配管内の流動摩擦抵抗低減効果の作用機構の解明のため,流動条件下におけるサリチル酸ナトリウム(NaSal)/ビス(2-ヒドロキシエチル)メチル(
cis-9-オクタデセニル)アンモニウムクロリド(HMODA)系水溶液の分子集合状態を流動複屈折率およびレオロジー特性の観点から検討した.DR効果はNaSal/HMODAの組成モル比が0.5以上になると発現した.そして,そのモル比が増加するにつれて,レイノルズ数に対するDR効果発現領域が広くなる傾向を示した.流動条件下でのNaSal/HMODA系水溶液の分子集合状態を調べるため,組成モル比の異なるNaSal/HMODA系水溶液の第一法線応力差(
N1)をずり速度の関数として測定した.HMODA単独水溶液の第一法線応力差(
N1)はずり速度の増加に伴って減少し,ニュートン流体特有の挙動を示した.しかし,NaSal/HMODAの組成モル比が0.5以上ではいずれの場合も,第一法線応力差(
N1)は増加し,ずり速度が500 s
−1でほぼ一定の値を示した.このことは,ずり速度下で,NaSal/HMODA系水溶液の分子集合体が変形 · 伸長し,新たなせん断誘起構造(shear-induced structure; SIS)が形成したことを示唆している.そして,この第一法線応力差(
N1)が出現するNaSal/HMODAの組成モル比がDR効果が発現したモル比と符合した.以上のことから,SISの形成性がDR効果の発現に重要な役割を果たしていると結論した.
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