東アジア地域における酸性・酸化性物質の動態解明を行う調査の一環として,SO
2の大規模発生源である桜島および薩摩硫黄島からのSO2の硫黄同位体比の測定を行った。その結果,桜島では,噴気孔より約3km 離れた地点で,採取された火山ガス起源SO
2のδ
34S値(+3,2-+8.4)‰を,薩摩硫黄島では噴気孔からの直接採取された火山ガスの6
34S値として(+10.1-+13.5)‰を得た.桜島および薩摩硫黄島の火山ガスの硫黄同位体比は文献値と比較して,主にSO
2ガスのそれを反映していると考えられる。特に桜島に関しては,3か年の調査の結果から,噴火活動(地震回数,爆発回数を指標)とδ34値が関連しており,活動が活発であればδ
34S値が高くなる傾向がみられた。また,これまでデータがなかった桜島のδ
34S値は,火山ガスの試料採取方法の違いがあるものの,有珠山,樽前山,九重硫黄山,阿蘇山など噴気活動の活発な火山のδ
34S値と近いことがわかった。また,薩摩硫黄島の火山ガスについては,1974年当時の調査結果の値(文献値)とほとんど変化がないことが明らかになった。
鹿児島県内で採取した降水のδ
34S値は,桜島火山から直線距離で約50km 離れた紫尾山と寄田で(両地点の位置関係は,直線距離で約20km),試料採取期間によつて大きく異なるδ
34S値が得られ,降水中の無機イオン成分,pH等から紫尾山では桜島火山ガスの影響を,寄田では大陸からの越境大気汚染物質の影響を強く受けていることが示唆された。また,屋久島の降水は,高いδ
34S値から薩摩硫黄島火山ガスの影響を受けていることがうかがえた。
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