種々の冷却速度で作製した直鎖高密度ポリエチレン(LHDPE)-デカリン系ゲルの融解温度(T
gm)とゲル中の結晶の融解よって生じる吸熱ピークを同時測定し,ゲルの融点とLHDPE結晶の融解過程との関係を明らかにすることを目的とした.速い冷却速度で作製したゲルでは,融解にともなう吸熱ピークが分裂してくるとともに,分裂によって形成した二つのピークの温度とT
gmはいずれも冷却速度の増加とともに低下した.このとき低温側のピークの方がより大きく低下し,高温側のピークとT
gmはほぼ同様な傾向をもち緩やかに低下した.また,T
gmは二つの吸熱ピークの間に位置し,高温側のピーク温度より1K程度低くなる傾向があった.T
gm直下および直上まで加熱・再冷却したゲルの形態を観察した結果,T
gm直下まではLHDPE結晶はほとんど溶媒中には溶け出さず,T
gm直上でLHDPEのラメラ晶の端から溶媒中に溶け出すことが判明した.また,ゲルの網目構造が消失するための臨界条件を,LHDPE結晶の融解過程で現れる吸熱ピークの全面積に対するT
gmに至るまでの面積の比によって評価すると,ゲルの組成やゲル作製時の冷却速度によらず,0.6~0.7程度になることが明らかになった.これらのことから,T
gm前後でゲルの三次元網目構造が消失する過程を考察した.
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