日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1992 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 岡本 一郎, 市田 昭人, 柴田 徹, 森 恭三, 岡本 佳男
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはfポリメタクリル酸エステルおよび多糖誘導体が,液体クロマトグラフィー用固定相として・光学異性体を分離する能力を持つことを見いだした。さらにこれらをシリカゲルにコーティングすることにより,高効率液体クロマトグラフィーカラムを開発,現在までに12品種が上市された。また多糖誘導体を用いた大型カラムを含む分取システムを確立し,液体クロマトグラフィーによる光学異性体分離が世界で初めて事業化された。
    本論文では,一連の研究明発における技術上の要点,開発されたカラムの特性分離機構について述べる。
  • 佐々木 幸夫, 小柴 智則, 谷口 博史, 竹矢 泰之
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-ブチルシドノンの物理的性質を各温度における誘電率,屈折率,密度および粘性率の測定から検討した。誘電率(ε)の測定は1MHzと300kHzの2種類の周波数で行ったが,いずれの温度においても1MHZで測定したεの方が300kHzの場合のε よりわずかに大きい。たとえば25℃ における1MHzおよび300kHzでのεはそれぞれ77.9,75.1であり,水と非常によく似た値となった。また誘電率はいずれの周波数においても温度の増加とともに減少する曲線となり7ε の変化は3一プロピルシドノンと同様に温度(t℃)の3次式で表すことができた。一方,屈折率(nD)は温度増加につれて直線的に減少するが,ε とπD2の間には比例関例が成立した。各温度におけるε と密度(ρ)の値を用いたM(ε-11)(2ε+1)(9ρε)-1と1/Tのプロヅト(ここでMは分子量を表す)が直線となることから,3-ブチルシドノソはKirkwoodの式を満足するといえる。3一ブチルシドノンの粘性率(η)は温度増加とともに曲線を描きながら最初は急激に減少するが,高温になるにつれてηの変化は小さくなる。そして,高温における3-ブチルシドノソのηは他の3-アルキルシドノンのη と比較してあまり大きな差は見られない。3-ブチルシドノンの粘性の活性化エネルギー(Eη)は29.3kJmo1-1となり,η の大きいものほどEη は大きくなった。
  • 中林 浩俊
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2種の金属アルコキシドを共沈殿することによりTiO2-SiO2系とTiO2-A12O3の複合酸化物を調製し,その構造と表面酸性質および触媒作用を調べた。X線回折とEXAFSにより500℃ で焼成した複合酸化物中にはアナタース構造を持つ超微粒子のTiO3が存在することがわかった。また,この粒子は焼成温度の上昇とともに成長し,それにともない最高酸強度は低下した。さらに複合酸化物中に含まれるTio2微粒子は,周囲のAl2O3には余り影響を受けないが,SiO2は強く影響を受けTiO2とSiO2の粒子間に相互作用が存在することが示唆された。両複合酸化物の表面に存在する酸点の種類を調べたところ,TiO2-Al2O3系は各粒子が独自に持つLewis酸点のみが存在した。一方,TiO2-SiO2系ではLewis酸点のほかにBrφnsted酸点が存在することがわかった。このBrФnsted酸点の発現は微粒子問の相互作用に起因するものと考えた。また,1-ブテン異性化反応はTiO2-SiO2系でかなり高い活性を示し,Brφnsted酸点の存在で反応が非常に促進することが判明した。
  • 美谷 芳雄, 牛尾 誠夫
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    H2-02-Sicl4燃焼火炎の断熱温度とその火炎に存在する物質の分圧を求めるため,その計算方法を提案した。通常,火炎に多種多様の物質が存在すると,これらを求めることは難しくなる。この研究ではy計算の初期値をH2O2-SiCl燃焼火炎の主反応に基づき与えた。引き続き,解くべき多元連立方程式群を線形式と非線形式の二つの集団に分け,その間で繰り返し計算を行うことにより解くことを試みた。さらに,断熱温度の計算結果を煙霧シリカが生成する現実のH2-02-SiCl4燃焼火炎の解析に利用した。ここで,CARS法による火炎温度の幾つかの測定の結果により,本研究で形成した火炎では真の火炎温度が断熱温度近傍の温度に達すると推察することができた。検討の結果,煙霧シリカの物性を特徴づける,比表面積,見掛けの屈折率,表面OH数はSiO黛融点(1873-1986K)に相当する断熱温度を境としいちじるしく変化をするとわかった。これはa煙霧シリカの一次粒子生成過程において融点以下の温度では,一次粒子が形成される際に,=溶融が進まず一次粒子に細孔が残存し,融点以上の温度では,溶融が進むため細孔が消失することに基づき起こる物性の変化だと結論することができた。
  • 山口 一裕, 草野 圭弘, 福原 実, 土井 章
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロィサイト(2SiO2・A1203・2H2O)にヨウ化カリウムを添加した混合物の加熱過程における反応事について考察した。
    ハロイサイトの構造水の脱水過程においてハロイサイトとヨウ化カリウムとが反応し,中間生成物(2SiO2・Al2O3・nK2O)とともにH2O(分子量18),HI(分子量128)およびH2I2(分子量256)が発生する。また,ハロィサイトに対するハロゲン化カリウムの反応量はハロゲン化カリウムの中で最も融点の低いヨウ化カリウムが最も多い。過剰に加えたヨウ化カリウムは未反応のまま融解後蒸発する。
    ハロィサイトにヨウ化カリウムを添加した混合物をさらに高温で加熱すると,新たにリューサイト(KAISi2O6)とコランダム(Al2O3)の生成による発熱ピークがDTA曲線1200℃ に現れる。ヨウ化カリウムの添加量が増加するとカリオフィライトのみ(KAISiCJ4)が生成する。しかし,1300℃ で長時間焼成すると,カリオフィライトはリューサイトとコランダムに変化し,このコランダムの一部はカリウムと反応してK2A12慧034が生成する。また,石英が存在すると,カリオフィライトと反応してリューサイトのみ生成し,コランダムは形成されない。
  • 佐藤 和也, 金 仁華, 西久保 忠臣
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の第四級アンモニウム塩を触媒とし,エポキシ化合物とベンズァルデヒド類の付加環化反応による2,4一置換一1,3一ジオキソランの合成とその立体選択性を検討した。この結果,エポキシ化合物と電子求引基を有する芳香族アルデヒドとの付加環化反応は良好に進行して,トランス体の2,4橿換一1,3-ジオキソランが優先的に生成することが明らかとなった。またこの反応はトルエン,キシレンなどの極性の低い溶媒中で,より速やかに進行した。アルキル基の炭素数が3以上の第四級アンモニウム塊が高い触媒活性を示した。さらに,この反応における第四級アンモニウム塩の触媒活性は対アニオンの求核性に大きく影響を受けることも判明した。
  • 村本 慶博, 朝倉 英行, 鈴木 仁美
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2一ヨードトルエン[1],3-ヨードトルエン[2]および4-ヨードトルエン[3]を,85-98%硫酸を用いて20-120℃ の温度領域でスルホン化し,生成物の分布をHPLCで詳細に検討した。[1]と[3]の室温におけるスルポソ化ではそれぞれ[8]と[12]が主生成物として得られるが,反応温度の上昇とともに,脱ヨウ素化,再ヨウ素化,不均化および異性化などが顕i著となって複雑なスルホン酸混合物が生じた。一方,[2]と硫酸の反応では,80℃ 以下の場合は通常のスルホン化生成物[10]が得られたが,120℃ では[10]が減少し。複雑なスルホン酸混合物を与えた。HPLC定量分析の標準試料として,2一ヨードトルエンー5[8]および4-スルホン酸[9],3-ヨードトルエン--[10]および4-スルホン酸[11],4-ヨードトルエソー2-[12]および3-スルホン酸[13]の6種のヨードトルエソスルホン酸異性体を別途に合成し,それらの物理的性質を示した。
  • 福西 興至, 見尾 渡, 桑原 正樹, 山中 寛城, 野村 元昭
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5,5'-ジアルキルチオインジゴ染料[1],7,7'-_ビス(アルコキシカルボニル)チオインジゴ染料[2],およびカルボニル基とアルコキシル基の間にポリオキシエチレン鎖を導入したチオインジゴ誘導体を合成し, これらのチオインジゴ誘導体のシス体からトランス体への熱異性化反応をスメクチック液晶であるステアリン酸ブチル(BS)中で行った。アルキル鎖の長い[1]と[2]のチオインジゴ誘導体はBSの相転移温度丁,を境にして熱異性化速度が大きく変化した。一方,[3]の熱異性化に及ぼす相転移温度Tcの影響はアルキル基の長さにかかわらず認められなかった。これらのチオインジゴ誘導体の熱異性化の挙動を色素分子の構造の変化と液晶分子の配向の観点から論じた。
  • 山口 茂彦, 福井 洋樹, 秋吉 一成, 佐藤 智典, 砂本 順三
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分子量30000,50000,および137000のプルランに100単糖あたり2~6個のコレステロール残基を置換したコレステロール-プルラン誘導体(CHP)とトリオクタノイルグリセリド(Tric8)から形成されるO/W一エマルションのコロイド安定性について検討した。CHP存在下,Tric8は超音波処理することにより容易にエマルション化され,粒径100~200nmのO/W一エマルションが得られた。CHP中のコレステロール置換度と得られるエマルションの粒径との関係を調べたところ,コレステロール残基の置換度にかかわらず,形成されるエマルショソの粒径は,ほぼ一定となることがわかった。しかし,コレステロール残基の置換度の高いCHPほど,より少量のCHP添加量で安定なエマルションを得ることができた。また,コレステロールの置換度が同程度のCHPの場合,分子量が大きいほど,より微細なエマルションが得られた。CHP安定化エマルションは,生理条件下濃度のCa2+イオンの存在下でも非常に安定であった。さらにCHPは1抗腫瘍効果を示すα-リノレン酸をエマルシ灘ン化し得ることも明らかとなり脂溶性薬物の新しい運搬体としての利用が期待された。
  • 柴田 進
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 191-197
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Lathyriticラット皮膚から中性塩抽出で得た1型コラーゲソを,CM-セルロースヵラムにかけα1を得た。このα1鎖に対して臭化シアン分解を行い,N末端テロペプチドにほぼ等しい,α1-CB1'ペプチドを得た。アミノ酸分析の結果から,このペプチドは完全ではないものの,N末端テロペプチドの大部分が残った状態で得られたと考えられた。紫外部のCDスペクトルからtこのペプチドは,約30%がひシート構造をとっており,残りはランダムコイル状態であることがわかった。また5~50℃ の温度範囲で重水中の1H-NMRスペクトルを測定した結果,Tyr-αCHの化学シフトに0.034PPmの相違,そしてAla-αCHの化学シフトに0.022PPmの相違が5℃ と50℃ の間で見いだされた。励起275nm,蛍光305nmで測定した蛍光強度に関しては,このペプチドをCB7と混合したときには変化がなかったが,CB6と混合したときには34%減少していることが見いだされた。この事実は,このペプチドがCB6と,なんらかの相互作用をしている可能性を示している。
  • 米勢 政勝, 馬場 一彦, 岸本 博
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルギン酸ナトリウムNaAlg溶液を,CaCl2,SrCl2およびBaCl2溶液中に滴下して形成されるアルギン酸ゲル(Ca-,Sr-,BaAlg)球の形成過程を重量gの経時変化および体積測定により研究した。特に,電解質溶液濃度CMの影響に注目し,CM=0.008-1.0mol/dm3の範囲で実験を行った。ゲル球の形成過程は初期(1~2時間)の急速な脱水過程とそれに続く緩慢な(3~4日)脱水過程からなることがわかった。平衡に達したゲル球の重量wg.eとNa-Alg液滴の重量比g.e/は0.4程度になり,その値は電解質の種類および濃度に依存し,CM=0.05mol/dm3近辺で極小値を示した。この極小はNaAlg液滴表面のゲル層の収縮による内部のNaAlg溶液の脱水によることがわかった。また,ゲルのwg/weはCa->Sr-≒BaAlgの順であり,Algと対イオンの選択結合性およびゲルの弾性率の順の逆であった。Floryの膨潤網目の理論によりCaAlgゲルの平衡膨潤を検討した結果,相互作用パラメー・ターxはCaCl2濃度増加とともに減少することがわかった。
  • 猪熊 精一, 中村 悦子, 山本 隆斉, 西村 淳
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    p-t-ブチルカリックス[n]アレーン誘導体(n=4,6,および8)脂肪酸をク口ロホルム液膜担体として用い,アルカリ金属イオンの競争的受動輸送を検討した。プロトン解離性のカリックス[n]アレーン([n]OH)以外の中性カリックスアレーン単独では,いずれの陽イオンも輸送されなかったが,カルボン酸とともに用いると,効果的な輸送が生起することから,本輸送系においては,これらが協同的に働いているものと結論した。ドデカン酸の存在下で,ほとんどの中性カリックスアレーン類は効率的かつ選択的にLi+を輸送した。本協同担体系で,2-プロモドデカン酸は,ドデカン酸より陽イオンの輸送速度を促進した.以上の結果を,担体の構造との関連を中心に議論した。
  • 江川 博明, 野中 敬正, 山口 竜生, 東 広巳
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,3一エピチォプロピルメタクリラート(ETMA)とスチレン誘導体との共重合体を合成し,それらの共重合体の電子線レジスト特性を検討した。スチレン誘導体としては,p-クロロスチレン(pCS),m-クロロスチレン(mCS)および(クロロメチル)スチレン(CMS)を使用した。ETMAとこれらのモノマーからの共重合体はベンゼン中での溶液重合により製造した。これらの共重合体を溶解-沈殿法により分別し,分子量の異なるものを得た。電子線レジスト特性として次のことが見いだされた。共重合体の感度は,分子量および共重合体中のETMAの増加とともに向上した。コソトラストは0分子量および分散度の小さいものほど高い値を示した。ETMA-pCS共重合体は,ETMA-mCS共重合体にくらべ感度はやや低いが,コントラストはわずかに高い値を示した。ETMA-CMS共重合体は,上の二つの共重合体にくらべ,感度は高いものの,不安定なポリマーであった。ETMA-pCS共重合体は,PETMAより耐ドライエッチング性が向上した。解像度はETMA-pCSおよびETMA-mCS共重合体で,それぞれ0.6μmおよび0.45μmであった。
  • 白井 靖男, 鈴木 美帆, 松尾 茂治, 宮川 俊夫
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光重合性のモノマーと光重合開始剤,連鎖移動剤を含む感光層と,接触物質である絶縁性カパーフィルムからなる系の光照射による静電帯電について検討した。光による帯電は,感光層に光照射した後,カバーフィルムをはく離すると,光重合部分とそれに接触するカバーフィルムの表面に発生した。この光重合にともない発生する重合層表面の表面電位は,同じ種類の接触物質を用いた場合,感光層の組成や膜厚に依存した。 接触物質として三酢酸セルmスを用い,感光層の組成を変化させ,一定量の紫外線を露光した場合,重合層表面に誘起される電位は,重合層の収縮率が大きくなるほど高くなる傾向を示した。 また,高分子フィルムを接触物質として用いた場合,重合層上に誘起される表面電位は,高分子の摩擦帯電列にほぼ依存した。例えば,接触または摩擦で正に帯電しやすい66ナイロンやポリビニルアルコールフィルムを接触物質として用いると,重合層の表面はマイナスに帯電し,その逆のポリエチレソや三酢酸セルロースを用いた場合にはプラスに帯電した。光重合による重合層表面の帯電電位が,接触物質の摩擦帯電列と感光層の収縮率に依存するなどの実験結果から,光重合にともなう帯電機構として,接触帯電をモデルとした機構について検討した。
  • 菊地 幹夫, 東海 明宏
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)の環境動態を明らかにすることを目的にして,秋季に,東京湾海水,東京湾に流入する河珊の水と底泥,下水処理場への流入水と二次処理水および家庭用合成洗剤について,LASの同族体・異性体別の濃度を調査した。これらの試料で見いだされたLASの組成はそれぞれ異なり,LASが受けた生物学的,物理的化学的過程を反映した。
    (1)LASは下水処理によって9割除去されたが,その際,処理水では直鎖アルカンの炭素数が多い同族体(長鎖長同族体)および直鎖アルカンの2の位置にスルホフェニル基をもつ異性体(2ph異性体)がほかとくらべてより減少した。
    (2)LASが河川に流入すると,長鎖長同族体と2ph異性体は容易に底泥へ吸着しまた生分解を受けるため,河規水ではこれらの成分が減少し,底泥では増加した。
    (3) しかし東京湾海水では,長鎖長同族体と2ph異性体の割合が流入する河川水や下水処理水よりも増加しており,LASの組成は家庭用合成洗剤に近くなった。これは,河川底泥が間欠的な増水でまき上げられ,そしてその中に含まれていたLASが溶存態および懸濁態で海域に流入するためと考える。
    このように河川の底泥中の化学物質は,流入先の湾の水質汚染に寄与する可能性をもつ。
  • 佐藤 利夫, 小暮 誠, 田中 龍夫, 鈴木 喬, 大矢 晴彦
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩素殺菌に代る簡易で安全な水の殺菌法の一つとして開発したイオン交換膜電気透析系を応用した水の新殺菌法について実用化を目指し工学的な解析を行った。既報では膜面積,膜問距離流速などの条件が殺菌効果に与える影響を検討し装置の最適条件を明らかにした。本報では,まず電気透析の理論において単位セルを電気的等価回路と考える理論式およびプロセス設計における消費電力の計算式から,本法において殺菌に必要な電流密度条件および消費電力を求めるための計算式を作成した。次に河罵水にNaC1を添加し導電率を種々変えた試料水を作製して殺菌実験を行い,この実験値と計算式から算出した値を比較することにより計算式の検証を行った。その結果,本殺菌法における完全殺菌に必要な電流密度条件および消費電力は,計算式から概算できることが判明した。
  • 櫻井 良仁
    1992 年 1992 巻 2 号 p. 233-235
    発行日: 1992/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hydrous lithium metatitanate (Li2TiO2⋅nH2O) fine particles were formed from the alcoholic solution of lithium and titanium alkoxides. Titanium tetraisopropoxide was added to the butanol or ethanol solution of lithium tert-butoxide, and then the mixed solution was hydrolyzed with H20-i-C2H2OH solution. In the case of Ti/Li mole ratio=0.5, the sharp XRD profiles of Li2TiO3only were observed in the XRD pattern of the precipitate when heattreated at 800°Cfor 1 h. The weight loss of 15% of the precipitate was observed due to dehydration in the temperature range from 100°C to about 800°C, which corresponded to n=1.4 in the chemical formula described above. The remarkable grain growth of the precipita te by the heat-treatment at 800°C for 1 h was recognized in the SEM observation; the wellshaped Li2TiO3 particles of about 200 nm in length was obtained.
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