTCIz)6種を用いた。作製した素子の構造は,(ITO(インジウムースズ酸化物)/MPcまたはPor/PTCIz/Au)で,暗状態ではAu電極に正電圧を印加したときに順方向となる整流性を示し,光照射下ではAu電極が陽極となる光起電力を示した。光照射下においては短絡電流は入射光量に比例して増加しf開放端電圧は入射光量の対数に比例して増加した。素子の光電流スペクトルはMPcもしくはPorの吸収スペクトルに似ており,MPcまたはPor層での光吸収が光電流生成に大きく寄与していることを示した。素子の光電変換特性には積層する色素の種類によって明確な差が現れた.積層型太陽電池の性能は色素の電子構造そのものより,薄膜中の分子の凝集状態により大きく影響されることがわかった。ヘテロ接合型素子の空乏層の幅は約200Åであり,励起子の移動距離を考えると光電流発生に寄与している膜厚は約400Åであると推算した。
  • 東 久洋, 細川 地潮, 東海林 弘, 楠本 正
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1162-1167
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機エレクトロルミネセンス(EL)素子の青色系統の発光材料としてジスチリルベソゼン誘導体を合成し,その置換基をアルキル基,電子求引基,電子供与基と系統的に変化させることにより検討を行った。ELの発光効率を向上させる条件として薄膜性が良好であることと発光材料は正孔輸送層とのエキサイプレヅクス(exciplex)形成,電荷移動状態などを避けることが重要であることが明らかとなった。検討した一連の置換基の中では電子供与性のカルパゾール系が良好であった。具体的には1.51m/W以上の青緑色発光を得ることができた。また化合物の共役状態を糊御することにより青色発光も得ることが可能であった。これらのジスチリルベンゼン誘導体系は青色系発光材料として有望であることを見いだした。
  • 桑原 克之, 宮脇 賢司, 那和 一成, 野間 直樹, 城田 靖彦
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1168-1173
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オリゴチオフェンのひとつである2,2':5',2":5",2'":5'",2""-キンクチオフェン(5T)とペリレン系顔料であるN,N'ビス(3,5-ジメチルフェニル)-3 ,4:9,10-ペリレンビス(ジカルボキシミド)(XPCI)を組み合わせて,積層順序の異なる2種類の光電変換素子ITo/XPcl15TIAuおよびAu/XPCI/5TIITOを作製した。これらの素子は,暗所で整流特性を示し,光照射によって5Tに接触している電極からXPCIに接触している電極に外部回路を通して光電流が流れた。短絡光電流の作用スベクトルの結果か, キャリヤーの光生成は5TとXPCIの界面で起こっていることが示された。ITOIXPCI/5T/Au素子は,Au/XPCI/5T/ITO素子よりも優れた特性を示すことがわかり,その原因00を考察した。ITO/XPCl(700Å)15T(650Å)/Au素子にITO電極側から白色光(62mW・cm-2)を照射した場合の照射光に対する変換効率は,0.02%であった。
  • 田中 豊英, 田村 知久, 廣橋 亮
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1174-1179
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガンフタロシアニン(MnPc)とモノアゾ色素(MnPc)およびピスアゾ色素(bisazo)を用い,有機ヘテロ接合の薄膜素子を作製してその光電特性を調べた。実験に用いたmonoazoは1-(2,5-dichlorophenylazo)-3-phenylcarbamoyl-2-naphthol,bisazoは2,7-bis[2-hydroxy-3-(2-chloro.phenylcarbamoyl)-1-naphthylazo]-9-fluorenoneである。MnPc層は真空蒸着,アゾ色素は真空蒸着またはキャスト法で成膜した。
    monoazoは単体では光電流変換効率は非常に低いがMnPcと積層したヘテロ接合構造とすることによって有効に作用することがわかった。また,monoazo層を薄くし,ヘテロ接合面の入射光量を増加させたり,電極の仕事関数を考慮することは非常に有効であることがわかった。monoazoの代わりにさらに光電流変換効率の高いbisazoを用いることにより,光電流変換効率は飛躍的に増加した。
  • 平本 昌宏, 坂上 嘉孝, 横山 正明
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1180-1185
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フタロシアニンとペリレン顔料の共蒸着中間層をそれぞれの顔料層でサンドイッチした構造の三層型有機太陽電池は, 共蒸着層を持たない二層型電池に比べて約2倍の光電流量を示す。この現象を,自由キャリヤーによるマイクロ波の吸収からその光生成量を直接観測できるマイクロ波光電導測定法を用いて検討した。両顔料の共蒸着薄膜はそれぞれの単一顔料薄膜に比べて大きなマイクロ波光電奪シグナルを示した。マイクロ波シグナルは,原理的にキャリヤ-輸送過程の影響を受けないため,顔料混合による光電流増大は光キャリヤー生成の増感によると結論した。
  • 白井 靖男, 鈴木 美帆
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1186-1188
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The behavior of electrification induced by light at the contact interface between a photopolymerizable layer and metal films was studied with the aim of developing a novel photofunctional material. Surface potentials from 10 V to 500 V were induced on the photopolymerized layer by peeling off the contact metal film after imagewise exposure, depending on the work function (3.63-5.1 eV) of the metals. The behavior of this photoinduced electrification, however, can not be accounted for by the contact charging model unlike the case that insulator films are used as contact materials.
    Some experimental results suggest that this photoinduced electrification is attributed to the charge transfer involving the reaction of a metal and the radicals produced photochemically in the photosensitive layer.
  • 楠本 哲生, 佐藤 健一, 黒星 学, 檜山 爲次郎, 竹原 貞夫, 大澤 政志, 中村 佳代子
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1189-1196
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光学活性シアノシクロプロパソ骨格を有するキラルドーパントは大きな自発分極を有する。この極性シアノ基をフッ素やトリフルオ羅メチル基に置換したときの効果を調べるため,対応する光学活性フルオロシクロプロパンおよびトリフルオロメチルシクロプロパン骨格を有する液晶性化合物を合成した。フルオロシクロプロパンのシスおよびトランス両異性体の自発分極はシアノシクロプロパンより小さく,特にトランス体のものはゼロであった。トリフルオロメチルシクロプロパンのシス体はシアノシクロプロパンと同程度の大きな自発分極を示したが,トランス体はやはり小さい自発分極しか示さないことがわかった。
  • 田部勢 津久, 二木 弘之, 花田 禎一, 曽我 直弘
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1197-1202
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マグネトロンスパッタリング装置により,Er3+イオンをドープしたAl2O8非晶質薄膜を作製し,密度,屈折率,反射および吸収スペクトル3蛍光スペクトルの測定を行った。密度,屈折率などの物性は,Er3+ 濃度とともに漸増する傾向を示した。ErB+イオンの4f電子遷移に基づく6本の吸奴帯から,Judd-Ofelt理論により求めた0配位子場を規定する三つのΩxパラメーターは,通常の酸化物ガラスに比べて大きな値を示し,特に,Ω6の値は通常の酸化物ガラスより大きな値を示した。この結果,三つの還元行列要素の内,〈U(6)〉2のみがゼロでない,4S3/2→4I15/2遷移にi基づく,550nm蛍光について高い輻射遷移確i率が得られた。実際にシングルモードのAr+レーザーの488nm光により,厚さ約20μmの薄膜の励起を行ったところ,4S3/24I15/2遷移に基づく発光が観測された。
  • 松本 勝, 佐野 洋一, 永石 俊幸, 吉永 俊一, 磯村 計明, 谷口 宏
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1203-1212
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アリールピラジンおよび非対称置換2,5-ジアリールピラジン系強誘電性液晶を得るために,キラル置換基を有するアリールピラジンおよびジアリールピラジン系液晶を合成した。
    シアノ基,メトキシル基およびクロロ基を有する非対称置換アリールピラジンを出発原料とし,長鎖アルキル基または長鎖アルコキシル基とキラルエーテル基およびキラルエステル基を有する7種のタイプのアリールピラジンを合成した。
    さらにキラルエーテル基またはキラルエステル基への一連の置換基変換により3種のタイプの非対称置換2,5-ジアリールピラジンを合成した。数種のアリールピラジンは温度範囲が狭く,低い温度で液晶性を示し,ジアリールピラジンは広い温度範囲で液晶性を示した。
  • 松本 勝, 佐野 洋一, 永石 俊幸, 吉永 俊一, 磯村 計明, 谷口 宏
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1213-1219
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェニルピラジン骨格を有する非射称置換ピラジンの置換基変換により得られたキラル置換基を有するジアリールピラジンおよびアリールピラジンの強誘電性液晶について検討した。
    フェニルピラジンを骨格とする化合物では,エーテル結合を有し,不斉炭素原子がトリメチレン基を介して骨格と結合した化合物が低い温度で強誘電性を示した。ジフェニルピラジンを骨格とする化合物は広い温度範囲で熱的に安定なキラルスメクチックC相を形成する強誘電性液晶を示した。特に長鎖アルコキシル基と(5)-2-メチルブトキシカルボニル基を有する場合,広い温度範囲で強誘電性が認められた。その傾き角は22.5° に近く,自発分極もアルコキシル基の炭素数12で最も大きな値を示し,応答速度も他の化合物より速いことが明らかとなった。このような結果は電子供与性置換基と電子求引性置換基をコアの両端に持つため極性が大きく,三環の平面性がよくなり,キラルな置換基により分子の回転が制御されるため,カルボニル基による短軸方向への永久双極子モーメントが同一方向へ揃うような配列を取るためと考察した。
  • 高原 浩滋, 菅野 了次, 河本 洋二, 田部勢 津久, 平尾 一之
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1220-1222
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An effect of the kind of glass-former on the Er3+ upconversion fluorescence in fluoride glasses was examined in the MFfl-BaF2-YFa-ErFa system where MFis ZrF4, HfF4, AIF3, GaF8, InFs, ScF3 or ZnF2. The emission intensities of Er3+ upconversion fluorescence ex cited by 800 nm radiation from an A1GaAs laser diode varied remarkably with the kind of glassformer. The multiphonon relaxation rates of glasses, which were evaluated from the phonon sidebands of Eu3+, also changed with the kind of glass-former. Contrary to expectation, there was no correlation between the emission intensity and the multiphonon relaxation rate. It was suggested that, in fluoride glasses, a multiphonon relaxation rate is not a main factor determining the emission efficiency of Er"- upconversion fluorescence.
  • 中澄 博行, 前田 勝美, 八木 繁幸, 北尾 悌次郎, 小川 格
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1223-1230
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-プロモ-4H4-ベソゾチオピラン-4-オンや3-プロモチオクロマン-4オン=1,1-ジオキシド誘導体とエタノール中,アミン類との反応からチオピラン環収縮反応をともなって,2-(アミノメチレン)-ベンゾ[6]チオフェン-3(2H)一オン[2]または環収縮脱水反応をともなって,そのスルホキシド[5]が得られた。これら誘導体は,分子内にアミノ基部分をドナー,カルボニル基をアクセプターとする発色団を有していることから,その第二高調波発生(SHG)と構造についての相関を検討した。X線構造解析の結果から,化合物[2]におけるSHG発現には,カルボニル基に対してアミノ基部分はトランス体となり,しかも分子間水素結合可能なNHプロトンが不可欠であることがわかった。また,化合物[5]およびその酸化生成物のスルホン[6]は,ニトロ置換体[69]の構造解析の結果から,アミノ基部分はカルボニル基に対してシス体となり,NHプロトンは分子内水素結合しており,そのSHGは2に比べて弱くなるが,λmaxが400nm以下にブルーシフトすることを見いだした。
  • 野上 正行, 遠山 佳秀, 長坂 克巳
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1231-1236
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属アルコキシドとCuClからゾルーゲル法によって,3~8nmの大きさのCuC1微結晶をドープしたガラスを作製した。マトリックス組成がSiO2のみの場合にはCu+イオンが,また,ZrO2やA1O3を含有したSiO2系ガラスではCu2+イオンが残留したが,パッチ量の20~50%のCuCl微結晶を析出させることができた。CuC1微結晶は加熱時間の1/3乗に比例して大きくなったが,その速度定数はホウケイ酸ガラス中でのCuCI結晶成長のそれに比べてかなり小さかった。CuCl微結晶のZ1.2やZ3励起子ピークがみられ,それらのエネルギー値は結晶径の二乗の逆数に比例して大きくなり,量子サイズ効果が確認された。
  • 岡崎 正樹, 石原 信, 小川 恵三, 原田 明憲, 岡暗 洋二, 加藤 隆之, 神山 宏二
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1237-1241
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    青色光透過性に優れ,青色第二高調波発生素子に適した有機非線形光学材料としての有用性が既に劉らかになっている,3,5-ジメチル-1-(4-ニトロフェニル)ピラゾール[DMNP]に類似の5種の化合物について結晶構造を明らかにし,配向ガスモデルにより非線形光学定数(4)を算出した.その結果,アルキル置換アゾール誘導体3種はすべて,斜方晶系でPca2まあるいはそれと同等の空間群に属し,またハロゲン置換体である,3,5-ジクロロー1(4-ニトロフェニル)-1,2,4-トリアゾールは,単斜晶系で空間群P21に属し,46ないし71pm/V程度のいずれも位相整合性の期待できる非対角項の非線形光学定数を有することがわかった。さらに,1-(4-ニトロフェニル)ピロールは,斜方晶系で空間群Fdd2に属し,250pm/V程度の大きな非線形光学定数を有すると予想できるものの,対角項であるため位相整合性が期待できないことがわかった。これらの結果は,本報告の化合物のうちピロール誘導体を除く4種の化合物はDMNPと同様,青色SHG素子用の非線形光学材料として有用であることを示している。
  • 松下 泰久, 杉原 興浩, 岡本 尚道, 松島 良華
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1242-1246
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    単独では巨視的にこ二次の非線形性を示さない2種の有機材料7p-ニトロアニリン(p-NA)とかジシァノベンゼン(p-DCB)を混合すると,異種分子間相互作用の効果により,特定の重量混合比で粉末混晶でのSHG活性が極大になる。これはp-NAとp-CBが再結晶する過程において,非中心対称p-NA結晶が生じるためと考えられる。そこで,この混合材料の光デバイス化を目的として,混合材料を無水マレィン酸とスチレンを共重合したSMA(分子量:1600)に添加し,導波形光変調器を作製した。SMAに対する混合低分子材料の添加濃度15wt%において,p-DCB:p-NA=0.4:1の混合比で,電気光学定数r33が極大を示し,p-NAのみを添加した場合の23倍に増加した。高分子中での混合材料の非線形性は,p-DCBとp一NA分子がある程度凝集したときに,異種分子間の相互作用による非線形性の増大効果が現れ,単分子分散のときには,非線形性の増大効果はなく,p-NA分子のみが非線形性に寄与していることが明らかになった。
  • 管野 善則, Cecile PAGNOUX, Alain VERBAERE, Yves PIFFARD, Michel TOURNOUX
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1247-1256
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゾルーゲル法(SG)およびメカノケミカルミキシソグ法(MM)により,KTP誘導体であるNaSbOSiO4(NSS),KSbOGeO4(KSG),RbSbOGeO4(RSG)斜方晶を合成した。
    固個反応により析出する結晶相は,MM法とSG法のトポケミカル的な反応性の差異のため大きく異なり,SG法で得られた粉末の方が高い焼結性を有していた。アルカリ金属イオンの中では,K系が高い重合度を示した。
    焼結体の微構造は化合物の種類により大きく異なり,KSG,RSGの粒成長は比較的小さく,高密度ペレットが作製できる。一方,NSS焼結体の高密度化は困難をともなった。
  • 掛川 進秀, 小林 芳男, 武藤 真三, 黒川 洋一
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1257-1260
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Laser dye doped alumina film was prepared by sol-gel process starting with AlCl36 H2O. Dyes used were Sulforhodamine 101(SR 101), Coumarin 1(C 1), 2-(1-Naphthyl)-5-phenyloxazole (a-NPO) and 2, 5-Diphenyloxazole (PPO). When the films doped with SR 101, C 1or α-NPO were irradiated wifh a N2laser, lasers were acted. The film doped with both PPO and α-NPO exhibited energy-transfer-type laser emission. These results indicated that these doped alumina films have ability to operate as a compact dye laser.
  • 香川 博之, 佐川 雅一, 川端 幸雄, 浜田 智之, 角田 敦
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1261-1263
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    To develop high SHG active materials with short cut-off wavelengths, “umbrella-shaped”tribenzamide derivatives were investigated. Crystals of these umbrella type materials are expected to show molecular columns due to van der Waals interactions. Tribenzamide ( 1)gave a powder SHG efficiency 1.5 times that of urea, and itsλis 330 nm in methanol. In the β calculation of 1 by the ab initio STO-3 G CPHF method, the β component of the direction along umbrella shaft was the largest. However in the crystal state, the component disappeared due to antiparallel alignment of packing columns. In other para-substituted tribenzamide derivatives with methyl and methoxy substituents, only two compounds showed SHG efficiency.
  • 管野 善剤, Cecile PAGNOUX, Alain VERBAERE, Yves PIFFARD, Michel TOURNOUX
    1992 年 1992 巻 10 号 p. 1264-1267
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A KTP family compound, CsSbO(SiO3)2, have been prepared by mechanochemical mixing (MM) route or via a sol-gel route. They crystallize in the orthorhombic system, space group Pna21, Z=8 at 1100 °C. For both routes, preparation conditions have been optimized by s tudying the influence of various parameters such as calcination temperature, sintering temperature. The grain growth of sintered bodies is small with subsequent production of high dence pellets.
feedback
Top