日本化学会誌(化学と工業化学)
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1999 巻, 10 号
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  • 柳 裕之, 榊 徹, 緒方 隆之
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 629-636
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来のイオン電極に代わるものとして自発的な分子配列を誘起する独自の分子設計に基づいた新規化合物を合成し,それらを用いたNa+,K+およびC1-電極を開発した.
    Na+,K+電極には特殊なクラウンエーテル化合物を含む高分子膜をイオン感応膜として用いており,それぞれ12-クラウン-4,15-クラウン-5の誘導体である.これらのクラウンエーテル化合物は,特定の性質の置換基を有し,2個の分子が置換基間の相互作用により分子配列するように分子設計されている.この分子間の相互作用が強いほど目的イオンの選択性が向上することが明らかとなった.
    Cl-電極は生体膜と類似した構造を持つ合成二分子膜を応用したものである.二分子膜構造を高分子固定化した感応膜は水中で熱処理することにより,フィルム面と垂直方向への分子配向組織を形成する.イオン選択性はこの配向性に大きく依存しており,配向処理によりかさ高いイオンに対する塩化物イオンの選択性が著しく向上することを見いだした.
    これらのイオン電極は臨床検査分野で実用化され,優れた性能を発揮している.
  • 村山 幸市, 王 岩, Roumiana TSENKOVA, 尾崎 幸洋
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 637-647
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは一般化二次元近赤外相関分光法を用いて卵白アルブミンの熱および酸変性過程を研究した.近赤外分光法はタンパク質の構造や水和に関して,赤外,ラマン分光法とは異なつた独特な情報を与えるが,近赤外領域には数多くの倍音,結合音が重なって現れるので,近赤外スペクトルの解析は必ずしも容易でない.そこで著者らは,二次元相関分光法を近赤外スペクトルの解析に用いた.そうすることにより,水によるバンドとアミド基によるバンドを分離して観測することができた.タンパク質の濃度を摂動として45℃から80℃まで2℃ごと,pH5.8からpH2.4までpH 0.2ごとに同時,異時二次元相関スペクトルを計算した.その結果,熱変性では67℃から69℃の間に水和に大きな変化が生じ,その変化が引き金となって卵白アルブミンのunfolding過程が始まること,pH変性ではpH3 .0付近で水漁に大きな変化が起こり,ゲル化が始まることが明らかになつた.二次元相関近赤外分光法は今後タンパク質の水和と二次構造変化の研究に大いに役立ちそうである.
  • 高岡 京, 小林 光一, 高橋 政志, 曽禰 元隆
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 649-654
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ひまし油に水を溶解したとき起こるひまし油の構造の変化を細線加熱法で測定し,脱水ひまし油および含水ひまし油におけるひまし油と溶存水との相互作用を調べた結果,次のようなことがわかった.
    ひまし油中の溶存水量を増加させると動粘性率が次第に増加し,溶存水量が4075ppmで最高値を示した.さらに溶存水を増加させると動粘性率が急減し,飽和含水ひまし油では最小値を示した.
    ひまし油中のグリセリントリリシノーレアートのヒドロキシ基の数と溶存水量との比の値が5/mol H2Oのとき最高の動粘性率を示し,水分子の分子間架橋が最大となった.
    飽和含水ひまし油中の溶存水は,分子間架橋をしないで水クラスターを形成し,それが可塑剤の作用をしていることを示唆している.
    各含水ひまし油を10-50℃へ昇温すると分子問架橋が破壊され,60℃ではほぼ消滅した.
  • 野島 繁, 飯田 耕三, 小林 敬古
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 655-662
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リーン燃焼排ガス用脱硝触媒として,MFI型メタロシリケート担持Ir触媒を活性化処理することにより脱硝活性が飛躍的に向上することを見いだした.H20-N2雰囲気で活性化処理することにより,炭化水素転化率はわずかに低下するものの,脱硝活性は大きく向上する.本活性化担持Ir触媒は酸素濃度0.48-8%の広範囲のリーン雰囲気でオレフィン系および芳香族系の炭化水素を還元剤として,300-500℃において高選択的にNOをN2に還元することができる.
    本触媒のキャラクタリゼーションをX線回折法,EXAFS法により行ったところ,活性化処理により活性金属のIr担持物は非晶質状態のIrO2からある程度凝集したIr金属に還元されることが確認でき,このことから,担体に担持されたIr金属が活性点であることがわかった.また,H2-TPR試験にてH2との反応により生ずるH2Oの生成温度を測定したところ,活性化処理により約230℃から約120℃に低下することが確認でき,このことから触媒表層に活性酸素が存在することがわかった.
    さらに,脱硝反応機構を検討したところ,活性酸素と炭化水素から形成された含酸素炭化水素が反応中間体として脱硝反応に寄与することが示唆された.
  • 伊藤 雅彦, 五十嵐 香, 清水 紀夫, 相原 正孝
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 663-669
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層状の結晶構造を有する繊維状水科二酸化チタンとアンモニア蒸気との反応について研究した.アンモニアは層間内に取り込まれ,その量は4.26mmo1/gであった.また,この反応による層間内のアンモニア量と表面吸着量との違いを明確にした.得られた物質の組成は(NH4) 1.1H0.9Ti4O9mH2O,(m=1.5)であることがわかった.アンモニア水溶液との反応による同様の生成物と比較すると,NH3量は等しく,H2O量は多く,層間隔が大きかった.
  • 阿部 能之, 掛川 一幸, 佐々木 義典
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 671-676
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PbzrO3-PbTiO3-Pb(Mg1/3Nb2/3)O3三成分系固溶体の三方晶領域における組成変動の定量法を囎発した.開発した方法は,hOO面の格子面間隔変動の上下限値とキュリー温度の変動の上下限値から定量する方法である.hOO面の格子面間隔変動の上下限値は,粉末X線回折ピークの広がりの回折角依存性から求めた.キュリー温度の変動の上下限値は,比誘電率の温度特性において観察される,常誘電相一強誘電相の相転移の際の比誘電率ピークの広がりから求めた.三角図上に描いたhOO面の面間隔の等値線とキュリー温度の等値線は向きが大きく異なつていた.hOO面の格子面間隔変動の上下限値に対応する組成の線とキュリー温度の変動の上下限値に対応する組成の線を三角図上に描き,これら4本の組成線に接するように描いただ円領域を組成変動領域とした.
  • 永原 肇, 八島 啓介, 正本 順三
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 677-683
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)を連鎖移動剤とするトリオキサンの重合により,長鎖メチレンからなるアルキル基を有する新しい型のポリ(オキシメチレン)を合成した。1,2-ジクロロエタンを重合溶媒とし,1,3-ジオキソランをコモノマーとするトリオキサンの溶液重合では,重合系に供給したステアリルアルコールは重合中にほとんど消費されることがガスクロマトグラフ分析法によりわかった。また,オクタデシル基が重合体中に存在することが1H-NMR法により確認された。しかしながら,消費されたステアリルアルコールの量とポリマー中に見いだされたオクタデシル基の間には差異が見られ,ポリマー中のオクタデシル基は,消費されたステアリアルコールの量よりもかなり少なかった。低分子量でかつコモノマー成分を多く含むオキシメチレン共重合体が洗浄剤として使用されたメタノールに溶解したものと推定された。一方,1,3-ジオキソランをコモノマーとするトリオキサンのパルク重合では,反応系に供給したステアリルアルコールが多い場合を除き,供給したステアリルアルコール量とポリマー中に見いだされたオクタデシル単位量は比較的良い一致を示した。1H-NMRによる解析では,ポリマー中のオクタデシル基中のある種のメチレンのプロトンは,遊離のステアリルアルコールの場合に比して低磁場シフトしていた。また,オクタデシル基と隣接するオキシメチレンのプロトンのシグナルが4.87ppmに観測された。このことからも,オクタデシル基がポリマー末端に付加していることがわかった。
  • 平田 雄一, 三浦 裕, 仲川 勤
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 685-690
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    対イオンの異なるNafion膜の水蒸気透過性への膜中の水の状態の影響を検討した.対イオンとして2種のアルカリ金属イオン(Na+とK+)と2種のアミノ糖(α-D-グルコビラノシル-(1→6)-2-アミノ-2-デオキシ-α-D-マンニトールとD-グルシトールの等量混合物(GPA)とD-グルコサミンを用いた.膜中の不凍水の含有量と運動性は,2状態モデルに基づいて,示差走査熱量測定と170-NMR測定により決定した.これらの膜の水蒸気透過性は,膜の水の溶解度に依存し,一方,水蒸気拡散性は,膜の水の取り込みよりはむしろ不凍水の運動性に依存した.対イオンにGPAを用いたNafion膜の水の拡散性は,本研究に用いた膜の中で最も低くなつた.これは,他の膜に比べこの膜に取り込まれた水に占める不凍水の割合は高く,不凍水の運動姓は低くなったためである.Nafion膜において,アミノ糖は,そのかさ高い構造により,膜への凍結水の取り込みを抑制し,アミノ塘のヒドロキシ基の局所的な凝集により,他の対イオンと比較して,アミノ糖の周囲の不凍水の運動性は低くなった.
  • 渡部 修, 長井 勝利
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 691-695
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effect of UV irradiation on lacquer tree paint films containing UV absorbents, 2-hydroxybenzophenone and 2-hydroxy-4-octyloxybenzophenone, was investigated and discussed on the basis of reversed micelle structure and the evaluation method for the paint films, which we previously proposed.
    The development of UV resistance appeared to be related to the effect on the curing reaction and the degradation was not inhibited on insufficient curing. On the other hand, the suppression effect of absorbents on the degradation was observed for the paint films taking a fully developed, reserved-micelle structure. The curing reaction would be little interfered with the absorbent having a molecular structure like Urushiol.
  • 川島 正敏, 中山 実, 宮川 昌子
    1999 年 1999 巻 10 号 p. 697-699
    発行日: 1999/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Isomerization of erythro-1, 2-dipheny1-1, 2-ethanediol (1a) into threo-la was successfully achieved by treatment with 2 molar amounts of potassium t-butoxide in refluxing THF for 2 h. Monoesters or diester of erythro-la with pivalic acid or benzoic acid were also isomerized into the corresponding threoisomers, when treated with 4 molar amounts of potassium t-butoxide even at room temperature. erythro/threo-Isomerization of 1, 2-bis (4-methoxypheny1)-1, 2-ethanediol and 1, 2-bi s (4-methylphenyl)-1, 2-ethanediol proceeded under the similar conditions but failed for isomerization of 1, 2acenaphthenediol.
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