日本化学会誌(化学と工業化学)
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1999 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 長谷部 靖, 内山 唆一
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 431-440
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酵素の特異的な分子認識能や触媒機能を利用した酵素センサーは,多様な測定方法や装置との組み合わせによって,迅速簡便な測定法として実用化されている。著者らはある種の酸化酵素(オキシダーゼ)を適当な還元剤共存下に作用させると,酸化生成物あるいは酵素一基質中間体から基質が化学的に再生され,オキシダーゼ反応由来の酸素消費量が基質の当量を越えて増幅される現象を見いだした。この反応を利用すると,オキシダーゼを用いた酸素検知型酵素センサーの感度を著しく向上させることが可能で,基質,酵素阻害剤さらに微量生菌数の高感度測定を実現した。また,外因性配位子により活性中心を改変した金属酵素や,ポリアミノ酸/金属錯体,DNA/金属錯体などが還元剤共存下で触媒するオキシダーゼ類似反応を利用することにより,外因性配位子やDNA結合性薬物などを測定する高感度なバイオセンサーを構築できることを明らかにした。本論文では,還元剤により誘発されるこれらのオキシダーゼ増幅反応をバイオセンサーの高感度化に展開した著者らの試みを紹介する。
  • 辻 豪, 渡邊 一正, 實石 陽一, 鈴木 宏隆, 岩元 和敏, 吉田 章一郎, 妹尾 学
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 441-444
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バイポーラ膜における水の電離は金属酸化物水和物の存在により加速される。加速の機構を明らかとするために,A1(III),Rh(III),Zr(IV),Ta(V)などの酸化物水和物を賦与したバイポーラ膜を作製し,電流-電圧特性を測定することにより,金属酸化物水和物作製時のモル比[OH-]/[Mn+] (Mn+ =Al3+, Rh3+, Zr4+, Ta5+)の値に水の電離の速度が依存することを見いだした。これらの結果より,金属イオンに配位した水分子が水の電離の加速に関与していることが示唆された。
  • 宮由 義一, 朝倉 祝治
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 445-450
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素を含むNaCl水溶液中の鋼の腐食初期過程では,鋼の表面に,腐食している部分と金属光沢が保持されている部分が存在する。腐食している部分の面積は時間とともに増加する.被覆率(θ)を全表面積(A)に対する腐食面積(Aa)の割合と定義し[θ=(Aa/A)],25℃ における腐食電位(Ecorr)とθの関係を調べた。その結果に基づいて,鋼表面上で生じる電気化学反応について議論した。
    腐食初期過程では,Ecorrと10g[θ/(1-θ)]の関係はNaClの濃度やpHに依存せず,傾きが-130mV/decadeの直線となった.この結果は,次の(a),(b)の仮定により説明できた。
    (a)腐食生成物が堆積している部分でアノード反応が生じ,金属光沢が保持されている部分でカソード反応が生じている。
    (b)アノード反応速度は電位に依存しない.腐食初期過程では,アノード反応支配で腐食が進行すると考えられる。
  • 大町 忠敏, 日下 裕美, 高木 慎介, 井上 晴夫
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 451-456
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペルフルオロアルキル基の炭素数が1,2,3のポリフルオロ化カチオン型界面活性剤,N-メチル-N,2VLジオクタデシル(3-ペルフルオロアシルアミノ)プロビルアンモニウム プロミド 3種類およびその炭化水素同族体,3種類の界面活性剤のキャスト膜を水晶振動子上の金電極上に作成し,キャスト膜へのヘキサン,ベンゼン,エタノール,水の気相吸着挙動を水晶振動子重量分析法により観測した.吸脱着平衡定数,吸着座席数,吸着速度定数,脱着速度定数を求めた.非極性のヘキサン,ベンゼンは吸着しやすく脱着もしやすいのに対し,極性のエタノール,水は吸着しにくいが脱着もしにくい結果となった.吸着座席数,分子吸着総面積などの検討から非極性分子による物理吸着とは異なり極性分子では主に第四級アンモニウム基およびアミド基への溶媒和に類似する機構で吸着すると考察された.界面活性剤キャスト膜の表面は部分的には,ポリフルオロ化界面活性剤の場合,ペルフルオロアルキル基を表面に張り出した表面ポリフルオロ化構造を取り,炭化水素型界面活性剤では第四級アンモニウム基露出型構造を有していると考察された.
  • 亀田 徳幸, 米田 哲也
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 457-461
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    [ RhH2(Ph2N3)(PPh3)2](ジヒドリドロジウム錯体)-ジメチルスルホキシド(DMSO)系によるスチレンの均一系ヒドロホルミル化反応を合成ガス(CO/H2O=1/1)を用いてガス圧9.8×104-9.8×104 Pa,温度303-333Kの範囲で行った.生成物は2-および3-フェニルプロパナールで,2-フェニルプロパナールが3-フェニルプロパナールよりも多く生成した.合成ガスの圧力の増加および反応系中に1,3-ジフェニルトリアゼンまたはトリフェニルボスフインを添加すると,2-フェニルブロパナールの生成量は増し,3-フェニルプロパナールの生成量は減少した.反応温度を上昇させると2-フェニルブロパナールの生成量は323Kで極大に達する.しかし,3-フェニルプロパナールは反応温度の上昇とともに生成量は増加した.さらに,スチレンのヒドロホルミル化反応の反応機構についても検討した.
  • 田中 智一, 小林 圭, 平出 正孝
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 463-466
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    減圧ヘリウムICP-MSによれば,通常のアルゴンICP-MSに比べてイオン化効率の向上,アルゴンに起因するスペクトル干渉の除去,放電ガス消費量の減少などの特長が期待できる.しかし,ブラズマトーチ内を減圧にしているため,通常のネブライザーによる溶液試料の導入が困難である.本研究では,水溶液中のSeの定量を目的に,水素化物発生法による試料導入を試みた.Seを含む試料溶液の流れの中に2mol dm-3塩酸,次いで1w/v%NaBH4水溶液を注入し,フローシステムでセレン化水素を発生させた.ヘリウムをキャリヤー-ガスとし,ガラスキャピラリー(内径0.2mm,長さ40mm,圧力差の均衡を保つために使用)を通して減圧ヘリウムICPに導入し,Seをイオン化した.本法によれば,アルゴンプラズマのような40Ax40Ar+が生成しないため,80Se+の強い安定した信号強度を得ることができた.SIB比は,水素化物発生/大気圧アルゴンICP-MSに比べて30-40倍向上した.
  • 馬場 由成, 大熊 康之, 河野 恵宣
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 467-472
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では硝酸性窒素除去のための新規吸着剤の開発を目的として,かにやえびの殻から得られるキトサンを素材とした数種のキトサン誘導体を新規に合成し,その硝酸性窒素の除去特性について検討した.キトサン誘導体として,キトサン由来のアミノ基を利用し,第一級アミン,第二級アミン,第四級アンモニウムイオンを官能基とするもの,さらに硝酸イオンの鋳型構造を有する第四級アンモニウムイオンを官能基とするものの4種類のキトサン誘導体を用いた。吸着実験はすベてパッチ法により行い,単一溶液および塩化物イオン,硫酸イオン共存下の混合溶液からの吸着実験を行った。その結果,単一溶液からの吸着では第一級,第二級アミンを有するキトサンおよびキトサン誘導体による硝酸性窒素の吸着は,pHに大きく依存し,pH<2およびpH>6の領域では吸着量が激減することが明らかとなった。一方,第四級化キトサンおよび硝酸イオンの鋳型構造を有する第四級化キトサンでは,中性付近でも高い吸着量を示した。特に,中性付近では硝酸イオンの鋳型効果が発現し,鋳型を有していない第四級化キトサンの場合と比較すると,2倍程度の吸着量を示した。しかしながら,混合溶液からの吸着では硝酸イオンの鋳型効果は発現せず,中性付近での選択性については第二級アミンを有するキトサン誘導体が最も高い選択性を示した。
  • 三井 利幸
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 473-477
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    試料数が(m+1)個,1試料中のカテゴリー(測定値)数がn個あるような(m+1)×n行列を用いて主成分得点法(PCS)で定量分析を行った時,固有値1.000以上を示す主成分が複数になると定量精度の低下が認められた.そこで,定量精度の低下を防ぐ目的で,まず混合比など(目的変数)の明らかな勉個の試料を用いて,n個の各カテゴリー(説明変数)と目的変数との間の相関係数を計算し,相関係数が0.900以上を示したP個のカテゴリー((m+1)×P行列)のみを使用して主成分分析を行い,得られた試料の主成分を主成分得点に変換後定量する方法(PCS2)を検討した.検討は,混合割合の異なるメタムフェタミン塩酸塩とエフェドリン塩酸塩混合物をFT-IRで測定し,得られた複数の吸光度から混合物中のメタムフェタミン塩酸塩の混合罰合を定量することで行った.その結果,PCS2では固有値1.000以上を示す主成分は第1主成分のみとなり,高い精度で定量することが可能となった.本方法は,従来から行われているPCRやPLSと比較して,同程度かやや高い定量精度が得られた.
  • 笠作 欣一, 實成 隆志, 向井 人史, 村野 健太郎
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 479-486
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    東アジア地域における酸性・酸化性物質の動態解明を行う調査の一環として,SO2の大規模発生源である桜島および薩摩硫黄島からのSO2の硫黄同位体比の測定を行った。その結果,桜島では,噴気孔より約3km 離れた地点で,採取された火山ガス起源SO2のδ34S値(+3,2-+8.4)‰を,薩摩硫黄島では噴気孔からの直接採取された火山ガスの634S値として(+10.1-+13.5)‰を得た.桜島および薩摩硫黄島の火山ガスの硫黄同位体比は文献値と比較して,主にSO2ガスのそれを反映していると考えられる。特に桜島に関しては,3か年の調査の結果から,噴火活動(地震回数,爆発回数を指標)とδ34値が関連しており,活動が活発であればδ34S値が高くなる傾向がみられた。また,これまでデータがなかった桜島のδ34S値は,火山ガスの試料採取方法の違いがあるものの,有珠山,樽前山,九重硫黄山,阿蘇山など噴気活動の活発な火山のδ34S値と近いことがわかった。また,薩摩硫黄島の火山ガスについては,1974年当時の調査結果の値(文献値)とほとんど変化がないことが明らかになった。
    鹿児島県内で採取した降水のδ34S値は,桜島火山から直線距離で約50km 離れた紫尾山と寄田で(両地点の位置関係は,直線距離で約20km),試料採取期間によつて大きく異なるδ34S値が得られ,降水中の無機イオン成分,pH等から紫尾山では桜島火山ガスの影響を,寄田では大陸からの越境大気汚染物質の影響を強く受けていることが示唆された。また,屋久島の降水は,高いδ34S値から薩摩硫黄島火山ガスの影響を受けていることがうかがえた。
  • 鈴木 敦, 王 正宝, 安 哲煕, 佐野 庸治, 曽我 和雄
    1999 年 1999 巻 7 号 p. 487-491
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    To get more information concerning zeolite synthesis in the presence of 1-butanol (n-BuOH), influences of the alkali metal cation and the synthesis conditions on the zeolite synthesis were investigated. It was found that highly crystalline TON (Theta-1), MER (Merlinoite) and LTL (L) type zeolites were synthesized when KOH was employed as an alkali source, whereas MFI (ZSM-5) and MOR (Mordenite)type zeolites for NaOH. Characterization of zeolites obtained was conducted using X-ray diffraction, scanning electron microscopy, FT-IR, thermal analysis, 13C and 27Al MAS NMR. From the results of FT-IR and 13C CP MAS NMR measurements of as-made zeolites, it was concluded that n-BuOH molecules were occluded in the zeolitic pores of TON and MFI type zeolites, while no n-BuOH molecules for MOR, MER and LTL type zeolites.
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