日本化学会誌(化学と工業化学)
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1993 巻, 11 号
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  • 常木 英昭, 嶋崎 由治, 有吉 公男, 森本 豊, 植嶋 陸男
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1209-1216
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アミノエタノールの気相脱水環化反応によりエチレンイミンを合成する新触媒とその触媒を用いたプロセスを開発した。1990年,世界ではじめてその工業化に成功し,現在まで順調に稼動している。本反応においては,強酸触媒では分子間脱水反応による縮合物の生成が,強塩基触媒では脱アンモニア反応によるアセトアルデヒド生成が優先して起こるため,選択性は極めて低い。優れた選択性を発揮する触媒はSio2をベースとしアルカリ金属・アルカリ土類金属などの塩基性金属元素およびリンなどの成分を加えた系である。その酸・塩基強度は+4.8<Ho,H<+9.3とともに極めて弱く制御され,この酸・塩基の共同作用のため活性にも優れており,寿命も長い。パルス反応・TPD・IRなどによるキャラクタリゼーションに基づいてOH基の吸着解離から始まる反応機構を提案した。
  • 佐々木 幸夫, 大橋 博文, 岡畑 真一, 海藤 英樹, 森 貴一, 半田 稔
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1217-1224
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5種類の電解質(LiPF6,LiCl04,LiBF4,LiCF3SO8およびLiBPh4(Ph:フェニル)をそれぞれ含む3-プロピルシドノン(3-PSD)とテトラヒドロフラン(THF)および1,2-ジメトキシエタン(DME)との混合溶液の特性を混合溶媒の組成やモル伝導率(λ)から検討し,かつリチウム電池に対するこれら電解液の評価を充放電効率(クーロン効率)およびLi/MnO2試験電池の正極(Mn02)に対する理論エネルギー密度から行った。各電解質を含む混合溶液のλはTHF,DMEのモル分率(XTHF,XDME)の増加ともに徐々に大きくなり,LiBPh4以外の電解質ではあるXTHF,XDMEで極大値を示し,その後減少する曲線となる。このλの増加は混合溶媒の粘性率(η)の減少によるものと考えられ,またあるXTHF,XDMEからλが減少してゆくのは混合溶媒の誘電率の減少にともなうイオン対生成のためと推定される,一方,LiBPh4ではλの変化に極大値は観測されなかったが,この原因はBPh4-イオンが非常に大きいイオンであるため,イオン対を生成しにくいからだと考えられる。λの各電解質間での大きさの順序は,たとえばXTHF=XDME=0.6においてLiPF6>LiClO4>LiBF4>LiCF8SO3>LiBPh4となった。充放電効率(クーロン効率)は0.5=moldm-3のLiBPh4含有のXTHF=XDME=0.7混合溶液の場合に80%を越える高い効率を示し,LiBPh4以外の4種類の電解質では最大モル伝導率を示すXTHFおよびXDMEの混合溶液よりもXTHF=XDME=0.5の混合溶液においてその効率は大きくなる。また,LiBPh4を除く電解質についてLi/MnO2試験電池による各放電曲線からcut off電圧2Vとして求めた,88wt%のMnO2を含む正極に対する理論エネルギー密度は最大モル俵導率を示すモル分率の混合溶液について最も大きくなり,たとえば0.5moldm-3LiCF3SO3含有のXDME=0.7の混合溶液や0.5moldm-3LiClO4含有のXD細=0.8の混合溶液では負荷電流密度1.OmA cm-2において約500whkg-1のエネルギー密度であった。しかしながら,LiBPh4を含む混合溶液では他の電解質を含む混合溶液と比較して,そのエネルギー密度はかなり小さくなった。
  • 小舟 正文, 赤松 謙次, 杉江 他曽宏, 藤井 知, 西村 一仁, 今村 善一
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1225-1230
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素アニール(OA)法により市販のMgO(100)単結晶基板の表面結晶性の修復を行い,基板の表面特性を調べた。また,rfマグネトロンスパッタリング法を採用し,基板上にPt薄膜を作製した。得られた薄膜の配向性および結晶性を調べ,基板のOA効果について検討した。基板のカソードルミネセンス(CL)測定の結果から,表面欠陥に深く関わりのある400nm近傍の発光ピークは,1200℃以上の保持温度でOA処理した基板において完全に消失することがわかった。またOMgO基板およびPt薄膜の表面粗さは,基板のOA処理温度が1200℃のとき極小値を示した。さらに,それらの結晶性は,X線ロッキングカーブの半値幅Δθにより, 同様に1200℃でもっとも良好となることが明らかになった。Δθ,TEM像,電子線回折パターンの測定結果から,1200℃でOA処理した基板上に高収率でPt(100)配向膜が得られ,著しいOA効果を示すことがわかった。
  • 松下 啓, 本岡 達, 金治 幸雄
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1231-1237
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の初期pH(pH4~8)の可溶化コラーゲン溶液中でα-ビス(リン酸)三カルシウムを30℃で24時間,加水分解させることによって得られた生成物についてX線回折(XRD),フーリユ変換赤外分光分析(FT-IR)および化学分析などによって検討を加えた。XRDの結果,初期pH4ではリン酸水素カルシウムニ水和物(DCPD)が生成し,初期pH5以上では水酸アパタイト(HAp)が生成していた。さらに,FT-IRによって,初期pH4では少量のHApおよびヘキサキス(リン酸)二水素八カルシウム(OCP)が生成し,初期pH5以上ではHAp以外にOCPが生成しているのがわかった。初期pH5でHApの生成量が最大となり,その量はコラーゲンを添加しない系より添加した系の方が多かった。化学分析の結果から求めたそれぞれの生成物のca/Pモル比は1.3-1.5であり,化学量論性水酸アパタイト(ca/P=1.67)より低い。化学反応式により提案されたα-TCPを加水分解過程は,XRD,FT-IRおよび化学分析の結果によりよく説明された。
  • 吉村 芳武, 片岡 裕一, 沖 久也, 吉國 忠亜, 山田 明文
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1238-1243
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    出発物質[Cr(L-leu)3(NCS)(OH)2]とL-,D-またはDL-イソロイシンをエタノール溶媒中で反応させ,クロム(III)混合アミノ酸錯体を合成した。反応中で得られる錯体:L-および,イソロイシンを使用した場合にはそれぞれfac(+)[Cr(Lisvleu)(L-leu)2]3H2Oおよびfac(-)[Cr(D-isoleu)(L-1eu)2]・3H20が得られ,L-形とD-形の違いによって逆の立体選択性を持つという興味ある結果が得られた。一方,DL-イソロイシンでは,同組成のレイソロイシンとD-イソロイシンがほぼ等モル配位したジアステレオ異性体の混合物が得られた。炉液の放置後に得られる錯体:L-イソロイシンおよびD-イソロイシンでは反応中と同様,fac(+)-形およびfac(-)-形が放置温度に関係なくそれぞれ得られた。また,DL-イソロイシンの場合は低温でD-イソロイシンが配位したfac(-)-形錯体,高温ではレイソロイシンが配位したfac(+)-形錯体がほぼ選択的に得られた。DL-イソロイシンの光学分割の可能牲:上記の結果から,DL-イソロイシンを使用した場合には,炉液の放置温度によってD-およびL-イソロイシンの部分分割の可能性をみいだした。
  • 盛 秀彦, 藤村 義和, 山口 武, 小野田 圭裕, 榛葉 英治
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1244-1248
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスホン酸ジフェニルーホルムアルデヒド縮合樹脂にテトラエチレンペンタミンを導入したキレート樹脂を用いて,金(III),白金(IV)およびパラジウム(II)の三元相互分離ならびに王水中に共存するこちれらの貴金属イオンの分離・回収を試みた。通液速度SV120h-1での吸着が可能で,100mg・dm-3の貴金属イオンを吸着処理する際,貴金属イオンの5倍量のアルミニウム(III)および銅(II)の共存が許容され,また,0.2mol・dm-3以下の硝酸の共存も許容される。吸着した貴金属イオンは0.25mol・dm-3HCl-50v/v%アセトン混合溶液,1mol・dm-3NaOH溶液および4mol・dm-3HCl5wt%KBr-20v/v%アセトン混合溶液を段階的に通液することで,金(III),白金(IV),パラジウム(II)の順に相互に分離できる。王水実験試料を処理するに際しては,試料を20倍に希釈することで良好な回収結果を得ることができ,アルミニウム(III)および銅(II)各1000mg・dm-3が共存する王水実験試料からの金(III),白金(IV)およびパラジウム(II)の回収率は,それぞれ89,85および87wt%であった。
  • 島崎 長一郎, 太田 博士, 渡辺 真弘, 小野 慎, 吉村 敏章, 作道 栄一
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1249-1256
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5-フェノキシメチル-2-オキサゾリジノン(以下PMOと略記する)には115℃で融解する結晶(低融点形)と123℃で融解する結晶(高融点形)の二形の存在が知られている。水による再結晶で得られた結晶は両形の混合物であるが,安定形である高融点形は有機溶媒(メタノールなど)による再結晶や119℃で融解後,結晶化させることによって得られた。低融点形は250℃で昇華後,結晶化させるか150℃で融解後,過冷却状態を経ることにより単離された。DSC測定によって融解熱は低融点形が26kJ/mol,高融点形が31kJ/molであることがわかった。顕微鏡観察でもDSC測定と同様に両形の間の熱的変換が認められた。
  • 上條 治夫, 滝戸 俊夫, 中沢 利勝, 板橋 国夫, 妹尾 学
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1257-1262
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェナレノン類は染料など機能性材料として有用であり,種々の合成例が報告されているが,一般的な合成法の報告は少ない。1-メチルチオナフタレン(1a),2-メチルチオナフタレン(1b)とマロン酸をポリリン酸中で加熱反応させ,一段階で3-ヒドロキシ-7-メチルチオ-1H-フェナレン-1-オン(2a)および3-ヒドロキシ-9-メチルチオ-1H-フェナレン-1-オン(2b)をそれぞれ得た。これらの反応は1-メトキシナフタレン(1c)および2-メトキシナフタレン(1d)を用いた場合でも進行し,3-ヒドロキシ-1H-フェナレン-1-オン(2c),(2d)が得られた。また,1-ナフタレンチオール(5a)および2-ナフタレンチナール(5b),1-ナフトール(5c)および2-ナフトール(5d)とマロン酸の同様の反応では,ヒドロキシ-1H-フェナレン-1-オンは得られず,ヒドロキシナフトチオピラノン(3a),(3b),ヒドロキシナフトピラノン(3c),(3d)がそれぞれ得られた。一方,マロン酸の代わりにメチルマロン酸を用いると,メチル基を持つ同様な閉環化合物が得られた。本反応はマロン酸の求電子的アシル化に引き続き,脱水閉環反応が一段階で進行すると考えられる。
  • 栗原 博之, 原田 善行, 渡辺 幹夫, 白井 孝三, 熊本 高信
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1263-1269
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-位にアルキル基を導入した 4,5-ジヒドロ-2(3H)-チオフェノンのWittig-Horner反応を検討し,3-アルキル-2-(エトキシカルボニルメチレン)テトラヒドロチオフェン(4)が得られることを見いだした。また,4のリチウムエノラートをアルキル化することにより,二重結合を異性化させ,ジヒドロチオフェン誘導体を,また,4の脱水素を行うことにより2,3-二置換チオフェンを合成する反応を確立した。
  • 武隈 真一, 趙 振東, 松原 義治, 牧原 大, 山本 啓司, 野副 鉄男
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1270-1274
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    氷酢酸中15℃ でアズレン(1)および1-メチルアズレン(8)の過酢酸酸化を3分間行った。その結果,主生成物として1および8の自動酸化における新規intermolecular one-carbon transferの重要中間体(6),(13)とそのシクロヘプタトリエン型互変異性体(5),(12)が得られ,少量生成物として1からはアズレン核外に余分の炭素をもった一分子生成物(4),二分子間生成物(2,7)および三分子間生成物(3)の4種の生成物,8からは側鎖の酸化生成物(11),アズレン核外に余分の炭素をもった一分子生成物(14),二分子間生成物(9,15)および三分子間生成物(10)の5種の生成物が得られた。また,これら生成物の生成機構についても考察した。
  • 谷田部 佳見, 長尾 幸徳, 阿部 芳首, 御園生 堯久
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1275-1282
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アントラキノン染料のポリエステル繊維への染着機構を検討する目的で,染料とポリエステルモデルとの相互作用を定量的に評価した。アントラキノン染料としてアントラキノンおよび9種類の1-,2-置換アントラキノン,ポリエステルモデルとして安息香酸メチルをそれぞれ選び,アントラキノン染料の紫外・可視吸収スペクトルの測定結果に変形McRaeの式を適用することにより,染料・繊維間の相互作用を検討した。各種溶媒中でのアントラキノン染料の吸収極大波数の実測値と計算値との一致から,アントラキノン染料に変形McRaeの式が適用できることを確認した。この変形McRaeの式により,アントラキノン染料と安息香酸メチルとの相互作用を評価した結果,配向力は,0~2kcal/molで全相互作用の0~15%の寄与であった。さらに,分散力と誘起力の和は4~14kca1/molで全相互作用の80~100%の害与で,そのうち分散力は70~95%であった。アントラキノン染料と安息香酸メチルの分子間相互作用は,分散効果が支配的であることが明らかとなった。
  • 谷田部 佳見, 長尾 幸徳, 阿部 芳首, 御園生 堯久
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1283-1288
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アントラキノン染料のポリエステル繊維への染着機構を検討する目的で,アントラキノン染料とポリ(エチレンテレフタレート)フィルム(PET)との相互作用を,アントラキノン染料で染色したPETの紫外・可視吸収スペクトルに変形McRae の式を適用し,実際の染料・繊維間に働く力を窟量的に評価した。染料とPETとの相互作用のうち配向力は,0~0.3kcal/molで全根互作用の約0~2%の寄与であった。さらに,分散力と誘起力の和は5~16kcal/molで全相互作用の約84~100%の寄与であり,そのうち分散力の寄与は約82~99%であった,アントラキノン染料とPETの分子間相互作用にはt分散効果が支配的であることが明らかになった。
  • 大前 貴之
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1289-1291
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Vibrational motions of a fullerene are investigated by use of a soap bubble model, where a fullerene is replaced by a soap bubble composed of the perfectly incompressible fluid. We have obtained the following result: (1) in case of vibration with a large angular momentum 1, its frequency approximately depends on 13/2; (2) while co, depends on M -1/2 where M is the molecular weight of a fullerene.
  • 榊原 三樹男, 岡田 文男, 高橋 憲司, 常盤 貴
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1292-1294
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Lipase from Candida cylindracea was immobilized on chitosan beads by covalent binding methods, and its application to hydrolysis of beef tallow was investigated in a biphasic organic-aqueous system. The addition of isooctane, found to be the best among the organic solvents tested, to the reaction system stimulated the hydrolysis of beef tallow by immobilized lipase strongly. The proportion of isooctane and aqueous buffer in the reaction mixture was chosen at the ratio of 1: 4. Under this condition, the reaction rate was greatly enhanced compared to that in the organic-solvent-free system, and the extent of hydrolysis reached to about 90%.
  • 井川 学, 摺沢 雄治, 大河内 博
    1993 年 1993 巻 11 号 p. 1295-1297
    発行日: 1993/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Formaldehyde was transported efficiently across hydrogensulfite ion form anion-exchange membrane via the adduct formation reaction. The transport of formaldehyde was facilitated but onlywhen the concentration of formaldehyde in the source phase solution was low. The ion-exchange capacity of the membrane was saturated by formaldehyde distributed as its adduct in a low source phase concentration because the adduct formation constant was high. The transport of formaldehyde can be further facilitated and formaldehyde was transported against the concentration gradient with the counter-transport of hydrogensulfite ion when hydrogensulfite salt was added to the receiving phase.
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