日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 5 号
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  • 原田 明
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 285-297
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    修飾シクロデキストリンとその包接化合物の結晶構造解析を行い, 修飾による構造変化がシクロデキストリンの包接機能に及ぼす効果を検討した. 未修飾のシクロデキストリン環の立体構造は隣り合ったグルコースの第二級ヒドロキシ基間での分子内水素結合により円筒状に保持されており, 空洞の大きさと形に合致する分子またはその一部が包接される. 6-Oまたは2-Oの位置のモノ置換体の場合, シクロデキストリン環の構造はほとんど変わらないが, 結晶中においては置換基がゲストとして隣りの分子に包接されている. 2-Oと6-Oの位置がすべてメチル化された場合でも3-OH・・・O-2型の分子内水素結合が形成されるため空洞の形は大きくは変わらない. しかしながら, 空洞の両端についたメチル基によって空洞がより深くなるため, 包接されたゲスト分子の位置と向きは未修飾シクロデキストリンの複合体の場合とは必ずしも同じにはならない. 他方, すべての水酸基がメチル化された場合は,分子内水素結合ができなくなるために環構造の柔軟性が増し, ゲスト分子の形状に合うようにシクロデキストリンのコンポメーションが変化することにより, 光学異性体に対する識励機能が向上することが明らかになった.
  • 古川 信之, 湯浅 正敏, 藤山 毅, 斎藤 公児, 篠原 正昭, 木村 良晴
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 298-308
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シロキサン鎖にビニル基を有する新規な架橋反応性シロキサン-block-ポリイミドを合成し, その架橋反応性について検討を行った. 固体NMRによる解析の結果, ヒドロシラン類は,ポリイミド鎖中のビニル基とのヒドロシリル化反応により容易に反応し, 架橋構造を形成することが明らかとなった. また, この架橋反応性シロキサン-block-ポリイミドから, シロキサン鎖にアルコキシシリル基を含有するポリイミドを合成した. これらは, アルコキシシリル基の加水分解反応および縮合反応により, 容易に架橋反応が進行する事が明らかとなった. これらの架橋反応は, いずれもソフトセグメソト鎖間において進行する. この硬化物の熱機械的特性はポリイミドの相構造と密接に関係すると考えられる. さらに, このアルコキシシリル基含有ポリイミドから合成される新規なポリイミド-シリカ系ハイブリッドの調製についても報告する.
  • 古川 信之, 大森 史博, 湯浅 正敏, 山田 保治, 木村 良晴
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 310-319
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今日, 種々のイミド構造を有する熱可塑性および熱硬化性の耐熱接着材料が開発されている. しかし,これまでのポリイミド系耐熱接着材料は, 300℃ 以上の高い処理温度での圧着を必要とし, 初期強度, 吸湿環境下での長期安定性等において特性が不十分であった. そこで, フィルム形成能に優れ, 低い温度 (<300℃) での圧着が可能で高い接着強度 (>20MPa) を有し, 長期耐湿性, 長期耐熱性等に優れた材料の開発を目的に, 種々の直鎖型芳香族ポリイミドを合成し, その構造とせん断接着強度の関係について検討を行った. その結果, 4, 4'-carbonyldiphthalicanhydride (CDPA) /bis [4- (3-aminophenoxy) phenyl] sulfone (BAPSM) 系ポリイミドは, 良好な初期せん断接着強度を示した. また, 芳香族ポリイミドにソフトセグメソト鎖としてポリジメチルシロキサン鎖を10wt%含有するポリイミドは, その芳香族成分の組成が異なるにもかかわらず, 良好な初期せん断接着強度を示すことが明らかとなった. さらに, このポリイミドは, 高湿条件下での接着安定性においても優れていることがわかった. これは,ポリイミドの吸湿率と透湿率が深く関係しているものと考えられる. さらに, ポリシロキサソ鎖を多く含有するポリイミドは, 初期せん断接着強度, 耐湿耐久性とも低下した.
  • 蛯谷 松枝
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 320-329
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Riboflavin tetrabutyrate (RTB)を含むプラスチックの透過および発光スペクトルは, isoallox-azine (IA) 環の渡環相互作用に及ぼす濃度や温度勾配の影響が, 3種類に分類されることを示した. 孤立状態のIA環と, 相互作用しているIA環のSoにおけるエネルギー状態の違いは, 下記の振動運動の励起エネルギーの大きさに相当した. (1) 1450cm-1以下のアミド吸収帯のIII, IV, V, VIの振動か, 側鎖の単結合の振動. (2) 2000-2500cm-1のアミド吸収帯のIVまたはVかVIの振動と, IA環の骨格振動との結合音. (3) IA環の骨格振動の倍音の, (1500-1600cm-1)× 振動量子数エネルギー状態の違いは, 次のコンポメーションの変化に対応した. (1) 2個のIA環の接触錯体の形成, (2) IA環が重なった二量体の形成, (3) 重なりの良い二量体のIA間隔の短縮.
    これらのコンポメーションの変化は, 濃度増加および温度勾配に伴うRTB分子の変形が, 特定の結合の振動の励起によることを示す.
    濃度が増加するとまず水素結合間隔が短縮する. 次に側鎖のコンポメーションが変化するが, IA環の相対的配向は乱雑で積層していない. さらに濃度が増加するとIA環の重なりが良くなり, 間隔も短縮する.
    Methyl methacrylateの重合に伴うプラスチックの温度勾配により, IA環は一段ずつ骨格振動のより高い準位に達し, 環の間隔が一層接近する. 渡環相互作用のこう進は, So 状態におけるCT相互作用を促進するので, RTBはついに消光する.
  • 佐藤 尚武, 野中 勉
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 330-337
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電解重合法とゾル-ゲル法を組み合わせることにより, ゲル共析電解重合膜を創製した. アニリン, チオフェンおよびピロールなどのモノマーをテトラエトキシシランやテトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドを溶解させた酸性溶液中で電解酸化重合を行った. 調製用電解液の組成および酸性度を最適化することにより, 陽極上で重合反応とゲル化反応とを同時的に進行させることが可能となり, 均一かつ電気化学的にも機械的にも安定な電気化学活性な共析膜が得られた. SEMおよびEPMAにより, ゲル成分は重合膜中に均一に分散していることが認められた. 共析膜の電気化学応答および電気化学触媒活性, 電位窓,耐久性などについて特性評価を行った.
    ゲル共析により重合膜の電気化学活性は若干低下するものの絶縁性ゲルの共析による不動態化はなく, 繰り返し電位掃引に対する安定性においてもゲル共析による悪影響は見られなかった. 一方, 電極特性の指標として重要な電位窓が還元側に著しく広がった. また,共析膜中の無機酸化物であるゲルが有機化合物であるポリマーと基板電極との密着性を飛躍的に向上させる働きをすることもわかった. 酸化チタン共析アニリン重合膜電極を典型として, 鉄イオン [Fe (II/ III)] 系レドックス化学種の反応性について検討したところ, ゲル共析により酸化還元触媒性に基質選択性が認められた.
  • 宮本 誠, 花里 善夫
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 338-345
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属錯体によるNO接触分解の可能性を検討するために, MTPP(M = Co (II) , Cr (III) , Zn (II), Ag (II), Ru (II) ;H2TPP=5, 10, 15, 20-tetraphenylporphyrin) およびCo(salen) (H2salen=N, N'-disalicylideneethylenediamine) に対するNO吸着特性を評価するとともに, NO吸着特性に優れていたCoTPP, Co(salen)を用いた酸素存在下でのNO接触分解の初期検討を行った. CoTPP, Co(salen)へのNO吸着は, (1) 低NO濃度 (1024ppm以下) では, 中心金属部に2種類のNO- (CoTPP: 1680cm-1, 1695cm-1), (Co (salen) : 1633cm-1, 1644cm-1) が単分子状態で吸着し, Co(salen) の方が低波数シフトが大きかった. (2) CoTPPでは, 1680cm-1, 1695cm-1の順に吸着を起こしやすく, さらに高濃度 (1%, 5%) では,1680cm-1のNO-種が吸着した中心金属間を新たなNOで架橋した構造をとるbridgingNO (1528cm-1) を形成した. (3) Cosalenでは, 低NO濃度 (1024ppm) において, bridgingNOがみられた.
    CoTPPおよびCo (salen) をそれぞれ, 多孔質がラスに担持させた触媒によるNO接触分解では, Co (salen) のほうが分解特性が良く, NO: 300ppm,O2: 0.9%, 190℃, フロー式 (反応器内滞留時間: 約14分) 反応において, 最大約84%の接触分解がみられた. これは, NO分子への電荷移動度の大きさ, 酸素分子との選択性, 中心金属へのNO分子の複数吸着能の高さに起因すると結論した.
  • 野村 正人, 岡増 信幸, 前田 崇博, 藤原 義人, 柴田 光信, 高木 滋樹, 杉浦 正昭
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 346-353
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    香料あるいは医薬品合成時の中間体として重要であるα-およびβ-lonone (1, 2) のケトン基を簡便な手法による反応を用いて, それぞれ対応するアミン体としたのち, 各種クロリド体との縮合反応により, 側鎖にアミド基, スルフィド基あるいはチオシアナト基を導入した16種類の化合物を合成した. これら縮合生成物について, 植物に対する成長阻害試験および抗菌・抗かび活性試験を行った. その結果, 細菌として枯草菌, 大腸菌および黄色ブドウ状球菌を, また糸状菌として黒かび, 青かびおよびトマトいしゅう病菌を用いた抗菌・抗かび活性試験では, とくに化合物1e, 1jおよび2jがいずれの菌・かびに対しても薬量濃度100ppmで完全に発育を阻止することが認められた. また, そのうちでも黒かびに対する蒸散性殺菌試験では薬量濃度0.01-0.001μg/mLの範囲において, ほぼ完全にかびの発育を阻止することが確められた.
  • 松田 常雄, 柳沢 徹, 黒木 保
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 354-359
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    廃ポリエチレンをシリカ・アルミナ触媒を主体とする各種の触媒を流動させながら400℃ で分解を行った. シリカ・アルミナ, Y型ゼオライトおよびそれを硫酸で処理した触媒では, 炭素数20位までの炭化水素からなる液状生成物を多く生成したが, シリカ・アルミナに鉄, ニッケル, 銅を担持した触媒上では炭素を主体とする残留物を多く生成した.
    シリカ・アルミナ触媒だけで350℃ から700℃ までの温度で分解を行った場合, 450℃ で最大の液状生成物の生成を示した. 350℃ の分解ではワックス状のものが生成したが, 600および700℃ ではガス状の生成物の割合が増大した. ワックス状のものの生成は400℃ 以上の分解温度では生成が見られなくなった.
    いずれの触媒においても発ガン性物質のベンゾ [a] ピレンの生成が認められ, 分解温度が高くなるにつれベンゾ [a] ピレンの生成量が多くなった.
  • 鈴木 芳和, 横井 弘
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 360-363
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Magnetic susceptibility measurements for the aqueous iron (III) -triethanolamine (TEA) systems of [iron (III) ion] =2.5 mM ( 1 M=1 mol dm-3) and R= [TEA]/ [iron (III) ion] ≥ 20 in a wide pH range 1 to 13 at room temperature have been carried out by the Gouy method with much attention to precipitation reactions in these solutions. It has been revealed that, at pH 3-7, TEA scarcely solubilizes iron (III) hydroxide-like clusters, while, at pH> 8, it strongly coordinates to an iron (III) ion with its deprotonated hydroxyethyl group and finally forms some stable and soluble mononuclear iron (III) complex with a TEA/Fe ratio of 2 or 3. It appears well established that the masking of iron (III) ions by TEA in analytical chemistry is identical with the formation of the above-mentioned mononuclear iron (III) complex in alkaline media.
  • 山崎 康寛, 山下 達人
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 364-368
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    It was investigated by cyclic voltammetry that the titled [amino (carboxy) phthalocyaninato] cobalt (II) can work more effective on the decomposition of acetaldehyde than (polycarboxyphthalocyaninato) iron (III) from the point of electrochemical interaction. It is already reported that (polycarboxyphthalocyaninato) iron (III) has catalytic activity on the decomposition of acetaldehyde as if it works like enzyme catalase; however, phthalocyaninatoiron (III) has a crucial problem that it is easily deteriorated via, μ-oxo dimer in basic solution. In addition, from our practical experiments by the measurements of odor-decay with gas inspection tubes, (tetracarboxyphthalocyaninato) cobalt (II) did not work on the decomposition of acetaldehyde. We propose in this article that the titled [amino (carboxy) phthalocyaninato] cobalt (II) could be a practical odor-remover against acetaldehyde included in tabacco odor.
  • 浮須 祐二, 宮寺 達雄
    1998 年 1998 巻 5 号 p. 369-371
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Catalytic dehalogenation of organic halides was carried out in a 2-propanol solution of NaOH with Pd/C at temperatures below 82 °C. It was found that the aliphatic halides were converted to the corresponding halogen-free hydrocarbons with high yields, although the reaction rate was much slower than that of aromatic halides. Among the substrates containing I, Br and Cl, the order of dehalogenation rate was I>Br>Cl. The halogen at the terminal position of the carbon chain was easily dehalogenated rather than the internal halogen.
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