日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1996 巻, 8 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 塩山 洋, 榊原 裕之
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 673-679
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グラファイト層問における金属微粒子形成の反応メカニズムについて紹介する。各種の金属塩化物-グラファイト層間化合物(GIC)をリチウム-ナフタレン-有機溶媒の混合物中に浸漬すると,グラファイト層間で金属塩化物が還元されて金属の微粒子が生成する。この金属微粒子の粒径を, X 線回折図形の線幅と透過型電子顕微鏡像より見積もった。その結果粒径は,微粒子の前駆体がグラファイト層間を移動する際の活性度によって決定され,それは金属の融点や反応温度に依存することが明らかになった。このメカニズムによると,出発物質である GIC のステージ数が小さいほど,得られる金属微粒子の粒径は大きいという実験事実もよく説明できる。粒径は還元反応に用いる溶媒によっても影響を受ける。溶媒の分子がリチウム原子と共に GIC に層間挿入される場合は,比較的大きな金属微粒子が得られた。また TEM 像を詳しく解析すると,グラファイト層間で得られる金属微粒子は,硬貨の形状をしていることが分かった。このようにして得られた複合材料は触媒としての応用が期待できる。
  • 竹田 清志, 佐野 庸治, 川上 雄資
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 680-686
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体高分解能 27AIMAS NMR はゼオライト骨格構造中の Al 量を定量する極めて有効な方法である。しかし,固体高分解能 NMR は必ずしもすべて金属種に対して有効でないため,固体高分解能 NMR によりメタロシリケート骨格構造中の金属量を正確に定量することが困難な場合がある。そのため,メタロシリケート骨格構造中の金属量を正確に定量する新しい方法の開発が望まれている。本研究では,水の吸着による ZSM-5 型鉄シリケート骨格構造中の鉄量の評価について検討した。種々の SiO2/Fe2O3 比の鉄シリケートを合成し,水の吸着等温線を測定した。得られた水の吸着等温線の D-R プロットから,細孔容積 W0(H2O)は骨格構造中の鉄量の増加とともに直線的に増加すること,および鉄シリケートの橋架けヒドロキシ基 Si(OH)Fe(Br=nsted酸点) 1 個当たりの吸着水分子数は約 5.5 個であることが明らかとなった。このことは,水の吸着量から鉄シリケート骨格構造中の鉄量を定量することが可能であることを示している。
    また,得られた結果を基に空気中での熱処理(873~1073K)による鉄シリケート骨格構造中からの鉄の脱離挙動について検討した。熱処理後の鉄シリケートの水の吸着から求めた細孔容積 W0(H2O)は熱処理時間とともに減少し,その変化から求めた鉄の脱離速度は骨格構造中の鉄量の二次で見かけ上整理できることが明らかとなった。
  • 菅野 亨, 小林 正義
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 687-694
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化マグネシウムを基本成分とした混合組成の異なる各種マンガン-マグネシウムおよびリチウム-マンガン-マグネシウム複合酸化物について, DTG/DTA (微分熱重量/示差熱分析)曲線および各種前処理条件下の XRD (X線回折)パターンの解析により,マンガンおよびリチウム-マンガン導入による酸化マグネシウム結晶特性への修飾効果を調べた。
    低マンガン量サンプル(5-10mol%-Mn),および高マンガン量サンプル(50-80mol%-Mn)の主たるDTA吸熱ピークは,同温度域に重量減少を伴い,出発物質である酢酸マンガン(II)(628K)および水酸化マグネシウム分解(697K)ピークとは異なっており,これら2種類のサンプルの熱特性の違いは,両サンプルを構成する化学種の違いを示唆した。1073K処理後のXRDパターン測定で観測された化学種は,低マンガン量サンプルでは, MgO, MnO およびと Mn-Mg 酸化物固溶体であったのに対し,高マンガン量サンプルでは固溶体のみであり,これらの構成化学種の違いが DTA/DTG ピーク温度の違いに反映されたと結論した。
    各種組成サンプルについて得られた X 線回折線幅変化の Hall の式による解析から,リチウムおよびマンガンそれぞれについて結晶子径および結晶格子ひずみに対する修飾効果の分離を試みた。その結果マンガンの添加量の増加,すなわちマンガン-マグネシウム固溶体生成に伴い,結晶格子ひずみが大きくなることを定量的に明らかにした。またリチウムの修飾効果は,低マンガン量サンプルと高マンガン量サンプルで大きく異なっていた。すなわち低マンガン量サンブルにおいては,リチウムの添加は,マンガンの酸化マグネシウム中への分散性を向上させ,酸化マグネシウムの格子ひずみを減少させた。一方,マンガン高添加量サソプルにおける結晶子径は,リチウムの添加により無添加と比較し最大約 10 倍まで増大し,リチウムは Mn-Mg 固溶体のバインダーの役割を果たしていることがわかった。
  • 嶋田 浩治, 小菅 勝典, 綱島 群
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 695-699
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    けい砂(α-石英)を出発シリカ原料としてフッ素雲母純粋相を合成するための固相反応条件を検討した。原料粉体の混合割合 SiO2:MgO:NaF:LiF=1.0:0.5:0.5:0.25(モル比)は Mg-雲母を合成するための最適混合比であり, 725,750℃ の時それぞれ 3 および 1 時間で純粋相が得られた。生成雲母はテニオライト組成を有する, 1Md 型で薄い板状の自形を呈し,層問に水単分子層を吸着する限定膨潤性を示す。さらに,α-石英が雲母合成原料として好適な理由を明らかにするため,数種類のシリカ原料を使用して雲母の生成過程を検討した。雲母の生成はクリストバライトあるいはα-石英とその他の原料物質との固相反応と考えられる。シリカ原料が始めから結晶質の場合,α-石英,クリストバライトなど結晶形態にかかわらず,多様な中間生成物を形成しながら徐々にその量は低減し,最終的にすべて雲母として固定される。また,クリストバライトやα-石英へ速やかに結晶化する非晶質シリカを出発原料とする場合には,上記の結晶質シリカ同様純粋栢が得られることになる。しかし,クリストバライトなどへの結晶化が長時間継続する非晶質シリカ原料ではクリストパライトあるいはα-石英が残留するため純粋相は合成できない。
  • 黒河 伸二, 片岡 仁美
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 700-705
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グアイアズレンにジメチルアミノプロペナールとホスホリルクロリドを働かせると,[3-(3-グアイアズレニル)プロペニリデン]ジメチルアンモニウム塩(91%)が生成した。この塩はナトリウムメチラートとキノリンの混合物と加熱することにより, 9-イソプロピル-1-メチルシクロペンタ[ef]ヘプタレン(87%)を与えた。同様にして 4,6,8-トリメチルアズレンから生成したジメチルアンモニウム塩(97%)は,3,5-ジメチルシクロペンタ[ef]ヘプタレン(86%)に変換された。生成物の収率は,アニリニウム塩を用いる Hafner 法に比べて格段に向上した。また,9-イソプロピル-1-メチルシクロペソタ[ef]ヘプタレンのニトロ化とトリフルオロアセチル化は 4-置換体(20%,23%)を,ホルミル化は 2-(13%),4-(28%),6-(14%),および 7-置換体(2%)を与えた.なお, 3,5-ジメチルシクロペソタ[ef]プタレンのジメチルアミノメチル化は 1-置換体(27%)を,ニトロ化は 7,9-ジニトロ置換体ヘ(8%)を生じた。アズレン類とは異なり,求電子置換反応の起こる位置は,試薬の種類と密接に関係していた。
  • 中村 仁, 小島 盛男, 増子 徹
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 706-713
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ[ビス(4-イソプロピルフェノキシ)ホスファゼン]-PB(4-Ip)PP の結晶多形現象を, DSC ,広角 X 線回折法,および透過型電子顕微鏡を用いて検討した結果,試料の熱履歴に依存して斜方晶(α -form)と単斜晶(β-form)の結晶相と二次元擬六方晶のメソ相(δ-form)を形成することがわかった。結晶の単位胞パラメーターは,それぞれ a=3,14nm, b=1.14nm, c=0.992nm および, a= 2.45nm,=1 .94nm, c=1.12nm, γ=101.5°である。メソ相における分子鎖問距離は 1.64nm である.α-form b の原試料の DSC 測定では,α → β および β→ δ 転移がそれぞれ 86℃ および 120℃ に観測された。メソ相からの冷却では,冷却速度に依存して 30℃ で,α-form,β-form,もしくは α と β-form の混在したものが得られる。α-fromの試料は再度の加熱により, 83℃ で β-form に転移し, 107℃ で β→ δ 転移が部分的に起こり,そして 137℃ で完全に δ-formとなる.一方,β-formに結晶化した試料は, 135℃ でδ-form に転移する。
  • 荒井 健一郎, 重堂 良二, 新保 正博, 太田 悦郎
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 714-718
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ミクロクリスタリンセルロースと塩化 3,5-ジニトロベンゾイルとの反応により,置換度(DS) 2.65 までの 3,5-ジニトロベンゾィルセルロース(DNB-セルロース)を合成した。この DNB-セルロースの,多環芳香族化合物であるナフタレン,アントラセン,フェナントレン,ピレン,およびクリセンを分離するための液体クロマトグラフィーの充填剤としての応用を検討した。この 5 種の試料に対するこの充填剤の相互分離能は 3,5-ジニトロベンゾイル基による DS に依存していることが見出された。本系において,溶離液としてジクロロメタンを用いた場合には最適 DS は 0.21であった。この 5 種の多環芳香族化合物の分離に対する溶離液組成の効果も調べた。アセトニトリル,ジオキサンおよびジクロロメタンの混合液(5:5:90,容積比)を溶離液とした時にこの 5 種の試料が互いに良く分離されることを認めた。DNB-セルロースと多環芳香族化合物との間の電荷移動錯体の形成が,低分子モデルとしてのメチル 3,5-ジニトロベンゾアートと多環芳香族化合物との混合物の UV スペクトルの解析によって推定された。
  • 豊田 昌宏, 浜地 幸生
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 716-725
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Bi-Ti複アルコキシド溶液の部分加水分解の際に添加する触媒種と量が, Bi4Ti3O12 薄膜の結晶相の出現にどのような影響を与えるか調査した。その結果, 0.01mol の水のみを添加した条件でペロブスカイト-類縁相の出現率が高いことが明らかになった。本研究で合成した Bi-Ti 複アルコキシド溶液のように酢酸基を含むアルコキシド溶液の場合は,添加剤の効果が顕著であり,添加する触媒種により複アルコキシドの構造と加水分解および重縮合反応,さらには析出したフィルムのゲル構造が大きく変化したと考えることができる。またこれらの結果から,得られるセラミックス薄膜の結晶相がコントロールできる可能性が示された。
  • 福崎 紀夫, 押尾 敏夫, 野口 泉, 松本 光弘, 森崎 澄江, 大原 真由美, 玉置 元則, 平木 隆年
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 726-733
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    全国公害研協議会が1991年4月から1994年3月に実施した全国酸性雨共同調査において,炉過式採取法によって日本国内120数地点で得られた降水成分測定値から,本州日本海側地域における冬季(1,2月)降水成分の化学的な特徴について検討した.冬季の本州日本海側地域は降水量が多くpHは他地域よりやや低い.また,強い北西季節風の影響で日本海からの海塩成分沈着量が多い.降水量が多いにもかかわらず,nss-SO42-濃度は全国平均値程度である.NO-3濃度は全国平均値より低く,降水の酸性化にはnss-SO42-の寄与が大きい。中和成分のnss-Ca2+とNH4+は全国平均値より低濃度である.特にnss-Ca2+は平均値の0.54倍となっており,このnss-Ca2+が低濃度であることが残存する酸濃度を高め,pHを平均値以下としている原因と考えられる.降水量は平均値の約1.9倍であることから,Ca2+およびnss-Ca2+を除き,多くの成分の沈着量は全地域中最も多い.日本海側地域の中でも山陰西部は,これらの特徴とやや異なり九州北部地域の特徴に近似したものとなっている.
  • 内田 聡, 内田 美穂, 奥脇 昭嗣, 梅津 良昭
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 734-741
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では1988年, J.C.Tanger IV らによって開発された拡張 HKF 式(H.C.Helgeson,D・H・Kirkhamand G.C.Flowers)を用いて, 623K という高温におけるこれまで報告例のない N-H2O 系の電位-pH 図を作製した。各種熱力学的諸数値について,イオン種については拡張 HKF 式より直接推算し,無電荷種に関しては拡張 HKF 式と静電一非静電モデルの組み合わせにより推算した。 623K における電位-pH 図を 298K のものと比較すると,各種気体/溶存化学種の境界線が高 pH 側になるほど低電位側に移動する。また無電荷種の安定領域は温度の上昇によって中性方向へ拡大することが確認された。このことは臨界点近傍の水溶液中ではほとんどのイオンがイオン対を形成しているとする実験報告と定性的に一致した。また,水の誘電率と水とイオンの相互作用を取り入れた拡張 HKF 式による高温水溶液の熱力学定数の推算値は,水の臨界点近傍である 573K までの物性値の実測値と良く一致した。
  • 齋藤 信宏, 山藤 茂夫, 下澤 宏, 山延 健, 甲本 忠史
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 742-746
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    精密部品の洗浄剤として優れた性質を持っているが,オゾン枯渇性物質として全廃されることになった 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CFC113)の代替洗浄剤として注目されているペルフルオロカーボンはその物性は CFC113 と類似しているが,ほとんどの物質に対する溶解力,洗浄力がない。われわれはオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)とペルフルオロオクタン(PFO)の混合物が 80~103℃ の範囲で均一に混合することを見出した。このことから, D4 による溶剤洗浄とそれに続く PFO による蒸気洗浄が CFC113 の代替洗浄となりうると考え,モデル汚染物質を用いて,基板洗浄を種々の系で検討し, D4/PFO 系が有望な代替洗浄剤であることを明らかにした。
  • 山本 二郎, 山名 英明, 原口 征則, 佐々木 英人
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 747-750
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The Products, 3, 3'-dibenzoyl-4, 4'-biphenyldiol (2) and 3-benzoyl-3, 3'-biphenyldiol (3) were obtained in the Fries rearrangement of 4, 4'-biphenyldiyldibenzoate (1) using anhydrous aluminium chloride (AlCl3) as a catalyst in various solvent (Table 1)
    _??_
    When o-dichlorobenzene was used as a solvent, the higheryield of 2 was obtained in the Fries rearrangement of 1 (Table 1, Fig.1). In this reaction, the produc t, 3 was given predominantly via intramolecular migration of a benzoyl group and elimination of other one, and then ortho-position of 3 underwent electrophilic attack of benzoylcation to give 2 (Scheme 1).
  • 山口 達明, 金 鳳鶴, 佐藤 嘉久, 小林 左東司
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 751-753
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Activated carbons were prepared from thiolignin with a variety of additives. The carbon with magnesium hydroxide (ratio to thiolignin 1.5 at 550 °C) had well developed pore-size distribution of around 104nm in diameter. Although its BET specific surface area was as low level as 211 m2/g, it showed especially high adsorptivity toward sodium humate (molecular weight 5400) prepared by coal oxidation.
    Contrary to this, when thiolignin was carbonized at 650 °C with 2.5 times of magnesiu m hydroxide, the obtained activated carbon showed 1025 m2/g of specific surface area, which was the similar level to the carbon obtained with sodium hydroxide. Its pore-size was distributed in the lower region (1.5 x 103nm) than the former one, and it showed rather lower adsorptivity toward sodium humate.
  • 磯部 孝彦, 野田 幸直, 柴田 耕造, 藤井 純子
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 754-758
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new monoterpene glycoside were isolated together with known two diterpenoids and two triterpenoids from Rabdosia effusa HARA. These compounds were determined as carvacrol-3-yl glucoside, trichorabdal B, effusin, euscarphic acid, and hyptadienic acid. Structural determinations were made by spectroscopic data.
  • 松永 勝治, 岡本 航司, 磯野 正幸, 吉田 泰彦
    1996 年 1996 巻 8 号 p. 759-762
    発行日: 1996/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The catalytic activity of polymeric t-amines prepared by the radical polymerization of N, N-dialkylaminoalkyl methacrylates on the urethane formation between phenyl isocyanate and 1-butanol was examined in comparison with that of triethylamine. The catalysis by poly[4-(N, N-dimethylamino)butyl methacrylate] was superior to that by triethylamine.
feedback
Top