日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1997 巻, 5 号
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  • 君塚 信夫, 前田 憲, 半田 豊和, 國武 豊喜
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 301-308
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無機原子・分子を集積組織化して,無機ナノ構造を造り上げてゆく無機マニビュレーション技術の開発は,無機精密合成の重要な課題である.近年,従来の物理的無機微細化技術にはない特徴を有する手法として,有機分子集合体を利用する無機ナノ合成が注目されている.本論文では,高い構造秩序性を有する二分子膜キャストフィルムの層間を鋳型とする,低次元金属ハロゲン化物クラスターやシアノ架橋高分子錯体の合成,構造制御について検討した.その結果,イオン交換法,共分散法ならびに逐次合成法により,二次元キャストフィルム層間において無機クラスター・高分子錯体が形成されること,またその次元構造ならびに配向組織化状態が,二分子膜の秩序構造や膜表面における静電的相互作用に依存することを明らかにした.
  • 笠井 均, 片木 秀行, 飯田 理恵子, 岡田 修司, 及川 英俊, 松田 宏雄, 中西 八郎
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 309-317
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固相重合性を有するジアセチレン化合物を対象として,再沈法により微結晶を作製し,それらにγ線および紫外線を照射することで共役高分子ポリジアセチレンの微結晶を得,物性評価を行った.まず,微結晶サイズに及ぼす諸因子の影響を検討し,微結晶生成機構の解明を試みた.その結果,微結晶生成過程の全貌とサイズ制御因子のいくつかを明らかにすることができ,より小さなサイズ実現の方針を確定することができた.次に,このようにして得られた微結晶は,固相重合性やポリジアセチレン微結晶としての光学特性などが,バルク結晶の場合とは大きく異なることを明らかにした.興味深いことに,吸収スペクトルのサイズ依存性は,半導体や金属に比べ,10倍も大きなサイズ領域で発現した.また,微結晶化により,光カーシャッター応答の測定が可能となった結果,ポリジアセチレン微結晶のX値は,非共鳴下にもかかわらず,約10-9esu/Mと極めて大きいことを明らかにすることができた.
  • 市川 幸子, 外山 滋, 碇山 義人
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 318-322
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表面プラズモン共鳴を利用し,非標識でしかもリアルタイム検出可能な免疫センサーの開発および特性評価を行っている.最初に,SPRセンサーのセンシング部である金薄膜基板にヒトアルブミンを物理吸着あるいは共有結合による抗原固定化法で固定化し,抗ヒトアルブミン抗体との免疫反癒の応答性を比較検討した.その結果,物理吸着法では共鳴角度変化量は大きいが,測定値のばらつきがみられ抗原の脱離や抗体の吸着の可能性が示された.一方,化学結合法では再現性の良い応答が得られた.さらに,指数関数的に減少するエバネッセント波の効果的な利用を目的とした高分子膜設計を検討した.水溶性デソプンは過ヨウ素酸酸化処理を施して活性基を導入し金薄膜表面に固定化した.ついでこの金薄膜表面に化学結合により抗原(アルブミン)あるいは抗体(抗アルブミン抗体)固定化膜を調製した.抗原固定化膜を用いて抗原抗体反応を繰り返し行ったところ,抗原をデンプン膜に共有結合させて安定化させる(水素化ホウ素ナトリウム処理)ことにより繰り返し応答が得られた.
  • 木原 孝治, 古田 太郎
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 323-328
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オクタソスルホン酸ナトリウム(NaOS)と塩化ラソタソ(III)(LaCl3)の混合水溶液中に形成される複合体の組成を表面張力,電気伝導度およびプロトンスピソー格子緩和時間を解析することにより調べた.その結果,モル比(LaCl3/NaOS)<0.1の領域で,OS:La=3:1の複合体(3:1複合体)生成が推定され,この複合体の空気/水界面における分子占有面積は,208Å2であることがわかった.また,モル比(LaCl3/NaOS)≒0.5付近およびモル比(LaCl3/NaOS)>1.2の領域では,それぞれ2:1複合体および1:1複合体の生成が明らかとなった.一方,15molm-3NaOS水溶液にLaCl3を添加したときのEscheriehiacoliATCC25922に対する殺菌活性(20℃,10分)を測定したところ,モル比(LaCl3/NaOS)<1.0で殺菌活性が著しく増大し,そのモル比以上になると飽和した.この殺菌活性と混合水溶液中に存在する各複合体の分布から3:1複合体がもっとも強い殺菌活性をもつことがわかった.
  • 森 知紀, 山口 素夫, 山岸 敬道
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 329-334
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアミノポリカルボン酸イオンを配位子とするジクロロまたはクロロルテニウム(III)錯体を合成した.(配位子:エチレンジアミン四酢酸イオソ(edta),N,N'-ジメチルエチレンジアミン-N,N'-二酢酸イオンN,N'-Me2edda),ニトリロ三酢酸イオン(nta)合成したルテニウム(III)錯体の磁化率が約2であることより,低スピソ型錯体であることがわかった.これらのルテニウム(III)錯体を触媒とし,共酸化剤として過酸化水素を用いたオレフィン(シクロヘキセン,スチレン,1-ヘキセン)の酸化反応を行った.edta錯体([RuC1(Hedta)]-)は過酸化水素酸化触媒として最も活性が高く,反応の主生成物はジオール(収率は最大68%)であった.過酸化水素存在下のedta錯体の紫外可視吸収スペクトルよりオキソルテニウム(V)種の生成が確認できたので,オキソ錯体が反応活性種であると考えられる.
  • 島田 紘, 斉藤 和樹
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 335-340
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンジルアルコール,シンナミルアルコール,シクロドデカノールおよび1-,2-オクタノールは,ベンゼン溶媒中,室温でMg2+-Al3+-MnO4-系層状複水酸化物の層間MnO4-と反応し,対応するアルデヒドあるいはケトンを与えることを明らかにした.
    ベンジルアルコールのようにフェニル基を有するアルコールとの反応では,反応基質が残存している間は,アルデヒドへの酸化反応が選択的に進行した.これに対して,脂肪族の1-オクタノールとの反応では,アルコールが残存する間からカルボン酸への逐次酸化が進行した.アルコールの種類による酸化反応の選択性の違いの原因を明らかにするために,Mg2+-Al3+-CO32-系層状複水酸化物への反応基質および酸化生成物の吸着特性を調べた.その結果,層状複水酸化物はべンジルアルコールに比べ,ペズアルデヒドに対する吸着能が極めて小さいこと,また1-オクタノールと1-オクタナールとでは吸着能の差が小さいことが認められ,酸化反応の選択性は層状複水酸化物のもつ吸着の選択性に関係していることが示唆された.
  • 林 京天, 高嵜 裕圭, 遠藤 敦
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 341-347
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    韓国産河東カオリンを用いてゼオライト合成を行うと,カオリンの構造変化を伴う,従来の低シリカゼオライトでは合成温度が100℃ 以下と低かったため,この温度以下で検討されてきた.しかし,高シリカゼオライトの原料として河東カオリンを用いると,より高い温度での検討が必要であるが,100℃ 以上ではあまり研究されていない.
    そこで,高シリカゼオライト合成の検討を行う前に,まず合成温度175℃,200rpmで,水分含量変化による河東カオリンからのゼオライト合成とカオリンの構造変化について研究した.その結果,次のようなことが明らかになった.
    (1)水分含量98%の場合,ソーダライト,ゼオライトA,ゼオライトP1,UnknownTやその混合物が生成した.特にゼオライトAは非常に狭い範囲で生成した。水分含量95%の場合には,単一生成物は得られず,その混合物だけ生成された.
    (2)処理時間の変化による水分含量(928)%の生成系では,カオリン→ 非晶質相→ ソーダライト→ ゼオライトA→ ソーダライトの経路で変換したが,95%では,カオリン→ カオリンとソーダライトの混合物→ ソーダライトへ変換し,非晶質相を経由しなかった.
    (3)カオリン中に含まれているSiO3,Al2O3の溶出量は,NaOH濃度が高いほど多くなったが,ゼオライトが生成する領域では逆に減少し,その後一定になることがわかった.
    (4)河東カオリンのNaOH水溶液による非晶質化速度について,0.2M(1M=1moldm-3)で処理したときは,非晶質化速度定数が0.0018min-1,1.5Mの方は0.0590min-1で,非晶質化速度の差が約30倍もあることがわかった.
  • 林 京天, 高嵜 裕圭, 遠藤 敦
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 348-354
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    河東カオリソに非晶質シリカを添加してNaOH水熱処理によるゼオライトの合成を行った.一般にZSM-5ゼオライトを合成するために,テンプレート(鋳型)としてTPAOH(Tetrapropylammoniumhydroxide)やTEAOH(Tetraethylammoniumhydroxide)などの有機塩基を添加しているが,韓国産河東カオリンには,ZSM-5を合成するためのテンプレートの役割をする土壌有機物を含有していると考えられる.
    そこで,有機塩基を用いなくてもゼオライトが合成できることを確認した.また,バッチ組成と処理時間を変化させ,各種ゼオライトの合成範囲を調ぺた.その結果,次のようなことが明らかになった.(1)ZSM-5を合成するとき,特励に有機塩基を使用しなくても,河東カオリンの添加によってゼオライトの合成に有効であることがわかった.(2)合成されるゼオライト種は,バッチ組成によって大きく変化するが,大きく分けてZSM-5,モルデナイト,アナルサイト等の3種類のゼオライトが得られた.(3)水分含量の影響は,合成された生成物によって異なった.ZSM-5とモルデナイトの場合は,水分含量98%の方が95%より非晶質からZSM-5とモルデナイトへの変換が速かったが,アナルサイトの場合は,反対の結果が得られた.(4)ZSM-5を合成するとき,NaOHによる固相の溶解の挙動について,ZSM-5ができるまでの誘導期間6時間までは,液相中のSiO2とAl2O3は大きく変化したが,ZSM-5ができてからのSiO2はほぼ一定であり,Al2O3は増加することがわかった.
  • 長谷川 美貴, 山田 泰教, 稲吉 倫子, 小林 迪夫, 星 敏彦
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 355-364
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N'-ジサリチリデン-o-フェニレンジアミン(以下H2(saloph)と略記)の電子吸収スペクトルをシクロヘキサンおよびエタノール中で測定した.シクロヘキサン中においてH2(saloph)は,372,339.6,269.8,262,231.2および209.8nmに吸収帯を示す.これらの帯に対応する帯は,延伸PVA膜中14Kでは,384,331,272,251,220および210nmに観測される.このうち,分子の長い方向に分極した384および272nm帯は,それぞれS0からS1およびS7への遷移に帰属され,210nm帯はS0からS15およびS16への遷移の重なりによるものである.また,分子の短い方向に分極した331,251および220nm帯はrそれぞれS0からS2,S8およびS14への遷移に帰属される.なお,実測の384,272および220nm帯の起源となる電子遷移には,分子の面外方向に分極した成分が含まれている.シクロヘキサンのような無極性媒体中では,H2(saloph)はエノール-イミン型として存在する.一方,エタノールのような極性媒体中では,その一部がケト-アミン型になり,ケト-アミン・エノール-イミン互変異性平衡混合物として存在する.X線構造解析によると,H2(saloph)は結晶状態でvanderWaals二量体を形成している.固体状態の電子スペクトルにおいて現れる新たな帯(〓490および443nm帯)は,二量体形成に基づく分子間相互作用によるものである.
  • 黒河 伸二
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 365-372
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-(2-置換エテニル)グアイアズレンの置換基として,ニトロ基またはトリフルオロアセチル基の場合について,アルケンとの反応を検討した.ナトリウムメチラートの存在下に於けるこれらの化合物と1-シアノ-1-アルケンとの反応では,置換エテニルグアイアズレンの二量化反応や分子内環化反応とともに,二量化生成物のアルケンへの付加反応が認められた.また,3-ブテソ-2-オンやアクリル酸メチルとニトロエテニル化合物の反応では,側鎖への付加反応によるブテニルアズレン誘導体とベンズ[a]アズレン誘導体の生成が特徴的であった.なお,3-ブテン-2-オンとトリフルオロアセチルエテニル化合物の反応では,側鎖の加溶媒分解によって生じた3-トリフルオロアセチルグアイアズレンが,二通りの付加の道筋によりシクロペンタ[ef]ヘプタレン誘導体を与えた.二量化反応に拮抗すると予想された,置換エテニルグアイアズレンとアルケンからのシクロペンタ[ef]ヘプタレン環の形成は,ごく僅か観察されたのみであった.これらの事実に基づき,二量化反癒に見られるシクロヘプタン環生成は,トロピリウムイオン型構造の寄与によって活性化された二重結合に特有の反応であると結論した.
  • 坂井 悦郎, 中村 明則, 二戸 信和, 大場 陽子, 矢野 豊彦, 大門 正機
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩素を含んだカルシウムケイ酸塩(アリナイト)の水和や水和生成物のについて,普通ボルトラソドセメソトの主要構成鉱物であるエーライトとそれにCaClO2を添加した場合とを比較した.初期反応について,水和発熱をコンダクション熱量計により測定した.エーライトならびにそれにCaClO2を添加した場合共に,誘導期が存在するが,アリナイトでは誘導期は存在しない.アリナイトの反応率は,反応時間1日,3日共にエーライトよりも高い値を示した.反応時間28日での反応率は約80%であった.一方,生成するCa(OH)2量は反応時間1日から28日までエーライトの方が大きな値を示した.生成するカルシウムケイ酸塩水和物のCaO/SiO2比は,エーライトに比べてアリナイトの方が大きい.アリナイトから生成するものは一部塩素を含み,そのCl/SiOO2比は0.3であった.
  • 上田 壽, 安部 桂司, 樋口 勝彦
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 378-384
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン置換芳香族炭化水素と金属アルコキシドが共重合して固体ポリマーをつくることをすでに見いだしたので,フロン類についても同じ型の反応が起これば,それらの固定化ないしは脱ハロゲン化ができるのではないかと期待して研究を行った.実験方法は既報のハロゲソ置換芳香族炭化水素の場合と同様で,テトラヒドロフランに溶解したオルトチタン酸テトラブチルの中にフロン類のモデル物質としてCFC(112)あるいはCFC(110)を溶解させ,蛍光灯からの可視光をあてる方法によった.得られた固体物質を元素分析してみると,塩素もフッ素も入っていないが,炭素の含有量は上記のチタンアルコキシド単独のポリマーに比べて10倍も入っており,フロン類のC-C結合が共重合物質の中に取り込まれていることを示している.得られた共重合物質の物性特に可視光による励起ラジカルの生成や,アルコールの可視光による光分解機能はCFCの種類によっては,チタンアルコキシド単独のポリマーをしのぐ場合もあることが示された.これらの結果から,有害なフロン類の滅却処分に際して,燃焼等の方法で大気中に有害物質を排出するよりも,金属アルコキシドを用いた脱ハロゲン化を行った方がより環境に対する負荷が少なくかつ副生物の利用価値もあることが示唆される.
  • 稲津 晃司, 小林 孝彰, 久松 由東
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 385-388
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A laboratory study on heterogeneous reaction of solid benzo[a]pyrene (BaP) and chrysene (CH)supported on seven kinds of inorganic particles, were conducted under photoirradiation in the air containing 10 ppm of NO2 to understand the effects of support particles on the reactivity of those polycyclic aromatic hydrocarbons. The degradation of BaP was greatly dependent on the kind of support-particles while that of CH was almost independent of it. The product distributions for BaP and CH showed similar support-dependence. More than 80% of degraded BaP and CH were transformed to 6-nitro derivatives on basic CaO and MgO and the maximum yields of them were 36.9% on MgO and 21.6% on CaO, respectively. The major reaction pathway on photoconductive TiO2 and ZnO was oxidation for both of BaP and CH.
  • 倉地 雅彦, 大久保 信, 増田 勇三
    1997 年 1997 巻 5 号 p. 389-391
    発行日: 1997/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Polymer solution are fallen into three region as function of concentration C: dilute, semidilute and concentrated (0 < Cdil < C* < C semidil < C** < C conc ).T he concentration of tri- or multi-critical point in PStransdecalin solution has been determined in ultrasonic method as a function of cross over line C* and C. Chain crossover concentration C*' from neutron scattering method differs from C* that's viscos ity and ultrasonic method by an order of magnitude. New suggestion was made in this work that the polymer solutions in dilute zone were appeared new additional tri- or multi-critical phenomena under anisotropic stress of polymer expansion in end-end direction. The new multi- critical phenomena have been shown by ultrasonic method.
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