ベンゼンの部分水素化反応のシクロヘキセン選択性を向上させるために, アルコール類の助触媒効果について検討を行った. 反応は水, もしくは金属塩水溶液中に触媒を分散させて行い, 触媒として, Ru/La (OH)
3, Ru/γ-Al
2O
3, Ru金属触媒を用いた. いずれの触媒を使用した場合においても,わずかな量のアルコール類の添加により反応速度の低下とともに選択性が向上し, アルコール類が助触媒として有効に働くことがわかった.
アルコールの種類によって添加量と選択性向上効果の関係は大きく異なり, ブチルアルコール類を用いた場合は, 第一級アルコールが最も効果的で, 第二級第三級では効果は小さくなった. またアリルアルコール類やベンジルアルコールはごく微量の添加で反応速度を著しく阻害した. またアルコールの添加効果の程度は触媒によって異なり, Ru金属触媒を使用した系では, ベンジルアルコールを添加することにより, ベンゼン転化率30%において, シクロヘキセン選択率70%以上が得られた.
これらの効果は, アルコール酸素の不対電子から触媒であるRuへの電子供与が起こり, アルコール類が配位してRu表面の電子状態を変化させるか, もしくは単に触媒表面を被覆することによって生じたものと考えられる. その結果, ベンゼンや生成シクロヘキセンの触媒への吸着や, シクロヘキサンへの逐次水素化が妨げられ, シクロヘキセン選択性が向上したものと推定した.
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