日本化学会誌(化学と工業化学)
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1995 巻, 2 号
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  • 吉久 寛, 宮村 一夫, 合志 陽一
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水相に界面活性剤を含有する水一ニトロベンゼン-水三相液膜系は,自励電位発振が観測されることで知られる.装置系の改良により,電位振動の再現性を向上させた.振動の安定性は外壁の材質に強く依存し,界面が平滑になるテフロンを用いた系では,ガラスの系と比較して振動が著しく安定になった.このことから振動の開始に固一液界面が関与することがわかった.振動の波形・振幅・周波数などは時間経過と共に変化し,3種に分類される振動モードが観測された.第1期には鋭い電位パルスが両方の水一ニトロベソゼン界面で観測され,一方第2期では周期的振動が界面活性剤を含有する側の界面のみで観測された.第3期には非周期的な振動が第2期と同じ界面のみで観測された.これらの知見からこの液膜系について新しい振動機構を提案した.
  • 田原 勝彦, 糸井 泰, 西山 覚, 鶴谷 滋, 正井 満夫
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液相反応における担持Rh-Sn触媒によるオレイン酸メチルニ量体のC=O結合およびC=C結合の水素化活性について調べた.RhだけではC=O結合の水素化に活性を示さないがSn/Rh比(重量比)が高くなるにつれてC=O結合の水素化活性は上昇しC=C結合の水素化活性は減少した.触媒調製時の還元温度は,C=C結合の水素化に大きく影響し,還元温度を高くするとC=C結合の水素化活性は減少した.これは高温ではSnが還元されてRhとよく混合するためと思われる.触媒調製時のSn化合物の種類によってC=O結合とC=C結合の水素化活性は変化し,SnEt4とSnCl2がC=O結合の水素化に有効であった.担体の種類もC=C結合とC=O結合の水素化活性に影響を与え,アルミナとチタニアがC=O結合の水素化に有効であった.また酸性担体を用いて調製したRh-Sn触媒は副反応のエステル交換反応を促進した.
  • 矢田 智, 高木 弦, 冷水 真
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    8族金属触媒によるノナナールの還元アミノ化を行い,第一級アミンのノニルアミン(1),第二級アミンのジノニルアミソ(2)および第三級アミンのトリノニルアミン(3)の生成に対する触媒の選択性を検討した.1の生成率はPd < Os < Pt < Rh < Ir < Raney Ni(R-Ni)=Ru < RaneyCo(R-Co)の順で,R-Coで94%,R-NiとRu触媒で87%と1が高収率で生成した.PdとOs触媒上では1よりも2が多く得られ,2の収率はそれぞれ62%と53%で,特にPd触媒上では1の生成は24%にすぎなかった.3はPd触媒(6%)やOs触媒(1%)上でのみわずかに生成した.NH4C1を添加しても1の生成は増加しなかったがパラジウム黒触媒上ではNH4Clの添加により3の生成が6%から45%に増加した.反臨中に中間体として生成するシッフ塩基(5)の最大生成量はR-Niで69%,R-Coで67%,Ru触媒で53%といずれもこれらの触媒上で最終的に生成する2の量よりはるかに多く,これらの触媒上では5にアンモニアが付加してイミン(4)と1に分解する経路が存在することが判明した.また3の前駆体(8)が中間体として生成することが認められた.8に関しても5と同様の分解経路が存在することが判明した.触媒による1および2への選択性の相違を5のエナミンへの異性化を含む反応経路を考慮して考察した.
  • 北島 囲夫, 藤田 隆之, 小林 邦康, 田草川 信雄
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層電荷が1.0のLi型テニオライト(LiMg2LiSi4O10F2)およびNa型テニオライト(NaMg2LiSi4O10F2)を母塩結晶として,塩化アルミニウム水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下する方法,金属アルミニウムを塩酸に溶解する方法およびこの溶液をゼオライトで処理する方法で調製した多核ヒドロキソアルミニウム水溶液を用いてそれぞれアルミナ架橋フッ素雲母を合成し,架橋フッ素雲母の耐熱性に与える挿入アルミニウムイオン種およびホスト雲母種の影響について検討した.その結果,溶液の調製方法が異なっても同種のアルミニウムイオン種が存在する溶液から得られる架橋フッ素雲母は,比表面積および耐熱性に大きな相違は認められなかった.ゼオライトで処理することによって得られる単一のアルミニウムポリマー種を含む溶液から調製される架橋フッ素雲母は,アルミニウムポリマーとアルミニウムモノマーが共存する溶液から得られる架橋フッ素雲母に比べて,ピラー密度が高くなるとともにピラーの分布が均質になるため,比表面積および耐熱性が増大した.Na型テニオライトから得られる架橋フッ素雲母はLi型テニオライトから得られる架橋フッ素雲母に比べて比表面積,細孔容積および耐熱性が増大した.これは,ホスト雲母結晶子の形態および結晶性の相違に起因すると考えられた.
  • 志村 英一, 湧井 勝弘, 高本 進
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ある種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のチオシアン酸塩の過荊を含むコバルト(II)水溶液に,非イオン界面活性剤であるトリトンX-100を加えると,深青色のタール状ゲルが析出した.それらのゲルはバリウム塩を除けば,MJ2 [Co(NCS)4] ⋅ 2TritonまたはMII [Co (NCS)4]⋅ 2Tritonのような化学量論的付加物で,これらの組成は,生成時のトリトン濃度をいろいろ変化させても,本質的には不変であった。チオシアン酸塩の対イオンはゲルの生成に大きな影響を与えた.リチウム,マグネシウム,カルシウムのチオシアン酸塩ではゲルをつくらず,一方チオシアン酸バリウムはコバルト(II)がなくても沈殿し,非化学量論的なトリトン付加物をつくった.青色ゲルの生成収率には次の順序がみられた.Ba2+ > K+ =Rb+ > Cs+ > NH4+ > Sr2+ > Na+.上澄み液に残るコバルト(II)の回収率はどの対イオンの場合でも,最初に添加したトリトンとコバルト(Il)のモル比が2の付近で最小となった.
  • 鄭 主恩, 濱田 健一, 酒井 宏水, 武岡 真司, 土田 英俊
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボニルヘモグロビソ(H6CO)からオキシヘモグロビン(H6O2)への配位子交換を行うために,酸素気流下HbCO液膜に可視光を照射して光解離させたHbに酸素が結合する挙動を検討した.HHCOの減少速度は照度の増大と共に増大し,照度2.0×105lx(酸素分圧760Torr)で飽和に達した.また,この照度で酸素分圧を760TorrからOTorrまで低下させると速度は1/5に減少した.静止系では液膜厚の増大と共にHbCOの減少速度が低下するが,かきまぜ系では逆に増大した.流動液膜型配位子交換装置を作製して流速とHbCO減少量との関係を求め,Hb小胞体分散系とHb溶液系を比較した結果,Hb小胞体系の方が効率良く配位子交換されることが明らかとなった.
  • 李 洪玲, 氏平 祐輔, 中村 勉, 流王 俊彦
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 128-135
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカ粉末を混入したシリコーンゴムについて,シリカの疑似橋かけ構造が自由体積に及ぼす影響および30Kから融点付近までの自由体積の温度依存性を,陽電子消滅γ線のピークプロフィル解析(Sパラメーター)および陽電子消滅寿命測定によって調べた.陽電子消滅曲線は非線形最小二乗法により解析し,平均寿命(τ=τ1I12I23I3)および自由体積の直接的な測度となるオルトポジトロニウムの寿命(τ3),相対強度(13)を求めた.自由体積の大きさは,τ3を中西-Jeanの式に代入して求めた.橋かけ構造を持つエラストマーの自由体積の大きさは,ポリマーの橋かけ度,シリカ-シリカの疑似橋かけによって異なること,自由体積の大きさや濃度は,ガラス転移温度,融点など熱膨張係数が変化する温度で変化することが認められた.また,ゴムの硬度増大のために混在させるシリカ粉末の含有量が増大すると,自由体積の濃度は減少することが認められた.
  • 三井 和博, 岡部 勝
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 136-143
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の冷却速度で作製した直鎖高密度ポリエチレン(LHDPE)-デカリン系ゲルの融解温度(Tgm)とゲル中の結晶の融解よって生じる吸熱ピークを同時測定し,ゲルの融点とLHDPE結晶の融解過程との関係を明らかにすることを目的とした.速い冷却速度で作製したゲルでは,融解にともなう吸熱ピークが分裂してくるとともに,分裂によって形成した二つのピークの温度とTgmはいずれも冷却速度の増加とともに低下した.このとき低温側のピークの方がより大きく低下し,高温側のピークとTgmはほぼ同様な傾向をもち緩やかに低下した.また,Tgmは二つの吸熱ピークの間に位置し,高温側のピーク温度より1K程度低くなる傾向があった.Tgm直下および直上まで加熱・再冷却したゲルの形態を観察した結果,Tgm直下まではLHDPE結晶はほとんど溶媒中には溶け出さず,Tgm直上でLHDPEのラメラ晶の端から溶媒中に溶け出すことが判明した.また,ゲルの網目構造が消失するための臨界条件を,LHDPE結晶の融解過程で現れる吸熱ピークの全面積に対するTgmに至るまでの面積の比によって評価すると,ゲルの組成やゲル作製時の冷却速度によらず,0.6~0.7程度になることが明らかになった.これらのことから,Tgm前後でゲルの三次元網目構造が消失する過程を考察した.
  • 増岡 登志夫, 溝口 健作, 南 達郎, 佐藤 登
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    化学的に安定なポリオレフィソ系素材を用いたアルカリ系二次電池用セパレーターの開発を目的として,低温プラズマ(LTP)によってポリオレフィン不織布(セパレーター)表面に誘起されるアクリル酸のグラフト重合による親水化処理を検討した.ここで用いた不織布は,ポリプロピレンを芯にして表面をポリエチレンで覆った直径20μmの繊維からつくられており,密度789/m2,厚さ210μmのシートであった.グラフト重合は,アルゴンプラズマ(ガス圧力13.3Pa,13.56MHzラジオ波励起電力10W)を所定時間不織布に照封後,モノマー蒸気を反応器内に導入して所定時間重合反応させる方法を用いた.グラフト率は,重合時間とともに増加したが(60秒LTP照射の場合,重合時間60秒でグラフト率1.8%,10800秒では4.9%),LTP照射時問にはほとんど依存性を示さなかった(重合時間60秒の場合,LTP照射時間5秒から300秒の範囲でグラフト率0.6~0.7%).X線光電子分光法(XPS)を用いた表面分析によると,グラフト率の増加とともにグラフトポリマーによるピーク(O1s=535eV,O1s=289eV)も増加することを確認した.また,グラフト重合は不織布内部の表面にも起こっていると見られ,電池セパレーターとして重要な特性である電解液保持率は,60秒LTP照射,30秒重合(グラフト率0.4%)の時267%(未処理時108%)を示し,従来用いられてきたポリアミド系不織布と遜色のない性能であることを確認した.
  • 豊田 昌宏, 浜地 幸生, 伴野 国三郎
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゾル-ゲル法によりチタン酸ジルコン酸鉛繊維のえい糸を試みた.Pb(Ti0.5,Zr0.5)03のモル比に対応した酢酸鉛(II)三水和物と,チタソテトラ(イソプロポキシド)溶液,およびジルコニウムテトラ(プロポキシド)の混合溶液をそれぞれ,2-メトキシエタノールの存在下で還流・精製を行い,得られたPb(II)アルコキシド,および,TiとZrを含むアルコキシドを混合し,さらに,還流・精製を行うことによって,鉛チタソジルコニウム複アルコキシド溶液を得た.得られた鉛チタンジルコニウム複アルコキシド溶液を部分加水分解し,ゲル化時間,粘度などの溶液特性とえい糸性を観察した.本法により得られた鉛チタンジルコニウム複アルコキシド溶液に触媒として酸,塩基,水を添加し,ゲル化時間を調べたところ,酸触媒の場合にゲル化時間が長く,すなわち液の安定性が高かった.また,水の添加による加水分解により粘度調整を行うことによりえい糸可能な安定なゾルが得られ,粘度が約10ボアズ程度に達したとき,直径10-100μmの薄い黄色の透明Pb(Ti,Zr)O3ゲル繊維が得られた.このアルコキシド溶液は連続えい糸性を示し,この繊維を焼成したところ薄片状の集合体からなるペロブスカイト単一相Pb(Ti,Zr)O3繊維が得られた.
  • 松山 永, 見城 忠男
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The potential-step chronoamperometry method has been applied to Pt/yttria-stabilized zirconia and Pt/samaria-doped ceria air cathodes, and current decay curves in response to applied potentials have been measured. It was assumed that oxygen ad-atoms formed by dissociative adsorption on platinum surface diffuse through the platinum electrode-solid electrolyte interface and then are reduced electrochemically to oxide ions. A decay equation was derived on the basis of the above reaction model. The kinetic parameters involved in it were determined by curve-fitting to the experimental values. The exchange current density and interfacial diffusivity were calculated from the parameter values thus obtained.
  • 高橋 己之一, 榊原 保正
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 160-163
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to reinvestigate the interpretation of the data reported with respect to 1H-NMR spectra of la-hydroxyvitamin D2 (1a) and (24S) -1α -hydroxyvitamin D2 (1b), 1b and 28-deuteriated vitamin D2derivatives (1c) were synthesized efficiently via C-22 aldehyde (2). Both 1a and 1b have been examined by 1H-NMRs pectroscopy to clarify that 1) the 1H-NMRs ignal assignments of the 21-H and 28-H were reverse in previous data, 2) two doublets (J=6.6 Hz) due to the 21-H of 1a and 1b are clearly observed at δ =1.017 and 1.009, respectively.
  • 政田 浩光, 三口 史雄, 土井 靖夫, 林 彰
    1995 年 1995 巻 2 号 p. 164-166
    発行日: 1995/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    t is a well-known result that the reactions of t-alkyl halides with alkali metal aryl oxides and alkoxides in protic solvents give olefins (E) almost exclusively. By contrast, we found a new method for the Williamson ether synthesis in the reactions of t-alkyl halides with alkali and alkaline earth metal phenoxides and alkoxides at 60-90° C in nonpolar solvents (hexane and heptane). The yields of t-alkyl phenyl ethers and t-butyl alkyl ethers (SN) were moderate. The selectivity of SN/E was governed by solvent, metal cation (Li+, Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Sr2+, and Ba2+), nucleophile, and substrate. The nonpolar solvents were much more effective for the SN reaction than polar solvents.
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