日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2001 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 後藤 泰行, 辻 正和, 杉森 滋, 斉藤 秀雄
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 189-198
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    液晶ディスプレイ(LCD)は,低消費,薄型表示素子の特徴によって発展し,オフィス,家庭および屋外用の表示装置として広く活用されてきている.携帯用のノート型パーソナルコンピューターはLCDの開発とともに発展し,中でも,画質が著しく向上したTFT-LCDは,パーソナルコンピューター(PC)のモニター用表示として採用され始めている.
     TFT-LCDにおいては,液晶材料としてフッ素系化合物が最適であり,現在では不可欠な材料となっている.フッ素系液晶材料はチッソ(株)が世界で最初に開発し,実用化に成功したものである.本論文では液晶材料の開発過程を述べるとともに,TFT-LCD用に合致したフッ素系液晶の特徴を紹介する.また,今後のLCDに必要とされる課題と液晶材料の開発状況について述べる.
一般論文
  • 山本 伸司, 松下 健次郎, 花木 保成
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    アルミン酸ニッケル(Ni0.5Al2O3.5)に担持したパラジウム三元触媒は,CeO2添加γ-Al2O3を使った従来のパラジウム三元触媒よりも優れた浄化活性を持つ.しかしながら,前者の触媒の活性は,エージング処理によりかなり低下する.この劣化に関する理由を明らかにするため,エージング後の両触媒を,X線回折や電顕観察により調べた.前者の触媒に含まれるPd酸化物の一部がエージングによって金属Pdまで還元され,Pd酸化物の粒子径が,後者の触媒に比べ大きくなっていた.このことは,前者の触媒中のPd酸化物は,焼結はもちろん部分的な還元を受け,エージング中に十分な安定化がされていないためと考えられる.アルミン酸ニッケルへのCeO2添加は,Pd酸化物を安定化し,これらの劣化要因を排除する効果があることが示された.CeO2担持量の最適値は,3.0–6.0 mol%であった.CeO2含量3.0 mol%の触媒は,エージング後のLight-off活性と三元活性(評価温度400 °C)が最も優れた.XPS測定では,CeO2の存在によって,400 °C,15分間の水素還元処理を施しても金属Pdへの還元が抑制され,Pd酸化物の状態が安定化することができることが示された.
  • 進藤 隆世志, 堀部 英司, 北林 茂明, 小沢 泉太郎
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 207-215
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    多環芳香族炭化水素のトルエン溶液に室温で日光を照射し,その色相変化をUV-vis,FT-IR,GPCおよび質量分析法を用いて調べた.日光を照射するにつれて,三環から五環の多環芳香族を含むトルエン溶液の色相は淡黄色から濃褐色に変化し,沈積物の生成量が増大した.対照的に,二環の多環芳香族を含む溶液の色相は,同様の照射条件において変化しなかった.多環芳香族の色相変化はオレフィン類が共存しても影響を受けなかった.日光照射によって生じたピレン-トルエン溶液中の着色物質は主にカルボニル基,カルボキシル基およびヒドロキシ基を有するピレンおよびトルエンの酸化物で構成されていた.沈積物はこれらの酸化生成物が水素結合を介して相互に結合することによって形成されると推定される.
  • 林 泰夫, 工藤 正博
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    フロートガラスのトップ面とボトム面における機械的特性の経時変化を比較し,その機構を解析した.トップ面のクラック耐性はボトム面に比べて,耐候テストにより著しく向上することが判明した.この機構を解明するため,表面から深さ方向の元素濃度分布をSIMSにより測定した.その結果,ガラス表面においてナトリウムイオンと水素イオンのイオン交換反応に由来する水和層の生成が確認され,この水和層がトップ面はボトム面に比べて耐候テストにより生成しやすいことが明らかになった.そして,この表面水和層の硬度が低いためにトップ面におけるクラック耐性の向上が顕著であることをVickers硬さ測定により解明した.さらに,ボトム面において表面水和層が形成されにくい機構は,製造過程で取り込まれた非対称性イオンであるSn2+の作用によって水素イオンとナトリウムイオンのイオン交換反応が抑制されるためと考察した.この機構解明により,割れにくいガラスの開発指針に関する知見が得られるとともに,フロート過程におけるガラスへのスズ拡散制御がフロートガラス表面の機械的特性制御にも不可欠であることが明らかとなった.
  • 三好 猛雄, 巻出 義紘
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 223-237
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    近年,人間活動に伴って大量に大気中に放出される気体成分の環境への影響が懸念されている.東京は世界の中でも最大の都市であり,かつあらゆる産業活動が行われ,人為起源物質のほとんどが平均して大量に放出されているという非常に特異的な地域である.この東京の中心部で高台に位置する東京大学アイソトープ総合センターにおいて,屋上から連続的に大気試料を実験室に取り込み,大気中微量気体成分を濃縮後,GC-MSにより,フロン,代替フロン等のハロカーボン類や炭化水素等,21種の揮発性有機化合物(VOCs)を定量した(3時間間隔で100日間).得られた大気中濃度の測定値を風速条件等により抽出の後,種々のパラメーター(土曜 · 日曜以外の平日と日曜との平均濃度比,大気中濃度の変動幅,バックグラウンド濃度との比較,日変動,風向による影響など)により解析した.その結果,いずれのパラメーターとも東京における放出の状況を反映した相関を示すことがわかった.さらに,フロンや代替フロンのような長寿命の化合物は,都市部から放出されたものがバックグラウンド大気へと拡散していくため,地球規模での変動の前兆が都市部における濃度変動と挙動に顕著に現れることが確認された.
  • 阿部 康弘, 梅村 知也, 角田 欣一
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 239-242
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    フェノール系内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン : 2,4ジクロロフェノール,ノニルフェノール,ビスフェノールA)の過マンガン酸カリウムによる分解試験を行った.分析は固相マイクロ抽出—ガスクロマトグラフ(SPME-GC)法を用いて行った.混合溶液中の各化合物1 mg/Lは過マンガン酸カリウム(64 mg/L)により約60分で完全に分解された.過マンガン酸カリウムとフェノール系環境ホルモンの反応効率はフェノール < 2,4ジクロロフェノール < ビスフェノールA < ノニルフェノールの順で大きくなった.
技術論文
  • 関本 貴裕, 及川 裕也, 佐々木 康広, 岩崎 孝志, 成田 榮一
    2001 年 2001 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    スメクタイトへのアニオン界面活性剤[α-アルキルフェニルポリ(オキシエチレン)-ω-硫酸ナトリウム; R–C6H4–(OCH2CH2)nOSO3Na,R = nonylまたはoctyl基,n = 9,22および50]の吸着挙動と,それによるスメクタイト—水系分散液(2 wt%スメクタイト)の粘性特性に及ぼす効果を25 °Cにおいて調べた.その結果,硫酸エステルアニオンの吸着量は硫酸エステルアニオンの濃度の増加ならびにそのオキシエチレン(OE)単位の増加とともに増えることがわかり,その程度はアルカリ性領域で顕著で,酸性領域では小さかった.これらの結果から,硫酸エステルアニオンはアルカリ性領域では粘土層表面とポリOE構造との相互作用によって吸着され,酸性領域では粘土層端面と硫酸イオンとの静電作用によって吸着されるものと考えられた.粘性特性の測定において,分散液の見掛け粘度はアルカリ性領域では硫酸エステルアニオンの吸着量の増加とともに低下した.また,分散液に酸を添加した場合,粘性特性に及ぼす影響は緩和された.それゆえ,分散液のpHに応じて層表面または層端面に吸着した硫酸エステルアニオンがスメクタイト粒子の会合を阻害すると考えられた.以上のように,硫酸エステルアニオンと複合化することにより,弱酸性領域でスメクタイトを使用することができるようになり,その粘性特性の変化は硫酸エステルアニオンの吸着挙動から説明された.
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