日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1997 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 松下 一郎, 大野 淳, 佐藤 正壽, 吉原 佐知雄, 白樫 高史
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 603-608
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,水晶振動子マイクロバラソス(QCM)法をエマルションの調製過程における経時変化のモニタリングに使用することを試みた.W/O型エマルションの場合,試料として,水相には塩化ナトリウム水溶液,油相には流動パラフィン:ケロシン=9:1の混合油を,また,乳化剤にはソルビタンセスキオレアートを用いた.O/W型エマルションの場合,水相には蒸留水,油相には流動パラフィン,乳化剤にはテトラオレイン酸ポリ(オキシエチレン)ソルビトールを用いた,油相または水相と乳化剤中に白金QCM電極と撮牟器のプロペラを挿入し,撹拝しながら,水相または油相をビュレットを用いて滴下していく過程に対してQCM法を用いて,その共振周波数を測定した.W/O型エマルションにおける共振周波数変化は,乳化初期から一時的に上昇を示し,その後は,水相滴下終了(水相比率60vol%)まで減少を示し,その後は緩やかな減少を示した.O/W型エマルションにおける共振周波数変化は,油相滴下終了までは上昇を示し,その後はわずかな減少を示した.一般的に,共振周波数は,その接する液体の密度の上昇により減少し,その接する液体の粘度の上昇により減少することが知られている.よって,本研究における周波数変化は,油相に水相を滴下していくことによるパルクの密度上昇,または,水相に油相を滴下していくことによるバルクの密度減少による効果およびエマルションの乳化の進行に基づくバルクの粘度上昇の効果によると考えられる.
  • 岩元 和敏, 倉島 文和, 小澤 学, 山崎 岳人
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 609-614
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン性高分子ゲルを用いたマイクロアクチュエーターを作製し,その動作性能を調べ,100-500mVの低い電圧でゲルの膨潤収縮による運動を確認した.ゲル運動の応答速度は速く,0.4sの周期で,周期的に変動する電圧に追従して動くことが確かめられた.また,5時間以上の連続運転も可能であるが,ゲル中の水の蒸発による運動性の低下,および微小電極間における電気伝導性の物質の析出による電気的短絡により停止する.安定な運動を実現するためには,これらの問題点を解決することが必要である.
  • 瀬戸 孝俊, 今成 真
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 615-619
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレングリコール(EG)からのグリコールアルデヒド(GA)の合成反応をCu-Zn系触媒により常庄固定床流通式で研究した.Cu-Zn(モル比1:1)を高温で焼成すると選択性がやや向上した.EGと水蒸気の混合ガスを導入すると触媒活性が100時間以内に顕著に低下した.通常の酸化脱水素の反応条件ではGA選択性が低下するが,酸素をEGに対し微量の(1-5)×10-2モル量添加するとGA選択性を低下させずにしかもEG転化率が維持されることを見いだした.さらに,Cu-Znをα-アルミナに担持することにより反応中物理的に安定した触媒を得,600時間以上安定的にGAが合成できることがわかり,EGからのGA合成の工業的方法を確立した.X線回折や示差熱重量分析等により,反応活性が高い状態ではゼロ緬の銅のほかに酸化された銅の存在が観測された.
  • 盛 秀彦, 落合 正律, 三宅 広高, 渡邉 誠, 藤村 義和
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 621-625
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ボスホン酸ジフェニルーホルムアルデヒド樹脂にスルホ基を導入した陽イオン交換樹脂を合成し,そのエステル化における酸触媒能について検討した.本陽イオン交換樹脂の酸解離指数は約5で,吸湿性に富み,有機溶媒中の微量水分を吸着したtアセトンおよびアセトニトリル中の水分の吸着容量はそれぞれ1.4および2.0mmol/g-Rであった.本樹脂は耐熱性に富み,100および150℃ での重量減量は2.0および7.7wt%であり,熱水中での使用が可能と考えられる.
    本樹脂をエステル化触媒として用いたとき,C1-C4の第一級飽和アルコールとC2-C7の飽和脂肪酸とで生成するエステルの収率は約70-90%となり,また,C3-C9の飽和第二級アルコールと酢酸とで生成するエステルの収率は約81-89%であった.この樹脂を再生なしで反復使用しても触媒能の低下は認められなかった.
  • 久保川 博夫
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 626-631
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエステル(PET)布を難燃化するために,meso-1,2,3,4-テトラブロモブタン(TBB)を130℃ で収着させた.走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光法により,TBBが繊維内部にまで拡散していることが確認された.また,収着量の経時変化は処理開始後15分で極大値を示し,その後は減少した.この原因はTBBの加水分解であることが推測され,収着量の低下を防ぐには,高温での水とTBBとの接触時間を短縮することが必要であることがわかった.また,処理布の難燃効果を限界酸素指数(LOI)法で評価した結果,TBBの難燃効果は収着量に比例していた.TBB-水分散系処理によりTBBと水との接触時間を短縮した結果,浴比1:30でTBBの添加量が繊維重量の10%(10% o.w.f.)までは約60%の効率で収着できた.また,浴比を小さくすると収着効率は向上し,浴比1:5においてTBBを5% o.w.f.添加した場合には収着効率は82.4%に達した.TBBのPETへの収者は溶融TBBがPET繊維表面に接触し,その界面で吸者され,繊維内部に拡散していると推測された.この機構において,高融点の臭素系難燃剤とは異なるTBBは,高い収着効率を得るのに有利であるという結論を得た.
  • 大泉 毅, 田畑 亨, 北村 守次, 瀬戸 信也, 竹内 正, 出口 輝之, 野口 泉, 森 淳子, 原 宏
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 632-640
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    降水0.5mm ごとのpHを離島8地点を含む全国29地点で1989-1992年度に測定した.これは降水時開放型捕集装置に組み込まれたpH自動測定装置を用いた測定であり,環境庁による酸性雨射策調査の一部である.全地点の平均値はpH4.6であり,日本においては全国的に降水は酸性を示した.しかし,植物に対して直接的に被害を発現させる程度にまでは,酸性化は進行していないことが確認された.地域的には,名古屋,犬山以東の本土地点に比べ,京都八幡以西の本土地点および日本海側離島で低いpHを示す降水の割合が大きかった.季節的には冬季から春季に全国的に低いpHを示す傾向にあった.多くの地点では初期0.5mm降水は全降水に比べ低いpHを示すが,一部の地点では初期降水が全降水より高いpHを示した.自動連続測定値と,保存試料の手動測定値との関係は,手動測定値が月平均値で0.3pH程度高い傾向にあった.これは試料中の粒子状アルカリ成分が試料保存中に溶出したことなどによると考えられた.
  • 山田 啓司, 清水 多恵子, 国府田 由紀, 岡本 謙治, 住田 弘祐, 重津 雅彦, 高見 明秀, 小松 一也
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 641-647
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラジウム系触媒の炭化水素(HC)被毒による触媒性能の劣化原因について解析を行つた.劣化が認められた触媒の付着成分を調べたところ,多量のHC成分が検出された.このHCの吸着による触媒性能への影響,HCの吸着状態,触媒材料の電子状態および物性変化をアルミナ担持パラジウム触媒(Pd/Al2O3)と酸化セリウム担持パラジウム触媒(Pd/CeO2)について検討した.この検討を通して,Pd/Al2O3では(1)金属Pd上にHCの吸着種が見られたこと,(2)HCの吸着はPdの電子状態を変化させること,の2点から,金属Pd上にHCが化学吸着し,反応活性点が減少するために,触媒性能が劣化するという考察に至る結果が得られた.
    一方,Pd/CeO2では(1)Pd/CeO2とCeO2の両方にHCの吸着種が見られること,(2)HCの吸着はPdの電子状態に変化を及ぼさず,CeO2の酸素欠陥を消失させる変化が認められること,(3)常温から350℃ の間ではHCの吸着により,Pd/CeO2の酸素貯蔵能が低下することから,担体であるCeO2の酸素欠陥にHCが化学吸着し,酸素貯蔵能が低下したために触媒性能が劣化するという考察に至る結果が得られた.
    また,この劣化は大気中で500℃,1時間の熱処理によつて回復可能な一時劣化であることを確認した.
  • 田〓 雄三, 片岡 宏人, 永見 高義, 佐藤 守, 吉澤 秀二, 日高 久夫
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 648-653
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DRAMなどの電極材料としての応用が検討されているRuおよびその酸化物の薄膜を,CVD法により作製するための前駆物質として,ジイソブチリルメタン(H-DIBM),イソブチリルピバロイルメタン(H-IBPM)を配位子とするRu(III)の錯体を合成し,CVD前駆物質としての適合性を評価した.DIBM錯体およびIBPM錯体は,従来より使用されているジビバロイルメタン(H-DPM)を配位子とした錯体と比較し,蒸気圧が高いため高速成膜が可能であり,また融点が低いため液体状態で気化させることができるので安定した成膜速度が得られるという点で優れたCVD前駆物質であることがわかった.
  • 山本 英治, 井ノ上 恵照, 篠崎 勝彦, 矢沢 久豊
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 654-657
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    医薬品抗生物質の重要中間体,セファロスポリンCエステルを醗酵法で得られたセファロスポリンCから酢酸エチルを溶媒にして,エステル化を行い,直接,抽出分離を行う反応抽出プロセスの最適化検討を行った.
    反応抽出溶媒酢酸エチル相の容積分率が大きい(0.33以上)領域では攪拌の影響を受けないが,容積分率が0.17以下になると攪拌の影響が現れ,物質移動が律速となる化学反応であることがわかった.
    また,スケールアップ条件の最適化に必要な攪拌の反応速度への影響を評価した結果,攪拌浮遊動力比で示されるスケールアップ因子(Z)と容積分率0.17で得られる総括物質移動係数との間に良好な相関性を認め,Zが反応抽出の最適条件のスケールアップ因子として有効であることがわかった.
  • 古澤 源久, 橘 正樹, 杉目 聡, 坂口 英弘
    1997 年 1997 巻 9 号 p. 658-661
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Analytical conditions were optimized for derivative synchronous fluorescence spectrometry by using fluorene, carbazole and anthracene as examples. For the precise determination of these compounds, it is necessary to obtain reproducible synchronous fluorescence spectra. First-, second-, third- and fourth- ?derivative spectra were measured on the basis of the original spectra. The determination with a relative standard deviation (RSD) of approximately 1.0% can be achieved by measuring the intensities at appropriate wavelengths in such derivative spectra. The characteristic peak of the original synchronous spectrum will be observed as a valley and a peak in the 2nd- and 4th-derivative spectra, r espectively. Therefore, the derivative intensities at the valley and peak wavelengths were most favor able for the measurements. In the 1st- and 3rd-derivative spectra, on the other hand, the difference in intensity a t a particular peak and valley was suitable for the reproducible determination. The peak and valley to be used, in such case, must be chosen at both sides of the zero-crossing where the wavelength corresponds to that of the original characteristic peak.
feedback
Top