高分子水溶液を被洗布に塗布し,その乾燥後に水洗浄だけを行なうことにより,通常の洗浄方法によるよりも遙かに高い洗浄性が得られるとこを認め,これを“高分子塗布洗浄法”(仮称)として,その諸現象を検討して来たが,前報までには陰イオン界面活性剤を主としたので,本報には高分子と非イオン界面活性剤との混合液を塗布した場合の基礎条件について吟味し,前報までの諸結果との比較をした。
非イオン界面活性剤だけを高分子なしで被洗布へ塗布した場合には,この方法による洗浄率は,界面活性剤のHLB13~15の範囲に極大値を示すが,カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)との混合液を使用すると,逆にそのHLB範囲のものは洗浄率の極小値を示す。メチルセルロース(MC)との混合では,界面活性剤のHLBの増加とともに洗浄率はほぼ低下をし,また全般に高分子塗布の著効は現われない。
この高分子と界面活性剤との混合塗布後の水洗浄率を,高分子だけの塗布による場合よりも高めるのに必要な界面活性剤の量は,CMCとの混合の際にはごく僅かであり,陰イオン界面活性剤を混合した時に現われたような負効果は認められず,しかも20℃ での低温洗浄率をかなり増進させる。
ところがMCや,ポリ酢酸ビニルアルコール(PVA-Ac)などの非電解質高分子との混合では,非イオン界面活性剤の混合量を増すと,塗布後の水洗浄率はかなり上昇するが,CMCとの場合には及ばず,またそれらの洗浄率は,界面活性剤だけを塗布したものとの間に大差がない。したがって,これらの非イオン性の高分子と非イオン界面活性剤との混合塗布からは著効を期待しにくい。
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