低温用帯域融解装置を用い,ヨウ素を含むベンゼンの分離を行い,帯域融解における理論段数を検討した.ヨウ素とペンゼンとが混晶を形成する濃度範囲にある0.5mass%のヨウ素を含むベソゼン溶液を凝固させ,これに溶融ゾーンをO.91cm/hの移動速度で1,5,および40回通過した結果,良好な分離が行われた.特にゾーン40回通過後,試料初端付近でのヨウ素の濃度は,1.11×10
-4mass%まで減少した.ゾーン1および40回通過後のヨウ素の分布から求めた有効分配係数の値は,それぞれ0.53と0.55となった.一方,ベンゼン中のヨウ素の希薄溶液の凝固点から求めた平衡分配係数は0.25であった.分別蒸留との比較のため,Pfannによって与えられた次式によって理論段数Sを求めた.
ここで,Keは有効分配係数,Coは溶質初濃度,およびCu(O)はゾーン多数回通過後に溶質分布が定常状態に達した試料先端における溶質濃度を表す.同式から求めたSの理論値は14で,またゾーン40回通過後のヨウ素の分布と有効分配係数から求めた値も14となった.さらに,分別蒸留で用いられるx1(液)-yv(気)線図からの類推によって,xs(固)-y1(液)線図を作成し,これによって理論段数の概念を示した.これらの結果から,帯域融解と分別蒸留との類似性が相平衡の観点から関連づけられた.
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