日本化学会誌(化学と工業化学)
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1993 巻, 12 号
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  • 神碕 禮, Ramesh CHITRAKAR, 逢坂 徹, 阿部 光雄
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1299-1311
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機イオン交換樹脂などにくらべ選択性の高い無機イオン交換体について,結晶中に取り込まれた金属イオンの水和現象に着目し,固体NMRにより4種のイオン交換反応の機構について検討を行った。イオン交換体としてリチウムイオン選択牲の高いアンチモン酸チタンおよびアンチモン酸スズについて1H,7Li,23NaのNMR測定を行った結果,交換体中に2ケ所のイナン交換部位が存在し,そのうち一方の部位にはリチウムイオンが脱水和して吸着し,この部位がリチウムイオン選択性の高いことを見いだした。次に単斜晶系アンチモン酸および立方晶系ニオブ酸のリチウムイオン交換反応について1H,7LiのNMRスペクトル測定を行った結果,吸着部位の空間が小さいことおよびLi+(酸処理)→H+(イオン交換)→Li+のイオン交換過程でニオブ酸が酸処理前のリチウムイオンの情報を記憶している効果(イオン記憶)の二つの理由で,この交換体ではリチウムイオンが脱水和して高選択的に吸着されることが明らかにされた。さらに立方晶モリブデン酸アンモニウムのイオン交換反応を1H-NMR測定により検討した結果,この交換体にはプ質トンと交換可能な比較的フレキシブルな部位(25%)およびカリウムイオンに選択性が高く,プロトンは吸着できない部位(75%)の2種が存在することが明らかにされた。カリウムイオンの選択性は水溶液中のイオンの水和現象からの類推から,この交換体中にはイオンは水和した状態で吸着し,このことが選択姓の高い原因であることが明らかにされた。
  • 藤田 隆之, 北島 圀夫, 樽田 誠一, 田草川 信雄
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1312-1319
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層電荷が0.8のNa型フッ素雲母(Na0.8Mg2.2Li0.8Si4O10F2)からイオン交換法でLi型雲母を調製し,つづいて,層間Li+ の一部を所定量の割合のAl3+でイオン交換した後,加熱処理によるAl3+イオンの固着現象を利用して,雲母のイオン交換容量を決定する実質的な層電荷(有効層電荷)を制御することを試みた。また,これら有効層電荷を制御したフッ素雲母と多核ヒドロキソアルミニウムイオン水溶液から複合体を合成した。その結果,Li型雲母から調製した部分Al交換型雲母を加熱すると,Al3+が定量的にケイ酸塩層に固着され,この方法で雲母の有効層電荷を0.8~0.0の範囲で自由に制御できることが籾明した。この際,層間イオンの一部をAl3+で交換すると雲母の膨潤性は減少したが,加熱処理でAl3+の固着が起こると,層間に残存するLi+によって膨潤性は回復した。多核ヒドロキソアルミニウムイオンの収容量は,雲母の有効層電荷の減少にともない減少し,母塩結晶の有効層電荷を制御することによってアルミニウム収容量(ピラー密度)を制御できた。複合体の耐熱性は,ピラー密度が小さくなるほど減少し,加熱処理によって積層構造に不規則性が生じるため,細孔容積が小さくなる傾向があった。500℃ で熱処理した複合体の底面間隔値は有効層電荷によらず17.7Åを示したが,比表面積は200~370m2/gの範囲内で変化した。
  • 湧井 勝弘, 高本 進
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1320-1327
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ある種の金属イオン水溶液は,過瑚のチオシアン酸カリウムの存在下,非イオン界面活性剤のトリトンX-100を添加すると,有色のタール状ゲルを生成することを見いだした03d-遷移元素では以下のような色のゲルを生ずる。Ti(III)紫,V(III)黄褐,Cr(III)赤紫,Fe(III)濃赤,Fe(II)白,Co(II)濃青,Cu(II)暗褐,Zn(II)白。一方Sc(III),Mn(II),Ni(II)はゲルを生成しない。チオシアン酸イオンやトリトン濃度を種々に変化させてもゲルの組成はあまり変化せず,二価と三価の金属イオンの基本組成は,K2[MII(NCS)5]・2Triton, K2[MIII(NCS)5]・2Tritonとなる。トリトンが金属イオンの2倍モル含む溶液からは上澄み液中に残る金属イオンが最小になる。このような高次のチオシアナト-N錯体は水溶液中ではそれほど多く存在しないのに,トリトンの疎水基が高次錯体と選択的に結合して錯生成平衡を移行させ,親水基のポリ(オキシエチレン)基が対イオシのカリウムイオンに配位して沈殿したものと考えられる。他の多くの金属イオンについてもゲルの生成を定性的に確かめた結果,30種のイオンではゲルを生じたが,20種のイオンでは生じなかった。対イオンの種類もゲルの収率に大きく影響する。
  • 村上 さとみ, 斎藤 恵逸, 室松 昭彦, 守安 正恭, 加藤 篤
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1328-1334
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-メチルデデノシン第四級塩(MADと略記する。講造式は図1に示す)とアクアジエチレントリアミン白金(II)(ADTPと略記する。図1参照)を1:1で,pH2.3および7.2において310Kで反応させた。イオン対HPLCで各ピークを分離し,そのピークの消長から反応を追跡した。また生成物を同様の条件下で分取HPLCを用いて分取した。溶離液はイオン対試薬としての0.2M(1M=1mol・dm-3)NaClO4(1dm-3中に60%HClO4水溶液0.2cm3を含む)にメタノール(MeOHと略記する)を5%混合した。分取した試料を1H-NMRの測定試料とするためには,分取した溶液をそのまま乾固させるか,減塩法として,乾固させた試料を少量の0.01MHClO4に溶解きせ,再度クロマトグラフに付す簡単で有効な方法を確立した。生成物はUVスペクトルおよび1H-NMR(500MH2)によって同定し,反応の解析を行った。pH2.3においては,順次N7錯体(7-位のNで配位した錯体)およびNG錯体(6-位のアミノ基で配位した錯体)が生成した。次いでN7錯体のN9で新しくPtの配位が起こって糖部分が離脱しN7ひ,N9(Pt/MAD=2)錯体が生成した。pH7.2において主反応による生成物はN6錯体であった。副反応としてDimroth転位が起こり,N6-メチルアデノシン(アデノシンの6-位アミノ基にメチル置換基をもつ化合物,6MADと略記する)が生成した。N7錯体ではDimroth転位したN6のメチル基とN7に配位したジエチレントリアミン白金部分(DTPと略記する)との間で立体障害が起こって,白金の離脱が生じた。さらに,MADのCH8基の転位によって6MADのN1が活性化し,6MAD-N1錯体が生成したと推定される。N6錯体は二次元1H-NMRから溶液中ではDTPと糖が接近するような立体配置をとっていると考えられる。このことからPTPのNH2と糖の5'-OHのあいだには水素結合が介在すると推定される。
  • 山口 正人, 山本 哲郎, 脇田 正明, 本里 義明
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1335-1348
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    生体成分分離用の担体として好ましい種々の性質を持っているグルコマンナン(GM)ゲルに,アミノアルキル基を導入し,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による血液凝固第VIII因子(FVIII)の分離に適用した。その結果,6-アミノヘキシル(AH)基を導入したものが,FVIIIの分離剤として最も適していることがわかった。AH-GMゲルのFVIII保持量は,市販のEAH Sepharose 4Bの10倍以上であった。特に排除限界分子量がPEG換算で1000万のAH-GM10000が最も高いF孤保持量を示した。また,AH-GMゲルは,AH基導入後も生体成分分離用の担体に必要な牲質を保ち,通液安定性にもすぐれていた。さらに,試料負荷時の流速が2m/h以上であっても,高いFIII保持量を持つことが確認できた。一方,爽雑タンパク質の多いクリオプレシピテートでは,FIIIの保持量は低下し0特に負荷量が多い場合HPLCによる精製度は向上しにくいという傾向が認められた。AH-GMゲルを,血液製剤プロセスに適用する場合,イオン交換法などと併用することが好ましいと考えられた。
  • 野牧 辰夫, 山中 明子, 佐々木 秀幸, 内藤 勝之
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1349-1352
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高感度示差走査熱量測定法(DSC)により,ステアリン酸カドミウムLB膜の熱挙動について検討を行った。LB膜は金蒸着したシリコンウエハ基板上に4~21層累積したOLB膜と金蒸着膜をいっしょにはく離する下地膜はく離法を用いて試料を作製し,DSC測定した。ステアリン酸カドミウムLB膜の相転移温度はバルク結晶の相転移より約15℃ 高いことがわかった。21層の累積膜の相転移ではi低温側にサブピークが出現するが,このサプピークは分子配向の乱れに関係していることが高感度赤外反射吸収法(IRRAS)の解析から明らかになった。また,相転移温度以上に加熱し,一定速度で冷却したLB膜の相転移では低温側に新たにピークが出現した。低温側のピークは分子規則性の消滅によって新たに出現したピークと考えられる。加熱後も高温側のピークが存在することは,LBが加熱後も完全にランダムな分子集合状態にならず,分子規則性が残存されることを示唆している。
  • 壱岐 英, 菊池 武利, 新海 征治
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1353-1358
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    25,26,27,28-テトラプロポキシカリヅクス[4]アレーン・Cr(CO)3(l・Cr(CO)3)のリチオ化をi経る芳香族置換反応を行った。cone-1・Cr(CO)3および1,3-alternate-1・Cr(CO)3ではクロムトリカルボニルへの配位によってベンゼン環が活性化され,メチル基やホルミル基などの官能i基を75~96%の収率で位置選択的に導入することができた,また1・2Cr(CO)3の置換反応についても検討し,dista1異牲体では81%の収率でジメチル体を合成することができた。その際,置換反応は高いパラ選択性(p/m>12)を示した。このパラ選択性はカリヅクスアレーンの環構造とCr(CO)3の配座に起因しており,錯体の構造と反応性に密接な関係が存在することが明らかとなった。以上の結果から,カリックス[4]アレーンの上端に位置選択的に置換基を導入する新しい方法が確立された。
  • 巣山 隆之, 笠原 茂, 音田 広志, 大沢 豊弘
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1359-1362
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-ethoxycarbonyl-N-canaguanidine(4)はヒドロキシルアミ塩酸塩と反応して,3-ethoxy-5-ureido-1,2,4-oxadiazole(5)と,5-amino-3-ethoxycarboaylamino-1,2,4-oxadiazoie(8)をほぼ1:1の比で生成することを明らかにした。5はアルカリ加水分解により5-amino-3-ethoxy-1,2,4-oxadiazole(10)となった,一方,8からは5-amino-3-carboxyamino-1,2,4-oxadiazole(15)のナトリウム塩が生成した。8を酸加水分解すると3-eihaxycarbanylamina-1,2,4-oxadiazol-5(4H)-one(12)を生成し,このものをアルカリ加水分解すると,3-amino-1,2,4-oxadiazo1-5(m)-oae(14)となった。8はメチルアミンと反応して5-amino-3-(3-methylureido)-1,2,4-oxadiazole(18)を生成した。
  • 佐藤 利雄, 武田 享一
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1363-1369
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭系タール酸の経時着色の原因と着色機構およびその防止方法について検討した。このことは石炭液化の油や,石炭のガス化から副生する油のタール酸の有効利用の観点からも重要である。タール酸を精留すると,その着色域とアニリン,メチルアニリンの留出域が一致すること,タール酸にアニリンを添加すると著しく着色すること,などからアニリン化合物が着色の原因物質であることがわかった。経時着色を防止するにはアニリン化合物を除去する必要がある。除去方法として添加物による固定を検討したところ,隣接した2個のカルボキシル基を持つ化合物,たとえば無水フタル酸,1,2,4-ベンゼントリカルボン酸,1,8-ナフタレンジカルボン酸などが有効であった。これらを蒸留工程に少量添加すると,アニリン化合物は高沸点のイミド化合物に転化し,蒸留残留物としてほぼ完全に除去できることがわかった。R(COOH)2+Ar-NH2→R(CO)2N-Ar+2H2O粗タール酸に無水フタル酸を添加して蒸留したところ,得られたタール酸中のアニリン濃度は1mg/kg以下となり,経時着色は著しく抑制された。このことから本法は経時着色の少ない,高品質のタール酸製造方法として有用である。
  • 上岡 龍一, 山田 栄一, 後藤 浩一, 松本 陽子, 加藤 康夫
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1370-1375
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    単独ではべシクルを形成する分子,L-α-ジパルミトィルホスファチジルコリン(DPPC)とミセルを形成する分子,α-[p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)(Tritan X100)を混合したハイブリッド型分子集合体は組成や温度を変えることにより,活性トリペプチド(N-ベンジルナキシカルボニル-L-フェニルアラニルーレヒスチジル-L-ロイシン)触媒による長鎖アミノ酸エステル基質(N-ドデカノイル-D(L)-フェニルアラニン=p-ニトロフェニルエステル)のL体優位の不斉加水分解を制御できることが明確になった。これらリン脂質型ハイブリッド分子集合体を用いることにより,相転移に非常に近い温度で特異的に高い不斉選択性が発現できた。この事はハイブリッド型分子集合体の直径や疎水性領域の流動性などの種々の物理的特性が相転移温度付近で鋭く変化することと関連していると考えられる。
  • 呉 雲影, 山口 達明, 崔 湘浩
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1376-1379
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    erovskite-type LaFe03 powders were prepared by drop coprecipitation method. An aqueous solution of La(NO3)3 and Fe(NO3)3 was dropped slowly (0.4 ml⋅ min-1) into an water-ethanolammonia solution at 40°C. The resultant gel was calcined at temperatures down to 630 °C for 2 h. The sizes of LaFe03 polycrystals were found to be as low as 13-20 nm by XRD and TEM. Their BET surface areas were measured to be 20-49 m2- g-1. In consequence of the experiment with change of coprecipitation temperature, stirring speed, dropping speed or calcination conditions of temperatures and time, the most effective factor to determine the size of ultra-fine particle were found to be the calcination temperature. In addition, the maximum surface area was obtained by short calcination time and ultrasonic stirring as secondary effects. The minimum crystallite size of LaFeO3 was obtained around the crystallization temperature (630 °C).
  • 安藤 孝夫
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1380-1382
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    I n order to retard formation of allophanate linkages in the reaction of phenyl isocyanate with N-phenylurethane in N, N-dimethylformamide (DMF) in the presence of various inhibitors, phosphoric acid was selcted as most effective inhibitor. The reaction of bis(4-isocyanatophenyl)methane (BIM) with a diol mixture of poly(ethylene adipate) (Mn=2000) and ethylene glycol (molar ratio=1: 2; NCO/OH molar ratio=1.00) in DMF was studied to clarify the effects of addition of phosphoric acid on the concentration of allophanate linkages in resulting polyurethanes. Increase in the content of phosphoric acid results in decrease in the concentration of allophanate linkages. The addition of phosphoric acid more than 60 ppm was found to retard formation of allophanate linkages below 3 x 10-3 mmol The viscosity retention after stability test decreased with increasing the concentration of allophanate linkages in the polyurethanes.
  • 岡田 豊, 林 隆俊
    1993 年 1993 巻 12 号 p. 1383-1386
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    13C-NMR chemical shifts of 1, 1'-bis(o-substituted phenyl)ferrocenes were measured, and the relationships between the chemical shifts and conformation were discussed. The chemical shifts of a-protons indicated that the degree of the inclination of Cp group and Ph group in 1, 1'-bis(o-substituted phenyl)ferrocenes is almost equal to that of the corresponding mono substituted derivatives. The lower-field shifts for the ipso-carbons in 1, 1'-bis(o-substituted phenyl)ferrocenes show a steric repulsion between two Ph groups.
  • 1993 年 1993 巻 12 号 p. 1387
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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