1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を溶媒とし,炭酸リチウムを酸受容体として用いて,2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンと2-クロロテレフタロイルジクロリドからPoly[imino(chloro-1,4-phenyl-ene)imino(ehloroterephthaloyl)]を低温溶液重縮合法により合成した.このポリマーは有機溶媒への溶解性も比較的良好であった.ポリマーのキャストフィルムの引張特性の向上を目的として処理を行った.乾燥状態ではこのフィルムは冷延伸できず,恒温での熱延伸でもあまり良好な結果が得られなかった.そこで,NMP/Water混合液(80:20,v/v)中,液温50℃で延伸(膨潤延伸)し,次にこの延伸試料に二段階の張力下昇温熱処理を行った.
膨潤延伸一熱処理フィルムの破断強度,破断伸度,引張弾性率,破断エネルギーの値はそれぞれ1.18GPa,1.68%,71.3GPa,10.9MJm
-3であった.また,CHN元素分析の結果から膨潤延伸一熱処理フィルムのポリベンゾオキサゾールへの転化はCHN元素分析の結果から少なくとも80%程度進行していると考える.
膨潤延伸一熱処理フィルムを無緊張下,空気中,350℃,120分間処理したところ,破断強度,破断伸度,引張弾性率,破断エネルギーの値はそれぞれ1.06GPa,1.52%,73.0GPa,9,22MJm
-3を示し,値の低下はほとんど認められなかった.これらの結果は,350℃ 付近での使用では,このフィルムがかなり長時間処理効果を残存することを示している.
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