アントラキノン染料のポリエステル繊維への染着機構を検討する目的で,紫外可視吸収スペクトルによりアントラキノン染料とプロトン性溶媒および非プロトン性溶媒との相互作用を検討し,その結果に基づき染料一繊維問の水素結合を評価した.
1-アミノ-,2-アミノ-および2-(メチルアミノ)アントラキノンとプロトン性溶媒および非プロトン性溶媒との間には,染料をプロトン供与体溶媒をプロトン受容体とする約400~2400cm
-1の長波長シフトに相当する水素結合があることがわかった.その水素結合力は1-プロパノールで約3~6kcal/molであり,これは全相互作用の20~60%の寄与に相当する.以上の事実との比較から,1-アミノ-,2-アミノ-,および2-(メチルアミノ)アントラキノソと安息香酸メチルおよびポリ(エチレンテレフタレート)フィルム(PET)の間には,染料をプロトン供与体安息香酸メチルおよびPETをプロトン受容体とする約300~1300cm
-1の長波長シフトに相当する水素結合があることがわかった.この水素結合力は約1~4kca1/molであり,これは全相互作用の10~40%の寄与に相当する.特に,2-アミノアントラキノンと安息香酸メチルおよびPETの水素結合の寄与は,全相互作用の約40%とかなりの部分を占めることが明らかとなった.これに対し,アントラキノン,1-メチルアミノ-,1-ジメチルアミノ-,1--ヒドロキシ-,1-メトキシ-および2-(ジメチルアミノ)アントラキノンと安息香酸メチルおよびPETとの水素結合の寄与は非常に小さい.
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