グリシンおよびアミノポリカルボン酸一銅(II)錯体とD-ペニシラミン(PasH)との配位子交換をストップトフロー分光光度法を用いて研究した.鰐象としたアミノポリカルボン酸は,イミノニ酢酸(IDA),N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(BHEG),N-(2-ヒドロキシエチル)イミノニ酢酸(HIDA),N-(2-カルボキシエチル)イミノニ酢酸(CIDA),ニトリロ三酢酸(NTA),ニトリロ三プロピオン酸(NTP)である.いずれの場合も,最終生成物はビス(ペニシリナト)銅(II),Cu(II)(Pas)
2,である.ビス(ペニシリナト)銅(II)はS→Cu(II)による電荷移動(CT)吸収(λ
max=332,390nm)をもち,酸化還元的に安定である.グリシン,トリエタノールアミン,NTPを除く総ての錯体は,反応中間体としてペニシラミンとの混合配位子錯体を形成した.混合配位子錯体は紫外部にCT吸収帯(λ
max=345-355nm)と可視部にd-d遷移吸収帯(λ
max=670-700nm)を示した.混合配位子錯体の生成速度は非常に速く,速度定数k
1+は測定不可能であった.混合配位子錯体からCu(II)(Pas)
2への配位子交換の速度は,ペンダント配位子(-C
2H
4OH,-CH
3COOH)の静電的性質と数に依存し,速度定数k
2+の大きさは次に示す序列になった;(Pas)Cu(II)(IDA)>(Pas)Cu(II)(BHEG)>(Pas)Cu(II)(HIDA)>(Pas)Cu(II)(CIDA)≧(Pas)Cu(II)(NTA).
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