可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)を未添加/添加したポリ壇化ビニル(PVC)中に,スビソプローブ劇として異なつた置換基を有する3種のTEMPOラジカル誘導体(TEMPO(-H),TEMPOL(-OH),TEMPOAM(-NH
2))を加え,ESR測定によりその回転相関時間(τ
c(m))を90-180℃ の温度範囲で求めた.各ラジカルのτ
c(m)の値はDOPの添加量の増加に伴い減少した.同様に,τ
c(m)の値は温度の上昇に伴つて減少した.この結果は,DOP添加量の増加と温度上昇に伴う,PVC樹脂の密度の低下と,これに伴うPVCの粘度の低下に起因すると考えられる.また,TEMPOラジカル中の官能基(-H,-OH,-NH,)の違いにより,τ
c(m)の値が異なることが明らかとなつた.この結果から,TEMPO誘導体中の官能基(-H,-OH,-NH
2)とPVCとの分子間相互作用の存在が予測された.TEMPo誘導体とPVCとの相互作用のエネルギーを,MOPAC93プログラムを用い,UHF-PM3法によって求めたところ,PVCと各TEMPO誘導体中の官能基との相互作用の存在が示唆された.また,PVCとTEMPO誘導体およびDOPとの相互作用の安定化エネルギーはTEMPO<TEMPOL=DOP<TEMPOAMの順に増加し,各TEMPO誘導体の回転運動が速いほど安定化エネルギーが低下する傾向にあることが明らかとなった.
抄録全体を表示