パラジウム系触媒の炭化水素(HC)被毒による触媒性能の劣化原因について解析を行つた.劣化が認められた触媒の付着成分を調べたところ,多量のHC成分が検出された.このHCの吸着による触媒性能への影響,HCの吸着状態,触媒材料の電子状態および物性変化をアルミナ担持パラジウム触媒(Pd/Al
2O
3)と酸化セリウム担持パラジウム触媒(Pd/CeO
2)について検討した.この検討を通して,Pd/Al
2O
3では(1)金属Pd上にHCの吸着種が見られたこと,(2)HCの吸着はPdの電子状態を変化させること,の2点から,金属Pd上にHCが化学吸着し,反応活性点が減少するために,触媒性能が劣化するという考察に至る結果が得られた.
一方,Pd/CeO
2では(1)Pd/CeO
2とCeO
2の両方にHCの吸着種が見られること,(2)HCの吸着はPdの電子状態に変化を及ぼさず,CeO
2の酸素欠陥を消失させる変化が認められること,(3)常温から350℃ の間ではHCの吸着により,Pd/CeO
2の酸素貯蔵能が低下することから,担体であるCeO
2の酸素欠陥にHCが化学吸着し,酸素貯蔵能が低下したために触媒性能が劣化するという考察に至る結果が得られた.
また,この劣化は大気中で500℃,1時間の熱処理によつて回復可能な一時劣化であることを確認した.
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