日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 10 号
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  • 篠原 祐治, 三田村 崇之, 中島 剛, 鈴木 哲
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 643-649
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5種類の酸化物 (SiO2, Al2O3, MgO, ZnO and CdO) の酸点上でのプロピレンオキシド (PO) のプロピオンアルデヒド (PA) および/またはアセトン (AC) への異性化機構および反応選択性の支配因子を半経験的分子軌道計算法により検討した. 上記の触媒上のPOの異性化反応の活性化エネルギーの計算値と実験的に得られている生成物の選択率とを比較することにより, これまでに提案されている反応機構の妥当性を検討した. その結果, POは正の電荷を有する金属イオン, すなわちLewis酸点の作用でPAに異性化され, その選択率は酸点の正味電荷に依存し, その電荷が大きい触媒ほどPAが多く生成することが明らかになった. また, そのLewis酸点に隣接する活性点には反応中間体を安定化させる作用があり, SiO2とAl2O3およびMgOでは金属イオンが, ZnOでは表面酸化物イオンがそれにあたることもわかった. さらに, その安定化の作用の程度は, 金属酸化物の金属一酸素問の距離が短くなるほど大きくなることも見いだした.
    一方, ACを生成する反応は, 触媒表面上へPOが化学吸着することなく進行することが推定された.
  • 永原 肇, 小西 満月男, 三井 修, 福岡 陽平, 河野 正志
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 650-656
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼンの部分水素化反応のシクロヘキセン選択性を向上させるために, アルコール類の助触媒効果について検討を行った. 反応は水, もしくは金属塩水溶液中に触媒を分散させて行い, 触媒として, Ru/La (OH) 3, Ru/γ-Al2O3, Ru金属触媒を用いた. いずれの触媒を使用した場合においても,わずかな量のアルコール類の添加により反応速度の低下とともに選択性が向上し, アルコール類が助触媒として有効に働くことがわかった.
    アルコールの種類によって添加量と選択性向上効果の関係は大きく異なり, ブチルアルコール類を用いた場合は, 第一級アルコールが最も効果的で, 第二級第三級では効果は小さくなった. またアリルアルコール類やベンジルアルコールはごく微量の添加で反応速度を著しく阻害した. またアルコールの添加効果の程度は触媒によって異なり, Ru金属触媒を使用した系では, ベンジルアルコールを添加することにより, ベンゼン転化率30%において, シクロヘキセン選択率70%以上が得られた.
    これらの効果は, アルコール酸素の不対電子から触媒であるRuへの電子供与が起こり, アルコール類が配位してRu表面の電子状態を変化させるか, もしくは単に触媒表面を被覆することによって生じたものと考えられる. その結果, ベンゼンや生成シクロヘキセンの触媒への吸着や, シクロヘキサンへの逐次水素化が妨げられ, シクロヘキセン選択性が向上したものと推定した.
  • 松本 和秋, 平山 忠一, 本里 義明
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 657-663
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トウモロコシデンプンから得られた橋かけデンプン球状粒子を基体として, 各種デンプン球状イオン交換体を調製した. これら基体に2-クロロエチルジエチルアミン塩酸塩を反応させたジエチルアミノエチル (DEAE) デンプン, (3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムクロリドを反応させた2-ヒドロキシ-3-トリメチルプロピルアンモニオ (HTMPA) デンプン, トリエタノールアミンとエピクロロヒドリンを反応させた2-ヒドロキシ-3- {2- [ビス (2-ヒドロキシエチル) アミノ] エトキシ} プロピル (ECTEOLA) デンプンを調製した. 得られたアニオン交換体の交換容量はそれぞれ≈2.47, ≈0.90, ≈0.48meq/g, 膨潤度はそれぞれ≈6.6, ≈4.0, ≈6.7cm3/gであった. 一方, これら基体にクロロ酢酸クロロメタンスルホンナトリウム, 塩化ホスホリルをそれぞれ反応させ, カルボキシメチル (CM) デンプン, スルポメチル (SM) デンプン, リン酸 (P) デンプンを調製した. 得られたカチオン交換体の交換容量はそれぞれ≈0.83, ≈1.70, ≈1.88meq/g, 膨潤度はそれぞれ≈4.6, ≈3,7, ≈4.6cm3/gであった. CM-デンプン球状イオン交換体を用いてタソパク質の分離を行ったところ, CM-セルロース球状イオン交換体と同様に利用できることが判明した.
  • 鈴木 美忠, 村上 俊介, 小泊 満生
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 664-669
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第一級アミン類のマイケル型付加反応はベンゼン溶媒中でアルミナにより著しく促進され, 選択的に高収率でモノ付加体を与えた. この反応はアルミナを加えないで行うと遅い. 付加体の収率はアミンの構造に大きく依存した. 直鎖のアミンを用いた場合は高収率 (77-91%) でモノ付加体が得られたのに対し, 枝分れや, かさ高い側鎖を持つ第一級アミンや, 第二級アミンを用いると付加体の収率は低下した. ジアミンとアクリル酸メチルの付加反応では片方のアミノ基のみがアクリル酸メチルに付加し, 選択的にモノ付加体が生成した. 非対称のジアミンを用いると立体障害の少ないアミノ基が優先的にアクリル酸メチルと反応した.
  • 竹辻 耕治, 富岡 秀雄
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 670-678
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グリコールウリルとホルムアルデヒドとの反応で得られるグリコールウリルーホルムアルデヒド共重合体は, 水および有機溶媒に不溶な化合物であり, これをさらに反応を進行させることによってククルビツリルなる大環状化合物を生成する.
    本研究では共重合体が直接染料および反応染料の水溶液を非常に良く脱色する性能を有しており, またその脱色効果は, 温度, pHによる影響をほとんど受けないだけでなく, ククルビツリルのそれよりも非常に優れていることを見いだした. 脱色機構は, 染料のモデル化合物を用いて検討した.
  • 水野 春奈, 山本 行男, 赤松 美紀, 有山 啓之, 児嶋 眞平
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 679-683
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    29種のN- (置換フヱニル) マレイミドを過剰の無水酢酸を用いる方法 (A法) , 化学量論量の無水酢酸を用いる方法 (B法) , および無溶媒で加熱による方法 (C法) のいずれかにより合成した. Escherichia coli (グラム陰性) , Bacillus subtilus (グラム陽性) および一種類の海洋細菌を試験菌としてペーパーディスク法により, これらの生育阻害活性を試験した. グラム陽性菌である後者二種の菌に対する生育阻害活性には強い相関があり, 活性はo-位置換基の誘起的電子供与性とともに増加することがわかった. さらに, 上記のN- (置換フェニル) マレイミド類を高分子マトリックスに含むサソプルを用いて, マレイミド類の海中での抗付着活性を調べた. その結果, 抗付着活性とB. subtilusに対する生育阻害活性にある程度の正の相関を見いだすことができた.
  • 田中 義樹, 日下部 哲朗, 辻 俊郎, 柴田 俊春, 上牧 修, 伊藤 博徳
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 684-689
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    等温熱分解装置および熱てんびんを用いて, PVCの熱分解による脱塩化水素反応速度を測定した. 等温熱分解のデータをもとに反応モデルを仮定し, 反応速度定数のアレニウスプロットを行った結果559K付近を境にして, 反応速度論定数 (活性化エネルギーおよび頻度因子) が変化することが認められた. この温度を境に反応速度論定数を二領域に分け, これを用いてモデル式より計算した脱塩化水素反応率と実測値とを比較した. 反応条件に応じて活性化エネルギーおよび頻度因子をわずかに補正することにより,等温および非等温熱分解双方の実験結果をこのモデルで予測することができた.
  • 大塚 宜, 境 健自, 島澤 俊行, 平井 英史
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 690-696
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化銅 (1) のアセトニトリル懸濁液に, 窒素下でピリジンを加え撹搾することにより, 塩化銅 (1) -ピリジン錯体のアセトニトリル溶液を調製した. 10.0mmolの塩化銅 (1) , 40.Ommolのピリジンおよびアセトニトリルからなる10cm3の塩化銅 (1) -ピリジン錯体のアセトニトリル溶液は, 30℃, 1.0atmの一酸化炭素下で一酸化炭素を迅速に吸収して平衡吸収量5.90mmol (仕込みの塩化銅 (1) に対する59%) に達した. これを1.0atm下で70℃ に保つと,吸収した一酸化炭素を迅速に気相中に放出し, 平衡放出量5.21mmol (吸収した一酸化炭素に対する88%) に達した. この吸収一放出サイクルを繰り返しても劣化はみられなかった. この温和な条件下での一酸化炭素の可逆な吸収は, アセトニトリル中の1: 1塩化銅 (1) -ピリジン錯体と一酸化炭素分子からの1: 1: 1塩化銅 (1) -ピリジン-一酸化炭素錯体の形成によるものと考えられる.
  • 住田 弘祐, 國府田 由紀, 岡本 謙治, 高藤 勝, 重津 雅彦, 小松 一也
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 697-703
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化セリウムを酸素貯蔵材として使用したパラジウム担持触媒の二酸化硫黄 (SO2) ガスによる被毒現象を検討した. 還元雰囲気下において, 酸化セリウムに担持したパラジウムに吸着した硫黄の脱離温度は, 酸化アルミニウムに比較して高温化しており, 被毒状態からの触媒活性の回復に影響を与えていることが判明した. この高温化は, 吸着した硫黄量と触媒の状態変化の解析から, 還元されたパラジウムと酸化セリウム間における酸化セリウムの還元性に基づく栢互作用が原因であると推察された. また, 573Kにおける, パラジウム担持酸化セリウムのSO2被毒に対する酸化, 還元雰囲気の影響を検討した結果, 酸化雰囲気では, SO2の吸着が酸化セリウムの酸素貯蔵を阻害し, 還元雰囲気では, パラジウム表面を不活性化しているものと推論した.
  • 赤上 順一, 尾崎 純一, 大谷 朝男
    1998 年 1998 巻 10 号 p. 704-708
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    摺動用炭素材料には低い摩擦抵抗が要求されるが, それと同時に耐摩耗性も求められる. これらの要求を満足するためにビッチコークスとカーボンブラックの混合物を原料として用いた炭素系複合材料が開発されている. しかし, 製造現場において製品の物性値のばらつきが問題になっている. 特に, 摩擦係数のぱらつきは製品の歩留りの低下を招くため, 最も深刻な問題である. 本研究では, 機械用炭素材料の摺動特性を支配する因子を見いだすため, 異なるロットの18個の炭素ブロックを調製した. これらの試料のかさ密度, ショア硬度, 曲げ強度およびヤング率を測定し, 物性値と摩擦係数の相関を検討したところ相関は見られなかった. 試料のX線回折は2種の成分, すなわち黒鉛および乱層構造からなることを見いだした. この回折図形を分離して求めた黒鉛成分の割合と摩擦係数の間には強い相関があることがわかった. 結局, ピッチコークスとカーボンブラックからなる炭素ブロックの摺動特性は主として材料中の黒鉛成分により支配されることが明らかになった.
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