日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1996 巻, 5 号
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  • 新庄 博文, 鈴木 正, 高橋 直樹, 横田 幸治, 杉浦 正沿, 松浦 慎次
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 433-440
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    自動車用 Pd 三元触媒への La や Ba 成分の添加は NOx 浄化活性の向上に有効である。触媒の耐久性に及ぼす La と Ba の添加効果を比較する目的で,γ-アルミナ担持 Pd 触媒および,これに La あるいは Ba を担持した触媒を,排気モデルガスを用い て600℃ から 900℃ で耐久試験した後,排気モデルガスを用いて温度を変化させた降温測定と雰囲気を変化させた空燃比測定による触媒活性測定,並びに比表面積測定, XRD 測定, TEM 観察および IR 測定による耐久触媒のキャラクタリゼーションを行った。耐久試験後の触媒活性を比較した結果, 800℃ 以上の高温耐久後,還元雰囲気下での NOx 浄化活性において Ba 添加触媒が La 添加触媒を大きく上回ることを見いだした。耐久試験後の比表面積の低下率および P d粒子径は両触媒とも同等であったこと,一部の La や Ba はアルミン酸塩を形成していたが,炭酸塩として残存している割合は Ba の方が大きかったことから, Ba 添加触媒の耐久性が La 添加触媒のそれよりも高いのは Ba が La に比べてγ-アルミナと反応し難く,アルミン酸塩形成による失活が小さいためであると推定した。
  • 松倉 清治, 藤田 隆之, 田草川 信雄, 北島 圀夫
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 441-448
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    精密に細孔特性を制御したクロミア架橋フッ素雲母を合成する研究の一環として,イオソ交換容量およびピラー密度を規定する層電荷に着目し,層電荷の異なるLi+交換型テニオライト系合成フッ素雲母[LixMg3-xLixSi4O10F2(x=O.8,0.5)]を調製条件の異なる各種の多核ヒドロキソクロム(III)溶液と反応させ,層電荷が挿入クロム(III)イオン種およびクロミア架橋フッ素雲母の性質に及ぼす影響を検討した。その結果,層電荷が大きいフッ素雲母にはCr(III)単量体やオリゴマーのような単位陽電荷あたりの断面積が小さいクロム(III)イオン種が挿入されやすいのに対し,層電荷が小さいフッ素雲母にはかさ高く陽電荷密度の小きい高重合度のヒドロキソクロム(III)ポリマーイオン種が挿入されやすくなることが判明した。また,挿入クロム(III)イオン種のイオン交換選択性は,層電荷の大きさばかりでなく,用いる溶液中に存在する各クロムイオン種の相対含有率にも依存することが明らかになった。層電荷が大きい雲母から得られる架橋体は,200~300℃ 加熱時にはミクロ細孔が生成し,層電荷が小さい架橋体に比べ大きな比表面積と細孔容積を示した。これに対し,層電荷が小さな雲母から得られる架橋体は,よりかさ高いポリマー種が挿入される結果,底面間隔値が大きく,かつ耐熱性も高くなり,層電荷の大きな架橋体に比べより高温まで比較的大きな比表面積と細孔容積を維持した。
  • 西田 正志, 吉田 烈, 石井 大道, 新海 征治
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 449-456
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシカリックス[n]アレーンのヒドロキシル基のパラ位置にスルホソ酸基を導入して,水溶性を付与したヒドロキシカリックス[n]アレーン-p-スルホソ酸ナトリウム(n=4,6,8,以下 Nan.1nと略記する)は,弱酸性水溶液中で金属イオソに対する配位子として作用し,希土類金属イオン(Ln3+)などと反応して水に難溶性の金属錯化合物を生成した。単離した金属錯化合物の元素分析結果,赤外吸収スペクトル,錯化合物の生成量に対する金属イオンと配位子の混合比,水素イオンおよび共存陰イオン濃度の効果などを検討することにより,これらは主として NaLnl4・mH2O(m=7-15), Ln2l6・mH20(m=17-40) および Ln2H2l8・mH2O(m=14-35) の組成を有する。塩としての性質が強いスルホナト型のキレート化合物であると結論した。これらの配位子は,アルカリ土類金属イオン(M2+)とも同種の難溶性化合物, M2l4・nH2O(m=5-10), M3l6・mH2O(m=5-22) M4l8・mH2O(m=6-20) を生成した。また,ジルコニウム(IV),ハフニウム(IV)およびトリウム(IV)イオンともより難溶性の高い金属錯化合物を生成した。これらの化合物についても同様の方法により検討を加え,これらは配位子上縁部のスルホン酸基だけではなく,下縁部のヒドロキシル基も金属イオソとの結合に関与した錯体であると結論した。
  • 村上 和雄, 掛本 道子, 小川 裕康
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 457-461
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光架橋性高分子の PVA-SbQ を用い,酵素活性を失わせることなく乳酸オキシダーゼ,グルタミン酸オキシダーゼ,グルコースオキシダーゼを固定化した固定化酵素膜を作製した。この膜で電気化学検出器の作用電極を被覆してバイオセンサーをつくり, HPLC の分離カラムの後に接続した。これら 3 種の酵素は,いずれも乳酸,グルタミン酸,グルコースの酸化反応に触媒作用を示し,過酸化水素を生じさせる。この過酸化水素を電気化学検出器でアンペロメトリックに測定した。本法の検出感度は,示差屈折率検出器より約 100 倍感度が高かった。最小検出量は約 70ng(S/N比=3)であった。酵素の分子識別機能と電気化学検出器という選択性を利用するため前処理は簡略化でき,試料は希釈するだけでよかった。市販の乳酸飲料,日本酒,ワイン,サラダドレッシソグ中の乳酸,グルタミン酸,グルコースの定量に応用し良好な結果が得られた。
  • 奈良部 晋一, 刈込 道徳, 葭田 真昭, 戸田 敬
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 462-463
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-(1-ハロアルキル)オキシラン(1)とチオカルバミソ酸アンモニウム(2)の反応について検討した。(RS)-2-[(RS)-α-プロモベンジル]オキシラン(1a)と熱フェネチルチオカルバミン酸フェネチルアンモニウム(2a)はメタノール中,室温で反応し,革フェネチルチオカルバミン酸ひ(β-プロモ-α-ヒドロキシフェネチル)(3a)を生成した。さらに, 3a は DMSO 中,フェネチルアミンと反応して,立体特異的に trans-2-フェニルチエタン-3-オール(4a)を与えた。これを拡張して他の 2-(1-ハロアルキル)オキシラン(1b-e,6,10)についても,本反応を用いて相当するチエタン-3-オール類を合成することができた。さらに,チエタン-3-オール類の生成の合理的な反応機構について考察を行い,本反応が 2 を硫黄源として用いるチエタン誘導体の親規な合成法であることを明らかにした。
  • 喜多 裕一, 高橋 由幸, 岸野 和夫, 中川 浩一
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 471-476
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸(MAN)と 2,4,6-トリブロモアニリン(TBA)から N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド(TBPMI)を合成する工業的生産の開発を念頭において研究を行った。MAN とアニリン(ANL)から熱フェニルマレイミド(PMI)の前駆物質である N-フェニルマレイソアミド酸(PMA)が収率良く得られるが, N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイソアミド酸(TBPMA)は,これよりもと厳しい条件下においてさえも合成することはできなかった。さらに,オルトリン酸を触媒とすればキシレソの還流条件下で PMI を高収率で得ることができるが,同条件で TBPMI はきわめて低い収 ο-率でしか得ることができなかった。しかし,溶媒を ο-キシレンと同様の不活性な溶媒であるが沸点が約 20℃ 高いメシチレンを用いて,その還流条件下の 168℃ で反応させると,高い収率で TBPMI が得られることが明らかとなった。
    この一連の反応における自由エネルギー(ΔG)変化に関する考察によって,エネルギー障壁の最も高い部分は一段目の第一級アミンと MAN との反応から N-置換マレインアミド酸を合成する部分にあることが推定され, TBPMA 生成反応の ΔΔG は, PMA の生成に比べ約 2.6 倍以上大きく TBPMA の生成が PMA に比べて困難であることが示唆される。この計算結果により上記実験結果をよく説明できるとともに,触媒として加えたオルトリン酸は, TBPMI の合成用触媒だけでなく TBPMA の合成触媒としても働いていると考えられる。この反応によって得られた TBPMI の融点は 142℃ であり, IR, 1H-NMR によってその構造を確認した。
  • 山崎 偉三雄, 二口 誠, 小野 慎, 吉村 敏章, 森田 弘之, 作道 栄一, 高井 潤子, 島崎 長一郎
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 477-482
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ワキシコーンスターチ糊液の老化を示差走査熱量測定(DSC)と粉末 X 線回折を用いて研究した。DSC は -15℃ から 15℃ ,および 30 から 100℃ の温度範囲で測定した。糊化直後の糊液では 0℃ 付近に鋭い吸熱ピークが観測され,これ以外に吸熱は観測されなかった。長期放置して糊液が老化すると 50℃ 付近に再糊化の吸熱ピークが観測され,また 0℃ 付近の吸熱ピークは二つに分かれた。これら両者の吸熱ピークは互いに関連しており,ともに老化の結果であると考えられる。一方,糊液を凍結させて放置したところ, 72 日経過しても老化に起因する吸熱ピークは観測されなかった。また,老化した糊液中のワキシコーンスターチの X 線回折を測定すると B 型の結晶構造の回折線が観測された。また 3 種類の濃度の糊液を調製し,老化挙動を比較したところ,老化の速度は著しく影響を受けたのに対し,デンプン乾物量換算した吸熱量はほぼ一定の値になった。このことは糊液老化の機構が濃度により影響を受けないことを示している。これらの結果から糊化,老化の際のワキシコーンスターチの分子構造の変化を提案し,模式図として示した。
  • 原 万里子, 樋口 真弘, 箕浦 憲彦, 大内 将吉, 曹 鍾守, 赤池 敏宏, 樋口 亜紺
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 483-490
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(α-アミノ酸) Langmuir-Blodgett(LB) 膜にウシ血清アルブミン(BSA)が物理吸着された BSA 固定化 LB 膜を調製した。BSA 固定化 LB 膜を 0.01M,D- ならびに L- トリプトファン水溶液に浸漬させ,円偏光二色性(CD)スペクトル変化を測定し,基質認識性を観察した.D-トリプトファン水溶液に BSA 固定化 LB 膜を浸漬させると,膜中のα-ヘリックス含量が減少し,L-トリプトファンの場合には,α-ヘリックス含量は増加した。BSA を含まない LB 膜では,基質応答性は観察されないことから, CD スペクトルの基質応答性は, BSA 固定化 LB 膜中のアルブミンホストと水溶液中のトリプトファンゲストとの特異的結合に基づくアルブミンの立体配座変化に起因すると考察した。更に,トリプトファン結合に起因する BSA のα-ヘリックス含量変化は, BSA 固定化 LB 膜と BSA 包括膜並びに BSA 水溶液とは異なり,正反対の増減の仕方が観察された。共焦点レーザー顕微鏡測定から, BSA 固定化 LB 膜中の BSA は配向していることが明らかとなり,ランダムに BSA が存在する水溶液系と包括膜系とは異なった CD スペクトル変化を示したと考察した。
  • 上田 裕清, 倪 静捧, 戸田 泰弘, 張 貴博, 柳 久雄
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 491-499
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N'-ジメチルペリレン-3,4:9,10-テトラカルボン酸ジイミド(Me-PTC)をインジウム-スズ酸化物(ITO)ガラス,ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)コーティングガラスおよびKBr(001)へき開面上に真空蒸着した。ITOガラス上の膜は無配向多結晶膜から形成されていた。一方,PTFEコーティングガラスおよびKBr上に蒸着した膜は配向膜から形成され,100℃ あるいは150℃ に保った基板上で次の関係で配向成長した :[010](001)Me-PTC//[001](100)PTFE-150℃, [010](001)Me-PTC//[110](001)KBr-100℃, (102)Me-PTC//(001)KBr-150℃ および [010]Me-PTC//[110]PTFE-150℃=±15°. ITO上の膜はそのまま,また,PTFEコーティングガラスおよびKBr上の膜は基板からはく離したのちITOガラス上にすくいとって薄膜電極とし,湿式電池(ITO/Me-PTC/0.5mMI2, 0.1M KI/Pt)を作製した。Me-PTCの導電型は溶液中のI2のドーピングによりn型からp型に変化した。配向膜を用いた電池の性能パラメーターは,無配向膜を用いた電池の値と比較して約3倍向上した。Me-PTC薄膜を用いた太陽電池の性能向上には膜中の分子配列制御とともに粒子径の制御が重要であることがわかった。
  • 冨安 文武乃進, 荒井 直昭, 小山 英樹, 劉 国林, 尾張 真則, 二瓶 好正
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 500-507
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    都市人工空間には,多様な起源の浮遊粒子状物質が存在し,その空間に起源を有する粒子の他,外部大気から取り込まれる粒子も少なくないと考えられる。発生源の特定は,環境衛生上重要な課題であるが,従来の起源解析手法では困難である。本研究では,典型的都市人工空間である地下街の粒子状物質を対象とし,発生起源の推定を行った。具体的には, 1992 年 2 月九州地区の地下街,階下の地下駐車場,それらの換気口付近の外部路上の 3 地点において,それぞれ三つの時間帯にパーソナルエアサンプラーにより捕集した.重量濃度は,ビエゾバランス粉じん計により計測した。電子線マイクロアナライザーを用いて粒子ごとに X 線スペクトルを測定し,個々の粒子の組成に基づきクラスター解析を行い,各試料ごとに起源推定を行った。起源解析結果より,地下街や地下駐車場の浮遊粒子状物質には,外部大気に由来する粒子と,各人工空間に固有の起源を有する粒子のいずれもが含まれることがわかった。また,人工空間内の粒子状物質組成に対する強制換気などによる外部からの影響が大きいことが明らかとなった。さらに,人工空間の構造や,換気システムの設計ならびに運転方法が人工空間内の汚染を制御する上で重要な役割を担うことがわかった。
  • 政田 浩光, 山本 文将, 奥田 敏章
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 508-512
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The SN reactions of t-alkyl alcohols with 1-adamantyl methanesulfonate and amines (molar ratio 10/1/1) were carried out at 80 - 100 °C under a nitrogen atmosphere. The corresponding products were obtained in 59- 94% yields, i.e., 1-adamantyl t-butyl ether (90%), 1-adamantyl t-pentyl ether (86%), 1-admametl 1, 1-diethylpropyl ether (82%), 1-adamantyl 1, 1-dipropylbutyl ether (59%), 1-adamantyl, 1-adamantyl 1-methyl-1-phenylethyl ether (71%), 1-adamantyl 1, 1-dimethy1-2-propenyl ether (90%), and 1-adamantyl 1, 1-dimethyl-2-propynyl ether (94%). In spite of the steric hindrance of t-alkyl alcohol and 1-adamantyl substrate, the yields o f the ethers were good to excellent. However, 1-adamantyl iodide was much less reactive than 1-adamantyl methanesulfonate even under severe conditions. The electronic effect of the functional group of t-alkyl alcohol was also exhibited. The optimum reaction conditions were examined, and the reaction mechanism was proposed.
  • 鈴木 信市, 土田 雄平, 小原 秀一, 尾上 薫, 山口 達明
    1996 年 1996 巻 5 号 p. 513-515
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to increase the conversion of methane in dehydrogenative coupling of methane using a thermal diffusion reactor, the effects of coexistent inert gas have been tested. Argon is chosen as a coexistent inert gas which induces the concentration of methane in the reaction zone of the reactor without altering the temperature gradient. The methane conversion increased with increasing the molar fraction of argon of feed gas, and the maximum yield of gaseous hydrocarbons (mainly ethylene and acetylene)was obtained when the molar fraction of argon was 30%.
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