日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2000 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総合論文
  • 吉野 彰, 大塚 健司, 中島 孝之, 小山 章, 中條 聡
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 523-534
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    携帯電話,ノートパソコン,カムコーダー等の電源として広く用いられているリチウムイオン二次電池の開発経緯と技術動向について述べる。導電性高分子ポリアセチレンの研究がこのリチウムイオン二次電池の開発の原点であった。ポリアセチレンを二次電池の負極に用いようとの試みが炭素質材料負極へと展開し,ほぼ同時期に見いだされた正極材料であるリチウムイオン含有金属酸化物LiCoO2と組み合わされ,現在のリチウムイオン二次電池が完成した。商品化されて以降の電池特性の改良,特に容量の向上は著しく,現在では商品化当初の約2倍になっている。この容量向上は主として負極炭素質材料の改良により達成されてきた。この背景にはπ電子化学という新しい学問領域の進歩があり,次々に新しい炭素質材料が開発されてきた。
    今後,これらの改良開発によりリチウムイオン二次電池の特性はさらに改善されていくものと思われる。
一般論文
  • 内田 佳邦, 小泉 朋, 松井 和則
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 535-539
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    水溶液中においてZn(NO3)2,Mn(NO3)2とNa2Sを混合してpH3.0,6.8の各条件でZnS:Mn2+の微粒子を作製し,吸収スペクトル,発光スペクトルを測定した。Zn2+に置換したMn2+によるオレンジ発光帯が強く観測されたが,ZnS表面に付着したMn2+による紫外発光帯,空孔欠陥による青色発光帯も弱いながら見られた。pHの条件により発光は経時的に変化したが,これらの変化は溶液中での粒子の安定性と関係しているものと考えられる。これらの知見に基づき,ゾル-ゲル法によりテトラメトキシシランと上記原料からゾル-ゲルガラス中のZnS:Mn2+微粒子を作製した。得られたゲル中での粒子の直径は3.1-3.8nmであった。pH6.5で作製したゲルではオレンジ発光帯が比較的強く出現するものの,若干白濁した。pH4.0で作製すると透明なゲルが得られたが,pH6.5と比較すると,オレンジ発光帯強度は約10%程度であった。これらの結果から,本方法によりゾル-ゲルガラス中でZnS:Mn2+ナノ粒子を作製できることが確認されたが,より発光強度の大きい条件の探索が必要であると考えられる。
  • 今井 知之, 松井 敏樹, 藤井 泰彦, 沖田 朋子, 中井 資
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 541-545
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    ごみ焼却炉において生成するダイオキシン類の前駆物質であるクロロベンゼン(CB)およびベンゼンの接触酸化を,ヘマタイト触媒を用いてパルス式反応装置によって行った。
    CBの接触酸化においては先ずベンゼンが生成し,その酸化によって二酸化炭素が生成すること,ベンゼンは直接二酸化炭素まで酸化されること,および673-973Kにおいて見かけの両酸化速度は一次反応とみなせることが明らかになった。さらに,触媒を繰り返し使用することによる活性低下,その低活性触媒を酸化することによる再活性化を,触媒組成と関連させて検討した。
  • 林 弘, 宇埜 正浩, 川崎 智子, 杉山 茂
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 547-551
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    硝酸塩による地下水汚染が世界各地で注目を集めつつある。我が国でも,1999年2月,環境庁より硝酸性および亜硝酸性窒素の規制値10mg/L以下が告示され,緊急の対応が迫られている。本研究では,飲料水レベルの微量の硝酸性および亜硝酸性窒素の湿式還元分解の触媒研究を行い,室温,常圧水素という温和な条件で処理できることを明らかにした。硝酸塩には銅過剰域の二元系担持触媒,銅-パラジウム-炭素,が著効を示したが,亜硝酸塩には二元系よりも単一成分のパラジウム-炭素がはるかに有効であった。したがって,二元系の銅-パラジウム-炭素では硝酸塩の分解において中間体の亜硝酸塩が反応液中に蓄積するという不都合があるが,銅成分と孤立したパラジウムの存在では亜硝酸塩を容易に分解できることがわかった。粉末X線により硝酸塩分解の活性種としてCu3Pdが示唆され,触媒の活性と金属成分の担持状態を考察した。
  • 山本 伸司, 松下 健次郎
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 553-560
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    三元触媒の活性成分として白金とロジウムが一般的に使用されてきたが,近年,貴金属価格の低減を目的としロジウムを使わない触媒が研究されている。このため,著者らはパラジウム単独三元触媒の開発を試みた。アルミナにパラジウムを担持した触媒に種々の遷移金属酸化物を添加することによって性能改善を試み,特に,NiOが著しい改善効果を示すことを見いだした。この事実を基にさまざまな遷移金属のアルミン酸塩を合成し,パラジウムを担持したところ,特に,ニッケルアルミン酸塩に担持した触媒は,アルミナ担持パラジウム触媒よりも,Light-off活性や三元活性に優れることがわかった。ニッケルアルミン酸塩は,NiOがγ-Al2O3に固溶したスピネル相であるが,パラジウムの担体としての性質は,Ni/2Al原子比(x)や焼成温度に依存しており,x=0.5,800°Cで焼成したニッケルアルミン酸塩がパラジウムの担体としては最適であることを明らかにした。この触媒が,エンジンダイナモやシャシダイナモを用いた試験でも三元触媒として高い浄化性能を示すことを確認した。
  • 伊藤 伸一, 長島 健, 荒木 涼, 鎗水 隆良, 亀岡 聡, 国森 公夫
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 561-566
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    分散度制御したRh/ZrO2触媒を用いて,低濃度CH4の酸化反応(800ppm)およびCH4のCO2リホーミング反応を行った。その結果,両方の反応においてRh分散度が高く(Rh粒子径が小さく)なるとターンオーバー頻度(TOF)が低くなる構造敏感型であることがわかった。どちらの反応もCH4の解離吸着が律速であることから,Rh粒子径が小さくなるとRhと表面酸素の結合(Rh-O)がより強くなることで,CH4の解離吸着が阻害されTOFが低くなると結論した。
  • 岡井 隆, 安蘇 芳雄, 大坪 徹夫, 堀 淳一, 内池 平樹
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 567-570
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の正孔輸送材料として表題化合物を合成し,骨格カルコゲン原子を硫黄,セレン,テルルと系統的に変化させることにより,Alq3との二層型EL素子で発光効率への影響を検討した。いずれの化合物を用いてもTPD素子よりも単位電流密度当たりの輝度が高いという結果を得た。また,硫黄を含む化合物の素子はTPD素子をはるかにしのいだ最大輝度を示した。
  • 鎌田 昇, 木村 純二
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 571-575
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    紅藻Laurencia属にはbisabolane,chamigrane,およびlauraneなどの特異な構造のポリハロセスキテルペノイドが豊富に含まれており,それらの中には生理活性を有するものが多い。Laurencia nidificaから単離されたchamigrane誘導体のprepacifenol(1)やprepacifenol epoxide(2)は容易に三環性化合物のpacifenol(3)およびjohnstonol(4)に変換され,4はさらにpacifenediol(5)に変換することが知られている。このような変換反応機構解明のために,2を5% TFA-CCl4溶液で処理したところ,2種の既知物(4,5)のほかに新しい化合物が3種類(7,8,9)得られた。同様の条件下で化合物4を反応させたところ,さきに報告した三環性化合物1,6-dibromo-5-chloro-11-hydroxy-5,9,12,12-tetramethyl-2-oxatricyclo[6.3.1.03,8]dodecan-10-one(6)とともに,5,7,9,および5のTFAエステル(10)が得られた。同様に,化合物5の変換反応では10のみが得られた。そこで,これらの生成物の構造解析ならびに変換反応の機構を検討した。
  • 杉山 一男, 花村 亮
    2000 年 2000 巻 8 号 p. 577-583
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    新規なドラックデリバリーシステム(DDS)用のキャリヤー高分子の調製を検討した。ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド](PHPMA)の片末端に長鎖アルキル基を導入した両親媒性ポリマー,PHPMA-C12,PHPMA-DC12およびPHPMA-C18をそれぞれ2-メルカプトエタノール存在下,4,4′-アゾビス(ドデシル=4-シアノペンタノアート)(VA-C12),4,4′-アゾビス[(2-ドデシルオキシ-1-ドデシルオキシメチルエチル)=4-シアノペンタノアート](VA-DC12)および4,4′-アゾビス(オクタデシル=4-シアノペンタノアート)(VA-C18)を開始剤とするN-(2-ヒドロキシプロピル)=メタクリルアミド(HPMA)のラジカル重合から得た。また,両末端にオクタデシル基を有する両親媒性ポリマー,PHPMA-2C18は1-オクタデカンチオール(ODT)を連鎖移動剤とし,VA-C18を開始剤とするHPMAの重合から得た。これら一群のポリマーの水中における分子集合性を1-(6-ジメチルアミノ-2-ナフチル)-1-ドデカノン(DMAND)をプローブとする蛍光プローブ法から検討した。その結果,分子集合する臨界濃度(CMC)はPHPMA-C12>>PHPMA-DC12>PHPMA-C18>>PHPMA-2C18の順に小さくなり,PHPMA-2C18が最も疎水性ドメインを形成しやすいことがわかった。また,発色性合成基質S-2238を用いたフィブリン形成阻害試験から,PHPMAはトロンビンの触媒活性を加速しないことがわかり,PHPMAはDDSのキャリヤー分子としての可能性があることが認められた。
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