日本化学会誌(化学と工業化学)
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2000 巻, 6 号
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総合論文
  • 飯泉 清賢, 久高 克也
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 369-380
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    耐熱材料あるいは硬質材料として期待されるホウ化クロム材料の開発のための基礎研究として,クロム-無定形ホウ素混合粉末の固相反応およびメカノケミカル(MC)工程によるホウ化クロムの合成を行った。Cr-B混合粉末から出発して固相反応を行い,従来不明確であったホウ化クロムの生成条件を明らかにするとともに,反応温度1400-1500°CでCr2B,CrBおよびCrB2の単一相を得た。これらのホウ化クロムの粉末は難焼結性のため加圧焼結を行ったが,得られた焼結体のなかで最も優れた性質を示したのはCrB2であった。またMC工程を用い,Cr-B(モル比1:2および1:1)混合粉末を遊星型ボールミルで20-40hMC処理後,それぞれ900および1000°Cの加熱でCrB2およびCrB粉末を得た。次にMC処理したCr-B(モル比1:2)混合粉末の無加圧および加圧焼結を行った。この焼結は未反応部分のCr-B間の反応熱によって促進される反応焼結である。MC処理により難焼結性Cr-B混合粉末が無加圧で焼結できること,またMC処理を経由した加圧焼結では焼結温度が低下し,焼結体の硬度が向上することを明らかにした。
一般論文
  • 野島 秀元
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    p-ジブロモベンゼン-p-ジヨードベンゼン混晶系相図の両端の純粋成分近傍での固相線と液相線をDSCにより推定した。温度(t)と融解分率(F)との関係より,平衡分配係数(k0)を求める次式を導いた。k0=F1F2(tA-t0)/F1-F2{1/F2(tA-t2)-1/F1(tA-t1)}ここで,tAは純溶媒の融点で,F1とF2は,それぞれ温度t1とt2に対応する融解分率であり,t0は混晶が融解し終わるF=1での温度,すなわち液相線の温度に相当する。さらに,F=1での液相の組成は試料の初濃度に等しいので,液相と平衡にある固相の組成は,上記の式より得られたk0の値に初濃度を乗じて求めた。上記の方法を相図の両端近くの溶質濃度が0.5-2mass%の3種類の試料に適用し,固相線と液相線を求めた。
  • 野島 繁, 飯田 耕三, 藤井 秀治, 小林 敬古
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 389-397
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    炭化水素を還元剤に用いたリーン燃焼排ガス用脱硝触媒として,種々の貴金属触媒の中で担持Ir触媒が活性化処理により飛躍的に活性が向上した。とりわけ,メタロシリケート担体に担持したIr触媒は,10%H2O-N2雰囲気,700°Cで処理することにより最も高い脱硝活性を示した。本触媒は共存ガスの影響として水蒸気濃度の影響を受けない特徴を有する。
    本触媒のキャラクタリゼーションをX線回折法,XPS法,透過型電子顕微鏡法により行ったところ,ある程度凝集したIr金属,とりわけ,(111)面,(200)面の格子面を有するIr金属が活性点であることが明らかになった。また,本触媒にNO-C3H6-O2ガスを供給して,吸着種の状態をFT-IR法および昇温脱離法により解析したところ,触媒上にはニトロ化合物,ニトリト化合物が存在し,昇温に伴い有機カルボニル化合物が反応中間体として存在することがわかった。さらに,O2とC3H6が存在することにより,本触媒のNO吸着量および吸着力が増大することが明らかになった。
    これまでの結果に基づき脱硝反応機構を検討したところ,触媒上の活性酸素によりNOと炭化水素が活性化して含酸素反応中間体が形成されることにより,脱硝反応が進行するものと推定された。
  • 石川 徳久, 杉谷 広元, 李 明杰, 松下 寛
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 399-404
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    試料溶液のイオン強度調整を必要としない標準液添加法と沈殿反応を利用した陰イオン(または陽イオン)の間接電位差定量を提示する。
    濃度cxの測定陰イオンBを含む体積Vの試料溶液に,既知濃度crの沈殿剤陽イオンAを含む溶液(反応液)の一定量(Vr)を添加する。このとき,生成した沈殿物の組成をAmBnとすれば,cr≥mcxV/(nVr)の条件を満たす必要がある。この溶液に,Aイオン選択性電極-比較電極対を浸漬したのち,既知濃度cs1のAを含む溶液(標準液1)で滴定し,標準液1の添加体積(vs1)に対する起電力(E1)を測定する(標準液1の最終添加体積をvs10とする)。引き続いて,同一試料溶液をVおよび反応液をVr添加したのち,既知濃度cs2(>cs1)のAを含み,標準液1と同じイオン強度をもつ溶液(標準液2)で再び滴定し,標準液2の添加体積(vs2)に対する起電力(E2)を測定する。
    この二つの滴定曲線から,vs2=2vs1-vs10を満足するvs1, vs2に対応したE1,E2を読み取れば,Bの濃度cxに関して次式が成立する。
    y=(ncs1/ncrVr-mcxV)x+g
    ここで,y=10ΔE/S,x=vs1{(cs2/cs1)-y},ΔE=E2-E1, SはAイオン選択性電極の応答勾配,gは定数である。y対xの直線プロットの勾配からcxが決定される。
    沈殿剤として銀イオンを,指示電極として銀イオン選択性電極を用いて,種々のイオン強度の試料溶液中の1×10-2-5×10-4mol dm-3の濃度範囲のヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを,誤差約±1%以下,相対標準偏差1%以下で定量した。
  • 大島 賢治, 小林 幸太, 山内 健, 下村 雅人, 宮内 信之助
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 405-410
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    金電極表面におけるジヒドロキシ[3-(3-メルカプトプロパンアミド)フェニル]ボラン(1)の単分子層形成と単分子層の糖認識挙動を水晶振動子微量てんびん法により追跡した。金電極を1の水溶液に浸漬して7.6×10-10mol/cm2の被覆密度を持つ単分子層が得られた。この単分子層は1分子当たり最大1.5分子のフルクトースを可逆的に捕捉し,ジヒドロキシ(フェニル)ボランの均一水溶液と同じ糖種選択性{D-グルコース,D-フルクトース,スクロース,メチルα-D-キシロピラノシドについてそれぞれ会合定数K=100,4000,≈0,≈0M-1(1M=1mol dm-3)}を示した。単分子層のフルクトース捕そく量はpH9.5よりアルカリ性側で増大し,単分子層の形成に伴って1のpKa(8.4)がアルカリ性側に約1単位移動することがわかった。また,フルクトースが大過剰のとき,フルクトース捕そく量はジヒドロキシボランとその共役塩基の濃度比{[RB(OH)3-]/[RB(OH)2]}の約2乗に依存して増加することが明らかとなった。
  • 長尾 幸徳, 坂本 真一, 宮川 賢一, 阿部 芳首, Michael E. JUNG
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 411-417
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    1-位に各種置換基をもつ2,5-Diphenylsilacyclopent-3-eneおよび2,5-Diphenylsilacyclopentane類の合成を検討した。
    通常のマグネシウム存在下,(1E,3E)-1,4-Diphenylbuta-1,3-dieneと各種クロロシラン類のTHF溶媒中におけるone-pot反応により,1,1-ジアルコキシ,1-アルコキシ-1-メチル,1-アルコキシ-1-クロロ,1-アルキル-1-クロロなどの2,5-Diphenylsilacyclopent-3-ene誘導体を合成し,このうちジアルコキシ誘導体は収率80%程度で得られたが,1-アルキル-1-クロロ誘導体は50%以下であった。得られたシラシクロペンテン類はフェニル基の立体配置の異なるトランス体とシス体の異性体混合物であり,この異性体生成比から1,1-ジアルコキシ誘導体はトランス体が優先的に生成し,1-アルキル-1-クロロ誘導体はシス体のみが生成し,そのうちクロロ基がフェニルの反対側の立体配置のものが優先的に生成することがわかった。1,1-ジアルコキシ誘導体でトランス体が優先的に生成するには,酸素原子のマグネシウムへの配位が関与すると反応機構から示唆された。
    得られた2,5-Diphenylsilacyclopent-3-ene類のPd-C存在下水素による還元により相当する各種置換2,5-Diphenylsilacyclopentane誘導体を生成した。
  • 大西 保志, 夏目 幸洋, 高子 敏幸, 吉元 昭二, 木村 和幸
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 419-426
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    塩化鉄(III)のような酸化重合触媒の光反応による酸化重合能力の変化を利用して形成される導電性ポリピロールパターン上に選択的に電気めっきする方法によって,基材表面に金属の精細なパターンを作製することができることを見いだした。この方法を利用すれば,エッチングやレジスト除去工程を不要とするばかりでなく金属はく張付基板を使用しない新規な金属電気回路基板の製造方法を構築することが可能となる。
    ポリピロールパターン上への電気めっきは通常の電気めっき液を用いて行うことができた。しかし,ポリピロールパターンでは,金属表面への電気めっきとは異なり,電気めっき工程の間ポリピロールの表面に沿って銅めっきの成長が観察された。銅めっきの形成は,電極に近い部分から末端に向かってポリピロールの表面に沿って,めっき部分が時間とともに成長していく。著者らはこのめっきの成長機構についても考察した。
  • 辻 俊郎, 齊藤 実, 田中 義樹, 柴田 俊春, 上牧 修, 伊藤 博徳
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 427-432
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    ポリ(塩化ビニル)(PVC)の熱分解による脱塩化水素特性を,FT-IRスペクトル解析とガスクロマトグラフによる生成物の分析より調べた。350°C以上に加熱すると,PVCからの塩化水素生成量は,ほぼ一定となった。しかし400°C以上に加熱すると,ポリエンの分解に伴い,生成油中に微量の有機塩素化合物が認められ,温度の上昇とともにその量が増加した。したがって脱塩化水素反応の終了後も,わずかの塩素が残分中に残存していると考えられる。脱塩化水素残分のFT-IRスペクトルの観測から,ゴーシュ配列のイソタクチック構造のPVCは,シンジオタクチック構造のものよりも脱塩化水素反応が遅く,400°Cで120minの加熱条件で脱塩化水素した残分中でも,そのスペクトルがわずかに残存しているのが観測された。
ノート
  • 大門 啓志, 林 一樹, 松原 孝至, 引地 康夫, 太田 敏孝
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 433-435
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    Solid solution of MgSO4 and Al2(SO4)3 was prepared from mixed aqueous solutions by rapid dry using micro-wave heating. The Mg2+ ion is soluble into the anhydrous aluminum sulfate crystal lattice over a wide range up to near the equimolar composition of MgSO4 and Al2(SO4)3. The anhydrous aluminum sulfate solid solution, at first, thermally decompose into the mixture of η-Al2O3 and MgSO4. The crystalline spinel phase appears at the second step of the thermal decomposition. The lattice parameters of the spinel changes linearly with the Mg content ranging from 0.5 to 0.8 at the fraction of MgAl2O4/(MgAl2O4+Al2O3). The produced nonstoichiometric spinel solid solutions must be metastable because the stable region of the composition of the spinel solid solutions is very narrow at the heating temperature employed to the thermal decomposition.
  • 中山 享, 池末 明生, 坂本 政臣
    2000 年 2000 巻 6 号 p. 437-440
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    Transparent polycrystalline YAG(Y3Al5O12) ceramic, optical characteristics of which are comparable to those of a single crystalline YAG, was fabricated by a sintering method using >99.99mass% purity powders and its application to a window material of infrared spectrophotometer was investigated. Its average grain size and pore density were 50μm and about 1ppm, respectively. It showed high strength(modulus of rupture: 350MPa), high hardness(Vickers hardness [HV10]: 1280), low refractive index(1.8 at 590nm wavelength) and low thermal expansion coefficient(8×10-6K-1), and was very stable in various inorganic solvents, 10% HF solution, 1M HCl solution, 1M H2SO4 solution, 1M NaOH solution and 10% NH3 solution and organic solvents, methyl alcohol, acetone, toluene and dimethyl sulfoxide. The transmittance of 1 mm-thick YAG was about 85% for the wavelength of <6μm and decreased with increasing wavelength to reach almost 0% at 9μm. These results and some infrared spectral measurements indicate that the present YAG ceramic is a good window material in the range of 2.5 to 9μm.
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