酸化物粒子の球殻状醍列からなる中空球形粉体の調製を目的として,まず5~10μmの石英粒子(原料粒子)をCaCO
3微結晶(バインダー)で結合した構造を持つ,粒径100~250μmの中空球体を調製した。これはpH11以上のCa
2+溶液中で石英粒子を油滴に付着させたのち,溶液表面を通じて二酸化炭素と反応させることによってCaCO
3微結晶で石英粒子間を結合し得られたものである。次にこのCaCO
3結合型石英中空球体をさらに1000℃ で焼成後酸洗浄した。この結果,隣接原料粒子同士が溶融結合したかご型の構造を持つ中空球体が生成した。焼成物のEDX測定では酸洗浄後もCa元素の存在が認められた。これはバインダーのCaCO
3が熱分解してCaOが生成し,これがSiO
2と溶融したことを示している。しかし,XRD測定の結果,焼成後も石英の結晶構造はほとんど変化しておらず,溶融はごく局所的であることがわかった。CaCO
3結合型石英中空球形粉体の構造及び生成効率をCaCO
3結合型CaCO
3中空球形粉体のそれと比較しながら,その生成機構について検討した。水溶液中でのCaOH+の石英粒子と油滴の表面への吸着は,石英粒子の油滴への付着の促進,及び石英粒子と異種固体CaCO
3との親和性の向上という二つの役割を有すると推察した。また,CaCO
3の析出が優先的に起こる石英粒子間隙や粒子周縁部で焼成による溶融の程度が大きいことを認め,バインダーCaCO
3及びその分解生成物CaOが石英粒子の溶融を促進していると推察した。
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