5種類の電解質(LiPF
6,LiCl0
4,LiBF
4,LiCF
3SO
8およびLiBPh
4(Ph:フェニル)をそれぞれ含む3-プロピルシドノン(3-PSD)とテトラヒドロフラン(THF)および1,2-ジメトキシエタン(DME)との混合溶液の特性を混合溶媒の組成やモル伝導率(λ)から検討し,かつリチウム電池に対するこれら電解液の評価を充放電効率(クーロン効率)およびLi/MnO
2試験電池の正極(Mn0
2)に対する理論エネルギー密度から行った。各電解質を含む混合溶液のλはTHF,DMEのモル分率(X
THF,X
DME)の増加ともに徐々に大きくなり,LiBPh
4以外の電解質ではあるX
THF,X
DMEで極大値を示し,その後減少する曲線となる。このλの増加は混合溶媒の粘性率(η)の減少によるものと考えられ,またあるX
THF,X
DMEからλが減少してゆくのは混合溶媒の誘電率の減少にともなうイオン対生成のためと推定される,一方,LiBPh
4ではλの変化に極大値は観測されなかったが,この原因はBPh
4-イオンが非常に大きいイオンであるため,イオン対を生成しにくいからだと考えられる。λの各電解質間での大きさの順序は,たとえばX
THF=X
DME=0.6においてLiPF
6>LiClO
4>LiBF
4>LiCF
8SO
3>LiBPh
4となった。充放電効率(クーロン効率)は0.5=moldm
-3のLiBPh
4含有のX
THF=X
DME=0.7混合溶液の場合に80%を越える高い効率を示し,LiBPh
4以外の4種類の電解質では最大モル伝導率を示すX
THFおよびX
DMEの混合溶液よりもX
THF=X
DME=0.5の混合溶液においてその効率は大きくなる。また,LiBPh
4を除く電解質についてLi/MnO
2試験電池による各放電曲線からcut off電圧2Vとして求めた,88wt%のMnO
2を含む正極に対する理論エネルギー密度は最大モル俵導率を示すモル分率の混合溶液について最も大きくなり,たとえば0.5moldm
-3LiCF
3SO
3含有のX
DME=0.7の混合溶液や0.5moldm
-3LiClO
4含有のXD細=0.8の混合溶液では負荷電流密度1.OmA cm
-2において約500whkg
-1のエネルギー密度であった。しかしながら,LiBPh
4を含む混合溶液では他の電解質を含む混合溶液と比較して,そのエネルギー密度はかなり小さくなった。
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