日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1994 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 野島 秀元
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 499-504
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低温用帯域融解装置を用い,ヨウ素を含むベンゼンの分離を行い,帯域融解における理論段数を検討した.ヨウ素とペンゼンとが混晶を形成する濃度範囲にある0.5mass%のヨウ素を含むベソゼン溶液を凝固させ,これに溶融ゾーンをO.91cm/hの移動速度で1,5,および40回通過した結果,良好な分離が行われた.特にゾーン40回通過後,試料初端付近でのヨウ素の濃度は,1.11×10-4mass%まで減少した.ゾーン1および40回通過後のヨウ素の分布から求めた有効分配係数の値は,それぞれ0.53と0.55となった.一方,ベンゼン中のヨウ素の希薄溶液の凝固点から求めた平衡分配係数は0.25であった.分別蒸留との比較のため,Pfannによって与えられた次式によって理論段数Sを求めた.
    ここで,Keは有効分配係数,Coは溶質初濃度,およびCu(O)はゾーン多数回通過後に溶質分布が定常状態に達した試料先端における溶質濃度を表す.同式から求めたSの理論値は14で,またゾーン40回通過後のヨウ素の分布と有効分配係数から求めた値も14となった.さらに,分別蒸留で用いられるx1(液)-yv(気)線図からの類推によって,xs(固)-y1(液)線図を作成し,これによって理論段数の概念を示した.これらの結果から,帯域融解と分別蒸留との類似性が相平衡の観点から関連づけられた.
  • 綿打 敏司, 上殿 明良, 依田 修, 氏平 祐輔
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 505-511
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    O H基濃度が1ppmと306ppmの2種類の高純度合成石英ガラスに,3Mevの電子線を1×1018e-/cm2まで照射し,生成した欠陥を陽電子消滅により検出した.電子線照射により誘起された欠陥が陽電子消滅で敏感に検出されることがわかった.陽電子寿命測定により,電子線を照射した石英ガラスには,大きさの異なる3種類の空孔-単一原子空孔または複空孔,空孔集合体,サブナノレベルの空間(~0.07nm3)-が存在することがわかった.ポジトロニウム(Ps)の形成率は,未照射の石英ガラスでは~90%であった.このPsは,サブナノ空間の中で形成されたと考えられる.OH基濃度が1ppmの石英ガラスでは,Psの形成率は電子線照射によって著しく減少したが,サブナノ空間の大きさは変わらなかった.OH基濃度が300ppmの石英ガラスでは,Psの形成率の電子線照射による変化は少なかった.これらの実験結果から,電子線照射により,石英ガラス中に単一原子空孔や複空孔が導入され,そこに陽電子が捕獲されたと考えられる,窒素雰囲気で等時焼鈍すると,焼鈍温度の上昇とともに,欠陥の回復過程が進行し,陽電子が捕獲される欠陥の変遷と推察される結果が得られた.回復過程は700℃ の焼鈍で完全に終了した.
  • 堀田 紀好, 仲津 研一, 西堀 寧, 久保田 哲史
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 512-517
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセチレンブラック(AB)を直流グロー放電による低温酸素ブラズマプロセシングで表面修飾し,電気伝導性,ぬれ性,表面官能基量,過酸化水素分解能などを調べた.ついで,各種ABを原材料とするガス拡散電極を作成して水酸化カリウム水溶液中における酸素の電気化学的還元を行い,その性能を表面性質と関連づけて比較検討した.その結果,ABはプラズマブロセシングにより電気伝導性が減少し,疎水性表面は親水性に変化し,過酸化水素分解能は増大することがわかった.これらの事実はフェノール性ヒドロキシル基,カルボニル基,カルボキシル基などの含酸素表面官能基の増加により説明された.AB酸素電極の分極および放電特性は,プラズマプロセシングにより著しく改善された.これは電極の適度のぬれ性,過酸化水素分解能の増加,微細な細孔発達による安定な三相界面の形成によるど推定された.
  • 日比野 高士, 岩原 弘育
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 518-523
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体電解質を用いた水蒸気電解におけるH/D同位体効果の有無と水素同位体分離の可能性について検討した.固体電解質としてはプロトン伝導体を使用し,電解温度は900℃ であった.重水蒸気の電解なは,軽水蒸気の電解に比べて,イオン輸率,電解電流および電解量がそれぞれ減少し,電解抵抗をより大きく受けた.これは,バルク抵抗と両極での電極反応抵抗の双方の増加に基づいた.その内,バルク抵抗の相違は,プロトンとジュウテロンの固体内での濃度の違いではなく,両者の移動度の違いであった.これらの同位体効果を利用して,軽水と重水の混合蒸気から水素の選択的電解を行うことができた.カソードでの同位体発生量は水素:重水素原子比で1.61:1であり,分離係数は1.44であった.
  • 野村 正幸, 齋藤 義一, 中田 真一, 森村 恭郎
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 524-530
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然ゼオライトの高付加価値化およびその利用という観点で,秋田県ニツ井産のクリノプチロライトを主成分とする天然ゼオライトについて,化学構造解析と触媒反応を検討した.すなわち,クリノプチロライト(FZ)とそれを塩酸処理した試料(HFZ)について固体NMR,熱量測定などによるキャラクタリゼーションとシクロヘキセンの骨格異性化反応を行った.固体NMRでは,29Si,27Alおよび23Naを対象核として,各プローブ原子まわりのミクロ環境を,また熱量測定ではアンモニア吸着測定(473K)により酸性質をそれぞれ検討した.処理する塩酸の濃度の増加にともない,HFZのSi/A1比および酸量が増大した.HFZを触媒として用いた2-プロパノールの脱水反応速度は酸量に比例した。またシクロヘキセンからメチルシクロペンテン(MCP)への骨格異性化反芯では,酸量の増加にともないメチルシクロペンタン,芳香族炭化水素が増加し,MCP収率が減少した,比較のため用いたHZSM-5触媒では芳香族炭化水素のみを与えた.
  • 村松 重緒, 加藤 千春, 藤田 一美, 松田 恵三
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 531-537
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素の加水分解を利用した均一沈殿法により,ストロンチウムアパタイト(Sr-HAp)の合成を行い,生成過程を検討した.なおSr/P=1.67とし,97(±1)℃ にて実験を行った.その結果いずれの条件においても,初期生成物としてa-SrHPO4が得られ,長時間反応後にはSr-HApへと変化した.物質の変化過程は,反応溶液のpHの降下または上昇状態や生成物の同定から,(i)α-SrHPO4からSr3(PO4)2を経てSr-HApになる場合と,(ii)α-SrHPO4からβ-SrHPO4を経てSr-HApとなる場合の2系統があることが明らかになった.条件によってはSrCO3が混在し,そのまま変化せず生成物中に残留する場合もあった.本法によるSr-HApの合成では,原料からのCl-イオン,CO32-イオンなどの混入を避けられないが,尿素濃度の変化,原料の選択により,これらを最小限に抑えることができた.
  • 藤田 隆之, 北島 圀夫, 樽田 誠一, 田草川 信雄
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 538-544
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層間Al3+イオンの固着現象を利用して有効層電荷を勧御したフッ素雲母とAlイオン種を一種類に限定した多核ヒドロキンアルミニウム水溶液から複合体の合成を試み,複合体を加熱して得られる架橋フッ素雲母の細孔量と耐熱性に与える多核ヒドロキソアルミニウムイオンのピラー密度の影響について検討した.その結果,ゼオライト処理で得た単一種のA1ポリマーを含む溶液を用いると,層電荷の増加にともない複合体中のA1収容量は一次関数的に増加した.このことから,架橋フッ素雲母のピラー密度を制御するためにはフッ素雲母の層電荷および導入するAlイオン種を設計・制御する必要があることがわかった.ピラー密度の増加にともない架橋フッ素雲母の耐熱性は向上し,層間架橋構造が高温まで保持されることがわかった.特に,ピラー密度の高い架橋フッ素雲母では600℃ 処理で366m2/g,700℃ 処理で226m2/gの高い比表面積を維持した.架橋フッ素雲母の層間域に形成される細孔容積はピラー密度と加熱処理温度の二つの因子で決定され,大きな細孔容積を持つ架橋フッ素雲母を得るためにはピラー密度に応じた適切な加熱処理が必要であった.また,MP法による解析の結果,層間のピラー密度(0.45molAl/Si4O10~1 .58molAl/Si4O10)に依存して架橋フッ素雲母の細孔径分布が変化することが判明した.
  • 武隈 真一, 松原 義治, 小畑 貴央, 周 正斌, 藤原 義人
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 545-550
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アビエチン酸メチルエステル(1)の電極酸化を種々の条件下で行った.その結果,1を酢酸に溶解し,水と支持電解質Et3Nを添加し,陽,陰両極に炭素棒を備えた無隔膜セル中,定電流50mA(電流密度4mA/cm2),通電量4F/mol,反応温度18℃ で電極酸化を行った場合に選択性が認められ,7α-acetoxy-13(βandα)-hydroxy-8(14)-abieten-18-oicacidmethylester[(2)および(3)]の混合物が86%の収率で得られた.2および3は新規化合物であり,それらの性状および各種スペクトルデータさらには2と3の生成機構の考察についても述べる.
  • 米山 嘉治, 喜多 理, 吉本 修一, 西村 尚之, 野口 みのり, 牧野 勲, 樋口 陽子, 加藤 彰, 加藤 勉
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 551-559
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    夕張炭と太平洋炭を亜鉛とヨウ化ブチルで130℃,常圧で処理し,それぞれ原炭の82%と55%をヘキサンに可溶化させた.ヘキサン可溶化物は酸性成分を除去後,CCで分別し,さらにGPCで分別した.分別留分は構造解析と分子量の測定を行い,可溶化物の構造特性と可溶化機構を調べた.
    両炭のGPC分別留分はいずれも芳香環数が少なく,ベンゼン溶出物では約1環である.これらの留分は平均構造指数のσal(脂肪族置換度)が高くfa(芳香族性)が低いことからブチル基が多く導入されている事を示しているが,L(脂肪族側鎖長)は2.1-2.9と4よりも低いことから,芳香環が還元ブチル化され芳香環数が減少したと考えられる.また分子量が800以下の留分は夕張炭では7.7%,太平洋炭では17.8%(いずれも原炭に対して)と太平洋炭に多く含まれているが,その量は水素化分解やSternbergの還元アルキル化の場合よりも少なく,溶剤抽出物は石炭中の橋かけ構造の開裂反応をあまり受けずに可溶化してくることを示している.
    以上のことから亜鉛とヨウ化ブチルによる可溶化は,一部橋かけ結合の開裂も起こっているが,主に芳香環の還元ブチル化によるものであると考えられる.
  • 小川 博靖
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 560-564
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前駆体繊維であるポリアクリロニトリル(PAN)系繊維から高い強度のPAN系炭素繊維を高生産性にて得ることを目的に,PAN系繊維とその酸化条件を検討した.PAN系繊維を空気中220~280℃,無荷重下にて酸化し,酸化に伴う繊維のDSC発熱量,結合酸紫量,二層携造,繊維性能を測定すると共に得られた酸化繊維を窒素中,1000℃ において炭素化して炭素化収率,繊維性能などを測定し,PAN系繊維中に2wt%含むアクリル酸ナトリウム(SA),アクリル酸メチル(MA),アクリルアミド(AAm),アクリル酸ヒドロキシエチルエステル(HEA)の憧温および二段階酸化における酸化時間とその酸化繊維の炭素繊維の性能に及ぼす影響を検討した.その結果,高性能の炭素繊維を短い酸化時間にて得るためには,SAを共重合したPAN系繊維を二層構造を形成しない上限の酸化温度にて結合酸素量約5%となるまで酸化し,ついで,さらに高温にて結合酸素量約12%となるまで酸化することが好ましいことがわかった.
  • 飯盛 和代, 飯盛 喜代春, 中添 勝代
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 565-570
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1989年の1年間の降雨を山雨ごとに採取し検討した結果,佐賀市の降雨は化学成分が少なく,他の都市に比べて酸性化も進んでいないことを報告した.さらに引き続き降雨を採取し分析した結果,佐賀市の降雨の化学成分は,火山の噴火,台風,一降雨の雨量などの自然現象の変化によって大きく変化することが明らかとなった.1991年6月~1992年5月の1年間における酸性化は雲仙普賢岳の噴火による影響が大きい.噴火時のpHの平均値は4.37と低い.これは噴出ガス中のHC1,SO2の酸性ガスの影響と火砕流により周囲の山林,人家が燃え,車の往来が激しくなりNO3-が増加したためである.
    またこの2年間には7回の台風が襲来した.この時の降雨の化学成分について検討した結果,台風時にはそれぞれの化学成分は増加し瞬間最大風速が50mを越えた台風の影響は特に大きく,ほとんどすべての化学成分の年間の平均値は約2倍になっている.しかし小型の台風は年間の平均値には大きな影響は与えていない.台風時は酸性度ポテンシャルnss-SO42-+NO3-と中和ポテンシャルNH4++nss-Ca2+の差が通常より小さくなりその結果,pHが高くなる.
  • 結城 健, 村上 哲夫, 生川 洋, 岡谷 卓司
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 571-576
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    安定剤の異なるポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)エマルションを用いてポリマーセメントモルタルを作製し,その性質を調べた.アニオン乳化翻を用いたエマルションはセメントとの混和時の安定性が不十分であるが,これに非イオン乳化剤を添加すると混和性は向上した.ポリビニルアルコール(PVA)を用いたエマルションとヒドロキシエチルセルロースと非イオン乳化翻を用いたエマルションは混和性が良好であった.両エマルションおよび対照のポリ(スチレン-co-ブタジエン)ラテックスを用いたポリマーセメントモルタルの見掛けの粘度とずり速度の関係を求めた.PVAを用いたエマルション系は他の系と比べると低ずり速度で粘度が低く,高ずり速度で高かった.得られたデータのCassonプロットはほぼ直線であった.ポリマーセメントモルタルの圧縮曲げおよび接着強度を測定した.いずれも湿潤時の単位容積質量の影響が極めて大きかった.またエマルションおよびポリマーの種類の違いは強度に反映しなかった.
  • 亀田 徳幸, 五十嵐 令子
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 577-579
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The homogeneous hydrogenation of sorbic acid catalyzed by dihydrido (1, 3-diphenyltriazenido)bis (triphenylphosphine) rhodium ( DI ) (dihydridorhodium complex) in several solvents was studied under a 1 atm pressure of hydrogen at 50°C. The catalytic hydrogenation activity was found to decrease in the following order:
    Dimethyl su lfoxide (DMS0) > N, N-Dimethylformamide > Acetone > Benzene = Toluene > Tetrahydrofuran.
    The hydrogenation of sorbic acid with dihydridorhodium complex in the range of 30 to 60°C has been studied in DMSO. Main product obtained was trans-2-hexenoic acid at 30 and 40°C, and trans-2-hexenoic acid was further hydrogenated to hexanoic acid at 50 and 60°C. The apparent overall activation energy for the hydrogenation of sorbic acid with dihydridorhodium complex was estimated to be 51.0kJ mol-1.
  • 米田 昭夫, 白子 忠男
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 580-581
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    As polyligand souce, 2-vinyl-8-quinolinol (VQ) was prepared and polymerized at 60°C with 2, 2'azobisisobutyronitrile (AIBN). Vapor pressure osmometric analysis indicated that the molecular weight of the resultant polymer was small. VQ was copolymerized with styrene, methyl methacrylate, and vinyl acetate. The copolymers formed complexes with copper (II) perchlorate. Similar polymer complexes were obtained in the copolymerization between bis (2-vinyl-8-quinolinolato) copper (II) and styrene.
  • 古南 博, 澤井 一喜, 人見 充則, 安部 郁夫, 計良 善也
    1994 年 1994 巻 6 号 p. 582-584
    発行日: 1994/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reactivity of nitrogen monoxide (NO) with several kinds of commercial charcoals for the fuel use was examined at 300-500°C by using a pulse reaction technique (Table 1). Among the charcoals studied mitsumata (Edgeworthia) charcoal that contained the highest level of potassium exhibited the highest activity for reduction of NO into N2. The NO-C reaction was remarkably enhanced by Cu-Cr metal loaded on charcoals. Conversion of NO significantly increased in the presence of propene because, in addition to the NO-C reaction, the NO-propene reaction was promoted by potassium present in the charcoal (Table 2).
feedback
Top