日本化学会誌(化学と工業化学)
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1997 巻, 12 号
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  • 小林 憲正, 金子 竹男, Cyril PONNAMPERUMA, 大島 泰郎, 柳川 弘志, 斉藤 威
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 823-834
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原始地球上での生命の誕生に先立ち,タソパク質や核酸の関連分子が無生物的に生成したと考えられている.本概究においては,生体関連分子の生成の場として,原始地球大気中や地球圏外環境を想定し,模擬実験を行った.原始地球大気がメタン・窒素・水というようなダイタソ型であった場合,火花放電によりアミノ酸前駆体・重合物(加水分解によりアミノ酸を生じる分子)や核酸塩基の生成が認められた.一酸化炭素・窒素・水を含む弱還元型大気を想定した場合,火花放電では有機物の収率は大幅に低下する.しかし,エネルギー源として高エネルギー粒子線を用いた場合には高収率でアミノ酸前駆体・重合物やイミダゾール,核酸塩基の一つのウラシルが生成することがわかった.アミノ酸前駆体の分子量は数百であり,アミノ酸の重合物の可能性が考えられる.アミノ酸前駆体は模擬星間塵環境実験でも生成した.原始大気が非還元的な場合には地球圏外有機物の役割が重要であると考えられる.核酸の前生物的合成に関しては現状では極めて問題が多い.タンパク質や核酸の機能,すなわち触媒活牲と自己複製能をもつような分子系の無生物的生成を証明することが今後の課題である.
  • 雲林 秀徳, 佐用 昇, 芥川 進, 坂口 登志昭, 鶴田 治樹
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 835-846
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    BINAPを配位子とする遷移金属錯体触媒を用いた不斉触媒反応の開発と工業的合成法の確立について述べる.まず,BINAP-ロジウム触媒を用いたN,N-ジエチルゲラニルアミン(GDEA)の不斉異性化反応を鍵反応とするl-メントール合成の工業化を行った.この工程の工業化は1)異性化基質であるGDEAの合成,2)BINAPの合成,3)ロジウム錯体の簡易合成法,4)触媒反応の高効率化という四つの問題を解決することにより確立した.このプロセスの完成後,不斉触媒反応の開発を続けた結果,BINAP-ルテニウム錯体が近傍に官能基を有するオレフィソ類,ケトン類の不斉水素化反応に有効な触媒であることを見いだした.そして,この不斉水素化反琳を鍵反応とする4-アセトキシ-2-アゼチジノン(4-AA)および1,2-プロパンジオール誘導体(2-PPD)合成の工業化を完成した.特に,4-AAの合成においてはα-置換β-ケトエステル類のジアステレオ選択的不斉水素化反応,つまり,同時に二つの不斉点を制御する方法を開発し,さらにルテニウム触媒を用いたラクタム環への位置選択的アセトキシ化反応を開発することにより工業化を確立することができた.また,本論文では不斉水素化反応を用いたその他医薬品中間体合成の開発についても述べる.
  • 椎木 弘, 中山 雅晴, 小倉 興太郎
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 847-850
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(o-アミノフェノール)(PoAP)とポリ(ビニルアルコール)(PVA)から成る複合膜の電気債導度の湿度応答性について検討した.化学的酸化重合により得られたPoAPはDMSOに可溶であり,その溶解度は33.8g/Lであった.複合膜の電気伝導度は,13%から99%までの相対湿度変化に対して,1.5×10-5から1.4Scm-1まで直線的に変化した.加湿,除湿過程においてヒステリシスは見られなかった.さらに湿度応答は迅速であり,複合膜作製が容易であることなど,湿度センサー装置として優れた特性を示した.
  • 豊田 昌宏
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 851-856
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pb-Ti複アルコキシド溶液の部分加水分解において,触媒の種類は加水分解および重縮合反応に影響を及ぼし,その結果,種々の繊維形態および異なる結晶化過程を観察した.PbTiO3バルクゲルおよび繊維の加熱中に起こる複雑な過程を議論した.熱分析から,バルクゲルおよびゲル繊維には結晶化温度まで多量の有機物および水が含まれており,酸性条件下で得られたゲルおよび繊維には塩基性条件下で得られたものより多くの水を含んでおり,そして残存している水の分解が結晶化速度に影響を与えていることが推測された.繊維の微構造は,Pb-Ti複アルコキシドの加水分解から得られる重合体構造に依存していた.XRDから,ゲル繊維は600℃ での熱処理によりパイロクロア相から正方晶ペロブスカイト相へ結晶化し,正方晶相の結晶性は触媒の種類により影響を受けることがわかった.
  • 内田 浩昭, 徳永 英明, 小倉 興太郎
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 857-861
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バリウムフェライトの保磁力は,試料の遊星ボールミルあるいは自動乳鉢粉砕によって大きく影響される.この影響因子を解析する目的で,焼成試料,粉砕試料および焼鈍処理した試料の磁気ヒステリシス曲線残留磁化曲線およびX線回折パターンを測定した.その結果,遊星ボールミル粉砕では,バリウムフェライトに対して保磁力を高める効果と低める効果の両方が存在した.しかし,自動乳鉢粉砕では,保磁力を高める効果のみが存在した.保磁力を高める効果は結晶粒の配向によるものであり,低める効果は結晶の格子ひずみによるものであることを明らかにした.
  • 山口 朋浩, 松倉 清治, 藤田 隆之, 田草川 信雄, 北島 圀夫
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 862-868
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層電荷の異なるLi+交換型テニオライト系膨潤性合成フッ素雲母[LixMg33-xLixSi4O10F2(x=O.5,0.8)]とOH/Cr比の異なる各種多核ヒドロキソクロム(III)水溶液を室温から95℃ の各所定温度で反応させ,クロミア架橋フッ素雲母の生成と性質に及ぼす挿入反応温度と層電荷の影響を検討した.その結果,OH/Cr=2.0の溶液を用いて層間挿入反応を80℃ 以上で行うと,室温で挿入反応を行う場合よりもかさ高いクロム(III)イオン種を多量に雲母層問域に挿入できることがわかった.特に,層電荷が大きなホスト結晶からも,従来調製することができなかった多量のクロム収容量[2.01mol・(Si4O10)-1]をもつクロミア架橋体が得られた.95℃ での挿入反応により得られる層電荷0.8のクロミア架橋フッ素雲母の底面間隔値は,室温挿入反応で得られる架橋体に比べ0.1nm程度増大し,高温域(400-700℃)まで1.1-1.4nmの底面間隔値を維持した.また,95℃ で挿入反応させると,室温挿入反応の場合よりも200-300℃ の加熱温度範囲では最大100m2g-1程度大きな比表面積をもつクロミア架橋体が得られた.
  • 萩原 俊紀, 小林 利紀, 渕上 高正
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 869-875
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリメチル(トリフルオロメチル)シラン(1)を用いたカルボニル化合物のトリフルオロメチル化反応において,アミン,ホスフィン等各種のルイス塩基類が触媒として有効であることを見いだした.アルデヒド類を反応基質として用いた場合はおおむね良好な収率で目的物を与えたが,ケトン類は一般に反応性が低かった.しかし(トリフルオロメチル)ケトン類は高い反応性を示した.このルイス塩基触媒反応はペルフルオロアルキル化反応にも応用可能である.さらにアルカロイド等の光学活性なルイス塩基類を用いたベンズアルデヒドの不斉トリフルオロメチル化についても検討した.シラン1の反応においては生成物の不斉収率は低いものであったが(10%ee以下),かさ高いアルキル基を有するトリアルキル(トリフルオロメチル)シラン類(5)を用いることで不斉収率が向上することが認められた.中でもトリエチル(トリフルオロメチル)シラン(5c)を用いた場合に,最も高い21%eeの不斉収率を得ることができた.
  • 北原 滝男, 石原 良美, 高野 二郎
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 876-879
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一般にChichibabin反応は溶媒存在下で行われているが,本反応は溶媒を使用せずにアクリジンのChichibabin反応を行った.アクリジンとナトリウムアミドの混合物を130℃ 以上で溶融反応すると,9-アミノアクリジンと9,9',10,10'-テトラヒドロ-9,9'-ビアクリジンが等量得られた.9-アミノアクリジンは反応系が溶融している数分間にのみ生成し,9,9',10,10'-テトラヒドロ-9,9'-ビアクリジンは反応系が固化し始めた直後から生成した.本反応は第一にアクリジンのChichibabin反応によって9-アミノアクリジンと水素化ナトリウムが生成し,第二に未反応のアクリジンが水素化ナトリウムに還元されて9,9',10,10'-テトラヒドロ-9,9'-ビアクリジンを生成した.本反応は反応系に二つの反応機構が存在し,第一のChichibabin反応が第二のアクリジンの還元反応を調整している,アクリジンの特異的な溶融反応である.
  • 佐々木 昭夫, 木村 良晴
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 880-886
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアミンと二硫化炭素の反応をやし殻活性炭の存在下,水分散中で行い,ポリチオ尿素化合物を得た.両出発物質が活性炭にまず吸着されてから反応が進行し,ポリチオ尿素が活性炭上に強固に固定化されることを見いだした.得られた固定化ポリチオ尿素は優れた水銀イオン吸着能を有することを認めた.水銀吸着能はポリアミンの分子量が1800,活性炭への固定化率が11.8%のとき最もよく,それ以上固定化すると急激に減少することがわかった.固定化率と比表面積は逆の相関性があるが,この固定化率を越えると比表面積が急激に減少した.
    固定化ポリチオ尿素をカラムに詰めて10ppmの水銀水溶液を固定化物の5倍容量/時間で連続通液すると,10時間で法定基準値5ppbを越えた.このときの水銀吸着量は0,6molL-1(固定化物)であり,優れた水銀吸着能を有することが確認された.
  • 山崎 康寛, 黒田 和義, 高木 謙治
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 887-898
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フタロシアニン化合物は光導電性有機化合物として,複写機,プリンター等の分野で有機感光体(OPC)として実用化されており,今後もEL素子など工業的見地から他の用途開発が期待されている機能性色材の一つである。
    著者らは,このフタロシアニンア化合物の中でも,μ -オキソ-金属(III)フタロシアニンニ量体に着目し,これら一連のフタロシアニンニ量体の新規な結晶変態を探索し,電子写真感光体の特性評価を行った.その結果,金属(III)がアルミニウムまたはガリウムの場合,ある特異な結晶変態のみが,本特性に関して優れていることを見いだした.特に金属(III)がアルミニウムの場合,今まで報告されているフタロシアニン系感光体に比べると600-650mmと短波長領域に最も高い分光感度を有することがわかった.また,金属(III)がイソジウムの場合,合成の過程において無金属フタロシアニンへと金属脱離・プロトン化が起こることがわかった.
    本報告では,μ -オキソ-金属(III)フタロシアニンニ量体の合成経路やキャラクタリゼーションに関しても併せて報告する.
  • 呉 行正, 中山 敬, 内山 一美, 保母 敏行
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 899-901
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A time-resolved chemiluminescence detection system has been prepared for the measurement of photoinitiated chemiluminescence (PICL) in the initial period ( <1 s after illumination of excitation light). A nitrogen pulse laser was used as the source of excitation light. Photoinitiated chemiluminescence induced by the pulse laser is measured by a photomultiplier tube, and recorded by a digital osiloscope. The couplings of the photocatalytic reactions of TiO2 with luminol-CL and bis (2, 4, 6-trichlorophenyl)oxalate (TCP0)-CL have been used for two PICL systems. Time-resolved PICL results show that the CL intensity-time profiles are different in the two PICL systems. The detecting system can be used for the measurement of PICL in the initial period. Its time resolution is ca.1 ms.
  • 増田 精造, 南川 慶二, 田中 正己
    1997 年 1997 巻 12 号 p. 902-904
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effects of substituents, solvents, concentration, and temperature on tautomerization of ethyl 3-oxobutyrate and its 2-alkyl derivatives were studied. The tautomeric equilibria of ethyl 3-oxobutyrate depend mainly on the polarity and hydrogen-bond donor acidity of solvents. On the other hand, the tautomerization of the 2-methyl derivative is independent of the solvent. Keto-enol interconversion of the keto esters shifts from the keto form to the enol form with an increase in temperature. In addition, rate constants for interconversion from the keto to the enol of ethyl 2-butyl-3-oxobutyrate were determined using H-D exchange reaction.
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