日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1992 巻, 3 号
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  • 平塚 尚三郎, 松井 亨景
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 237-245
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アラミド繊維は優れた耐熱性を有する。なかでも,パラ系アラミドは,高強力・高弾性となるが,剛薗性が高いために不溶,不融化して極めて繊維成形が難しい。著者らは,剛直な分子鎖をわずかに柔軟化して有機溶媒に可溶化させて直接紡糸し,延伸により高強力化する探索研究を重ねてきた。本来,溶解性と剛直性は原理的に背反するので実現困難な課題と考えられていたが,種々のポリマーについて検討した結果,テレフタロイルジクロリド50mol%とp-フェニレンジアミン25mol%および3,4-ジアミノジフェニルエーテル25mol%の3成分共重合を行ったところ,高温下で高倍率に延伸すると極めて強度の高い繊維が得られることを見いだした。このメタ位のエーテル結合の導入が重要で,可溶性と分子全体の剛直性を両立させている。この共重合の重合条件・製糸技術の確立に努め,従来考えられなかった約500℃ という厳しい高温下での延伸技術により,3.4GPaの高強度が達成された。また,この繊維は,耐薬品性,耐摩耗性および耐屈曲疲労性にも優れており,ゴム・セメント・プラスチック補強材,一般産業資材,防護衣などへの用途開発が進んでいる。
  • 祝迫 敏之, 正本 順三, 吉田 浩一, 香川 健二, 永原 肇
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 246-254
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセタール樹脂の新製造技術を開発した。第一は,メチラールを酸化することにより高濃度のホルマリンを得る新技術を開発した。メタノールの酸化では,ホルムアルデヒド1molに対して水が1mol生成するが,メチラールの酸化では3molのホルムアルヒドに対て,水は1molである。従って,工業的にはメタノール酸化法では55%のホルマリンが得られるのに対してメチラール酸化では70%以上の高濃度のホルマリンを得ることができる。
    第二は,この高濃度ホルマリンから高度に精製されたホルムアルデヒドを無水酢酸を分子量調節剤,もしくは末端封鎖剤としての作用の存在下で重合させると,重合時に末端が封鎖されたポリマーが得られる。
    第三に,高濃度ホルマリンはトリオキサンの生成を促進する。高度精製トリオキサンをエチレンオキシドとの共重合に際して末端封鎖剤の存在下で重合すると,末端が封鎖された安定なポリマーが得られる。共重合の開始反応において,二つの新規化合物である1,3,5,7-テトラオキサシクロノナン(TOCN)と1,3,5,7,10-ペンタオキサシクロドデカソ(POCD)が単離され,新しい開始反応機構が提案された。
    第四に,活性水素を有する潤滑性機能性ポリマーの存在下でホルムアルデヒドを重合させることにより,世界で最初のアセタールブロックコポリマーを工業化した。このアセタールブロヅクコポリマーは優れた潤滑性能を示した。
  • 上岡 龍一, 矢野 嘉宏, 内山 秀直, 小山 裕喜, 迫口 明浩, 加藤 康夫
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回,ラセミ体エステル基質の不斉加水分解を行い,L体とD体め加水分解速度定数をシンプレヅクス法によって解析した。その結果,活性トリペプチド触媒N-ベンジルオキシカルボニル-L-フェニルアラニル-L-ヒスチジル-L-ロイシン(Z-PheHisLeu)を用いたミセル系でのフェニルエステル基質の加水分解反応において,エナンチオマー基質を用いた場合と同程度の速度定数が得られ,ラセミ体を用いても高い不斉識励機能(LID)を発現できることが明確になった。しかし,長鎖ヒスチジン誘導体N-テトラデカノイル-L-ヒスチジン(Myr-His)触媒およびジペプチド触媒N-ベンジルオキシカルポニル+フェニルアラニル-L-ヒスチジン(Z-PheHis)を用いた場合ではエナソチオマー基質にくらべ,ラセミ体基質でLID選択性を低下させるケースが観測された。
  • 加藤 貞二, 秋山 秀行
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペルチエ素子を利用し,マイクロコンピューターで温度制御をするLangmuir水槽を開発し,ミリスチン酸からアラキジン酸までの一連の長鎖脂肪酸単分子膜のA-T等圧線を測定した。どの物質の単分子膜も液体凝縮状態から液体膨脹状態への一次の相転移を示した。転移温度はアルキル鎖の炭素数が1増すごとに約10℃ 上昇したが,炭素数が増すにしたがって小さくなる傾向があった。この転移温度上昇にはアルキル鎖の炭素数の偶奇による異常性,いわゆる偶奇性は現れずfなめらかな上昇であった。表面圧が10mN/m増すごとにも転移温度は約8℃ 上昇したが,これもアルキル鎖の炭素数増加とともに小さくなる傾向を示した。液体凝縮状態の単分子膜の表面膨張率は,転移温度の低いミリスチン酸がとびぬけて大きな値になったが,ペンタデカン酸以上では少しずつ小さくなり,10mN/mのアラキジン酸で8.2×10-4K-1という値であった。
  • 前田 啓, 国森 公夫, 内島 俊雄
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    RhならびにPd担持金属触媒を中心に,種々の触媒反応におけるSMSIの効果を定量的に比較検討した。
    構造敏感反応であるエタンおよびシクロヘキサンの水素化分解反芯の活性は,高温還元処理(HTR)後に約5~6桁の低下を示しx構造鈍感なシク導ヘキサン脱水素反応では,その低下は約1桁程度であった。この結果は,SMSI(Strongmetal-supPortinteraction:担体還元種の金属表面被覆)による幾何学的阻害効果が構造敏感反応で大きいとする一般的な解釈で理解できる。一方,アソモニア分解反応では,HTR後に0.6桁程度の低下を示しiまたCO水素化ならびにブチルァルデヒドおよびアセトンの水素化反応では,HTR後の活性の低下は1~2桁とあまり顕著ではない。ここではy幾何学的阻害効果のほかにリガンド効果による促進効果を考慮する必要があろう。
    Pd触媒によるエチレンのヒドロホルミル化反応は特異的で,HTR後に活性の明らかな上昇が観測された。活性増大の要因は,Pd上の担体還元種とそれに隣接するCO吸着種との相互作用によると考えられ,担体還元種による幾何学的な阻害効果を上回る電子的(リガンド)効果の結果,全体として活性の増大をもたらしたものと考えられる。
  • 持田 勲, 河野 静夫, 藤津 博, 前田 豊広
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,硫酸賦活活性炭素繊維(ACF)が室温で低濃度のアンモニアを吸着除去し,脱臭剤として働くことを先に報告した。また,ACFに吸着したアンモニアは室温でNOと反応して脱離し,ACFのアソモニア吸着能が再生されることも見いだしている。つまり,硫酸賦活ACFが室温でNO+NH3反応を促進できることを示している。しかし,ACFの種類あるいは賦活条件によって,湿度による阻害効果を強く受けることも認められた。
    本研究は,硫酸賦活したピッチ系,PAN系,フェノール樹脂系活性炭素繊維上の室温でのアンモニアによる還元脱硝反応を調べた。
    室温では空気中の湿分がNO-NH3反応を阻害することが予想されるので,ACFの前駆物質,再賦活条件などを変え,水蒸気のNO-NH3反応に対する阻害効果についても試験した。各ACFとも0硫酸賦活処理によって還元脱硝活性が顕i著に増大する。とくにピッチ系活性炭素繊維(OG-5A)は,処理温度/時間が400℃/4hの処理条件下で室温反応において一番高い活性を示し,しかも湿度100%の大気中でも活性を維持できることを見いだした。一方,他のACFは高湿分下ではほとんど脱硝活性を失った。つまり,ACFの種類あるいは賦活条件によって,水分による阻害効果を強く受けることが認められた。NOの室温吸着能を調べたところ,いずれのACFも数ml/g以下の小さい容量を示す。吸着容量は湿度の増加によっていちじるしく減少するが,ピッチ系ACFにおける減少は一番少なく,高湿度空気中での高活性と対応している。

    前駆物質の種類,硫酸再賦活処理法による脱硝能および水蒸気の阻害効果のいちじるしい変化はTPDによるCO,CO2の生成量から推定したACF表面の酸素官能基と対比して議論できる。400℃,4時間で再賦活したピッチ系ACFのもつ最も高い活性は定性的には高いアンモニア吸着能,NO吸着能および疎水性を発現できる表面の酸素官能基の種類および量によると理解できた。
  • 鈴木 幸彦, 鎌田 仁
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 282-290
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸鉛(皿)の緻密で堅ろうな結晶性のよい粗大な沈殿粒子の形成をスルファミン酸を用いる均質沈殿法の静置反応によって行った。この方法によると,生成する沈殿粒子は,低濃度,短時間の反応では10μm以下の薄層菱形板状結晶であるが,沈殿反応が進むと急速に成長し200から300μm以上の肉厚六角板状結晶となる。また,高濃度,長時間の反応で生成する直方八面体形結晶は,230~300μm以上に大きく成長する。これらの肉厚六角板状結晶や直方八面体形結晶は,振り混ぜ反塔で生成する沈殿粒子よりはるかに大きな長径と容積をもつ粗大な単一の結晶粒子である。また,これらの結晶粒子は,凝集体晶,貫入晶や骸晶などが認められない緻密で堅ろうかつ滑らかな結晶表面となっている。この結晶粒子の形態的安定性は,1か月間の室温熟成を行った後,顕微鏡による形態的観察とX線回折分析によった結果,反応直後の形態と回折図形が同様で安定していることがわかった。さらに,ここに生成した硫酸鉛(II)沈殿粒子は,X線回折分析およびエネルギー分散型X線回折分析による表面分析,熱重量分析で純粋な硫酸鉛(II)沈殿粒子であることを確認した。
  • 成田 榮一, 山岸 俊秀, 兎内 辰夫
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層状複水酸化物-クリストバライト複合体を化学処理によって合成し,その熱分解物によるイオン性染料の吸着特性を調べるとともに層状複水酸化物の熱分解物およびクリストバライトの単体の場合と比較検討した。その結果,粉砕したクリストバライトをMgCl,とAICl3の混合水溶液に分散させ,篭細孔内に金属イオンを含浸させたのち,この懸濁液をpH10,温度60℃ に保ちながらNa2CO3水溶液に滴下することにより均質な複合体を得ることができた。この複合体を500。Cで加熱処理した複合吸着剤は,酸性染料のオレンジIIと塩基性染料のメチレンブルーの両方に対して高い吸着能を示した。いずれの吸着等温線もFreundlich式によく適合した。吸着剤全体の単位重量あたりでは,複合吸着剤のオレンジII吸着能は層状複水酸化物の熱分解物よりやや低かったが,層状複水酸化物熱分解物の単位重量あたりで比較すると複合吸着剤の方が2~3倍大きくなった。また,クリストバライト表面の負帯電に基づく複合吸着剤のメチレンブルー吸着能は,層状複水酸化物の複合化によって低下するが,均質な複合体にすることにより低下の程度を小さく抑えることができた。
  • 浜野 有弘, 平本 裕治, 瀬戸崎 亨, 浜本 卓也, 村井 毅
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 297-300
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    次亜塩素酸リチウム結晶は有用な漂白剤であるという報告はあるが,その純度も悪く製法も明らかでない,本研究は次亜塩素酸t-ブチルエステルの加水分解による次亜塩素酸リチウムを合成した。示差熱分析,X線回折,ガスクロマトグラフィー,化学分析の結果,次亜塩素酸リチウムは次の二つの反応式にしたがって分解することが判明した。
  • 今井 弘, 中林 安雄
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-(p-置換フェニル)-1,3-ブタンジオン類を配位子としたクロム(III)錯体,CrL3(L=p-XC6H4CO・CHCOCH3,X=NO2[1],COOH[2],COOCH3[3],Br[4],Cl[5],H[6],NHCOCH3[7],C2H5[8]tCH3[9],OCH3[10],OH[11])を合成し,得られた錯体をアルミナによるカラムクロマトグラフィー法によってmer異性体とfac異性体に分離したのち,これらの錯体の立体配置,Cr(III)-O問の結合の強さや安定性を磁気的,スペクトル的データから検討した。これらの異性体の磁気モーメントは高スピン型のd3配置に相当する値を示し,また八面体型に相当するν1(4T2g(F)←4A29(F)遷移)とV2(4T1g(F)←4A2g(F)遷移)の配位子場吸収帯が約17.5×103cm-1と約23.5×103cm-1に確認された。vc=o+vc=o,Ring def.+vCr-o,vCr-C+vc-cH3,ならびにv1,の各吸収帯は,置換基が電子求引性から供与性になるほど,高波数側へ移動した。このことから,Cr(III)-O間の結合の強さは[1]<[2]<[3]<[4]<[5]<[6]=[7]<[8]<[9]<[10]<[11]の順に増加することがわかった。結晶場分裂エネルギー10Dqならびに電子間反発パラメーターBはそれぞれ17.4×103~18.0×103cm-1ならびに510~610cm-1であった。
  • 宮崎 章, 三瓶 貴弘, 田尾 博明, 長瀬 多加子
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水中の微量タリウムを定量するために,試料中のTlをammonium 1-pyrrolidinecarbodithioate(ammonium tetramethylenedithiocarbamate)(APDC)とhexahydro-1H-azepiniumhexahydro-1H-azepine-1-carbodithioate(hexameth yleneammoniumhexamethylenedithiocarbamate,HMAHMDC)を用い2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(DIBK)に抽出し,T1II190.86nmの波長を用い誘結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)で測定した。T1のスペクトルプロファイルは約190.855nm 導と約190・867nmにピークを示すが,これはT1の核スピンによる超微細構造であることがわかった。DIBKにT1を抽出してICPに導入した場合には,溶媒中の炭素の影響と思われるパックグラウンドの増大により妨害されるが,190・855nmの波長で測定すれば直線の検量線が得られた。63種類の共存元素のち,OsとWについてT1と重なる発光線が認められたが,溶媒抽出後にはOs(田)はT1と同等量,Wは少なくとも40倍量まで許容できた。濃縮倍率を20倍としたときの検出限界(3σ)は1.3ng/mlで,30ng/mlにおける溶媒抽出操作を含めた相対標準偏差(n=10)は5 .4%であった。本法によるNIST標準試料1643bの分析結果は保証値とよく一致した。また,国内のいくつかの河川水,鉱内水,温泉水から15ng/ml以上のT1が検出された。
  • 松本 和秋, 村上 良一, 本里 義明零
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジクロロメタンーエタノールを主としてこれとエステルと1-オクタノールの混合希釈剤からなる混合溶液に二酢酸セルロースを溶かした溶液をゼラチン水溶液に懸濁させて,加熱して溶媒を除去し混合希釈剤を含有するこ二酢酸セルロース球状粒子を得た。この球状粒子をメタノールで洗浄し混合希釈剤を除去し,引き続きけん化して多孔質セルロース球状粒子を得た。得られた球状粒子をおよそ74~297,297~500,500~1700μmの範囲に分けて,それらの浸透性をポリ(オキシエチレン)のような水溶性高分子を溶出させることによって測定したところ,排除限界分子量はそれぞれ最高2.8×106,1.0×106,1.5×105であった。混合希釈例の種類と組成比を変えるととによってゲルの多孔質の度合いを調節することができ,特に粒径の大きい多孔質セルロースゲルの調製に適している。
  • 片山 淳, 伊藤 一男, 古川 幹夫, 上舘 民夫, 渡辺 寛人
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 318-321
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅(II)の新規な接触分析法を開発するため,水とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルポキシドおよびアセトニトリルの各非水溶媒との混合溶液中で,銅(II)触媒によるシステアミン,レシステイン,2-メルカプトエタノールおよび2-メルカプトプロピオン酸の接触酸化反応を検討した。その結果,反応溶液として60%DMF水溶液,また,チオールにはL-システインを用いた場合,銅(II)を最も高感度に定量でき,また,検量線の直線範囲も広くなることが明らかになった。銅(III)の定量は,酸化されるシステイン量と銅(III)濃度が対応することから,反応開始20分後の未反応システィン濃度を吸光光度法で定量することにより行った。銅(III)の検量線は0から1.1×10-6Mの範囲で原点を通る直線となった。定量下限は3.9×10-8M(2.5ng・cm-3)であった。なお,相対標準偏差は1.8%(n=5,1.7×10-7M)であった。本法は銅(III)に対する選択性に優れ,本法を工場排水中の銅(III)の定量に応用した。
  • 川邊 浩, 鈴木 昌和, 久我 義和
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 322-328
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二成分系混合溶媒(エタノールーベンゼン,エタノールージオキサン,DMF-メタノール)中で塩化ベソジル(BC)またはクロロメチル化ポリスチレン(CMPS)と3-ブチルアミンの反応を行い0反応におよぼすアルコールの効果を検討した。ただし,CMPSはアルコールのモル分率の低い領域(0.3~0.5まで)でしか溶けなかったので,反応の全解析はBCについてKondo-Tokuraの二成分系混合溶媒中の反応理論を援用して行った。エタノールーベソゼン系とエタノールージオキサン系ではlogkM(kM:反応速度定数)とΔEM(活性化エネルギー)の溶媒組成依存性はエタノールが反応物と遷移状態の両者に特殊溶媒和すると仮定した計算曲線(I型)により精度よく再現出来た。これはエタノールが反応物アミンおよび遷移状態でいちじるしく極性を帯びたC1基の両方へ水素結合することと理解される。また,DMF-メタノール系では反応物にメタノールが,遷移状態にDMFが特殊溶媒和すると仮定した計算曲線(II型)に実測値が一致した。これはメタノールが反応物アミソに水素結合し,一方極性を帯びた遷移状態はDMFと双極子-双極子相互作用することと理解される。CMPSもBCと同様の挙動をする。
  • 森 紀夫, 伊藤 敏
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(L-グルタミン酸γ-ペンジルエステル)(PBLG)のN,N-ジメチルホルムアミド濃厚溶液が等方相(125℃)から急冷されたとき,どのような過程を経てコレステリックらせん構造が形成され,それが熱平衡状態に達するかをネマチック温度(90℃)から急冷された場合のそれと比較して検討した。PBLGは分子量15万のものを濃度0.191v/vに調製して使用した。系の時間経過とともに,偏光顕微鏡観察,He-Neガスレーザーを光源とした透過強度の測定,広角および小角光散乱像の写真撮影,落球法による粘度測定が行われた。得られた結果から系は次のような段階を経て,熱力学的に平衡で均一な高次構造を形成する事が見いだされた。(1)急冷後の短い時間(1分程度)内に等方相から複屈折相が急激に球晶として出現し,系全体が複屈折相でおおわれる。(2)その複屈折相から不規劉なコレステリックピヅチが出現するが,ネマチック状態からの構造形成と異なり,系全体が次第に規則性を増大するのではなく,系の一部が均一な規則構造を形成しその部分が成長核となって規則構造が拡大し,ついに系全体が高次のコレステリック構造を形成する。また,その構造はネマチック状態から急冷されたときに形成された構造と区別する事は出来なかった。
  • 岩月 章治, 久保 雅敬, 溝口 隆
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 335-340
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二つの新規な2,5-ビス(置換メチレン)-2,5-ジヒドロチオフェン,すなわち,2,5-ビス[ビス(エチルチオ)メチレン]-2,5-ジヒドロチオフェン[1]および2,5-ビス[ジアノ(エチルチオ)メチレン]-2,5-ジヒドロチオフェン[2]を合成した。[1],[2]および2,5-ビス(ジシアノメチレソ)-2,5-ジヒドロチオフェン[3]の電子求引性の順序は,[1]<[2]<[3]であり,シアノ基とエチルチオ基の電子的性質で説明することができる。[1],[2]および[3]はいずれもカチオンyアニオンおよびラジカル開始剤で単独重合しなかった。[1]および[2]は,ビニルモノマーとの共重合性も欠いていたが丁最も電子求引性の強い[3]のみが,電子供与性モノマーのスチレンと交互共重合した。[1],[2]および[3]と高共役キノジメタソモノマー,7,8-ビス(ブトキシカルボニル)-7,8-ジシアノキノジメタン[10]との共重合は,[10]の単独重合体のみを与えるにすぎなかった。このことは,[1],[2]および[3]の反応性が[10]のそれにくらべて非常に低いことを示している。
  • NGASIFUDIN, 安岡 高志, 光澤 舜明
    1992 年 1992 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 1992/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中の有機化合物の挙動を把握するためには有機化合物の反応性ばかりでなく,大気と接するものとの相互作用についても検討する必要がある。ここでは,大気中の有機化合物質として水に対する溶解度の大きなメタノール,エタノール,1-プロパノール,1-ブタノール,1-ヘキサノールの5種類を用いた。一方,大気と接する物質として土壌(関東ローム)を用いxその含水比を変えて,アルコール類の収着について検討を行った。アルコール類の土壌による等温収着において,その収着量は収着平衡濃度に比例し,すべてHenry則で取り扱えることが明らかとなった。土壌の含水比の変化に対し,Henry則定数は含水比20~30%の範囲においてすべてのアルコール類が最も小さいことが明らかとなった。したがってaいずれの含水比からも含水比が20~30%に近づくにつれてアルコールを収着した土壌からアルコールが発生する可能性があることがわかった。この現象が水溶性物質の一般的な性質であることを確認するために,カオリン系土壌,アセトン,アセトアルデヒドなどを用いて実験を行った結果,一般的な性質であることが明らかとなった
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