工業化学雑誌
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64 巻, 6 号
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  • 山本 拓, 伴 衛, 竹中 二郎, 森脇 晋作
    1961 年 64 巻 6 号 p. 945-954
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    亜鉛またはカドミウムの塩類水溶液を触媒とし,加圧アセチレンを水和して,アセトアルデヒドを製造する方法(高圧水和法)について,かきまぜ式オートクレーブを反応器とする連続反応装置で基礎資料を得,その結果を既に報告したが,本で報はその工業化プラントとしての反応方式を検討した結果を報告する。まず塔式反応器の一部を再現しうる小型反応器を主体とする連続実験装置を組立て,液循環およびガス循環反応方式について基礎的検討を加えた結果,それぞれ反応効率を定める因子は触媒液に吹込まれるアセチレンガスの量であることを確認した。またガス循環方式は,実用収率の95%をうるためには,アセチレンの変化率は5%程度であり,工業上不利と思われるのに対し,液循環方式は約50%の変化率と十分な反応効率をうることができ,かつ安全であると推論した。これらの実験結果にもとづいて,液循環方式による場合の反応塔の効率の検討を行ない,反応塔触媒液容量28l,アセトアルデヒ生成量約2kg/hrの中間試験設備を設計し,これを運転した。その結果,この方式による工業的規模の装置設計に有用な基礎資料をうることが出来た。
  • 小林 悦郎
    1961 年 64 巻 6 号 p. 955-958
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高温加圧下におけるP4O10-NH3-H20系間の溶融反応を行ない,原料相互間の再編成をし,鎖状構造をもった一連の低重合リン酸アンモニウム[(NH4+H)n+2PnO3n+1] を合成した。
    無水リン酸め激しい水和反応および縮合リン酸による器材の侵食等を避けるため,原料はNH3-P4O10間の反応生成物,リン酸アンモニウム,水等を用いた。これらを適当に配合し,その中に含まれるP2O5とH2Oの関係が化学量論的にピロ~ トリポリリン酸の組成になるように,あちかじめ混合したものをオートクレーブに採り,アンモニアを加えて加熱する。反応温度300~450℃,NH3+H2Oの圧30~70kg/cm2において高温では溶融,室温で固化する。ammonium phosphateglassesを合成した。
    この反応生成物の組成はP4O1062~67%,NH316~18%,H2O 17~19%を含み, イオン交換クロマトグラフ法で分析した結果, R=2.0~3.0[R=(NH4)2O+H2O/ P2O5] においてオルト, ピロ, トリポリ, テトラポリ等のリン酸アンモニウム塩からできている。この再編成皮応して生成した低重合リン酸塩の各構造単位間[分岐PO4-,中間PO4-,末端PO4-,オルトリン酸-]とRの関係についての実験値に,ParksとVanWazerのReorganization Theoryにほぼ一致した。
  • 久保 輝一郎, 谷口 雅男
    1961 年 64 巻 6 号 p. 958-964
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の濃度の硫酸第一鉄と硫酸アルミニウムの混合硫酸溶液(調合廃酸)とHClガスとの反応の経過から,前報にのべた相律的の研究結果が加成的になり立つかどうかを検討し,あわせて主として硫酸第一鉄と硫酸アルミニウムを含む廃酸の塩化水素化方式による硫酸回収の効率とその限界について考察した。その結果,
    (1)HClガスの吹き込みによるHCl濃度増加に伴なって,それぞれの塩の単一溶液の場合の相平衡関係とほぼ同様の経過を加成的にたどって,FeSO4,Al2(SO4)3および遊離H2SO4などの濃度が変化し,各硫酸塩は塩化物として共沈し,これに当量の硫酸が遊離される。
    (2)調合廃酸は工場廃酸の組成をもとに四種類調製した。
    すなわち全硫酸濃度15.9,17.1,30.3,35.6%で,これに対して,遊離硫酸濃度は6.65,11.0,15.7,30.6%とした。これらの調合廃酸の塩化水素化方式による硫酸回収率(=(塩化水素化後の液中の遊離硫酸量/原廃酸中の全硫酸量)×100)は平均89%程度で,またおのおのの試液の遊離硫酸量の増加の度合はそれぞれ2.03,1.28,1.77,1.11倍である。
    (3)これらの結果をもとにして,本方式による硫酸回収効率の考え方,特徴を指摘し,また回収限界の数値を表にして示した。
  • 矢田部 俊一
    1961 年 64 巻 6 号 p. 962
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポルトランドセメントのペーストを種々の溶媒を用いてつくり電極をペースト中に入れずにペーストの容器の外におき,電極がペーストに侵されることのない状態で,この電極間の電気伝導度の時間による変化を測定し,結果を分散分析法を用いて検討, 考察し, 電気伝導度の日による変化が溶媒種, 溶媒重量により異なるようすを知ることが出来た
  • 矢田部 俊一
    1961 年 64 巻 6 号 p. 964
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報においてセメントおよびクリンカーのH2O中に溶出するシリカの量を測定したが,本報においではH2Oに少量のHCl,またはHNO3が加えられたとき,この溶媒に溶出するシリカの量を,前報と同様の方法により測定し,シリカの量にたいする,溶媒種の効果が有意であるかどうかを知ることを目的に,分散分析法を用いて測定値を検討,考察し非有意となる溶媒はまとめ,種々の溶媒中にとけ出るシリカの量が試料重量に比例することが分散分析法により確かめられたので, 種々の溶媒における単位重量あたりのシリカの溶出量を求め, この値が温度によりどのように変化するかを知ることが出来た。
  • 矢田部 俊一
    1961 年 64 巻 6 号 p. 967-968
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報においてはH2O 400ccに溶出するカルシウムの量を定量したが,溶媒が異なるとカルシウムの溶出の挙動が異なることが当然予想されるので,本報においてはH2Oに少量のHClを加えた2種の溶媒をつくり,H2OにHClを加えると,カルシウムの溶出の挙動がどの程度異なるか,またHCl添加の量の相違により2種の溶媒中に溶出するカルシウムの溶出量が異なるか,また溶媒の温度の相違により溶出量が相違するか,またカルシウム溶出量が時間に関し何次の項まで有意であるかを分散分析法を用いて検討し,さらに溶出量を時間と温度との関数として示す実験式を求めた。この実験式より溶出速度を求め,これと温度との関係を考察した。
  • 向山 朝之, 平野 四蔵, 八木 一郎, 勝又 茂
    1961 年 64 巻 6 号 p. 969-972
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリウム化合物中に含まれる微量希土類元素を発光分光分析法(銅-スパーク法)により定量する場合の前処理として希土類元素を分離する方法について検討した。
    この結果, トリウムをオキシンークロロホルムで抽出分離し, 希土類元素をセノイルトリフルオルアセトン- ベンゼンで抽出して他の不純物と分離したのちランタンによる共沈法によって有機物と分離することにより,満足すべき分離方法を得た。
    本法における全操作を行なった場合の90Yトレーサー実験によるイットリウムの回収率は95%であった。
  • 八木 一郎, 勝又 茂, 向山 朝之, 平野 四蔵
    1961 年 64 巻 6 号 p. 972-975
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    発光分光分析法(銅-スパーク法)によるトリウム化合物中の微量希土類元素の定量法について検討した。
    トリウム化合物中の微量希土類元素を,オキシン-クロロホルム抽出,セノイルトリフルオルアセトン-ベンゼン抽出,およびランタン共沈法によりトリウムおよびその他の不純物から分離したのち,銅-スパーク法により定量した。
    この結果, 定量下限はDy0.2ppm, Sm1.6ppm, Gd0.8ppm, Eu0.1ppmであり, これ以上の含有率を有する酸化トリウム中のこれらの希土類元素を満足に定量することができた。
  • 米田 幸夫, 加藤 善三郎, 牧島 象二
    1961 年 64 巻 6 号 p. 975-978
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    触媒活性の要因を,物質自身のみによる1次要因(物質要因)と,結晶構造および微細構造による2次要因(微細構造要因)に分離する。Fe3O4-CoFe204-Co304系混合スピネルでは,調製法などに注意すれば,2次要因が比較的均一である触媒群が得られると考えられるので, これについて一酸化炭素の酸化反応の活性を測定した。その活性化エネルギーは,反応ガスの組成(当量および酸素過剰)には依存しないが,少量のコバルトイオンの置換により,Fe3O4の大きな値から急激に低下し,以後Co304にいたるまで,徐々に減少する。このことは,主として1次要因,すなわち酸化物触媒の酸化力の差異に基くものと考えられる。
  • 笠岡 成光, 村田 義夫
    1961 年 64 巻 6 号 p. 978-985
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者らはさきに種々の方法で調製した各種のFe2O3および各種の助触媒を含んだ酸化鉄触媒の水素による還元速度を詳細に研究し,還元過程,還元機構ならびに還元速度と触媒の表面積,結晶構造などとの関連性について報告したが,本報では逆に上記の水素還元して得た粉末金属鉄ならびに部分還元して得た酸化鉄と共存する還元鉄の空気による酸化速度りを式捩熱天秤を使用して,100~600℃ で常圧流通法によって測定し,一方特定の酸化試料を分析して酸化過程を定量的に検討し,さらに粉末金属鉄の酸化機構について探究し,鉄系触媒の活性化機構究明の資とした。その結果,粉末金属鉄の酸化は一般にFe→FeO→Fe3O4→Fe2O3の3段階の過程が逐次反応的に進行し,速度曲線はいわゆる冶金における鉄鋼類の場合とは異なって中途で屈曲を示し,鉄イオンの拡散が律速的と考えられる速度の大きいFe→FeO→Fe3O4の反応と,酸素イオンの拡散が律速的と考えられる速度の著しく小さいFe3O4→Fe2O3の反応の2段階よりなる。また,酸化速度は金属鉄の還元前の酸化鉄の種類および水素還元温度によって著しく相違し,一般にγ-Fe2O3より得た金属鉄および部分還元して得た酸化鉄を含む還元鉄は,α-Fe2O3およびFe3O4より得た金属鉄に比較して著しく大きい。これらの結果に基いて還元金属鉄の酸化速度と表面積および構造などの関連性について考察した。
  • 笠岡 成光, 村田 義夫
    1961 年 64 巻 6 号 p. 986-988
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者らは前報で種々の酸化鉄から調製した粉末還元金属鉄の空気による酸化速度を詳細に研究し,酸化過程ならびに酸化機構を検討し酸化速度に対する種々の因子の影響について考察したが,本報では共沈法あるいは浸漬法によって単一助触媒を添加した酸化鉄触媒を水素還元して調製した粉末還元鉄触媒,すなわちFe-K2CO3,-Cu,-MgO,-Al2O3,-Cr2O3および-B2O3について,150~600℃ で常圧流通法によって空気による酸化速度を測定し,各種の助触媒が金属鉄および低位酸化鉄の酸化速度に対する影響について検討した。その結果,各還元鉄触媒の酸化反応は金属鉄単独の酸化の場合と同様にほぼ抛物線則にしたがう速度が著しく大きい初期の段階と,ほとんど一般に平衡状態に達する後期の段階よりなり,Fe→FeO→Fe3O4→FeO3の3反応が逐次的に起ることが認められた。また,各還元鉄触媒の酸化速度は金属鉄単独の場合よりもいずれも大で,かつ助触媒の添加量の多いものほど酸化速度は大きくなり,そして一般にAl2O3(~Cr2O3)>B2O3>MgO>Cu(O)>K2CO3>(助触媒なし)の順に,すなわち添加助触媒の金属イオン価の高いものほど酸化速度を増大させ,原子価制御の効果は認められない。
  • 村長 潔
    1961 年 64 巻 6 号 p. 989-995
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタン-水蒸気法または部分酸化法による合成ガス製造において触媒の性能がわるいとき,炭素析出が起りやすいといわれているので,炭素析出の研究を行なうに先だち,メタン-水蒸気反応により,市販触媒(22%Ni)の性能試験を行なった。標準自由エネルギーから平衡定数の温度式を導き,平衡組成を計算し,モル比2,3および4,空間速度140および400,温度595~926℃ の反応生成物ガスクロマトグラフ分析結果と比較し,性能を検討した。触媒は595℃ 以上で著しい活性を示し,モル比2および3は675℃,モル比4は625℃ で平衡分解率に達し,反応生成物は平衡混合物にほとんど一致した。また800~926℃ の高温でも理論分解率100%を示した。アンモニア合成における改質ガスのメタン含有量は0.2%以下といわれるが,モル比2は816℃,モル比3は750℃,モル比4は706℃ で反応生成物中のメタンはそれぞれ0.2%以下であって,この触媒の性能のすぐれていることを示している。
  • 村長 潔
    1961 年 64 巻 6 号 p. 995-1000
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタン-水蒸気反応炭素析出研究では,メタン1lあたり析出炭素の1mg(1mg/lと略記)以下を正確に測定する必要があり従来の重量法では困難である。生成ガスを置換し20%酸素で触媒上の析出炭素を燃焼し炭酸ガスを測定する析出炭素定量法を考案し,微量炭酸ガス定量装置により最少置換ガス量,置換時の炭素消費量,燃焼時の空試験値を求め,さらに一定量の活性炭素を定量した。温度600℃ で窒素17lを通すと置換の誤差および炭素消費はなく,また燃焼ガスを酸化銅触媒に通すと混在する一酸化炭素を完全に酸化できたし,微量炭酸ガス定量装置の吸収効率は97%以上であった。活性炭素定量結果はきわめて良好であり,この結果は析出炭素にそのまま適用できる。析出炭素量は特別の場合400mg,通常40mg以下で研究できるから,メタン12lを用いると本定量法により析出炭素を最大1mg/l,通常0.1mg/l以下の誤差で定量できる。
  • 村長 潔
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1001-1007
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタン-水蒸気反応炭素析出の系統的研究はないので,析出限界と析出量の計算を行ない,高級炭化水素を含まぬメタンと新触媒の場合,理論値にしたがうかを確めることを目的とした。熱力学から最小水蒸気量(水蒸気.メタンモル比,Rm)を求め,この曲線付近のモル比で反応を行ない,既報の析出炭素定量法により析出量を定量,図からRmを求め理論値と比較した。活量比曲線から計算したRmと理論析出炭素量からのRmは一致した値が得られた。実験的Rmは理論値よりいずれも低く,その差は926℃,0.005;816℃,0.025;706℃,0.32;595℃,1.1であった。また析出炭素量も理論値より少なく,982℃ では差はわずかであるが,次第に多くなり706℃ で著しく,595℃ では定量が困難であった。これらRmおよび析出量の理論値と実験値の差の考察を行ない,析出曲線を実験的に作成できることを確認した。また,PadovaniらのRmの計算値も検討した。
  • 長瀬 晋
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1008-1010
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    アセトンとホルムアルデヒドのアルカリ性におけるメチロール化反応を動力学的に検討した。第1段のメチロール化反応の研究を目的としたために, 第2 段以上のメチロール化反応を出来るだけ防止する意味でホルムアルデヒドに対して大過剰のアセトンを使用した。この場合, メチロール化反応はアセトン, ホルムアルデヒドおよび水酸イオンに関して, それぞれ1 次と考えられる。また第1段のメチロール化反応の活性化エネルギーは17.0kcal/molであった。
  • 好野 雄, 木島 一郎, 杉山 岩吉, 高井 敏雄
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1010-1013
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    モノクロルトリ-n-ブチルチタネートまたは四塩化チタンとn-ブチルアルコールおよび有機アミンの反応について研究した。使用したアミンのうちでトリエチルアミン, モノ-n- ブチルアミン, モノ- tert-ブチルアミン, ジ-n- ブチルアミン,ピペリジン, α-ピペコリン, エチレンジアミンはモノクロルトリ-n- ブチルチタネートと-n-ブチルアルコールと反応してアミン塩酸塩およびテトラ-n-ブチルチタネートを与えた。アミンとしてトリ-n-ブチルアミン,ピリジン,キノリン,ジメチルアニリンを用いた場合には朱反応のまま試剤が回収された。四塩化チタンとn-ブチルアルコールおよびアミンの反応も同様の結果を与えた。
    モノクロルトリ-n-ブチルチタネートと各アミンとの反応熱を測定し, テトラ-n-ブチルチタネートを与えるアミンの反応熱はテトラ-n-ブチルチタネートを与えないアミンの反応熱にくらべて大きな値を示した。また四塩化チタンとアミンの反応熱はモノクロルトリ-n-ブチルチタネートとアミンとの反応熱にくらべてさらに大きな値を示した。
  • 佐藤 成美, 加藤 陽一, 河合 明男
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1013-1017
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    マレイン化油脂類およびその高級脂肪族アミン塩が,油溶性さび止め添加剤としてすぐれた性能を有することをさきに報告したが,同様のマレイン化付加物,およびその誘導体を水溶性あるいは分散性にしたものが水溶液中における軟鋼に対して,さび止め性を有することを期待して本試験を行なった。3%食塩水中浸漬試験による重量変化測定の結果,マレイン化アマニ油のナトリウム塩およびそのステアリルアミン塩との混合物など,すぐれたさび止め性を有するものが見出された。なおマレイン化アマニ油の塩は,食塩水のほか,クロム酸カリ,亜硝酸ソーダなどによっても,抑制困難なある種の界面活性剤の水溶液中の軟鋼に対してもすぐれたさび止め性を有することが認められた。なお電極電位の時間的変化を測定し,重量法による結果と比較検討した。
  • 佐藤 成美, 加藤 陽一, 堀 睦美
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1017-1020
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    マレイン化油脂類およびその高級脂肪族アミン塩が,さび止め添加剤としてすぐれた性能を有することをさきに報告したが,本研究においては,マレイン化オレイン酸の無水物に水酸基,アミノ基,またはイミノ基を1コまたは2コ以上有する化合物,またはこれらの基の外に,他の極性基を共有する化合物を反応させて得られた種々の誘導体のステアリルアミン塩について,そのさび止め添加剤としての性能をしらべたので報告する。これらの誘導体の塩の多くはマレイン化オレイン酸のステアリルアミン塩にくらべて,さび止め性が劣るが,N-オクタデシルグリシンとの誘導体の塩の場合には僅かながらさび止め性の向上が認められた。
  • 荻野 圭三
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1021-1024
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭素数8~18の直鎖状飽和脂肪酸のセッケン水和物をX線回折法によって研究した結果,次のことが明らかになった。すなわち, これらの結晶は単斜晶系に属し, 炭素数に関係なくβ=120°(傾き角θ=60°)であり, monohydrate が結晶としての完全性が高く, hemihydrateまで安定であるが, それ以下の含水率になると, 構造の変化が認められた。またC12~C18の典型的なセッケンでは回折線は(110),(200)および(00l) しか強くあらわれず, 分子の長さ方向以外の原子の周期性が少ない。したがってこれらのセッケンでは結晶の乱れがあって,いわゆるstacking disorderを呈しているのに対し,C8以下の炭素数の少ないセッケンでは規則的な配列をしており,クーロン力が強く作用してよりイオン結晶的であると認められる。本実験に用いた工業的製法に準じたつくり方でつくった各試料の結晶相としては, C18, C16の脂肪酸セッケンでは主としてδ相を,C14,C12の脂肪酸セッケンでは主にω相を与える。
  • 田尻 弘水
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1024-1027
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    界面活性剤の全般についてその展開方法と結果をのべる。
    展開剤としてはピリジン水溶液,メタノール・酢酸・水(1:1:1),n-ブタノール,40%酢酸,酢酸ブチル・同エチル・酢酸・水・ピリジン混液など,通電液としてはメタノール(食塩),メタノール・酢酸・水(90:7:3)(食塩)を用い,呈色剤としては陰イオン活性剤にはバザクリルブルーバイオレット507またはローダミン6GCP,陽イオン活性剤にはエオシン,非イオン活性剤あるいは両性活性剤にはドラゲンドルフ変法試薬を用いた。
    実測したRf と活性剤の化学構造との間の関係を検討し, 次に活性剤め精製法の一部をのベる。
  • 立石 悌三郎, 藤原 正雄, 桜井 洸
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1028-1030
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    マッコウ鯨油の高度利用研究の一環として,マッコウ鯨皮油のエポキシ化を試み,塩化ビニル用可塑剤としての適否を検討した。マッコウ鯨皮油はロウエステル約70%と,グリセリド約30%よりなり,ロウエステルの大部分が不飽和ロウエステルである。したがって皮油をそのままあるいは5℃,および18℃ においてウインタリングして固体成分を除いたもの,高真空蒸留によりロウ成分のみを蒸留採取したもの,および合成オレイン酸オレイルのそれぞれのエポキシ化物をつくり,DOPの20~50%をエポキシ化物で代替した場合の塩化ビニルの性状を加工性,機械的性質,熱安定性等について比較検討した。その結果, エポキシ化物を添加することにより, 熱安定性が, 非常に改良されることを認めた。DOPに対する配合量は20%が最適量で,これよりさらに量を増すと発汗を生じ機械的性質も劣って来る。またマッコウ鯨皮油をウインタリングして固体成分を除くことにより,機械的性質ならびに熱安定性が,やや向上することを認めた。なおDOPに対して20%配合した場合の効果を,他の市販エポキシ化物と比較した結果,機械的性質においても熱安定性の向上に対する効果も十分満足し得るものであることを認めた。
  • 長瀬 邦彦, 坂口 嘉平
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1031
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ラウリルアミンに対する酸化エチレンの付加反応において,触媒の種類によって二つの反応型に分けることができる。一つは酸触媒による酸触媒型反応(これをA・C型反応と呼ぶ)であり,もう一つは,アルカリ触媒による塩基触媒型反応(これをB・C型反応と呼ぶ)である。
    いずれの反応も,酸化エチレン平均付加モル数vが2までにおいて,二つの反応型に判然と区別されて興味ある反応である。
    時間に対する酸化エチレン付加反応量の関係ならびに生成物の重合度分布とを対照しながら,この反応を究明し,反応機構を検討した。
    ラウリルアミンに酸化エチレンが付加するとき,反応は階段的に進行する。
    A・C型反応において,vが2までは,典型的な〓型の逐次付加反応である。v=2において,選択的にジエタノールラウリルアミンを与える。生成物の重合度分布を表わす理論式を導き, 分布定数C ( =k1/k2) を決定して, Cがほぼ1に等しいか,あるいはやや大きいことを見出した。
    B・C型反応においては,酸化エチレン付加反応はアミンのN-H基に対するよりも,酸化エチレン付加物のO-H基に対し,より優先的に行なわれ,触媒量によってその傾向が変化する。Weibull&Nycanderの簡易式より分布定数Cを求め,触媒量とともに増大することを見出した。
  • 長瀬 邦彦, 坂口 嘉平
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1035-1040
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    脂肪酸に対する酸化エチレン付加反応は単なる付加反応以外にエステル交換反応を伴なうことはよく知られた事実であるが,著者らはラウリン酸に金属ナトリウム触媒を用い,常圧吹込反応および加圧下における反応によって酸化エチレンを付加せしめ,付加速度曲線を測定し,また生成物をエーテル抽出し,抽出物の酸価,ケン化価,ヒドロキシル価を測定して反応生成物の組成を決定した。
    付加速度曲線は酸化エチレン平均付加モル数vが1の所でいずれの反応方法によっても変曲点を示すが,生成物は反応条件によってかなり異なった組成を与える。V<1において吹込法の場合生成したエチレングリコールモノラウリン酸エステルと未反応ラウリン酸とでエステル交換反応を起し,水が副生しており,いずれの反応においてもv<1において,エチレングリコールモノラウリン酸エステルはエステル交換反応によってエチレングリコールジラウリン酸エステルおよびエチレングリコールを副生する。
    そしてv=1において生成物の組成は大きく変化した。
    v>1においては,モノエステルおよびグリコールに酸化エチレンが付加し,それが絶えずエステル交換反応を続けながら反応が進行し
    C11H23COO(CH2CH2O)vCOC11H23+HO(CH2CH2O)vH⇔C11H23COO(CH2CH2O)vH
    反応生成物は平衡定数K[K=(モノエステル)2/(ジェステル)(グリコール)]が4に近づく組成を与えることが見出された。
  • 長瀬 邦彦, 坂口 嘉平
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1040-1043
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    活性水素化合物に対する酸化エチレンの付加反応速度を解析する場合,酸化エチレン溶解度のデータが必要であるそこで,100,125,150℃ の各温度,加圧下(0~17kg/cm2,ゲージ圧)において,ラウリルアルコール,ポリオキシエチレンラウリルエーテル(P=5)およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(P=5)に対する酸化エチレンの溶解度を測定した。
    溶解度の大きさの順位は, ラウリルアルコール>ポリオキシエチレンラウリルエーテル>ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであって,この結果から,おそらくラウリルアルコール>ノニルフェノールであろうと推定された。
    ラウリルアルコール, ポリオキシエチレンラウリルエーテル(P=5) については, 100℃ にて6kg/cm2,125℃ で9kg/cm2,150℃にて12kg/cm2以下では,ほとんど溶解度の差がみとめられなかった。
    ラウリルアルコールに対する酸化エチレンの溶解度に関して,測定器の空間部に対する補正計算を行なった。また,この計算に必要なラウリルアルコールの温度対比重関係を測定し,温度の関数として表わす実験式を求めた。
  • 長瀬 邦彦, 坂口 嘉平
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1043-1047
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    従来,酸化エチレン付加反応については常圧吹込法による研究が二,三報告されているが,本報では加圧下(1.5,5.0,10.0kg/cm2,ゲージ圧),温度100,125,150,175℃,触媒濃度0.25~2.Omol%において,ラウリルアルコールおよびノニルフェノールに対する酸化エチレンの付加反応を行ない,付加反応曲線,付加反応速度および重合度分布についての検討を行なった。
    酸化エチレンの付加反応曲線はラウリルアルコールたおいて時間に対して直線となり,ノニルフェノールについては,1mol付近で変曲点を示し,常圧吹込法の場合とくらべて特に差はない。
    酸化エチレン付加速度Vは触媒濃度,圧力の増加(酸化エチレン濃度を増す)に対して
    V=k[触媒][酸化エチレン](k:速度定数)
    なる関係が見出され,常圧吹込法の結果と一致するものである。
    またラウリルアルコールに対する酸化エチレン付加物の重合度分布を測定した結果,常圧吹込法のそれと特に差はない。
    加圧によって酸化エチレン付加反応速度が増大するが,これは酸化エチレン濃度の増加によるものであって,それによって重合度分布は影響されない。
  • 安河内 一夫, 占部 則明
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1048-1053
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アリザリンが金属とキレート結合を行ない易いという構造上の性質を利用して,金属キレート化合物の生成に関する研究を行なうために,その基礎的な資料としてアリザリンのポーラログラムを酸性からアルカリ性のpH範囲で測定した。その結果,やはり金属と結合し易い性質がアリザリンを還元する場合のポーラログラムにも影響した。すなわち酸性では2電子還元を行ない,典型的な1段の還元波を得るが,弱酸性,中性,弱アルカリ性では,正常な還元波と吸着およびキレート結合によると考えられる異常波の2段波または3段波が現われるとともに,セミキノンの生成によって,主波も傾斜が緩くなってくる。また更にアルカリ側に寄ると,吸着によると考えられる異常波はなくなるが,結合による異常波は存在し,セミキノンの生成は大きくなる。またpHの変化により波高の比が一定しなくて,アルカリ側で小さくなっているということは,アリザリンが他のイオンと結合して分子が大きくなっているのか,または還元形式が違うのか,これだけの実験からは確認できない。この点は共存するイオンの種類と濃度とを換えるとともに水銀との結合も考慮する必要がある。しかしアリザリンの還元波が,単なるカルボニル基のみの還元波とは異なり,錯塩の生成によると考えられる異常波を伴ない波形を複雑にしている点は認められる。
  • 永井 利一, 船久保 英一
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1053-1060
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アントラセン, 2-メチルアントラセン, 9-メチルアントラセン, 9-フェニルアントラセン, アントラキノン, 2-メチルアントラキノン,アントロンについて,アルミナ,シリカゲルおよびヘキサン,ベンゼンの組合せで生ずる各系について,クロマトグラフ吸着帯の挙動を検討した。
    キノン系の成長率Rgおよび固有展開比E値は炭化水素系のそれらより小さい。アルミナ系では,各溶質の吸着帯移動率はカラムの位置により変化するが,炭化水素-シリカゲル系ではほとんどの場合にカラムの位置に無関係な一定の移動率を示す。
    9-フェニルアントラセンは,そのクロマトグラフ特性に異常性が認められた。
    アントロンはアルミナクロマトグラフィーで容易にアントラキノンに変質した。
  • 番匠 吉衛, 斎藤 イホ, 鈴木 茂
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1061-1066
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アミノアントラキノン類は有機化学的方法,たとえば再結晶,昇華などで完全に精製することが非常に困難であり,また融点測定による固定もあまり信用できない。著者らはアミノアントラキノン類の吸着クロマトグラフィーによる精製法ならびにペーパークロマトグラフィーによる同定法を研究した。ついでこれらの純粋な物質の紫外線吸収を測定した。
    えられた結果はつぎのとおりである。
    1)活性アルミナを用いる吸着クロマトグラフィーにより17種のアミノアントラキノン類試料の主成分を完全に純粋にした。
    2)アミノアントラキノン類の同定に適した4種のペーパークロマトグラフィー用展開剤を見出し,これらの展開剤を用い試料のRf値を測定した。
    3)純粋な試料の紫外線吸収曲線をエタノール溶液中で測定し,吸収と化学構造の関係を論じた。
  • 番匠 吉衛, 黄 光烈, 鈴木 茂, 斎藤 イホ
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1066-1071
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-アミノアントラキノンのリューコ化合物の縮合生成物としてインダントロンがえられることが文献に記載されているが,この合成法は合成条件をよく調節することにより,よい収率で染料がえられることが可能であるのは興味深い。
    著者らはこの合成の最適条件および縮合の反応機構を研究した。2 - アセチルアミノアントラキノンをピリジン中でクロルスルホン酸と亜鉛末で還元するとそのリューコ化合物がえられ,これを加水分解後2-アミノアントラヒドロキノンジ硫酸エステルの水溶液がえられた。2-アミノアントラヒドロキノンジ硫酸エステルのアルカリ水溶液を過酸化鉛とともに加熱しリューコ・インダントロンのテトラ硫酸エステルがえられた。
    えられた結果はつぎのとおりである。
    1)縮合におけるカセイソーダの量および反応温度の影響を検討し,インダントロンを68%の対理論収率でえるこの合成の最適条件を見出した。
    2)副反応生成物の化学構造を検討し,3種の酸化反応が競争反応として進行するのを見出した。
    3)2-アミノアントラヒドロキノンが温和な条件で容易に反応するのはアントラキノン核の1,4-位における電子密度の不足によると推定した。
  • 山田 翠
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1071-1075
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    三硫化モリブデン触媒を用い,アニリンおよびα-ナフチルアミンの加圧接触還元を行ない,アミノ基に対する本触媒の反応性,芳香核の水素化,還元分解等について研究を行なった。すなわち水素初圧100atm,反応温度200~350℃ で還元すると,温度の上昇とともに反応は進行し,いずれも350℃ では95%以上が炭化水素に還元された。40atmではα-ナフチルアミンに比較してアニリンは反応が進行しがたく,高温(450℃)でもその50%が未反応であった。おもな反応生成物はアニリンではシクロヘキサン,α-ナフチルアミンではテトラリンであってその他少量のジアリルアミンが生成した。それらの結果を既報と比較してその反応機構を考察した。
  • 小松 藤男
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1076-1084
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高沸点タール塩基類の比較的成分の大で,利用価値の大なる留分,キノリン,イソキノリン,キナルジンの分離について,著者は各塩基の硫酸塩のエタノールによる溶解度差を利用して,イソキノリンを分離し得た。特に各塩基類硫酸塩相互による影響を知るために,イソキノリン-キナルジン系硫酸塩,キナルジン-キノリン系硫酸塩,イソキノリン-キノリン系硫酸塩の無水エタノールならびに90%エタノールによる溶解度等温線図を0~70℃ までの範囲で求め,かつまた2成分系飽和曲線を作製し,キノリン,キナルジン,イソキノリン3成分より,低温10℃ で100%エタノールにより,キナルジンを分離後,残2成分はそれら両組成硫酸塩の100%または90%エタノール溶解度等温線図より蒸発,濃縮,冷却によりそれぞれを分離しうることを述べ,また実際にこれらの方法により,イソキノリン59.4%,キノリン19.7%,キナルジン20.9%留分より,100%エタノールを用い,10℃ でキナルジン硫酸塩を除去し,10℃ で残塩基硫酸塩溶液中のイソキノリン硫酸塩飽和まで蒸発し,0℃ に冷却させ,イソキノリン硫酸塩を効果的に回収し,回収されたイソキノリンの収率は99.8%であった。
  • 小松 藤男
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1084-1088
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イソキノリンの空気酸化により得られるイソニコチン酸,ニコチン酸混合物の熱水捕集液から,それぞれを出来るだけ多く回収するため,水における混合両成分の溶解度が測定され,0~100℃ までの等温線図が求められた。これによって,共通イオン効果の影響により,定温における混合系の単一成分の水に対する溶解度は,いずれも1成分系溶解度よりも減少する。したがって,この等温溶解度線を用いると,水溶液中の混合成分の割合によって,イソニコチン酸またはニコチン酸が蒸発飽和および冷却の操作,蒸発のみによる操作あるいは希釈飽和および冷却の操作により回収されうるが,高温における蒸発飽和および冷却の操作が水単位量当りの溶質処理量が非常に大であり,かつまた,晶出率が大であるという点から, 一番有効であり, 一例としてイソニコチン酸, ニコチン酸, 水の組成1.14:1.14:100(重量比) のものにっいては良好条件として,100℃定温蒸発および47℃ 冷却の操作を行ならことであり,イソニコチン酸晶出率71.4%を示した。
  • 西野 豊
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1089-1091
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルを工業的に製造する際に副生する不純物は,すでに数多く知られているが,新たに2種類の不純物の検出定性を行なった。
    定性は不純物を90~95%まで濃縮し, スペクトロメトリー( 赤外線吸収スペクトルおよび質量スペクトル) を活用して,直接,および化学反応(アルカリケン化)させてからの測定を行ない,それによって推定された物質を別に合成して同定した。
    一つはイソ酪酸ビニルでこれは酢酸ビニルの重合に用いられる触媒の, 2,2'-アゾビスイソブチロニトリルからできるイソブチロニトリルに由来すると見られ,もう一つのクロトン酸ビニルは,クロトンアルデヒドより,またはプロピレンと炭酸ガスより,クロトン酸が生成するためと考えられる。
    スペクトロメトリーを利用すれば,目的の物質を精製して元素分析や分子量測定などを行なうのとくらべ,目的の物質が微量かつ多少不純でも迅速に定性分析ができることを示した。
  • 西野 豊
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1092-1095
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルを合成する際に副成する不純物についてはすでに多くの報告がある。しかし,酢酸ビニルを工業的規模で製造し,未反応の酢酸やその他の薬液を循環使用する場合は,今まで微量のため検出し得なかった不純物も蓄積されて来るし,原料ガスの精製により,または他の補助原料からも多種多様の物質の混入する機会がある。
    原料ガス,反応系より出たガスおよび液中より不純物を濃縮し,スペクトロメトリーによって検出定性を行なって来た。今までに検出された約60種の不純物をまとめ,かつ新たに報告するものは定性の方法をも示した。60種の約半分は不飽和炭化水素約10種は塩素化合物で,残りがカルボニル化合物,カルボキシ化合物その他である。
    これらの不純物は,多かれ少なかれ,工業生産上に経済的悪影響を及ぼすから,未知の不純物を早く検出し,定性することは重要であり,それにはスペクトロメトリーが有力な武器となる。
  • 村松 広重, 岩崎 万千雄, 小島 林平
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1096-1099
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    重合開始剤に過硫酸カリウムを用い,懸濁重合して得られたポリトリフルオルクロルエチレンの末端にカルボキシル基が見出されたので赤外線吸収スペクトルによるこのカルボキシル基の定量法を確立した。カルボキシル基はナトリウム塩として5.90μ の吸収をkeyband に用い,baseline 法により定量した。この方法の結果より求めた分子量と,粘度測定より求めた分子量とを比較し満足すべき結果を得た。この末端カルボキシル基の確認および生成機構についても論じた。
  • 高木 行雄, 浅原 照三
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1099-1103
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    プロピレンの56vol%を含むプロピレン-プロパン留分と四塩化炭素とのテロメリゼーションを90℃,アゾビスイソブチロニトリルの存在下に種々の“容量比”(四塩化炭素の容積/オートクレーブの内容積)において行なった。反応生成物からは1,1,1,3-テトラクロルブタン(1:1付加物)および1,1,1,5-テトラクロル-3-メチルヘキサン(n=2テロマー)をおもなテトラクロルアルカンとして単離したが,高級なテトラクロルアルカンの収量はC3H6/CCl4のモル比を大きく,反応圧力を高めても僅少であった。また,開始剤1g当たりのテトラクロルアルカンの収量および四塩化炭素の変化率についても考察した。
  • 田畑 恒夫, 佐藤 勝信, 藤島 勝美, 末広 吉生
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1103-1108
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    田畑恒夫・佐藤勝信・藤島勝美・末広吉生根曲竹の前加水分解の最適条件を知るため該ぺントザンの加水分解速度を酢酸2~8%,塩化カルシウム添加量1~6%,温度100~145℃ の範囲で測定した。この結果,根曲竹ペントザンの加水分解反応には,易加水分解部と難加水分解部の2部分が存在することを認め,易加水分解部ペントザンは全体の70%程度であった。動力学的解析によって酢酸単独液中における加水分解速度式は次式により示される。
    KA=3.40×1011・[H+]1.15exp{-20300/RT} KB=1.17×1011・[H+]1.15exp{-20300/RT}
    塩化カルシウム添加の場合においては次式に示される。
    KA= 5.42×1011・[H+]1.15・C0.5exp{-20300/RT} KB=1.35×1011・[H+]1.15・C0.5 exp{ -20300/RT }
    KA,KBはそれぞれ易および難加水分解部の1次反応速度定数,[H+];酢酸の水素イオン濃度,C;塩化カルシウム添加量(wt%),R;ガス定数(cal/℃.mol),T;絶対温度(°K)
    次にフルフラールの生成率は塩化カルシウムの添加により極めて顕著に増大することを認めた。
  • 岡島 三郎, 菊地 哲也, 加藤 政雄, 秦 英雄, 山田 親治
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1108-1110
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    レーヨン変性剤として用いたアミンが,セルロース・ザンテートと反応し,セルロース・チオウンタンを生成する事実を前報で指摘した。
    そこで,変性剤としてアミンを加えたンーヨンの結晶性を,密度,ラテラルオーダー分布,X線干渉等より検討し,チオウレタン結合量との関連性を追求した。そしてこの種の繊維の非晶化に,このチオウレタン基が大きな役割をはたしていることを明らかにした。
  • 武祐 一郎, 鈴木 豊, 糸原 福雄
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1111-1114
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    加熱によって絶縁紙の誘電的性質が変化する原因を究明するために,所定の条件で加熱した絶縁紙を,水洗およびアルコール・べンゼン混合溶剤で抽出して誘電的性質を測定したところ,加熱後の水洗により,乾紙の高温部(100~120℃)誘電正接におよぼす加熱の影響は非常に少なくなることが認められ,空気中加熱によりセルロースを劣化させた時に高温部の誘電正接が改善されるのは,絶縁紙中に微量含有されている金属イオンが束縛されることが大きな原因であると考えられること,および加熱による吸湿性の低下も原因の一つであることを認めた。
    過酷な加熱によって油浸紙の高温部の誘電的性質が悪くなるが,その原因は加熱によって生成し,アルコール・ベンゼン混合溶剤にも,また,水にも溶解する物質によるものであることを明らかにした。
  • 武祐 一郎, 糸原 福雄
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1115-1118
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    赤松クラフトパルプからリグニンおよびヘミセルロース含有量の異なる3種の試料を調製し,空気中150℃ で加熱した時の化学的性質の変化について検討した。1)油浸紙の誘電的性質に悪影響を与えるアルコール・ベンゼン抽出分が,加熱によって増加するのは,主としてリグニンおよびヘミセルロースの変質によるものであることを確認し,この場台リグニンの方がヘミセルロースよりも加熱の初期において分解し易く,加熱により増加したアルコール・ベンゼン抽出分の中には,リグニンの変質によるものの方が多いことが認められた。2)リグニンはセルロースまたはヘミセルロースの熱分解を促進するような挙動を示し,またヘミセルロースの少ないパルプは,多いパルプより加熱の初期における分解速度が遅いようである。
  • 福本 修
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1118-1121
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    亜硫酸アンモニウムと,亜硝酸アンモニウムの混合溶液に亜硫酸ガスを吸収させるヒドロキシルアミンジスルホン酸アンモニウム製造の連続反応を槽式,および向流方式について検討した。亜硫酸ガスの吸収速度および反応速度はかなり速やかであり, また反応の終点は回分式と同様pH2~3がよく, また亜硫酸アンモニウムと亜硝酸アンモニウムのモル比がほぼ1:2のとき収率がよい。
    ヒドロキシルアミンジスルホン酸塩の加水分解が反応中に並行して起ると収率が低下するので,反応時間をできるだけ短縮したほうがよい。
  • 秦 弘, 岡田 清, 岡部 晋, 有冨 勇美
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1121-1124
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ニュウランド触媒により液相法で合成したアクリロニトリル中には,各種の不純物を含有しており,合成繊維原料として使用するにはこれらを完全に除去する必要がある。著者らはクロム酸酸化で不純物を除去し得るのではないかと考え,各種不純物について検討したところ,不飽和化合物が酸化され難いことを知った。そこで,水添加共沸蒸留でこれら不純物の大部分を除き,引きつづきクロム酸処理したところ,容易に純ANを得ることができた。
  • 松林 寛治
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1125-1130
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ビニロンの染色性を改良するため,まずマンニッヒ反応によるアミノアルデヒドの合成条件について検討し,つぎにえられたアミノピバルデヒド類による熱処理ポリビニルアルコール繊維のアセタール化,ポリビニルアルコールのこれらのアルデヒドによるアミノアセタール化物とポリビニルアルコールとの混合紡糸および熱処理,ならびにこれらの繊維のホルマール化を行なった結果,ほぼ満足すべき動物質化ビニロンをうることができた。イソブチルアルデヒドからのアミノピバルデヒド類の合成は遊離のアミンを用いた場合高級であるほど収率が高い。第3級アミノピバルデヒドが合成容易でまた安定である。低級アミンではジエチルアミンの場合は遊離のアミンを用いた方がその塩を用いるよりも,逆にジメチルアミンの場合はその塩を用いた方が収率が高い。アミノピバルデヒド類はβ-アミノブチルアルデヒド類よりアセタール化の反応性がいくぶん劣っているが反応液の着色がなく,これらの傾向はアミノピバルデヒド類ではα-位の水素がすべてアルキル基で置換されていることによると考えられる。
  • 高橋 正夫
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1130-1132
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルコールを凝固浴としてアクリロニトリル・アクリル酸メチル共重合体のジメチルホルムアミドあるいはジメチルスルホキシド濃厚溶液を紡糸する場合の繊維形成の状況をしらべた。
    凝固価によって示される凝固力が小さくなるほど,原液の可紡性は小さくなるが,凝固力が著しく小さいと可紡性は逆に大きくなる。形成された糸条の緻密度は凝固力が小さいほど大きくなる。
  • 高橋 正夫
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1132-1134
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ニトロメタンにアセトニトリルを20vol%混合した系は半透明不安定溶液を形成する。マロノニトリルにアセトニトリルを20~60vol%混合した系は安定な溶液を形成する。ジメチルスルホンにアセトニトリルを加えると溶解温度が低下する。コハク酸イミドにアセトニトリルを60~80vol%混合した系は溶液を形成する。以上4種の系は混合によって両単独溶媒よりも溶解力が向上したものである。
    γ-ブチロラクトン,ジメチルスルホキシド,ジメチルホルムアミド,エチレンカルボネート,エチレンシアンヒドリン,無水コハク酸,無水マレイン酸,α-ピロリドンに対してはアセトニトリルを相当多量に混合しても溶解力を示すような混合系を形成する。
  • 高橋 正夫
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1134-1136
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ニトロメタンにマロノニトリル, ジメチルスルホキシドなどを約20vol%加えるだけで常温においても安定な重合体溶が液形成される。両単独成分の溶解力が乏しいが混合によって両成分よりも溶解性がよくなるようなニトロメタン系混合媒溶として,フェノール,無水マレイン酸,無水コハク酸,α-ピロリドン,プロピレンカルボネートなどの混合成分が挙げられる。
    ジジメチルホルムアミドは単独でも最も溶解力がすぐれた溶媒の一つであるから,この系の混合溶媒の検討の目的は,混合によって溶解力を向上させるということよりもむしろ溶液の粘度の低下あるいは粘度安定性の向上などにある。このような見地から検討した結果として,単独でも重合体に対する若干の相互作用が認められる化合物(無水マレイン酸,無水コハク酸)や,極性の大きい化合物(ピロガロール,ジニトロフェノール,ニトロフェノール),ジアミン類,ジオキサンなどがDMFと等容量混合までの組成で溶解力を示すことが見出された。
    γ-ブチロラクトン,マロノニトリルおよびホルムアミドについても若干の混合系を検討した。
  • 東出 福司
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1137-1139
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    スチレンを幹とするメタクリル酸イソブチルグラフト共重合体をイソプロピル化ポリスチレンのヒドロペルオキシドをもとにして合成した。その0.05%ベンゼン溶液で単分子膜をつくり,F-A曲線からグラフト共重合体の極限面積を測定した。
    極限面積はポリスチレンが6Å2,イソプロピル化ポリスチレンが7.6Å2,そのヒドロペルオキシドが12Å2,グラフト共重合体が18Å2と順次に増加した。
    前三者の重合体の基本分子当りの極限面積は分子量により変化しないので,これらの極限面積の増加は分子構造の変化から生じたものと考えられる。グラフト共重合体の極限面積が大きいのは,分岐したポリメタクリル酸イソブチルの極限面積が大きいからである(40Å2)。
    なおポリスチレンにメタクリル酸ベンジルをグラフトさせた共重合体の極限面積も,グラフト物の比較のため同時に測定した。
  • 児玉 宏, 新 祐治
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1140-1145
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エーテルあるいはアミンの存在下で三塩化チタン-トリエチルアルミニウム系を触媒としてn-ヘプタン中でプロピレンの重合を行ない,これら添加剤の種類と添加量を変えて重合反応および得られるポリプロピレンの性質に及ぼす添加剤の影響を検討し,次の結果を得た。
    (1)エーテルあるいはアミンの添加量がトリエチルアルミニウムに対して1mol当量以下では重合が起るが,一般に1mol当量以上では重合反応は起らない。
    (2)初期重合速度はエーテルあるいはアミンの添加によって著しく速くなる。この効果はエーテルよりもアミンを添加する場合に大きい。
    (3)エーテルあるいはアミンのいずれを添加しても得られるポリプロピレンの分子量は一般に高くなる。
    (4)エーテルあるいはアミンの種類と添加量を適当に選ぶことによって比重および融点の高いポリプロピレンを得ることができる。
  • 西出 元彦, 世良 光孝
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1145-1148
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチレンジアミンと1,4-ブタンジオール. ビスクロル炭酸エステルとの重縮合による6,4-ポリウレタンの均一性を向上する目的で,種々の重合条件で得られたポリウレタンの分子量分布を求め,両者の間の関係について検討した。その結果,縮合剤(アルカリ)の増加および加温処理により,分布は低重合部から逐次高重合部に移って平均分子量の大きくなることがわかった。また溶剤を多く使用し,効果的にかきまぜて反応をより均一に行なうと,分布は鋭くなって重合物の均一性が増すことも明らかとなった。これらの知見から重合条件の適当な選定によって分子量分布の調節が可能になり,また重縮合ポリウレタンの欠点といわれた分布の幅もある程度狭く出来ることがわかった。
  • 西出 元彦, 世良 光孝
    1961 年 64 巻 6 号 p. 1148-1150
    発行日: 1961/06/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチレンジアミンと1,4-ブタンジオール.ビスクロル炭酸エステルの重縮合で得た6,4-ポリウレタンの空気中における熱劣化の状態を知るため,熱天秤を用いて熱分解性を検討した。その結果,分解は250℃ 前後よりすみやかに進んで300℃ 付近に達し,そこでわん曲点を生じて速度が落ち,600℃ 付近まで続いた。平均分子量が大きくなるに伴なって熱分解速度は小さくなり,組成の均一な場合は分解曲線がなめらかになることが認められた。またジアミンを塩酸塩としないで,そのまま重縮合して得たものでは,熱分解がやや複雑になるので,重合物は多少不均一であると考えられるが,熱安定性はよくなっている。なお熱分解の活性化エネルギーを求めて31kcal/molを得た。
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