日本化学会誌(化学と工業化学)
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2001 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • 渋谷 昭彦, 大窪 潤, 篠崎 開, 大野 清伍, 長谷川 美貴, 熊谷 賢一, 星 敏彦
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 443-450
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    両親媒性物質,4-(4-オクタデシルオキシフェニル)エチニルピリジン(ODOP)を新たに合成し,この物質の超薄膜をLB法および自己凝集法により作製した.ODOPのLB膜作製における最適表面圧は,49.0 mN m−1であった.自己組織化膜は,溶質濃度が3.0 × 10−4 mol dm−3以下では形成されないことがわかった.すなわち,ODOPの自己組織化膜を形成する際には,溶質の濃度に限界値がある.これらの膜の電子的性質を電子吸収,偏光吸収およびX線光電子スペクトルの立場から考察した.両方法により作製したODOPの超薄膜の構造は,同一であることがわかった.種々の表面圧で作製したLB膜のX線光電子スペクトルを測定した.単分子的に分散した系でODOPは316.9 nm(シクロヘキサン中)に第一吸収帯を示す.超薄膜を形成すると,この第一吸収帯は二つの帯,すなわち強度の強い306 nm帯と弱い ≈350 nm帯に分裂する.このスペクトル変化を励起子モデルにより考察した結果,超薄膜内での分子の配列はHerring bone構造であることが示唆された.
  • 米田 哲也, 亀田 徳幸
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 451-455
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    [Rh(Ph2N3)(CO)(PPh3)2](トリアゼニドロジウム錯体)による1-ウンデセンの均一系ヒドロホルミル化反応を,種々の溶媒(トルエン,ベンゼン,アセトン,テトラヒドロフラン)を用いて,合成ガス(CO/H2 = 1/1)の圧力1.0 × 105 Pa,温度313 Kの条件下で行った.いずれの溶媒を用いた場合も,ドデカナールおよび2-メチルウンデカナールが生成し,前者の生成量は後者よりも多い.そのほかに少量の2-ウンデセンが1-ウンデセンの異性化反応によって生成した.
     溶媒としてトルエンを用いた場合,温度313 Kにおいて,合成ガスの圧力を1.0 × 104 – 1.0 × 106 Paの範囲で変化させて反応を行ったところ,ドデカナールおよび2-メチルウンデカナールの収率は,1.0 × 105 Paで極大に達した.一方,2-ウンデセンの収率は圧力を上げるにしたがって減少した.合成ガスの圧力1.0 × 105 Paにおいて,温度を303–333 Kの範囲で変化させて反応を行ったところ,ドデカナールおよび2-メチルウンデカナールの収率は,323 Kで極大値に達した.一方,2-ウンデセンの収率は温度の上昇とともに増加した.また,合成ガスの圧力1.0 × 105 Pa,温度313 Kで,PPh3を添加すると,誘導期を経て反応が起こり,さらに多量に添加すると抑制作用が認められた.ヒドロホルミル化反応の反応機構を考察した.
  • 安藤 祐司, 孟 寧, 田中 忠良
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 457-462
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    100 °C程度の低品位熱を用いて2-プロパノールを脱水素し,燃料電池の原理を用いて逆反応を行うことにより熱エネルギーを電気に変換する熱再生型の電池において,2-プロパノール脱水素反応を促進させるために光触媒を導入する可能性について検討を行った.
     ルテニウム,白金,ロジウム,パラジウムを光析出法によりアナターゼ型の酸化チタンに担持し,400 W高圧水銀灯を用いて光照射を行い脱水素特性について検討し,活性炭担持貴金属触媒との比較を行った.
     酸化チタン光触媒を用いた実験では,非沸騰条件においても沸騰還流条件とほぼ同等の水素生成速度を有し,水素脱離過程が速やかに進行していることが示唆された.また,活性炭担持貴金属触媒と同様に,酸化チタン光触媒を用いた脱水素反応もラングミュア型反応速度式で良く整理された.反応生成物であるアセトンによる阻害は活性炭担持触媒よりもはるかに小さく,高アセトン濃度においても2-プロパノール脱水素活性を有した.
     酸化チタン光触媒を用いた2-プロパノール脱水素反応においては,反応生成物は触媒表面から速やかに脱離し,反応生成物の触媒表面への再吸着はあまり起きていない,と考えられる.
  • 菅原 享, 細川 均, 飯田 武揚, 鈴木 敏幸
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 463-468
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチル—アクリル酸ブチル—アクリル酸共重合体エマルションの皮膜物性に及ぼすポリマー粒子の融着の影響を調べるため,メタクリル酸メチル—アクリル酸ブチル—アクリル酸共重合体エマルションを種々の温度で乾燥して作製した皮膜の融着状態と皮膜物性の関係に関して検討した.その結果,乾燥温度が上昇するにしたがって,ポリマー粒子の融着が進み,乾燥温度が最低成膜温度より48 °C以上高くなると,ポリマー溶液と同様な非常に平滑な表面を形成することが確認された.また,融着の程度を評価する指標として算術平均粗さを用いた.さらに,算術平均粗さが小さくなるほど,皮膜の引っ張り強度,はく離強度が大きくなることを見いだした.一方,皮膜の吸水率に関しては,粒子の融着状態が変化しても吸水率は変化しなかった.
技術論文
  • 森下 真也, 近藤 康仁, 大矢 豊, 砥綿 真一
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 469-474
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    希土類系水素吸蔵合金とその腐食生成物(希土類系水酸化物 + ニッケル,コバルトの金属微粒子)のクロム酸水溶液への溶解特性を検討した.合金表面の水酸化物層は,合金素地を溶解することなく5質量%のクロム酸水溶液に溶解した.溶液中の各合金元素量を高周波プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)にて測定することにより,水酸化物層の組成が求められた.ニッケル,コバルトの金属微粒子の生成量は磁気測定によって見積もられ,合金の腐食層の組成を定量的に分析できた.
  • 山之内 昭介, 岡部 和弘
    2001 年 2001 巻 8 号 p. 475-482
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    本報告ではN,N′-ビス(3-メトキシサリチリデン)-2-メチルプロピレンジアミナトコバルト(II) (以下[CoII(msalpn)]と略記する)に4-ジメチルアミノピリジン (以下4-DMAPと略記する)が配位した酸素輸送錯体溶液を用いた酸素輸送膜の再賦活方法の基礎検討結果について述べる.
     酸素窒素混合ガス(酸素21 vol% 窒素79 vol%)を導入により,酸素窒素分離係数が110から2.2まで低下した酸素輸送錯体溶液を亜鉛粉末と423 Kで6時間接触させた結果,酸素窒素分離係数は110に回復した.また,0.4 mol L−1から0.05 mol L−1に低下していた酸素輸送錯体濃度は0.4 mol L−1に回復した.このほか,同条件で鉄粉末,マグネシウム粉末,アルミニウム粉末と接触した錯体溶液の酸素窒素分離係数は39,1.5,1.5となった.
     水を17 wt%加えたことによって酸素窒素分離係数が115から4.1まで低下した酸素輸送錯体溶液を433 Kで2時間加熱した結果,酸素窒素分離係数は115に回復した.また,水分量は添加前の値と同じ0.2 wt%となった.
     実験室空気(293 K–299 K,相対湿度56–68%)の導入により,116から2.1に低下した酸素輸送錯体溶液の酸素窒素分離係数は,423 Kで7時間亜鉛粉末と接触後116に回復した.水分量は15.8 wt%から0.2 wt%になった.
     空気の導入-亜鉛接触を10回繰り返し実施した結果,空気導入により低下した分離係数は,毎回ほぼ空気導入前の酸素窒素分離係数に回復した.
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