(1)バルテル法とA.S.T.M.法では界面張力値に数dyne/cmの差がある。その原因は未だ明らかでないが,両測定法の条件が著しく異なることを考えれば,この差はむしろ小さいと認められる。
(2)原油と蒸溜水との界面張力は取扱った原油についていずれの場合も約30dyne/cm(30℃)である。水道水及び中性塩類水溶液との界面張力もそれと大差はない。炭酸ソーダ水溶液の場合は濃度が大きければ著しく界面張力を低下する。
(3)国内原油と分離水(原油エマルジョンから分離した水)との界面張力は,床内原油を除きいずれも.10-20dyne/cm(30℃)で著しく小さい。
(4)原油と水との界面張力は水相のpHによって著しく影響され,その傾向はバルテル法でもA.S.T.M.法でも殆んど同じ傾向を示し,酸性でやや低く,中性附近で最高となり,アルカリ性が増すに従って著じく低下し,測定出来ないこともある。分離水の.pHを変えた場合この変化は一層激しい。
(5)Antonoffの法則から計算した界面張力値と,バルテル法及びA.S.T.M.法で実測した界面張力値とを比較すれば顕著な差がある。このことと,原油と分離水との界面張力が,分離水のpH(第1報参照)のみを考えて予想した界面張力値より更に小さいこととを併せ考えれば,乳化し易い原油中には強い界面活性を有する物質が存在することを推察せしめる。
これらの諸測定の結果は原油エマルジョンを化学的に破壊しようとする場合,重要な示唆を与えるものである。
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