日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 7 号
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  • 吉澤 一成, 太田 雄大, 山邊 時雄
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 451-459
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタンモノオキシゲナーゼ (MMO) は二核鉄を活性中心にもつ金属酵素であり, 生理的条件下において最も不活性な炭化水素であるメタンをメタノールに酸化することができる. 最近, EXAFSの実験結果に基づいて, MMOの触媒サイクル中におけるC-H結合活性種である中間体Qは, 二つの高原子価鉄-オキソ種から構成されていることが提案されている. また, 気相中ではオキソメタル陽イオン (FeO+) がメタンをメタノールへと酸化することが知られている. 著者らは, このメタン酸化反応について密度汎関数法 (B3LYP) を用いた解析を行ったところ, メタンはC3vまたはD2dに変形して鉄と結合を生成することにより非常に効率的に活性化されることを見いだしている. 著者らはこれまでの研究成果に基づいて, MMOによるメタン酸化が二段階協奏反応で進行しうることを提案している. 今回, 密度汎関数法を用いることにより, メタン-メタノール転化の反応機構について解析した. また, 可溶性MMOの反応性の特徴の一つである生成物の立体反転も, 五配位炭素上での反転機構によって説明できることも見いだしており, 著者らの二段階協奏反応が可溶性MMOの反応性をよく再現できることが示された.
  • 岩舘 泰彦, 服部 豪夫, 西山 伸, 福島 和子, 菅原 芳恵, 中沢 哲也, 野田 健治, 辰巳砂 昌弘, 梅咲 則正
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 460-464
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Li2O-TeO2系ガラスは, 密度, 屈折率および誘電率の大きな物質で, 赤外線透過率の高い材料としても知られており, 最近ではこのガラス系を通信用材料として利用することに多くの関心が集まっている. しかし, 材料設計する上で必要となるそのガラス構造については分光学的観測に基づく解析のみで, 回折法により詳細に解析された例は見当たらない. そこで, 15mol%Li2・85mol%TeO2および25mol%Li2・75mo1%TeO2の2種のガラスを試料とし, それらの短範囲構造をX線回折法により解析した. 得られた動径分布関数の解釈にあたっては, 強度比較法に基づいて考察し, 以下の結論を得た. (1) アルカリテルライトガラスにおいて酸素が四配位したTeO4三方両錐体の結合の中には,0.18nm程度の短い結合と0.20nm程度の長い結合の2種類が存在する. (2) 網目構造を形成する単位としては, TeO4 (三方両錐体) および酸素が三配位したTeO3 (三方錐体) があり, Li2の添加量の増加に伴い,TeO4(三方両錐体)から非架橋酸素を含む多面体を経てTeO3 (三方錐体) へと移行すると考えられる. (3) Te原子上の孤立電子対は, ガラスの網目構造を形成する上で個々の結合には関与していない.
  • 軽部 昭夫, 丸山 雅雄
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 465-469
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    サントニン (1) の異性化で得られるサントニンC (2) のアルカリ性還元反応を検討し, 2種類のテトラヒドロサントニン (THS) と4種類のヘキサヒドロサントニン (HES) を得て, それらの立体構造を明らかにした.
    2を水酸化ナトリウム水溶液中で接触還元して, A/B環がシス結合で9-メチル基がβ結合の新THS4を得た. 4をHClO4で異性化して, 9-メチル基がα結合の5を得た. 4をNaBH4で還元し, 生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離して新HHS6と7を得た. 同様に5からは新HHS8および9を得た. さらに,Cockerらが4と報告した化合物は5と一致し, 7と報告した化合物は9と一致することを明らかにした.
  • 蒔田 桂, 安藤 文雄, 二宮 善彦, 纐纈 銃吾
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 470-475
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    隔膜セルを用いて電解質支持塩を含むアセトニトリル溶媒中ホスホニウム塩, アルソニウム塩の電解還元を行い, その生成物を31P-NMRスペクトルおよび液体クロマトグラフィーで追跡した. 安定イリドを与える (メトキシカルボニルメチル) トリフェニルポスホニウムの還元ではトリフェニルポスフィンのほか, 水素ラジカルが脱離したイリドの生成が認められる. しかし準安定イリドを与えるベンジルトリフェニルボスホニウムプロミドの電解ではイリドは直接観察されずトリフェニルポスフィン, トリフェニルポスフィンオキシドのほか, イリドの酸化反応によるスチルベンが生成する. アルソニウム塩でも同じ形式の還元が見られるがトリフェニルアルシンへの開裂が主反応となる. また, ホスホニウム塩, アルソニウム塩においても置換ベンズアルデヒドを共存させ電解還元を行うとWittig反応が進行し, イリドの生成反応とトリフェニルポスフィン, アルシンを与える解裂反応とは競争的に起こることを見いだした.
  • 田中 潔, 奥村 宏史, 出口 誠, 岩田 理
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 476-480
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶媒の光分解により発生する塩化水素の付加・脱離によって生起するポルフィリンのホトクロミズムを検討し, 溶媒とポルフィリン置換基のホトクロミズムに及ぼす効果を明らかにした. その結果, 溶媒としては50% 2-クロロエタノール (酢酸エチルとの混合溶媒) が, 光照射によりすばやく塩化水素を発生する点および熱により容易にポルフィリン塩酸塩から塩化水素を脱離する点から適当であることがわかった. また, ポルフィリンとしては5, 10, 15, 20-テトラキス (4-トリフルオロメチルフェニル) ポルフィリン (CF3TPP) が, その十分な耐光性のために適していることが明らかとなった. CF3TPPと50% 2-クロロエタノールからなるホトクロミック系は, 光と熱による塩化水素の付加・脱離の繰り返しに対して安定であることも併せて明らかにした.
  • 佐藤 裕一, 和田 理征, 田崎 美智子, 岡部 勝
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 481-488
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ (フッ化ビニリデン) (PVdF) をシクロヘキサノンのようなケトン中に溶解させ, その溶液を室温で静置すると, PVdFのランダムコイル鎖はTGTGのコンホメーションを形成して結晶化し, やがて系全体はゲル化に至る. 分子量の異なる4種類のPVdFを用い (分子量範囲MW=30.7×104-82.7×104), これらの試料がシクロヘキサノン中で結晶化してゲル化していく過程をフーリエ変換赤外分光分析 (FT-IR) と膨張試験により追跡した.
    試料の分子量が増大すると, TGTGのコンホメーション形成は遅れ, 結晶化はゆっくり進行する傾向を示した. この結晶化過程をAvrami式で解析したところ, 各試料について勾配の異なる2本の直線が得られた. そこで, 勾配の急な前半の直線部分 (一次結晶化領域) の傾きn (Avrami指数) を求めたところ, nは2.9<n<3.6の範囲に分布し, この値は分子量が増大するにつれ小さくなった. また, 系全体がゲル化するまでの時間 (ゲル化時間tgel) は分子量の小さい試料では長くなり, ゲル化はAvramiプロット上の勾配の緩やかな後半の直線部分である二次結晶化領域内で起こるのに対し, 分子量が大きくなるとtgelは指数関数的に短くなり, 勾配の急な一次結晶化領域内でゲル化が起こることが判明した.
  • 松井 和則, 山本 隆雅, 後藤 哲二, 野澤 和洋, 別所 健太郎
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 489-494
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリエトキシ (フェニル) シラン-テトラエトキシシラン混合系を原料にして, フェニル基を有するシリカゲルをゾル-ゲル法で作製した. ビレンの蛍光プローブを用いると, ピレンの蛍光スペクトルと蛍光寿命はゲル中のフェニル基の組成の増加とともに変化し, トリエトキシ (フェニル) シランが約20mol%以上で一定になった. これと対応して, トリエトキシ (フェニル) シランが約20mo1%以上で, フェニル基を有するシリカゲル自体の蛍光はフェニル基のモノマー蛍光からエキシマー蛍光に変化した. シロキサン骨格に由来する赤外吸収スペクトルのバンドも, やはり約20mol%以上で振動数にシフトが見られた. これらの結果は, かさ高いフェニル基によって引き起こされるゲル構造の変化によるものと考えられる.
  • 松本 光弘, 村野 健太郎
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 495-505
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    年間のガスおよびエーロゾルのイオン成分の樹木等への乾性沈着量を求めるために, ガス, エーロゾルのイオソ成分の長期間の簡便な測定手法として4段濾紙法を検討し, この測定手法を用いて奈良市で1993年7月より1995年6月まで2年間にわたりガス, エーロゾルのイオン成分の大気中濃度を測定した. さらにこれらのガス, エーロゾルのイオン成分濃度と既存の樹木等に対する乾性沈着速度を利用して乾性沈着量を求めた.
    乾性沈着量の測定の基礎としての大気中の酸性とアルカリ性のガスおよびエーロゾルのイオン成分濃度の同時測定は4種類の濾紙を用いる4段濾紙法(F0:PTFE濾紙 F1; ポリアミド濾紙, F2: 6%K2CO3+2%グリセリソ混合水溶液含浸濾紙, F3: 5%リン酸+2%グリセリソ混合水溶液含浸濾紙) を検討し, この方法によりガス (SO2,HNO3,HCl,NH3) およびエーロゾルのイオン成分 (SO42-, NO3-, Cl-, Na+, NH4+, K+, Ca2+, Mg2+) の濃度測定を行った. この結果, ガス濃度の平均値はSO2: 76.2nmol/m3 (以下, nmol/m3を省略) [1.83PPb; 20℃ (以下,PPb: 20℃ を省略) ] , HNO3: 27.3 [0.66] , HCl: 31.8 [0.76] , NH3: 115 [2.76] , エーロゾルのイオソ成分濃度の平均値はSO42-: 52.3, NO3-: 47.7, Cl: 45.1, Na+: 34.4, NH4+: 121, K+: 9.4, Ca2+: 20.5, Mg2+: 6.2であった.
    乾性沈着量を求めるためにインファレンシャル法によりガスおよびエーロゾルのイオソ成分濃度と様々な表面 (裸地, 農地, 落葉樹針葉樹) の沈着速度より試算を行った. この結果, SO42-およびNO3-の沈着量の平均値は各々, 裸地0.83, 1.5mmolm-2/月 (以下, mmolm-2/ 月を省略) , 農地0.99, 1.6, 落葉樹0.74, 2.0, 針葉樹1.17, 2.6であり, 針葉樹がSO42-, NO3-共に最も沈着量が多かった. なお, 湿性/ 乾性沈着, 分別採取装置で採取した代理表面法によるSO42-およびNO3-の乾性沈着量の平均値は各々0.692, 0.601mmolm-2/ 月であることより上記の様々な表面に比べて少なかった. また, インファレンシャル法による乾性沈着量の試算の結果, 様々な表面に対するSO42-およびNO3-の乾性沈着量はエーロゾルのイオン成分よりもガスのほうが多く,例えば,針葉樹に対するSO42-およびNO3-の沈着量についてはガスの割合がSO42-で59%, NO3-で77%であった.
    このような乾性沈着量, 特にHNO3ガスの沈着量は針葉樹に対して多く, 樹木に沈着した酸性物質が雨により洗い流されて高濃度になった雨が樹幹を通じて流れ, これが土壌や樹木の根系に影響を与えると考えられ, これまで湿性沈着量のみでは植物被害の評価が困難であったが, 乾性沈着量を考慮することにより植物影響を理解することができた.
  • 中野 信夫, 山本 明弘, 川辺 哲也, 長島 珍男
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 506-510
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドを連続して測定できる自動モニターを開発した. 既報のホルムアルデヒドテープを用いて, ホルムアルデヒドを通気する時間を延長しても, ゼロガスでのバックグラウンド値が上昇するため0.1ppmのホルムアルデヒドを検出することが困難であった. 従来のヒドロキシルアミン硫酸塩とpH指示薬を用いた発色系はそのままとし, 吸着剤であるシリカゲルを混和したテープを検討した. このテープにホルムアルデヒドをテープ表面に吹き付ける方法に変えることで, ゼロガスでのバックグラソド値の上昇が抑えられ, 30分間の測定でホルムアルデヒド0.08ppmを検出することができた. ガスの流量100mL/min, ガスの導入時間30分間の場合, ホルムアルデヒドの濃度が0.1ppmのときの再現性は, 標準パーセントで表すと3.8%(n=10)であった. 本モニターの連続測定については, 20時間にわたって指示値は±10%以内と安定していた. ホルムアルデヒド以外にアセトアルデヒドには応答を示したが, それ以外のトルエン, キシレン, ベンゼン等のVOCには全く応答を示さなかった.
  • 澤本 博道
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 511-513
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Adsorption-desorption phenomena of sodium dodecyl sulfate and sodium dodecylbenzenesulfonate at a mercury electrode were studied by a flow injection method with measuring differential capacity-time curves. Adsorption of sodium dodecyl sulfate at -0.2 V is irreversible, while that at the potential more negative than -0.4 V is reversible. Adsorption of sodium dodecylbenzenesulfonate is irreversible at the potential more positive than -0.8 V. It is reversible at the potential more negative than -1.0 V. From these results, adsorption models for the two surfactants were proposed.
  • 生駒 嘉晴, 直井 嘉威
    1998 年 1998 巻 7 号 p. 514-517
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Non-ligated Nickel (II) chloride-catalyzed cross-coupling between aryl Grignard reagents and aryl halides has some merits for industrial application. 1) Toxic and expensive phosphines are not needed and 2) the absence of organic ligands makes the treatment of the reaction mixture easier: The extraction with water is enough to separate the product from the catalyst. We examined the problems for the industrial scale application of the NiCl2-catalyzed cross-coupling reaction for the production of 3-chloro2-methylbiphenyl, an intermediate for pyrethroid insecticides, from 2, 6-dichlorotoluene and bromobenzene.
    The undesired formation of bis (magnesium chloride) from 2, 6-dichlorotoluene can be avoided by using excess 2, 6-dichlorotoluene. The unreacted 2, 6-dichlorotoluene can be recovered by distillation after the reaction. Homo-coupling of Grignard reagents can be suppressed by the purge of oxygen from the reaction system.
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