日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2000 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総合論文
  • 原田 宣之, 甲村 長利, Ben L. FERINGA
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 591-603
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    物質科学研究の究極の目的の一つは,1個の分子を機械装置として作動させる「分子機械」の開発であろう。著者らは最近,分子機械の一つである「光動力キラル分子モーター」を世界で初めて開発した。その分子モーターでは,特異なキラルオレフィンのシス-トランス光異性化を回転の動力源とし,「ツメ歯車効果」とモーター分子のキラリティーを生かして,単一方向の連続回転を実現している。本報ではキラルオレフィンの化学に関する著者らの研究をまとめるとともに,「ツメ歯車効果」として有効な熱異性化反応について報告する。また分子モーターの回転機構と立体化学を概説する。
  • 福嶋 喜章
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 605-611
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    (株)豊田中央研究所,トヨタ自動車(株)および宇部興産(株)の3社共同で開発したナノ複合材料の開発についてまとめた.粘土鉱物;モンモリロナイト,の層間陽イオンをアミノ酸イオンで交換し,さらにε-カプロラクタムを層間領域で重合させることにより,粘土鉱物を構成するケイ酸塩層がナイロン母相中に分散した,新しい複合材料; NCH(Nylon/Clay Hybrid),を合成した.この材料は優れた機械的特性や耐熱性を示すばかりではなく,フィルムとして用いた時に必要なガス遮断特性も併せ持つことが確認された.これらの特性を生かして,自動車部品や食品包装材として実用化した.このNCHの実用化により材料におけるナノメータ領域での構造制御や有機/無機の相互作用の重要性が再認識され,多くの複合材料,ハイブリッド,メソ細孔材料および生体鉱物に関する研究·開発がこれに続いた.
一般論文
  • 呉 雲影, 元井 昌司, 杉山 和夫, 松田 常雄, 吉田 泰彦
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 613-620
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    複酸化物LnCoO3(Ln=La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Er,Yb)を水素で還元分解したもの(Co/Ln2O3と略記)を触媒としてCO2によるCH4の改質反応を行い,反応活性と触媒表面特性との関係を検討した。873Kの反応ではSmとEuを境に原子番号の高い希土類元素を含む触媒の反応活性はそれの低い元素の触媒より活性が著しく高かった。特徴的な反応活性を示した還元分解Co/Ln2O3(Ln=La,Sm,Eu)触媒をとりあげて触媒表面特性について検討した結果,EuCoO3はLaCoO3,SmCoO3より還元されやすく,還元後のCo/Eu2O3触媒表面に金属コバルトとユウロピウムが確認でき,高活性の原因に帰せられる。同様な還元条件下,SmCoO3触媒はCoが十分還元されないため,高活性にならない。また,Co/Eu2O3には比較的低温と高温域で働く二種類の活性点が存在し,SmCoO3触媒には1073Kという高温域で働く活性点しか存在しないため,873Kでは活性を示さない。還元分解後のLaCoO3触媒はCO2に対する親和性が強く,容易に炭酸塩を生成し,高温域でのみ分解されることより873Kでの反応活性は見られず,反応を阻害している。
  • 野島 繁, 鈴村 洋, 平野 正義, 笹岡 英司
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 621-627
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    アルミナ担持硫酸ニッケル触媒は,NH3還元剤としたNOx選択還元反応にて,90°C付近で高い脱硝活性を示した。本触媒はSO2濃度が高いほど,さらにNH3濃度が高いほど高活性を有する。本触媒を用いると,NO 250ppm-NH3 1000ppm-SO2 800ppm-O2 4%-H2O 8%-CO2 14%-N2バランスガス,反応温度90°C,GHSV750h-1の反応条件にて脱硝率は80%であった。本触媒が高性能を有する理由はNH3を活性化吸着するブレンステッド酸と吸着NH3を酸化する活性金属を有するためと考えられる。本触媒は100時間程度の安定な脱硝活性を維持する。それ以降徐々に活性が低下する。触媒の劣化原因は副生する(NH4)2SO4,NH4NO3の触媒への付着によることがわかった。劣化触媒は水洗処理で触媒に付着した(NH4)2SO4,NH4NO3を溶出させることにより,ほぼ初期の活性に回復した。
  • 石原 誠己, 久保 勘二, 渡邊 寛幸, 櫻井 忠光
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 629-637
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    α-キモトリプシンのメチオニン-192残基に結合したクマリニル置換スルホニウム塩ペンダントの分光学的挙動を調べ,対応する参照スルホニウム塩のそれと比較した。クマリン環の空間的配置と酵素の基質結合部位に固定された水分子はそれぞれ基底状態と励起一重項状態におけるスルホニウム塩ペンダントの酸性度を決定する上で重要な役割を果たすことが示唆された。
  • 吉田 宗生, 小松 京嗣, 小野寺 信治, 戒能 俊邦
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 639-643
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    近年,有機非線形光学材料のオプトエレクトロニクス分野での応用展開に大変興味が持たれている有機塩の4-(4-dimethylaminostyryl)-1-methylpyridinium tosylate(DAST)結晶は非常に大きな光非線形性を持ち,光スイッチングや波長変換材料として有望視されている。DAST結晶の最大の電気光学定数r11を利用するためには,b軸方向に十分な長さに成長した結晶が必要となる。また,より高効率なデバイスを作製するためには,結晶を導波路構造化する必要がある。
    本論文では,メタノール溶媒中でのDAST結晶の[100]方向の成長速度が[-100]方向よりも速く,[001]方向の成長速度が[00-1]方向よりも速いことを明らかにし,さらにこの結晶成長速度の異方性を利用して,溝加工を行った基板上で除冷法による種結晶からの結晶成長を行いb軸に平行なリッジ構造を持つ結晶の作製に成功した。
技術論文
  • 緒方 敏夫, 原口 謙策, 山田 勝利, 笹森 政敬, 佐山 惣吾, 酒井 好夫, 井上 英彦
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 645-649
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    廃タイヤゴムチップを原料とする流動層を用いた新しい活性炭の製造法を提案した。基礎試験に用いた活性炭製造の実験装置は径30mm,長さ300mmの石英製反応管および縦型電気炉を主体とする。反応管中央の目皿上部にゴムチップ(2-4mm)5gと媒体砂(<1mm)10gを混合して送入する。電気炉を10°C/minで昇温し,600°CまではN2 200mL/min,それ以上の温度では1.2mL/minでH2Oを追加導入し,反応温度800-850°C,反応時間30-120minで活性炭を製造した。この結果850°C,60minでBET比表面積708m2/gの活性炭が得られた。また媒体砂の混合は賦活反応を促進した。これと別に行った熱重量分析試験およびガスクロマトグラフィーの結果よりゴムチップの熱分解はN2気流中約500°Cで完了することがわかり,その残留炭素分を約850°Cで水蒸気賦活し活性炭を一基の装置で連続的に製造する新工程に関する指針を得た。この装置として2段式の媒体流動層(上段:熱分解,下段:賦活)を想定している。
  • 山岡 到保, 村上 克治, 布施 博之, Marvelisa L. CARMONA, Jose OCLARIT, 大谷 敏昭
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 651-656
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海の安芸灘で採取した3種類の海綿(Haliclona permolis, Halichlona sp.white and Halichondria japonica)を用いて,金属イオン回収の可能性について試験した。Cd,Co,CuとNiを含んだ溶液50mLに海綿100mgを加えて30分間振とうした。溶液中の金属イオンは,原子吸光分析により定量した。Haliclona permolisは,Halichlona sp.whiteよりCd,Cu,NiとCo回収率のよいことが見いだされた。熱水処理した海綿による金属イオンの回収率は,Cd>Cu,Ni>Coの順によかった。
ノート
  • 大門 啓志, 富松 裕貴, 引地 康夫, 太田 敏孝
    2000 年 2000 巻 9 号 p. 657-659
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    Solid solutions of La2(SO4)3 and Al2(SO4)3 were prepared by rapidly drying mixed aqueous solutions using micro-wave heating. The La3+ion is soluble into the anhydrous aluminum sulfate crystal lattice up to about 6mol%. On heating the thermal decomposition starts at 830°C for the pure Al2(SO4)3, while at 760°C for 6mol% La2(SO4)3 contained Al2(SO4)3. The anhydrous aluminum sulfate solid solution thermally decomposes into the η-Al2O3 without any other crystalline phases. The LaAl11O18 is formed after heating the desulfurized product at 1300°C without forming LaAlO3 when the content of La2O3 is less than 6mol%.The La3+ doping increases the stability of η-Al2O3 at high temperatures. The phase transformation of alumina takes place above 1350°C when the amount of La2O3 is 5mol%.
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