工業化学雑誌
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62 巻, 4 号
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  • 川島 夏樹
    1959 年 62 巻 4 号 p. 487-498
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    重水製造工程としての水電解は従来隔膜のない回分式減容電解槽によって行われ,その分離係数の向上と副生爆鳴気を燃焼回収する作業の安全性確保とに研究が集中されていたが,安全で大量処理に適する隔膜付恒容電解槽を重本製造に適合させることができれば有利であると考え,この形式の電解槽につき研究したのでその結果を総括し報告する。
    恒容電解槽は重水製造上もっとも重要な性能である重水素歩留において減容電解槽に劣るので,多段に組合わせて使用することにより改善する方法を試算検討して,このようにすれば水量の多い低,中濃度重水の処理には減容電解槽に劣らない重水素歩留りが得られることを示した。つぎに,重水製造の場合はアルカリ濃度の低い電解液を用いなければならないので,そのために起る陽極侵食,ガス純度低下等を検討し,利用しうるカセイソーダ濃度の下限を求め,また輸率により生じるアルカリ濃度差が障害となるので,両極液の循環混合によりこれを軽減する方法を工夫採用し,40A恒容20段電解槽を試作してこれを運転し,さらに電解液の循環を強化した試作槽を製作し,順調な運転を続けうるものであることを確認した。最後に隔膜付減容電解槽80A12単位を試作検討した。これら試作槽を通じて分離係数は5~7であった。
  • 内田 章五, 伊藤 幸夫, 増田 悦郎
    1959 年 62 巻 4 号 p. 499-501
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化スルフリルとアンモニアとの反応によるスルファミドの製造において,塩化スルフリルの代わりに塩素と亜硫酸ガスを用い,NH3-SO2-Cl2間の気相反応でスルファミドがつくれることを見出した。種々の反応条件におけるスルファミドの生成量を調べた結果,反応温度を130℃ 以下に保ち,大過剰のアンモニア気流中にSO2とCl2との1:1混合ガスを導入して反応させると,スルファミドを25~30%含む反応生成物が得られることがわかった。
  • 伊藤 幸夫, 増田 悦郎, 内田 章五
    1959 年 62 巻 4 号 p. 501-503
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    I.G.社のNH3-SO3間の反応によるスルファミドの製造装置と同型のものを試作し,5kg/8hrの規模でNH3-SO2-Cl2間の気相反応によるスルファミドの製造試験を行った。
    その結果,SO2:Cl2=1:1,反応温度50~80℃,循環アンモニアの濃度60~80%の反応条件では良好な運転状況のもとに30~36%のスルファミドを含む反応生成物をつくることができた。そしてこの試験の結果より既報のスルファミドの新製造法を工業化しうる見通しを得た。その他の反応条件は非常によく似ている。
  • 中富 慶介
    1959 年 62 巻 4 号 p. 503-504
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    海水マグネシアクリンカーの製造工程中, Mg(OH)2 を沈殿する際, CaO が共沈する一原因である海水の CO2 の影響については先に報告した。しかし CO2 以外に海水中の SO4 も CaSO4 を共沈させる可能性がある。本研究は SO4 の影響を知るため行ったもので,まず CaSO4 の海水に対する溶解度積を測定し,1.14×10-3(20~21℃)を得た。次に海水の SO4 量を変化させて, Mg(OH)2 中に入る CaO 量を試験した。結果としては SO4 については CO2 ほど大きい影響はなく,特に脱硫酸の必要がないことを知った。
  • 中富 慶介
    1959 年 62 巻 4 号 p. 505-506
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    海水に石灰乳を作用させて水酸化マグネシウムを生成し,分離するには,水酸化マグネシウムを沈殿させねばならない。しかしただ単に海水と石灰乳を反応しただけでは,生成する沈殿の粒径は5μ 以下,沈降速度は僅かに2.5mm/min以下という程度のもので,これでは実際工程に利用するにはおそすぎる。
    一般に水酸化マグネシウムのような膠質沈殿に,他の反対電荷を有する膠質を添加すると,粒子間に凝集が起り,沈降速度が大きくなると言われている。本研究では水酸化マグネシウムについて,デンプン,カゼイン,ビスコース,ゼラチン等を添加して,沈降速度の変化を測定した。これらの中でデンプンに関しては水酸化マグネシウムに応用したことがあると聞いたが,具体的な数値の発表はない。カゼイン以下については著者の調べた範囲では文献は全く見当らない。
    また以上とは別に水酸化鉄ゾルに多価の陰イオンを添加すると凝析が起る事実を参照して,水酸化マグネシウム液にフェロシアンイオンFe(CN)64-を加え,影響を調べた。
    その結果デンプン,カゼイン,ビスコース,ゼラチン等は添加量を増せば水酸化マグネシウムの沈降速度を大きくするけれども,添加量が余りに増加すると全体が雲状に塊まり,かえって沈降しなくなるので,使用量および沈降速度の大きさに限度のあることを知った。
    フェロシアンイオンの場合には濃度の低い水酸化マグネシウム懸濁液では沈降速度に全く影響しないが,濃厚な水酸化マグネシウム泥漿については圧縮脱水を速める作用がある。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 4 号 p. 507-509
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    さきに著者は塩化亜鉛賦活による活性炭について詳細に研究し,低温賦活では水和物の吸着能は乾燥物のそれより著しく大きいが,高温賦活では水和物の吸着能は乾燥物のそれとほぼ等しいという結果を得た。著者はもっぱら塩化亜鉛賦活炭の本性を明らかにするため,そのかさ密度,真比重および有孔度を求め,これらの性質と吸着能との関係を検討した。その結果,低温賦活では水和物の水中におけるかさ密度は乾燥物のそれより小さく,高温賦活では水和物の水中におけるかさ密度は乾燥物のそれとほぼ同等であることがわかった。これらの性質は賦活物の水和性の大小によるもので,吸着能と深い関係を有するものと考えられる。また有孔度と賦活温度との関係はメチレンプルー吸着能と賦活温度との関係とよく類似しており,有孔度とメチレンブルー吸着能とはほぼ平行関係にあることがわかった。
  • 山田 大十
    1959 年 62 巻 4 号 p. 509-512
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    吸着剤の細孔分布,比表面積はその吸着能の主要な因子であると考えられている。著者は塩化亜鉛低温賦活炭の乾燥による吸着能減少および低温賦活炭と高温賦活炭との吸着能の相違などの原因を攻究するため,その細孔分布および比表面積を測定した。すなわちこれらの賦活炭の水蒸気脱離吸着等温線を測定し,脱離側の等温線よりその細孔分布を,またその細孔容積より比表面積を求めた。その結果,低温賦活水和物の細孔の量は乾燥物のそれより多く,また比表面積も乾燥物のそれより大きい。これに対して高温賦活水和物の細孔分布および比表面積はいずれも乾燥物のそれとほぼ変わりないことがわかった。これらの事実は低温賦活水和物の種々な溶質に対する吸着能が乾燥することによって著しく減少するが高温賦活物においてはその吸着能が湿潤状態においても乾燥状態においても変わりないという既報の結果と一致する。また電子顕微鏡写真によって賦活温度によるその細孔の形態変化を観察した。
  • 久保 輝一郎, 神力 喜一, 花沢 孝
    1959 年 62 巻 4 号 p. 512-516
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    TiO2とカーポンプラックめ混合物を加熱して,炭化チタンを合成する際の諸条件を検討して次の結果を得た。
    1)水素気中で混合物を加熱する場合は,水素中に含まれる微量の窒素を除去しないかぎり,TiNが副生する。したがって,結合炭素量は低下し遊離炭素が多くなる。
    2)大気中,すなわち発生するCOガス雰囲気内での反応は,やはりTiNを生成し,さらに高真空下で加熱しても結合炭素量は増加しない。
    3)結合炭素量の多い炭化チタンをうるには,真空下で反応させることが必要である。1800~1900℃(TiO2/C=1/3)で結合炭素量19%以上の炭化チタンが得られた。炭素混合量を多くして加熱すると1600℃ で結合炭素量19%以上の炭化チタンが得られるが遊離炭素を除去する工程が必要となる。
    4)加熱温度の上昇速度は早いほど結合炭素量は多くなる。
    5)2000℃ に加熱してつくった炭化チタンは粒成長が著しい。
    6)反応中の真空度曲線には三つの山があり,反応は三つの段階を経て進行する。
    7)加熱温度の低い部分ではδ-固溶体がらの脱酸素(COとして)反応が炭素結合反応より早く進行し,温度が高くなるにつれて炭素結合反応がおもに行われ,δ-相(TiCxOy)内の酸素の空格子点をみたす。しかし,一般に最終生成物の組成は,なお完全には空格子点を炭素でみたすにいたらず,化学量論的にチタン成分が過剰であった。
    8)硫酸溶液からのTiO2よりシュウ酸溶液からのTiO2の方が低温度では,はるかに結合炭素量の高いものを生成するが,高温度まで加熱すると,その差はなくなる。
  • 岡田 辰三, 西 朋太, 浅野 満
    1959 年 62 巻 4 号 p. 516-521
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    TBP(Tri-n-Butyl Phosphate)による硝酸ウラニルと硝酸トリウムの抽出条件を明らかにし,更にその結果に基いて両者の抽出分離の可能性を検討した。本報ではTBPの希釈剤の種類による影響を述べ,次に有機相のTBP濃度,水溶相の硝酸および抽出濃度,抽出温度,塩析剤,妨害イオンなどの諸因子の分配係数,抽出率および分離係数におよぼす影響を検討した。その結果含酸素有機溶媒や極性の大ぎい有機溶媒をTBPの希釈剤に使用すると分配係数,抽出率が低下することを知った。また 20vol% TBP-希釈剤(イソプロピルエーテル, 燈油, 四塩化炭素) の組成を有する溶媒を使用し,1~3Mの硝酸を母液とする硝酸トリウムの濃度の高い水溶液から抽出温度を低くして硝酸ウラニルを抽出する時に最大の分離係数が得られた。有機相の容積変化,粘度,両相の比重差,両相への分離性を検討した結果,前記3種類の希釈剤では,イソプロピルエーテルを用いた時が最も効果的であった。
  • 前田 祥三, 野地本 栄治
    1959 年 62 巻 4 号 p. 522-526
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    有機シロキサン化合物と,第IV族金属ハロゲン化物または有機クロルシラン類とを300℃で反応させ,得られたクロルシランの収量をくらべて, これらのハロゲン化物またはクロルシラン類のシロキサン結合の裂断能力をしらべた。その結果第IV族金属四塩化物はTi,Si,Snの順に裂断強度が低下し,また四塩化ケイ素と四臭化ケイ素は四臭化ケイ素の方が強いことを知った。
    有機クロルシラン類に関しては次の結果を得た
    (1)強度順位
    (2)同一の有機置換基をもつクロルシランの場合は次のようになる。
    (3)ヘキサメチルジシロキサンの方がヘキサエチルジシロキサンより裂断され易く,ヘキサクロルジシロキサンのような陰性基を多くもつジシロキサンは全く裂断されない。
    (4)次の平衡反応を認めた。
  • 滝口 利夫, 平田 文夫
    1959 年 62 巻 4 号 p. 527-528
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    SiCl4(STC),CH3SiCl3(MTS),(CH3)2SiCl2(DDS),(CH3)3SiCl(TMS),C2H5SiCl3(ETS),(C2H5)2SiCl2(DEDS),C6H5SiC13(PTS),(C6H5)2SiCl2(DPDS)の脱水トルエン溶液(2~5g/100cc)を試料とし,クリスタルバイオレットを指示薬とするアニリン標準溶液によるエーテル中の滴定を試みた。8種のクロルシラン中STC,MTSが最も満足すべき結果を与え,この場合10~20mgの試料につき0.2~0.3%の偏差で再現性ある実測値を得た。分析操作の詳細につき記述するとともに反応機構につき二,三の考察を加えた。
  • 馬波 久
    1959 年 62 巻 4 号 p. 529-531
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    (p-ビニルフェニル)トリクロルシランをアンモニアの存在下に,メタノリシスして(p-ビニルフェニル)トリメトキシシランを合成する反応諸条件を検討して最適条件を明らかにした。さらにスチレニルシリコーンポリマーの原料として有用な数種の単量体ならびに低分子量の直鎖状,分枝状,環状のシロキサンを誘導した。
  • 福井 謙一, 稲本 善昭, 高瀬 新次, 北野 尚男
    1959 年 62 巻 4 号 p. 531-534
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    活性メチレン化合物あるいはアニリン,核置換アニリンとハロゲン化アルキルとがフッ化カリウムを縮合剤として反応し,それぞれC-アルキル化物およびN-アルキル化物が得られることを見いだした。この新アルキル化反応はフッ化カリウムの脱ハロゲン化水素性能にもとづくものであって反応の溶媒としては1,2-ジオールたとえばエチレングリコールがすぐれた効果を有しており,反応温度は100~200℃ である。この方法はアニリンおよび核置換アニリンのモノアルキル(>C3)置換体あるいはジメチル化物の合成法としては従来の方法にくらべすぐれた結果を与える。
  • 江崎 平八, 大和田 健次, 野口 駿
    1959 年 62 巻 4 号 p. 534-538
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    すでに著者らは,普通セッケンと水との混合系の温度変化に伴なう電気抵抗値の変化が,含水量30%以下において特異的な様相を示すことを明らかにし,これが諸相の生成消滅と関係あるものと推定したが,引続き単一脂肪酸ソーダを用いて同様の研究を行った結果,飽和脂肪酸ソーダでは電気抵抗が極小および極大となる温度はそれぞれ,普通セッケンの場合より高く,不飽和のオレイン酸ソーダでは普通セッケンよりも更に低く,飽和酸ソーダは不飽和のものが混入するとその温度が低くなることを認めた。
  • 小森 三郎, 唐城 俊雄
    1959 年 62 巻 4 号 p. 538-542
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルキルアミンと酸化エチレンとの無触媒下反応はつぎの3段階に分けて考えられる。
    この反応において反応温度が170~230℃のときは反応Iの反応速度は大であるが反応IIの反応速度は小さく,ほとんど無視できることはすでに報告した。ところがこの反応を低温で行ったところ予想に反し,反応温度が150℃ 付近から低くなると,反応IIは無視できなくなり70~90℃あたりで最大の反応速度(2.5mol/hr)を持つようになった。70~90℃付近では反応I-Aが起ればすぐ続いて反応I-Bと反応IIが連続して起ってポリオキシエチレンアルキルアミンが生成し,律速段階は反応I-Aであることを確認した。多量の水の存在下に低温でアルキルアミンに酸化エチレンを作用させると第4級アンモニウム塩が生成するという特許があるが本研究で得たアルキルアミンは第3級であった。また反応温度を加減することによって比較的速やかに無色のポリオキシエチレンアルキルアミンを製造することができた。
  • 根本 嘉郎
    1959 年 62 巻 4 号 p. 542-545
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    数種の染料の水溶液に非イオン活性剤を添加し,その吸収スペクトルの変化を調べ,極大吸収波長の移動,光学密度の最大変化,光学密度の最大変化を示す波長を測定した。その結果,染料水溶液の吸収スペクトルは非イオン活性剤の添加により長波長側に移動するのが認められた。また非イオン活性剤の添加により変化したこの染料液の吸収スペクトルは,この染料のアルコール溶液の吸収スペクトルと類似のものとなることがわかった。調査した染料の中ではC.I.Acid Blue15,116,120,C.I.Direct Violet12,C.I.Acid Violet17が変化が著しく,非イオン活性剤の定性定量分析に利用可能である。また羊毛の酸性染料による染色に非イオン活性剤を使用する場合,染料との相互作用の大きな非イオン活性剤を使用するほど,染着速度が増大する傾向が認められた。
  • 大平 愛信, 堤 繁
    1959 年 62 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-シメンーヒドロペルオキシドの新合成法として,p-シメンの低温酸素加圧酸化反応を試みた。反応温度60℃,反応初圧30atmにおいて,ヒドロペルオキシドの生成速度は十分高く,かつその最高濃度は43.2%に達した。また低温加圧反応におけるテレフタル酸の生成は, 高温酸化反応(常圧, 加圧) の場合と異なり, トリル酸を経ずに, p-アセチル-安息香酸を経ることが明らかにされた。なお, p-シメンのイソプロピル基とメチル基の反応性を知るために, 2-ニトロ-p-シメンが常圧および加圧下で酸化され,まず優先的にイソプロピル基が酸化されることが知られた。
  • 伊東 昭芳
    1959 年 62 巻 4 号 p. 549-551
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ナフタリンをモノスルホン化する際,生成したα-スルホン酸およびβ-スルホン酸が共に加水分解を起さないような低温度では,スルホン化はα およびβ 両スルホン酸を生成する一方的な並行反応と見なすことができる。実験の結果40℃ までの温度ではスルホン化物中のα,β 両異性体の生成割合の対数とスルホン化の絶対温度の逆数は直線関係にあり, この傾斜からα - スルホン化とβ - スルホン化の活性化エネルギーの差を求あた。α-スルホン酸の異性化は30℃ においてはほとんど認められず,50℃ ではわずかに認められた。上記直線関係の傾斜から求めたα 位とβ 位の活性化エネルギーの差Eβ-Eαは637cal/molとなり,α-スルホン化とβ-スルホン化の頻度因子の比は1.79となった。
  • 西野 潤, 西浦 斐, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1959 年 62 巻 4 号 p. 552-554
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ピラゾロン環をナフトール染料顕色剤に導入しその色調および染色堅ろう度について考察した。
    顕色剤はいずれもピラゾロン環の4-位にアゾ基で結合しているフェニル核にアミノ基を導入したもので,ピラゾロン類にジアゾ化したアシル-アミノアニリン類をカップリングし,ついで加水分解する方法か,あるいはジアゾ化したニトロアニリン類をカップリングし,ついで還元する方法によってアミノ化合物を合成した。
    合成したアミノ化合物は,3-メチル-4-(4'-アミノフェニルアゾ)-5-ピラゾロン(I),1-フェニル-(II)-,1-(β-ナフチル)-3-メチル-4-(4'-アミノフェニルアゾ)-5-ピラゾロン(III),4-(3'-アミノフェニルアゾ)(IV)-,4-(3'-トリフルオルメチル- 4'-アミノフェニルアゾ) (V)-,4-(2', 5'-ジエトキシ-4'-アミノフェニルアゾ)-1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(VI)および4-[4'-(4''-アミノフェニルアゾ)-フェニルアゾ](VII)-,4-[2',5'-ジメトキシ-4'-(4''-アミノフェニルアゾ)-フェニルアゾ] (VIII)-,4-[2', 5'-ジメトキシ-4'-(2'', 6''-ジクロル-4''-アミノフェニルアゾ)-フェニルアゾ]-1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(IX)である。
    ナフトールAS類と組合わせて木綿上で顕色した結果,(I),(II),(III)は紫色系,(IV)は赤色系,(V)は赤紫色系,(VI)は青色系,(VII),(VIII),(IX)は黒色にそれぞれ顕色した。日光堅ろう度は(I),(II)以外はすぐれていて,洗たく,摩擦堅ろう度も(I),(II),(III)以外は優秀であった。
  • 今給黎 義之
    1959 年 62 巻 4 号 p. 555-559
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    従来あまり用途のなかったフェナントレンを直接アルキル化することにより,高沸点芳香族性で,しかも常温において液状を呈する化合物を合成してその性質を明らかにし,有効な利用法を開拓するための一助とすることを目的とした。C3からC14までのn-アルコール10種類をアルキル化剤,三フッ化ホウ素を脱水縮合剤,五酸化リンをアルキル化補助剤として,純フェナントレンをシクロヘキサン溶液中でアルキル化した。分留して得られたモノアルキル置換体はすべて常温において液状を呈した。その対理論収率[100.(モノ置換体収量)/(化学量論的生成量)]は最高60.1%であった。これらの化合物の物理的性質を測定した。また可塑剤としての性質を検討するためにPVCとの相溶限度を測定した。その結果,分子屈折は側鎖炭素数をNとすれば,62.15+4.705Nの実験式で示され,実測値はこの式によく一致した。4mmHgの沸点は側鎖炭素数が1個増すごとに平均7~8℃ 上昇し,C6以上で200℃ 以上となった。凝固点は-20℃~-32.5℃ の値を示し,25℃ の動粘度とともにC8に極大,C12付近に極小値が認められた。相溶限度はC3アルキルで450部/100部PVC,C14で100部/100部PVCで可塑剤として十分の値をもつものと認めた。
  • 笠原 文雄
    1959 年 62 巻 4 号 p. 560-562
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    遊離アルギン酸ゲルはきわめて抱水性が強いのでその脱水は容易ではない。脱水の良否は不純物の残留量,乾燥工程中の解重合等に影響するので,脱水はなるべく十分に行うことが望ましい。よって遊離アルギン酸ゲルの脱水率に影響を与える因子を知る目的で種々実験し,次の知見を得た。すなわち(1)重合度の高い方がよい。(2)pHは低いほどよい。(3)ロ液濃度は高い方がよく,低重合度のものは濃度0.05%以下では捕集が困難となる。(4)ゲルの析出後の経過時間は2時間位までの範囲では時間の経過にしたがって脱水はよくなる。(5)ロ液にゾル状に気泡を含ませた後析出させたゲルは脱水が良好となる。(6)ゲルを50~70℃ の温湯に約3分間浸漬した場合脱水はいちじるしく良好となる。
  • 道口 正雄, 横山 義春, 岡田 郁之助
    1959 年 62 巻 4 号 p. 562-565
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    60Coγ 線照射によって製パン用強力粉が受ける諸変化を詳細に知るため2.5~1056×104repの範囲にわたる照射試料を調製し,pH,マルトース価,反射光度,β-アミラーゼ,水,アルカリ,酸各粘度,ペースト吸収スペクトル,ファリノグラム,アミログラムなどの測定を行った。その結果小麦粉はγ 線照射によって諸性質に著しい変化を生じ,照射量の増加につれて低品質化をきたすことが認められた。これはタンパク質の変性,デンプン粒子および分子の変化によるものと考えられ,ファリノ,アミロ両グラムに2.5×104rep照射ですでに変化が明瞭に認められ,30×104rep以上の試料ではその変化は著しく,1056×104rep照射試料では小麦粉としての性質を完全に失うに至った。
  • 飯田 弘忠, 桑原 仁太郎, 小西 功三
    1959 年 62 巻 4 号 p. 566-570
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    繊維に活性メチレン基を導入することができれば, これに芳香族ジアゾニウム化合物を反応させることにより, 繊維と化学結合した染料を繊維上に生成させることができるであろうと考え,繊維に活性メチレン基を導入する方法として,木綿をジケテンによってアセトアセチル化する方法を検討した。得られた結果はつぎのようである。
    1)触媒を用いないとジケテンと木綿との反応性は弱いが,木綿にあらかじめ触媒を含ませてジケテン溶液中で反応させればよく反応した。
    2)触媒としては硫酸と酢酸ナトリウムが適当であった。
    3)ジケテンの溶媒としてはn-ヘキサンに少量のベンゼンを溶かした混合溶媒がよかった。
    4)ジケテンが木綿の重量の15%よりも少なく結合した場合は繊維が着色しなくて本研究の目的に適していた。ジケテン結合量が15%以上になると黄色になり,40%以上になると繊維は脆化した。
  • 飯田 弘忠, 小西 功三
    1959 年 62 巻 4 号 p. 570-574
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    部分アセトアセチル化綿と芳香族ジアゾニウム化合物とは容易に反応して,繊維と化学結合したアゾ色素を生成することを見出レたので,この新染色法に関する主要事項について実験を行い,つぎの結果を得た。
    1)部分アセトアセチル化綿に芳香族ジァゾニウム化合物を反応させて染色の目的を達するには,ジケテンの結合量が乾燥綿布に対して2~6%の部分アセトアセチル化綿が最も適当であって,アセトアセチル化度がそれ以上に高くなるとかえって染着性が悪くなる。
    2)不溶性アゾ染料の顕色剤を用いると黄ないし赤の染色ができ,ジアゾ化可能なアミノ基を持った酸性染料によっても種々の色の染色ができる。
    3)本実験で検討し範囲では染布の日光堅牢度は1級から5~6級までの種々の段階があり,洗たく堅牢度は多くは4級ないし5級であるが,2~3級程度のものもあった。
  • 飯田 弘忠
    1959 年 62 巻 4 号 p. 574-576
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1)活性メチレン基を有する化合物にアルカリ性で芳香族ジアゾニウム化合物を反応させるとホルマザン色素を生成することが知られている。部分アセトアセチル化綿に同様にジアゾニウム化合物を反応させれば,繊維と化学結合した染料を生成するであろうと考えて本実験を行い,この推定が正しいことを確認した。
    2)このような染色にはジケテン結合量が約2~6%の部分アセトアセチル化綿が適当である。
    3)アントラニル酸,1-アミノ-2-オキシ-5-ベンゼンスルホン酸,1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸をジアゾ化して部分アセトアセチル化綿に反応し,得られた染布をCu,Ni,Coの塩の水溶液で処理して錯塩にした。これらの染布の大部分は日光,洗たくに対してきわめて堅牢であった。染布の色は褐色系統が多いが,アントラニル酸を用いたホルマザンのニッケル錯塩は美しい黄緑色であった。
  • 杉松 昭人, 仙田 正三, 原田 豊
    1959 年 62 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸素および真空中で60Coによるγ 線照射によってセルロースの物性の変化を検討した。試料は絶縁用未晒クラフト紙を用いて,照射はおもに2×106~22×106rの範囲(線量強度1×104~10×104r/hr)において行い,照射後の機械的性質,比重,有効分子吸着面積,重合度,1%熱アルカリ処理後の重合度,核磁気共鳴吸収,紫外線吸収スペクトル等の変化を測定した。
    その結果重合度の急激な低下,機械的性質の劣化が認められた。また真空中での照射試料ではセルロース無定形領域量の増大が起るとともに分子間拘束の増加も認められた。酸素中での照射は真空中照射による崩壊に加えて酸素による酸化が起り,その生成カルボニル基によって分子間水素結合が増加することを認めた。
  • 内山 修一, 林 邦一
    1959 年 62 巻 4 号 p. 581-583
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本報は酢酸繊維素溶液における網目構造の性質を調べるために, 溶液中に少量の水, メタノール, クロロホルム, 四塩化炭素,酵酸エチル,塩化カルシウム,グリオキサール,ポリメタクリル酸メチルおよび塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物等を添加して,そのワイセンベルグ効果を測定した。二重円筒型装置を用いたが,その円筒を上昇する溶液の高さをh , 内筒壁面の剪断応力を S1 とすると, h=BSp1 で表わされる。ここにB およびp は定数で, p は1.0~1.4 の間にある。
  • 鶴田 基弘, 小林 文夫, 高田 保雄
    1959 年 62 巻 4 号 p. 583-585
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カプロラクタムーテレフタル酸-モノエタノールアミン共重合体の合成において,テレフタル酸とモノエタノールアミンめ使用モル比を1:2とするときは,カプロラクタム1molに対しテレフタル酸0.02mol,エタノールアミン0.04molの割合で混合し250℃,数時間反応させるとクレゾール不溶重合体を生成する。いっぽう,テレフタル酸とエタノールアミンのモル比が1:1の場合は,カプロラクタムに対し各混合比で250℃,数時間反応させるもクレゾール不溶の重合体は生成せず,混合比の広い範囲にわたってアルコール可溶である。この共重合体の融点と組成の関係は,幅の広い最低融点曲線を描く。なお, テレフタル酸- モノエタノールアミンの使用は, アミノカプロン酸を等モル使用した場合に比較して,速い速度でカプロラクタムを重合させる。
  • 鶴田 基弘, 小林 文夫, 冨田 実, 松谷 浩一
    1959 年 62 巻 4 号 p. 585-587
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    尿素,またはヒドラゾカルボンアミドの存在でカプロラクタムの重合を行うとき,アンモニアが発生するが生成重合体の末端基からみれば,尿素およびヒドラゾカルボンアミドはともにアミノ基よりカルボキシル基とよく反応する傾向を有している。カプロラクタム-尿素反応系にヘキサメチレンジアミンを共存(ジアミンと尿素のモル比1:1)させるときには,発生するアンモニア量は尿素単独の場合よりはるかに大であり,生成重合体の融点よりも尿素がアミノ基と反応し尿素結合を有する共重合ポリアミドが生成していると考えられる。この共重合体はカプロラクタム-尿素-ヘキサメチレンジアミンの使用モル比が3:1:1付近で最低融点を示し, かなり広い組成範囲内で可紡性を有している。
  • 高柳 素夫, 楠本 直
    1959 年 62 巻 4 号 p. 587-600
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高分子の結晶化における二つの要素過程である球晶核の発生とその成長あ温度依存性を定量的に記述ι,球晶組織の発生温度による相違を説明することにある。
    精製した未分別ポリ(エチレンサクシネート)の球晶成長速度と結晶化速度とをそれぞれ偏光顕微鏡とディラトメーターとを用いて,融点Tm=103.5℃と2次転移点Tg=-33.5℃の間で測定し,50℃と35℃付近にそれぞれ最大速度を見出した。このときの球晶成長速度Gの温度変化は,著者らがすでに核生成機構にもとづいて提出した関係式,
    においてG0=1.24×105,C1=190とすることにより,また結晶化速度定数kのそれは次式の関係式,
    においてk0=6.6×1022,C2=1806とすることにより定量的に記述できることを示した。ここでEDはEvis/8と評価され,EvisはWilliams-Landel-Ferry式を用いて過冷液体のTg値から温度の関数として計算した。球晶核発生速度Aはk/(π/3)G3から算出でき,20℃ 付近に極大を示した。算出したA値の正当性は既知厚さの薄層中の球晶平均面積から検討した。以上の関係式は6ナイロンの球晶成長速度(Burnettら),天然ゴム(Woodら)およびポリエステル(Uberreiterら)の結晶化速度のTg~Tm間における温度依存性をも記述することができた。
  • 滝口 利夫
    1959 年 62 巻 4 号 p. 601-602
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 米田 幸夫, 内島 俊雄, 牧島 象二
    1959 年 62 巻 4 号 p. 602
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1959 年 62 巻 4 号 p. A31-A38
    発行日: 1959/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers. Editor.
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