日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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2000 巻, 11 号
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総合論文
  • 蟹江 澄志, 黒星 学, 檜山 爲次郎
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 749-761
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    有機フッ素化合物の穏和かつ効率的な合成法として,有機硫黄化合物の「酸化的脱硫フッ素化反応」を開発した。この反応によれば,ジフルオロメチレン化合物,トリフルオロメチル芳香族化合物,トリフルオロメチルエーテル,およびトリフルオロメチルアミンなど,さまざまな有機フッ素化合物を容易に合成することができる。この反応は,基質の硫黄原子のみを選択的に活性化して行うため,望みの位置に高い官能基選択性で目的の含フッ素官能基を導入できる利点を有する。本論文では,酸化的脱硫フッ素化反応による有機フッ素化合物の合成法,その基質適用範囲,およびその反応条件について概説する。また,この反応を新規フッ素系液晶材料の設計·合成に活用し,得られた化合物の液晶相転移挙動および電気光学的特性を評価することにより,含フッ素官能基の材料特性を明らかにした。液晶表示材料としての有効性について概観する。
  • 花田 真理子, 翁長 一夫, 香田 弘史, 岩本 正和, 西口 昌志, 小野内 徹
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 763-772
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    著者らはすでに住宅用として広く用いられている酸化スズ(IV)系半導体ガスセンサーを基本に,小型かつ安価な,民生用途にも十分耐える高性能,高信頼性二酸化炭素センサーの開発に成功した。まず,それまで半導体式ガスセンサーでは不可能とされていた二酸化炭素濃度の測定が,酸化スズ(IV)素子に希土類元素,特にLaを添加することにより可能となることを見いだした。また,La/SnO2素子の高温高湿度下での長寿命化にYの添加が有効であることを究明した。さらに,妨害ガスの影響をPt担持シリカゲルフィルターの開発により,温度変動の影響を拡散制限孔ディスクの採用により低減した。最後に,本センサーの動作特性を組み込んだ検知ソフトを新たに開発し,検知精度を格段に向上させ,実用化を達成することができた。
一般論文
  • 森下 真也, 藤田 勝義, 伊東 一彦, 砥綿 真一, 阿部 勝司
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 773-778
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    パラジウムイオンを吸着したカーボン粉末(Pd2+/C)の添加によって,水素吸蔵合金負極の初期活性化が促進された。負極の複素インピ−ダンス解析ならびにカソード分極されたPd2+/CのXRD測定およびTEM観察より,カーボン粉末に吸着したパラジウムイオンが初充電時に電気化学的に還元される。生成したパラジウム微粒子が充放電反応の活性点として作用し,生成した水素の吸蔵による膨張によって合金粒子自身に割れが生じて新生面上に新たな活性点が形成されるため,負極の初期活性化が促進されると推定された。
  • 石川 泉, 佐藤 太一
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 779-785
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    ジヘキシルスルホキシド(DHSO,R2SO)のベンゼン溶液による塩酸溶液からの水銀(II),亜鉛(II)およびカドミウム(II)の溶媒抽出につき検討した。そして有機相への抽出物が赤外,ラマンおよび核磁気共鳴スペクトルにより調べられた。
    DHSOによる塩酸溶液からの水銀(II),亜鉛(II)およびカドミウム(II)の抽出では次のような化学平衡式が提案された。MCl2(a)+2R2SO(o)⇄MCl2·2R2SO(o),MCl-3(a)+H+(a)+3R2SO(o)⇄HMCl3·3R2SO(o),MCl2-4(a)+2H+(a)+2R2SO(o)⇄H2MCl4·2R2SO(o),ここでM=Hg,ZnまたはCdである。また,(a)および(o)はそれぞれ水相および有機相を表す。さらに塩酸からの水銀(II)の抽出において水銀濃度が高い場合には,HgCl2(a)+R2SO(o)⇄HgCl2·R2SO(o)が成立することが推論された。
  • 磯田 陽一郎, 村上 智秀, 大久保 業之, 山本 二郎
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 787-795
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    2-ビフェニリルベンゾアート(1)を無水塩化アルミニウム(AlCl3)とともにo-ジクロロベンゼン中で加熱還流すると,少量の2-ビフェニロールを伴って,2-ヒドロキシ-3-ビフェニリル(フェニル)ケトン(3),2-ヒドロキシ-5-ビフェニリル(フェニル)ケトン(4)および2′-ヒドロキシ-4-ビフェニリル(フェニル)ケトン(5)が得られた。2-ビフェニリルアセタート(2)のFries転位からも少量の2-ビフェニロールとともに,2-ヒドロキシ-3-ビフェニリル(メチル)ケトン(6),2-ヒドロキシ-5-ビフェニリル(メチル)ケトン(7)および2′-ヒドロキシ-4-ビフェニリル(メチル)ケトン(8)が生成し,1および2のいずれからも3種の転位生成物が得られた。反応時間が経過すると,4に1への逆Fries転位,3への異性化および脱ベンゾイル化が起こったため,4の収率が低くなった。1は120°C近辺で反応が起こっているが,2では反応開始温度が低くなり,約60°Cで反応が進行した。基質(1,2)に対してAlCl3の添加量を多くすると,オルト-転位生成物(3,6)の収率はいずれも低くなった。
    一方,1から生成したパラ-転位生成物(4)の収率は低くなり,2から由来したパラ-転位生成物(7)の収率は,AlCl3の添加量とともに向上した。1および2のいずれのFries転位も分子内と分子間とが並行して起こっているが,2より1が高い分子間性で進行していると考えられる。
  • 和田 理征, 藍原 清孝, 野本 浩史, 田崎 美智子, 岡部 勝
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 797-802
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)(以下ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)という)はケトン類やラクトン類に溶解し,その熱溶液を室温近傍で冷却すると熱可逆性ゲルへ転移する。この論文では,溶媒にヘキサン,シクロヘキサノン,γ-ブチロラクトン,N,N-ジメチルホルムアミドを用い,これらの溶媒とPVdFとの相互作用パラメーター(x12)をインバースガスクロマトグラフィーから見積もることにより,PVdF溶液のゲル化とx12の関係を検討した。また,PVdF溶液がゲル化する濃度領域を調べ,ゲル化領域の分子量依存性についても検討した。
    x12の温度依存性(測定温度範囲:約90-220°C)を調べたところ,いずれのPVdF/溶媒系でも温度が低下していくと,x12は正の値をとりながら徐々に大きくなる傾向を示した。しかも,ゲル化する系は温度が低下すると,x12の値が0.5を横切って増大していくような系(PVdF/シクロヘキサノン系)や0.5に漸近していくような系(PVdF/γ-ブチロラクトン系)であった。つまり,x12が0.5より非常に大きくなる系(PVdF/ヘキサン系)や0.5より非常に小さくなる系(PVdF/N,N-ジメチルホルムアミド系)では,ゲル化は起こらなかった。一方,ゲル化領域は,分子量が増大すると,より低濃度側へ移行した。
  • 清水 慶昭, 大橋 幸平, 東村 敏延
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 803-810
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物の利用という観点から,ビール工場で大量に排出されるビール仕込かす(大麦と副原料を糖化後,濾過したときの残さ)の吸着剤としての利用を試みた。用いた試料はビール仕込かすをふるい分けして得たタンパク質含有量が多い画分(Pr)とセルロースを多く含む画分(Hr)ならびにそれらの化学修飾体で,Hrはこれをジアルキルアミノエチル化し,Prはこれをアルカリ処理または塩酸処理して用いた。これらの基質に対する金属イオン(Pb2+,Cd2+,Fe3+,Cu2+,Ni2+)ならびに染料[酸性染料(C.I.Acid Orange 7,C.I.Acid Red 88)および塩基性染料(Methylene Blue)]の吸着性をバッチ法で調べた。Hrの酸性染料に対する吸着能は化学修飾によって,特にジエチルアミノエチル化によって著しく増加し,その増加度は前報に記した橋かけの効果をも大きく上回った。Prはこれをアルカリ処理したときには,金属イオンに対する吸着能も酸性染料に対する吸着能も,未処理の場合に比べて大幅に低下したが,これを塩酸処理することによって金属イオンに対する吸着能ならびにカチオン性の塩基性染料に対する吸着能を大きく向上させることができた。
  • 辻 俊郎, 池本 英夫, 伊藤 博徳
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 811-815
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)および低密度ポリエチレン(LDPE)の単独,および両者の混合物をH-ZSM5触媒により反応温度を変化させた接触分解を行い,エチレンを主体とする生成ガス,およびベンゼン,トルエン,キシレン(BTX)とナフタレンを主成分とする軽質油という有用成分をより多く生成する廃プラスチックの処理法を検討した。PVC単独の接触分解において,生成ガス収率は450°Cの反応で3.5wt%であった。軽質油収率は,500°Cの反応で最高9.8wt%を得た。PVC,LDPE混合物の接触分解反応において,重量混合比1:1の場合,生成ガスおよび生成油の加算した収率は,いずれの反応温度においても実測値は,それぞれ単独の接触分解で得た実測値を混合割合により求めた相加平均値と大きな差は認められなかった。しかし,PVC:LDPE重量混合比1:9の混合物の場合には,各生成物収率(生成ガス,生成油)の和は,500および550°Cの反応において,実測値が相加平均値を上回り,混合して処理することにより有用成分取得が増加することが認められた。また,あらかじめ脱塩化水素処理したポリエンの反応結果から,PVCから発生するHClは,生成物収率(生成ガス,生成油収率)に影響を与えなかった。
ノート
速報
  • 佐々木 健, 飯泉 清賢, 久高 克也, 岡田 繁
    2000 年 2000 巻 11 号 p. 821-824
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    Ball-milling of elemental powder mixtures without external heat application has been utilized as a process for the mechanochemical synthesis of high melting compounds. The mixtures of chromium, molybdenum and amorphous boron elemental powders with atomic ratios Cr:Mo:B=(1-x):x:2(x=0-1.0) were comminuted for 10-40h in a planetary ball-mill, and a single hexagonal phase(Cr1-xMoxB2) was formed after 40h of milling using tungsten carbide balls. By annealing at 900-1400°C, a single hexagonal phase was still observed at the compositions of x=0-0.6. At x=0.8 and 1.0, the hexagonal phase was observed to be partly transformed to rhombohedral phase by annealing at the temperatures above 1300 and 1000°C, respectively. The variation in the lattice parameters of the hexagonal phase with x was estimated to differ from Vegard’s law because of a tendency toward superlattice formation. The rhombohedral phase was estimated to be Mo2B5-x type by the determination of lattice parameters.
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