酸化マグネシウムを基本成分とした混合組成の異なる各種マンガン-マグネシウムおよびリチウム-マンガン-マグネシウム複合酸化物について, DTG/DTA (微分熱重量/示差熱分析)曲線および各種前処理条件下の XRD (X線回折)パターンの解析により,マンガンおよびリチウム-マンガン導入による酸化マグネシウム結晶特性への修飾効果を調べた。
低マンガン量サンプル(5-10mol%-Mn),および高マンガン量サンプル(50-80mol%-Mn)の主たるDTA吸熱ピークは,同温度域に重量減少を伴い,出発物質である酢酸マンガン(II)(628K)および水酸化マグネシウム分解(697K)ピークとは異なっており,これら2種類のサンプルの熱特性の違いは,両サンプルを構成する化学種の違いを示唆した。1073K処理後のXRDパターン測定で観測された化学種は,低マンガン量サンプルでは, MgO, MnO およびと Mn-Mg 酸化物固溶体であったのに対し,高マンガン量サンプルでは固溶体のみであり,これらの構成化学種の違いが DTA/DTG ピーク温度の違いに反映されたと結論した。
各種組成サンプルについて得られた X 線回折線幅変化の Hall の式による解析から,リチウムおよびマンガンそれぞれについて結晶子径および結晶格子ひずみに対する修飾効果の分離を試みた。その結果マンガンの添加量の増加,すなわちマンガン-マグネシウム固溶体生成に伴い,結晶格子ひずみが大きくなることを定量的に明らかにした。またリチウムの修飾効果は,低マンガン量サンプルと高マンガン量サンプルで大きく異なっていた。すなわち低マンガン量サンブルにおいては,リチウムの添加は,マンガンの酸化マグネシウム中への分散性を向上させ,酸化マグネシウムの格子ひずみを減少させた。一方,マンガン高添加量サソプルにおける結晶子径は,リチウムの添加により無添加と比較し最大約 10 倍まで増大し,リチウムは Mn-Mg 固溶体のバインダーの役割を果たしていることがわかった。
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