日本化学会誌(化学と工業化学)
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1999 巻, 11 号
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  • 辻井 薫
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 701-713
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリマーヒドロゲルと界面活性剤との相互作用,および両者のハイブリッド材料に関する最新の研究を概説した。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲル(NIPA)の体積相転移挙動は,界面活性荊の添加によって劇的に変化する。相転移温度は,界面活性剤の化学構造に大きく依存した。この理由を明らかにするために,界面活性剤のNIPAゲルへの結合等温線を測定した。その結果,相転移に伴うポリマー鎖のコンホメーション変化によつて,界面活性剤のゲルへの親和力がスイッチされるという大変興味ある現象を見いだした。この現象は,ヘモグロビンの酸素運搬や酵素反応の機能の模倣となっている。また,界面活性剤によるNIPAゲルの転移点の変化は,吸着能の差として理解できることも明らかにした.重合性界面活性剤である2,3-ジヒドロキシプロピル=ドデシル=イタコナートの発色性ラメラ液晶を用いて,ヒドロゲルと二分子膜のハイブリッド材料を初めて合成した.このハイブリッド材料は,ゲルまたは二分子膜が単独では示さない相乗的な性質を示す。また,流動ひずみをかけた直後に重合することにより,膨潤挙動や光学的/力学的性質が巨視的異方性を示すゲルの合成にも成功した。
  • 黒坂 忠弘, 杉岡 正敏, 松橋 博美
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 715-722
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    貴金属(Pt,Rh,Pd,Ru)を担持したZSM-5によりチオフェンの水素化脱硫反応(HDS反応)を行ったところ,Pt/HZSM-5が最も高いHDS活性を示した。Pt/HZSM-5ではブタンが主生成物であったのに対し,Rh/HZSM-5,Pd1HZSM-5,Ru/HzSM-5では芳香族生成物の選択性が高かった。芳香族化などの逐次反応の起こる触媒でHDS活性の低下が著しいことから,逐次反応の生成物が炭素析出の原因であると考えられた。
    赤外吸収スペクトルとアンモニアの昇温脱離スペクトルより,担体であるHZSM-5の酸量が同じであることが明らかとなった。X線回折の結果,Ptの分散度はRhやPdより低く,HDS活性は硫化水素存在下での担持貴金属の水素活性化能に依存すると考えられた。
    2種のPt/HZSM-5を用いたところ,HDS活性はPtの分散度に依存し,ゼオライトの酸性がPtの分散度に影響を与えていることが示唆された。
    以上の結果より,分散度向上のために酸量の多いゼオライトを担体とし,耐硫黄性に優れているPtを用いることにより,HDS反応に高活性な触媒が調製できることが明らかとなった。
  • 石川 徳久, 野村 哲也, 李 明杰, 松下 寛
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 723-731
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    試料液のイオン強度調整を必要としない標準液添加法とキレート置換反応を利用した金属イオンの間接電位差定量法を提示する.
    Nイオン選択性電極.比較電極対を浸漬した測定金属イオンMを含む体積Vの試料液を,濃度Coの金属キレートNL液(滴定液1)で滴定する(Nは金属イオン,Lはキレート配位子).このとき,置換反応によってNが放出される.滴定液1の添加体積(νf)に対する起電力(E1)を測定したのち(滴定液1の最終添加体積をνf0とする),一定体積V0の試料液を添加する.引き続いて濃度C0のNLと濃度CMのMを含み,滴定液1と同じイオン強度をもつ溶液(滴定液2)で滴定し,滴定液2の添加体積(νS)に対する起電力(E2)を測定する.
    この二つの滴定曲線から,νS=[1+(V0/V)]νff0を満足するνfSに対応したE1,E2を読み取る.このとき,E1とE2,の溶液中のNの副反応係数がほぼ同じであれば,Mの濃度cxに関して次式が成立する.〓ここで,ΔE=E2-E1,Vνf0'f0/[1+(V0/V)],SはNイオン選択性電極の応答勾配である.10ΔE/S対(νff0')の直線プロットの勾配からCxが決定される.CuII-edtaと銅(II)イオン選択性電極を用い,種々のイオン強度の試料液中の2×10-3-1×10-5mol dm-3の範囲のビスマス(III)イオンを,誤差±1%以下,相対標準偏差0.8%以下で定量した.
  • 松本 和秋, 本里 義明
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 733-737
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジクロロメタンを主成分としてこれとエステルとアルコールを含む混合希釈剤からなる混合溶液にセルロース酢酸酪酸工ステルを溶かした溶液をポリ(ビニルアルコール)水溶液に懸濁させた上で,加熱し,ジクロロメタンを除去することにより混合希釈剤を含有するセルロース酢酸酪酸エステル球状粒子を得た。この球状粒子をメタノールで洗浄して混合希釈剤を除去し,引き続きけん化してマクロ細孔セルロースゲルを得た。さらに機械的強度を増すために(クロロメチル)オキシランにより橋かけを行った.橋かけセルロースゲルは水系充填剤として大きな排除限界分子量を有し,耐流速性に優れていることが半糊した。
  • 木村 拓子, 山本 進一, 小川 勲, 三浦 啓彦, 長谷川 正木
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 739-750
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性酸素を除去する機能を有する化合物の探索および合成は近年非常に注目を集めている。最近,薬草から抽出されたチコリ酸には抗酸化作用があることが報告された。
    本研究では,チコリ酸をはじめとする抗酸化剤の化学構造と抗酸化作用の関係を調べることを目的とした。
    まず,チコリ酸およびチコリ酸類縁構造をもつカエェオイルリンゴ酸の合成方法を検討した。抗酸化作用の評価は,遊離基除去作用についてはDPPH法を用い,化学量論的立場から評価した。抗酸化作用については,ラットの脳のホモジネートを用いて,抗酸化剤による脂肪酸化で生成するチオバルビツル酸反応物の生成抑制モル濃度によって検討した(ALP法)。
    抗酸化剤によるDPPHの消費速度と最終消費量から,種々のチコリ酸誘導体の遊離基除去作用についての化学量論的立場による考察を行なった。DPPH法およびチオバルビツル酸法の結果から,フェノール性ヒドロキシ基,カルボン酸,エステル,オレフィン二重結合,単結合などの化学構造の存在や種々の位置異性体と抗酸化作用の関係について考察した。
  • 藤野 治, 勝部 宏明
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 751-757
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カイワレ大根に対するランタノイドイオンの吸収,放出,蓄積ならびに発芽,生長に対する影響について検討した.ランタノイドイオンを含むpH5の培養液(200mL)に種子(20粒)をまき20℃ において,一週間発芽,生長させた.まず発芽過程(種子をまいてから約30時間)において,経時変化に伴い,水素イオンとランタノイドイオンは吸収され,一方,多量のカリウムイオンが種子から放出された.生育過程(30時間以降)になると水素イオンとランタノイドイオンはわずかではあるが放出され,種子自ら発芽過程で放出したカリウムイオンを急激に吸収し始めた.このように水素イオンやランタノイドイオンとカリウムイオンは強い負の相関関係にあることが明らかとなった.特に注目されたのはカイワレがランタノイドイオンとアルカリ金属やアルカリ土類金属などのイオン種とを識別し発芽段階で吸収し,生育過程で放出するなど水素イオンと同じ挙動を行うことであった.また培養液中においてランタノイド濃度が1ppm以下のときカイワレの発芽や生長には影響しなかったが,3ppmになると低下し始め,10ppm以上になると発芽してもほとんど生長しないなど,カイワレ生長に対するランタノイドの正の効果は認められなかった.
  • 辻 俊郎, 田中 義樹, 柴田 俊春, 上牧 修, 伊藤 博徳
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 759-763
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンペレットを二段階ガス化工程により検討した.1段目の工程はポリエチレンから液状生成物を得るための熱分解であり,2段目は1段目で得られる液状生成物をガス化する工程である.
    1段目の留出油の収率は,分解温度470℃で約87wt%であった.2段目のガス化反応におけるこの留出油の最大ガス化収率は,800℃で試料ポリエチレンの82wt%であり,主成分はエチレンとメタンであった.また800℃においてC3以下のガス成分を得る最適空間時間は2.6sで,この条件下で生成するコークス量は1wt%未満で微量であった.vポリエチレンの二段階熱分解ガス化は,コークスの生成量が少なく,効率良く高カロリーのガスと,BTX(ベンセン,トルエン,キシレン)を主成分とする油を得ることができる.
  • 青木 一仁, 石丸 雄大, 飯田 武揚
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 765-768
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An ion sensitive field-effect transistor (ISFET) combined with immobilized thermophilic enzymes was applied to the determination of β-D-glucosidic glycosides. In order to improve the stability of the biosensor, the pH-sensing gate of ISFET was covered with the thermostable enzyme layer using thermophilic β-D-glucosidase and glucokinase. The characteristics of the developed bienzyme ISFET sensor were studied using the samples of β-glucosidic glycosides such as salicin and esculin. The dynamic range from 0.3 mM to 30 mM (1 M=1 mol dm-3) was obtained for salicin at pH 7.0. The responses were enhanced in the temperature range from 40 to °C.
  • 今田 安紀, 北野 圭祐, 大北 博宣, 水嶋 生智, 角田 範義
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 769-773
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effect of alkali metal cation as an additive in catalytic combustion of Diesel particulate matter (PM)was investigated using TiO2-supported copper catalysts (M, Cu/TiO2, M: alkali metal ion) derived from copper ( II ) chloride (CuCl2, 2H2O) by the addition of Na+, K+, Rb+ and Cs+ ions, respectively. M, Cu/TiO2 catalysts except for Na, Cu/TiO2 showed good catalytic performance of the PM combustion be low 620 K, especially in recycle use. This is attributed to that the presence of compounds consists of M-CuCl promoted the intimate contact between MC1 and Cu species after the decomposition of M-Cu-Cl. Since K, Cu/TiO2 among M, Cu/TiO2 catalysts was superior in combustion temperature, potassium is presumed to act favorably for the oxidation of PM.
  • 出川 宏規, 池田 有希, 白銀 泰一, 福田 猛, 渡邉 治, 斎藤 則子, 泊 晃平, 谷川 晴康, 宇野 憲治
    1999 年 1999 巻 11 号 p. 775-776
    発行日: 1999/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Lysozyme adsorption to cross-linked poly (vinyl alcohol) (c-PVA) hydrogel was studied in vitro. cPVA hydrogel was prepared from saponified copolymers of vinyl acetate and triallyl isocyanurate by exposure to ultraviolet light. In vitro, c-PVA hydrogel and four types of 2-hydroxyethyl methacrylate (HEMA) hydrogel were used. Hydrogels were individually kept in the 0.5 w/v% lysozyme solution at 37°C for 24 hours. The lysozyme adsorbed to hydrogels was extracted with 1 w/v% sodium dodecyl sulfonate (SDS) respectively. The quantity of extracted lysozyme was determined using 2, 2'-bicinchoninic acid. The adsorbed lysozyme of c-PVA hydrogel was much less than those of four types of HEMA hydrogel. These results suggest that our PVA hydrogel may be promising as a biomaterial like soft contactlens.
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