日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2001 巻, 11 号
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総合論文
  • 壹岐 伸彦, 宮野 壮太郎
    2001 年 2001 巻 11 号 p. 609-622
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    カリックスアレーンの架橋メチレン基をヘテロ原子で置き換えた類縁体は合成が難しく,ホスト分子として応用されていなかった.このような中,著者らは架橋硫黄を持つチアカリックス[4]アレーンをp-t-ブチルフェノールと単体硫黄から一段階で合成することに成功した(収率54%).以後,大量に入手可能になった本化合物の化学修飾と機能開発において先導的研究を展開した.特に化学修飾として,架橋硫黄基を酸化し,架橋基がSOのスルフィニル体,SO2のスルホニル体を合成した.前者について骨格の立体配座制御を利用し,S=Oの配向に基づく全立体異性体を得た.また4個の架橋硫黄の一部をSOに酸化して新しい不斉を発現させた.さらに架橋SOおよびSO2を活性化基とするキレーション制御型芳香族求核置換反応を適用し,アニリンを構成単位とするカリックス[4]アレーン類縁体を初めて合成した.一方チアカリックスアレーンの機能として,分子空孔へのハロメタン類の強い包接機能を明らかにし,それらの除去法へ応用した.また,金属イオンの認識機能を調査し,架橋硫黄基の配位を明らかにした.さらに金属イオンの選択性を架橋硫黄基の酸化状態によって制御できることを見いだした.一方,チアカリックス[4]アレーンがGC用光学活性固定相のプラットホームとして有用であることを明らかにした.このように従来のカリックスアレーンでは実現の困難な修飾法や機能を見いだし,チアカリックスアレーンのホスト分子としての多彩な可能性を明らかにしている.
一般論文
  • 秋田 仁敬, 成瀬 弘之, 久保 勘二, 五十嵐 徹太郎, 櫻井 忠光
    2001 年 2001 巻 11 号 p. 623-629
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
     β-シクロデキストリン(β-CDx)とラセミ体の1-(1-フェニルエトキシ)-2-ピリドンおよびそのメチル誘導体から形成される1 : 1包接錯体のUV吸収スペクトル,円二色性スペクトルおよび1H-NMRスペクトルの解析から,包接錯体の構造と安定性ならびにβ-CDxの調べたゲストに対する不斉識別能に及ぼすメチル置換基効果が検討された.ゲスト分子内のフェニル部分は優先的にβ-CDx空洞内に取り込まれ,一方,ピリドン発色団は空洞内に入らずホスト分子の第二級ヒドロキシ基側の縁付近に残っていることが明らかにされた.さらに,ゲスト分子のピリドン環の6位に導入したメチル基は生成したβ-CDx包接錯体の安定性を増大させるようにその置換基効果を及ぼすことが示された.包接錯体の円二色性スペクトルの解析は,錯体の安定性とは対照的にその構造が事実上ピリドン環に導入したメチル置換基効果を受けないことを明らかにした.予想に反して,β-CDx空洞はラセミ体の1-(1-フェニルエトキシ)-2-ピリドンに対して乏しい不斉識別能しか示さず,また,この能力に及ぼすメチル置換基効果は小さいことがわかった.
  • 坪田 敏樹, 平林 修, 伊田 進太郎, 永岡 昭二, 永田 正典, 松本 泰道, 草壁 克己, 諸岡 成治
    2001 年 2001 巻 11 号 p. 631-636
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    高分子合成に使用される,種々のラジカル発生試薬を利用して,液相中でのラジカル反応により,水素化ダイヤモンド表面の水素原子を引き抜く化学反応について調査した.一般的な光増感剤であるベンゾフェノンを,紫外線により励起させた場合には,ダイヤモンド表面の水素を引き抜くことができなかった.また,アゾ化合物のラジカル開始剤である,α,α′-azobisisobutyronitrile (AIBN)を使用して熱解離によりラジカルを発生させた場合にも,ダイヤモンド表面の水素を引き抜くことができなかった.一方,過酸化物のラジカル開始剤である,過酸化ベンゾイルを使用した場合には,ダイヤモンド表面の水素を引き抜くことができた.過酸化ベンゾイルによる,ダイヤモンド表面の水素引き抜き反応の反応速度は,溶媒に依存することがわかった.また,過酸化ベンゾイルによる反応では,(100)面のCH2基に帰属される水素が,(111)面に存在するCH3基の水素原子より引き抜かれやすいことがわかった.
  • 夏 嘉安, 野田 清, 香川 詔士
    2001 年 2001 巻 11 号 p. 637-644
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    合成メラノイジンの脱色を中国産のバガスから製造した活性炭を用いて行った.メラノイジンは糖蜜中の色素でグルコース,グリシン,炭酸水素ナトリウムで合成したものを用いた.砂糖工場にとってバガスは自社工場の廃棄物であるから活性炭の原料として安価で容易に入手できる.このバガスを1073 Kで炭化 · 水蒸気賦活することによって活性化した.得られた活性炭は市販活性炭に近い878 × 103 m2/kg以上の比表面積の値を示した.中国産バガス活性炭はタイやブラジル産バガス活性炭と同等以上にメラノイジン吸着量を持つことがわかった.また,廃活性炭の再生回数の増加とともにミクロ孔容積が減少し,メソ孔容積が増加することから活性炭の細孔構造が変化することが明らかとなった.中国産バガス活性炭の再生収率を再生回数との関係から求める実験式を得た.
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