日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 4 号
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  • 跡部 真人, 野中 勉
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 219-230
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超音波の著しい作用効果を有機電極反応に反映させることを目的とし, 様々な超音波照射電解反応系を精査した. その結果, 超音波照射により有機電極反応の高電流効率化ならびに/あるいは生成物選択性の向上が達成されることが示された. また,これらの超音波効果は主として電極反応における物質移動過程への影響が顕著であることが理論と実験により検証され, 特にキャビテーション現象がその主役を演じることが明らかにされた. さらに,超音波照射下における電解重合反応では高密度重合膜の形成が示された. これらの成果は, 有機電極反応の新しい制御手法としての超音波効果利用の第一歩として意義づけられ, 今後の多様な展開が期待される.
  • 岩崎 直也
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-メチル-2 (1H) -ピリジソイミン (1MPI) およびそのメチル置換体とヨウ素間における分子間相互作用について, UV, 1H-NMRおよびIRスペクトルを用いて検討した. その結果次のような結論が得られた. 1)4-, 5-および6-メチル置換体ではヨウ素濃度増加に伴い1: 1CT錯体の形成が1MPIよりも容易に起こる. これに対して2-メチルイミンおよび3-メチル置換体ではCT錯体の形成は少ない. このことは,メチル基の導入により置換基効果が見られるものの, 2-メチルイミンおよび3-メチル置換体ではその立体的影響によりCT錯体形成の妨げになっていることが考えれられる. 2)4-および5-置換体は1MPIに比ぺてより容易にCT錯体を形成する. 特に5-置換体のCT錯体形成エネルギー値 (-ΔH)は54.3kJmol-1と全系列の中で最大となったことから, イミノ基に対してρ-位にメチル基すなわち電子供与性の置換基が導入されるとイミノ基窒素への電子供与により, ヨウ素分子との相互作用が起こりやすくなる. 3)メチルピリジソイミン類がイミノ基窒素を通してヨウ素と相互作用を起こす場合, 1510cm-1付近に吸収バンドが現れる. この新たな吸収バンドがその相互作用の特徴を示すキーバンドとなりうることがわかった. さらにNOESYスペクトルの結果から, そのCT錯体形成による分子構造変化が考察された.
  • 阿部 能之, 掛川 一幸, 佐々木 義典
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 240-246
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    湿式法と乾式法を組み合わせた合成法でペロブスカイト固溶体Sr(CuxZn1-x)1/2W1/2O3 (SCZW) を合成し, 固溶体の組成変動の解消への効果を確認した. この方法はCuOとZnOの均一な混合粉体を同時沈殿法で調製した後, これと他の原料粉末とを手混合して反応焼成させる方法である. この方法で得られたSCZW焼結体の組成変動を粉末X線回折ピークの半値幅の回折角依存性から測定し, 通常の乾式法 (原料粉末混合法) の場合と比較した. その結果, 通常の乾式法では1200℃ で4時間の焼成で焼結体に組成変動が存在していたのに対し, 組み合わせた合成法では1200℃ で1時間の焼成でも組成変動が存在せず効果が確認された. これまでの考えでは, SCZWのような固溶体に生ずる組成変動を解消するためには, 構成陽イオンすべて (Sr2+, Cu2+, Zn2+, W6+) か同一サイト内の陽イオンすべて(Cu2+, Zn2+, W6+) に湿式法を適用する方法がとられた. しかし,同一サイト内の陽イオンの配列に電気的中性条件が働くことに着目すると,サイト内の異なる原子価の陽イオンの間(Cu2+とW6+, Zn2+とW6+)よりも同じ原子価の陽イオンの間(Cu2+とZn2+)の分布に不均一性が生じやすいため, 湿式法を適用する必要のある陽イオンも限定されることになる. この考えに基づく湿式と乾式を組み合わせた方法は, 湿式法を適用する陽イオンの種類が少ないため, SCZWと同じ Aa+ ( BIb+xBIIb+1-x) dBIIIc+1-dO3 (a + bd + c ( 1-d ) = 6, b≠c)の多くの固溶体に適用できる.
  • 清水 得夫, 小澤 聡, 川口 浩, 四條 好雄
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然水中の超微量タリウムを黒鉛炉原子吸光法で定量するために, 高い濃縮倍率が得られる溶媒抽出-逆抽出法の適用を検討した. 試料水700mLを用いる2800倍濃縮の場合, タリウム (I) をpH8.0でジエチルジチオカルバミド酸錯体としてベンゼソ25mLに抽出し, 有機相20mLを分取して硝酸で逆抽出する. 逆抽出液0.2mL中にマトリックス修飾剤としてパラジウムを50mg/Lとなるように添加することにより, 感度が向上し, 共存元素等による干渉も抑制することができた. タリウム (I) の回収率はほぼ100%であったが, タリウム (III) では約80%であった. したがって,試料水にアスコルビン酸を添加して90℃ の水浴で加熱することによってタリウム (I) に還元し,全タリウムとして定量した. 2800倍濃縮したときの検出限界 (3σ) は0.86ng/Lであり, 20ng/Lにおける精度は相対標準偏差 (n=8) で3.3%であった. 本法を海水および河川水試料に適用した.
  • 香山 英彦, 藤原 陽一, 小島 寛司, 永田 親清
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 252-254
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マイケル付加反応におけるマイクロ波照射の効果を調べるためにβ-ジカルボニル化合物とメチルビニルケトンを使用して金属酸化物触媒 (CaO, MgO, Al2O3 and SiO2) の存在下, 無溶媒で実験を行った.マイクロ波照射により反応は著しく促進され,機械的撹搾に比べて反応時間は劇的に短縮された (1/100-1/1500) . 反応生成物の収率も改善がみられ, それは金属酸化物の種類に依存した. すなわち, 金属酸化物における酸素原子上の部分電荷とよい相関が認められた. このことは, 酸素原子上の部分電荷が大きいことより塩基性となり, ジカルボニル化合物のα位プロトンを脱離し易くすることを示している.
  • 川村 邦男
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 255-262
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    RNAの化学進化過程を調べるために, 水熱反応を速度論的に解析するための手法を開発した. 本法を構成する装置は, 送液ポンプ, 試料注入器流通式加熱反応器, 冷却および背圧管, 試料採取部からなり, 注入した試料溶液を一定流速で送液して加熱する. このとき, 一定流速下で背圧管に生じる圧力損失を背圧管の長さと管径を変えることによって調節し, 加熱反応器内部の圧力を水蒸気圧以上に保って試料を液体として保持した. 本法を用いて, アデノシン5'-三リン酸 (ATP) からヒポキサソチンまで逐次加水分解する反応を温度398-573K, 時間0.37-140sの範囲で追跡することができ, 各過程の速度定数を速度解析プログラムSIMFITを用いて計算した. 加熱反応器に用いる配管材料としてポリ (テトラフルオロエチレン) (PTFE) およびステンレス鋼 (SUS316) 製配管を検討した結果, 両者の結果は良く一致した. 本法を用いて決定したATPおよびアデノシンの加水分解反応の半減期は, ATP(0.31s, 473K)およびアデノシン (0.42s ,573K) であった. この方法によって, RNAの化学進化のモデル反応を高温水中で直接追跡できる可能性が開かれた.
  • 北折 典之, 吉田 修, 石川 彰
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 263-266
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    反応性蒸着法の一つである電子シャワー法を用いて, 炭化鉄薄膜の合成を試みた. 反応性ガス源としてペソゼンを使用し, ガス流量を変化させて成膜を行った. この膜の同定, 磁気特性, 硬度ならびに耐食性について測定を行った.
    その結果, 電子シャワー法によりFe3Cを合成できることを見いだした. ガス流量を増大させるとX-線回折パターンのピークが減少するとともにピークの幅が増大し, さらに飽和磁化が単調に低下した. Fe3Cの飽和磁化は1.2Tと高く, 硬度もFeの2倍に向上した. 加えて, 60℃, 相対湿度90%下の高温多湿下の放置による耐食性テストでは, 40日間でFe3C薄膜の飽和磁化の減少は約5%であり, 高い耐食性を示した.
  • 森下 真也, 鈴木 憲一
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 267-270
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Photoelectrochemical deposition of noble metals (Pt and Pd) was observed in the solution containing riboflavin, noble metal ion, and ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA). From the changes in the concentration of dissolved oxygen in the solution and the amount of deposited Pt upon irradiation, the deposition mechanism of noble metals is assumed to be as follows: 1) Riboflavin absorbs light, and produces a photoexcited electron in LUMO and an electron-vacancy (hole) in HOMO, respectively. 2) Free EDTA (that was not used for forming the Pt (IV)-EDTA complex) donates an electron to the hole in HOMO. The photoexcited electron in LUMO flows to oxygen in the solution at first, and thus riboflavin is regenerated. 3) After the oxygen concentration in the solution decreases to zero, the photoexcited electron in LUMO then transfers to the Pt (IV) -EDTA complex, and reduces it to platinum metal.
    Deposition of fine platinum particles onto a riboflavin-incorporated perfluorinated sulfonic a cid polymer (Nafion) membrane was accomplished upon irradiation.
  • 陸 新紅, 水野 哲孝, 御園生 誠
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The oxidation of phenol with hydrogen peroxide was catalyzed by the combination of H5PMo10V2O40 with Fe2+ in a water-chloroform-acetic acid biphase system at 55 °C, resulting in a yield of benzoquinone of 46% with 94% selectivity.
  • 武隈 真一, 武隈 秀子, 畑中 芳昭, 川口 順也, 山本 啓司
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of guaiazulene (1) with a 0.25 molar amount of phthalaldehyde, isophthalaldehyde and terephtalaldehyde in acetic acid at room temperature (25 °C) for 4 h under argon readily gave the corresponding 3, 3'-methylenediguaiazulene having a substituent at C-α position (2, 85% yield; 3, 35%; 4, 26%; 5, 92%, respectively). The structures of these products were established on the basis of their spectroscopic (UV/VIS, IR, NMR and MS) data. A possible reaction pathway for the formation of these compounds is discussed.
  • 山田 亨, 久保 幹, 蓮実 文彦, 岡島 壽一, 大倉 一郎
    1998 年 1998 巻 4 号 p. 280-283
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Screening of inhibitors for ethylene formation and their use to maintain freshness of cut flowers were studied. By the addition of the analogs, such as cyclopropanol, of the intermediate of ethylene formation from 1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid, the ethylene formation was suppressed, and the freshness of the roses was maintained.
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