工業化学雑誌
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64 巻, 9 号
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  • 橋本 栄久, 伊藤 三喜雄
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1515-1518
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱分解反応やその他の固体反応の, 特に速度論的解析を行なうために, 研究室で自作の可能な, 便利な熱天秤を試作した。この目的のためには,微量の試料でよいこと,試料の出し入れが容易であること,恒温測定のために初期温度の立上りが早いこと,気相を自由た選べ,圧力の急変等により生ずる振動が小さくて,減衰の早いこと,等が要求され,また必然的に生じる装置内の対流による振動も小さいことが望ましい。そのためにタングステン線のよじり秤を利用し,差動変圧器によって,質量変化を電気的に取出し,自記式とした。安定に測定できるように,感度をかなり抑制して使用しても0.05mgの質量変化は明らかに記録され,その結果,通常の熱分解反応の検討には試料10mg以内の使用で十分である。
  • 野田 稲吉, 稲垣 道夫, 藤沢 信雄
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1518-1523
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石油コークス,ピッチコークスおよびカーボンブラック6種を,試験用黒鉛化炉中で1,500~3,400℃の種々の温度に加熱処理することによる結晶子の成長を,X線回折法によって測定した。高純度ケイ素粉末を内部標準物質として試料に混入し,(002),(004),(110),(112)回折線図形まりおのおのLc(002),Lc(004),La,L112を求めた。結晶子のc軸方向の厚みを示すLc(002)とLc(004)では常に前者の方が大きく,これは結晶子内の炭素六方網面体(graphite-like layers)の積み重なりに不均一があることに原因しているとして説明しえた。コークス類のLcは2,700℃ 付近から成長がゆるやかとなって, 400Å前後となり, 3次元結晶の大きさを示す(112)回折線は, 1,800℃付近から認められ, 3,000℃以上では160Å前後となる。カーボンブラック類では結晶子の成長がその粒子の大きさに強く支配されている。粒子の大きいサーマルブラック,ランプブラックでは他のブラックにくらべて結晶子は大きく,3,000℃ 以上ではL112が55Å前後であるが,これ外以のブラックでは(112)回折線を認めることができなかった。
  • 野田 稲吉, 稲垣 道夫, 藤沢 信雄, 伊藤 裕介
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1523-1527
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ある種の人造黒鉛製品,たとえば電刷子など異種原料を調合,製造したものの(00l)回折線図形は,これら異種原料黒鉛化物の回折線図形が合成されたと考えられる,非対称的な図形を観察することができる。よって,筆者らはコークス系原料およびブラック系原料の単味黒鉛化物を既知の割合に混合し,その混合物の(004)回折線図形(混合図形)を求め,それから混合比および使用原料を推知しうるかどうかを知ろうとした。
    まず2種の原料を粉末で混合した試料について,その混合図形がコークスとブラックおのおのの図形に分離でき,その強度比と混合比が,ある対応をすると考えられることを知った。次に粉末状混合物を樹脂で成形し,強度に対するコークス粒子の配向の影響を補正しうるようにした。その結果強度としてピーク高さを取れば,強度比-混合比曲線は使用ブラックごとの曲線に,強度として図形の面積をとれば直線になることを知った。
  • 岡田 純
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1527-1529
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    多くの人造黒鉛材(押出成形品)より,押出方向(x)とそれに垂直な方向(r)に試片を切り出し,熱膨張係数,電気抵抗,弾性率,曲げ強さを測定して,その異方比(αr/αx,ρr/ρx,Ex/Er,Sx/Sr)を求め,それらの間の相関をしらべだ。その結果,αr/αxと他の三者との間には,全く相関関係が認められず,三者の間には相関関係が認められた。従来,人造黒鉛の異方性は,結晶子の配向の異方性によるものと, 一般には考えられてきたが,これは熱膨張係数の場合には妥当であるが,抵抗,弾性率,曲げ強さの場合には妥当でなく,これらは他の要因(巨視的組織の異方性)によって大きく支配されていると考えられる。
  • 大門 信利, 伊藤 洋治, 平 尾穂
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1530-1533
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成雲母の製造については多くの研究がある。しかしいずれの場合においても,得られるものは各種の配向を有する大小種々なる結晶の塊であった。当研究にては劈開面が互に平行ないわゆるbook様の結晶の育成が目的である。種結晶を使用しStockbargerの方法を応用した。種結晶としてはフッ素金雲母を用い,その劈開面を揃えて白金ルツボの下部に側壁に平行に入れる。その上部に原料を充填し,ルツボを閉じてこれを炉の中に挿入し温度を上昇させて,その最高温度を1400℃ に保持し,原料の全部とこれに接する種結晶の一部分を溶融した後,ルツボを引下げて徐冷した。引下げはサイホンにより水槽中の水を流出して行なった。次の場合にbook様の結晶を得た。1)原料としてはフッ素金雲母粉末またはその塊,フッ素金雲母の化学組成を有する化学薬品の混合物,またはガラスを用いた,2)原料に少量のPbF2を混合したものを用いた,3)温度勾配は60℃/cmにして柱状ルツボの一辺が10mm,5mmではその引下速度はそれぞれ0.4mm/hr,1.7mm/hrであった。
  • 大門 信利
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1533-1535
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    溶融体より単結晶を育成させる方法の一つとしてStockbarger法がある。
    この方法で単結晶をうるには,ルツボ内の等温面の移動速度を結晶の成長速度に等しくせねばならない。この等温面は水平である事が望ましいが,実際にはルツボの中心部と壁との間には温度差があるのが通例である。ルツボの大きさを変えた場合にもこの温度差を一定に保つためのルツボ引下速度と,ルツボ半径との関係を非定常状態における熱伝導に関するGroberの図解法によって求め,次の式を得た。v・Ra=k(1≦a≦2),vは引下速度,Rはルツボの半径,kは定数。金属のような熱伝導度の大なるものでは1≒aであるから,引下速度はルツボの半径に反比例する。このことは,ルツボの半径が大になると引下速度を小にしなければならない事実とよく一致している。また,雲母,T1Br-T1Iのような熱伝導度の小なるものではa≒2であるから,引下速度はほぼ半径の2乗に反比例するものであって,実験事実とよく一致している。
  • 野田 稲吉, 中村 孝夫, 加藤 鉅聖, 丹羽 嘉孝, 住吉 義博
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1536-1539
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成雲母小結晶の利用法として,フッ素金雲母を加熱加圧して集成雲母成形板の製作を試みた。試料は水熱処理して薄い結晶片として懸濁液をつくり,金網でこして薄板とし,黒鉛型を用いて加熱加圧した。フッ素金雲母にバリウム・リシウム雲母,ホウ素金雲母を結合材として混合すると,可撓性のある良好な成形板が得られた。得られた成形板の打ち抜き加工性はよいが,強度はやや不十分であった。一般的に成形温度を高くし,成形圧を増加すると強度の大きい成形板が得られた。結合雲母を使用せず,フッ素金雲母のみを加熱加圧する場合は,製造条件が微妙で,強度の十分な成形板は得られなかった。
  • 住吉 義博, 野田 稲吉
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1539-1541
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成フヅ素金雲母に結合用としてホウ素金雲母を混ぜ,加熱加圧して集成雲母成形板を得る方法で,成形温度,成形圧力,混合率を変え最も強度のある成形板を得られる条件を求めるため,3×3ラテン方格法で試料をつくり,各因子の影響を調べた。曲げ強度については温度が強く影響し,温度を高くすると強度も増加した。成形圧力,混合率は有意差が見出せなかった。この条件内では1,200℃,75kg/cm2,30%で最も強度が大きくなり,強度推定値は838kg/cm2であった。弾性係数には温度,混合率が影響し,温度は高くなるほど混合率は少ないほど弾性係数は大きい。成形圧力は有意差がなかった。1,200℃,50kg/cm2,20%で弾性係数は最も大きく,その推定値は9.13×109dyne/cm2であった。嵩比重については各因子とも有意差は見出せなかった。成形板中では雲母結晶片は一方向に並んでいるため,極めて異方性が強く現われ,厚みの方向と長さの方向では弾性係数にして10倍の差があった。
  • 斎藤 肇, 雨宮 義英
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1541-1543
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アーベゾナイト系フッ素石綿(Na3Mg4FeIIISi8O22F2)母岩を合成した。この母岩を形成するガラス質,および結晶へき開間隙中に介在するガラス質を水熱下に溶解除去して,柔軟な細繊維をうるための実験を行なった。リーベカイト系母岩の水熱処理結果から,処理温度は250℃を,処理液は水,カセイソーダ,塩酸を用いた。この結果,水処理では長時間でも好結果はえがたく,カセイソーダ溶液処理では2~4規定,16時間処理が最適条件で,10~15μ程度の細繊維がえられ,これより苛酷な条件下では結晶の一部は崩解した。塩酸溶液では2規定でも結晶は崩解し,それ以下の濃度では処理効果は小さかった。カセイソーダ溶液処理後,塩酸溶液で再処理するときは,1規定塩酸処理でも結晶は崩解し,塩酸の濃度が小さいときは効果は少なかった。なお結晶が崩解するときは,滑石およびフッ化マグネシウムが生成するようであった。
  • 伊藤 要, 高橋 武彦
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1543-1548
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成炭酸マンガン空気中で加熱すると分解反応と同時に酸化反応も起り,種々な酸化度のマンガン酸化物を生成する。このマンガン酸化物の酸化度に及ぼす二,三の要素について検討し次のごとき結果を得た。
    (1)合成炭酸マンガンを空気中において一定温度で加熱した場合にマンガン酸化物の酸化度は一定加熱時間では300~400℃ の温度範囲で極大となり,この極大になる温度は加熱時間の長くなるにつれて低温側(380℃ →330℃)に移りかつ酸化度が高くなった。400~450℃における生成物にはα-Mn2O3(bixbyite)の結晶の生成がX線的に認められた。
    (2)結晶のよく発達したα-Mn2O3は空気中で更に加熱してもこれ以上酸化されにくかった。すなわちα-Mn2O3の結晶の生成はマンガン酸化物のそれ以上の酸化を抑制するものと考えられる。
    (3)合成炭酸マンガンを空気中で適当な温度に加熱して得たマンガン酸化物は,加熱時に添加剤を加えない場合にはMnO1.900となり,水の添加によってMnO1.930となることを見出した。またカセイソーダを添加した場合にはMnO1.945となった。これらのマンガン酸化物はγ-MnO2に類似した不定結晶型であった。
    (4)炭酸マンガンを空気との接触を十分にして徐々に加熱した場合最初に生成するマンガン酸化物は不定型二酸化マンガンであろうと思われる。しかし空気との接触が不十分の場合には二酸化マンガンの生成なしにα-Mn2O3が生成する場合もあるであろうことを推定した。
  • 村木 一郎, 鎌田 壮一, 岡島 幸雄
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1548-1552
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    電解二酸化マンガンを減極剤とする乾電池の起電力を安定させるため,電解二酸化マンガンの化学処理に関する研究をおこなった。
    1.未処理試料を温水で十分と思われる程度に処理した場合でも,試料中のSO42-はその65~70%除去されるにすぎないことを認めた。除去されたSO42-は遊離H2SO4として確認された。
    2.温水処理後の試料をNaOH,Na2CO3,NaHCO3,NH4OH,(NH4)2CO3およびNH4OAcなどのアルカリ剤で処理した結果,試料中のSO42-か含有率の少なくなること,および極電位の劣化率の小さくなる効果はNaHCO3,(NH4)2CO3,NH4OH,およびNH4OAcなどの弱アルカリ剤が大きく,NaOH,およびNa2CO3などの強アルカリは解膠作用が大きいため処理効果は若干劣ることを認めた。
    3.NaHCO3の種々の濃度溶液を用いて試料中のSO42-の挙動を検討した結果,NaHCO3の濃度が高くなるにしたがって試料中SO42-の含有率は小さくなり,そのもようは対数曲線で示されることが認められた。
    4.電解二酸化マンガンの化学処理条件としては,未処理物を温水洗後,NaHCO35~10%溶液,および解膠防止剤としてNH4Cl2~5%溶液を用いて,温度60~70℃,0.5~1.0時間でおこなえば満足すべき結果が得られる。
  • 山田 哲三, 藤田 英夫
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1553-1557
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    電力送電に用いる高電圧紙ケーブル用の絶縁油には,高電界下でガスを発生しないことが要求され,いわゆる“ガス試験”によって特性が調べられて来たけれども, このガス試験法の再現性が悪くこれまで研究に多大の支障を与えていた。本報はかかるガス試験法自体の再現性に影響する因子を究めたもので,従来注目されなかった実験操作上の因子のうち,再現性を極めて悪くする因子i)前処理としての脱ガス程度,ii)これに次ぐ水素の溶解平衡,iii)電極部の垂直性保持,iv)試験中に生じるガス圧変化,を見出してその結果への影響度を明らかにした。そしてこの結果に基づいてよい再現性の得られるガス試験法の標準操作法を確立した。
  • 藤田 英夫
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1557-1561
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報で確立された“ガス試験”の標準操作法によって,ケーブル絶縁油の電界下のガス吸収性と油の化学構造との関係を調べた。シリカゲルクロマトグラフィーで得たナフテン・パラフィン混合物に単環芳香族留分,複環芳香族留分をそれぞれ一定重量比で混ぜた油の特性と,その電界下のガス吸収特性との関係から次のことが明らかとなった。
    (i)電界下での油のガス吸収量は,単環または複環芳香族分子の重量含有比にそれぞれ比例するが,同一重量比では単環より複環芳香族分子を含む方が多くの水素ガスを吸収する。
    (ii)油の特性値,すなわち屈折率,比分散,屈折截点や構造群分析値,すなわちKurtzの%CA,n-d-M法の%CA,RA等とガス吸収量とは,油の芳香族性が単環または複環芳香族分子のいずれに帰因しようとも同一の直線関係があって,従来よりも鮮やかな比例関係が得られた。特にこれまで提案されている比分散,フルフラール数,ヨウ素価等の特性よりも屈折率やn-d-M法の%CAの方がよいことがわかった。
  • 森川 清, 野崎 文男
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1562-1567
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    担体付ニッケル触媒中ニッケルと担体物質との結合状態については既に二,三の報告があるが,しかし系統的な研究は少ない。本報においては担体付ニッケル触媒中ニッケルの結合状態とその選択的接触能との関係を検討するための前段階として,担体物質に主としてシリカとアルミナとを選んで,種々の調製法によってえた触媒試料について,水素による還元性状,希塩酸による酸化ニッケルの溶解性状,一酸化炭素によるニッケルカルボニルの生成性状など化学的な手段によって触媒中ニッケルと担体物質との結合状態を調べた。その結果,担体付ニッケル触媒中のニッケルには担体物質と化学的に結合したものと遊離状態にあるものと少なくとも2種類があって,触媒の調製法あるいは担体物質の相違によってこの割合が違ってくること,また一般にアルミナ担体はシリカ担体に比してニッケルと化学的に結合し易いが,このアルミナにあらかじめ酸化モリブデンあるいはシリカを添加しておくとニッケルが遊離状態になってくること,および共沈法でえたニッケルーアルミナ触媒試料中の酸化ニッケルがアルミナと化学的に結合する温度は300~450℃ の範囲であることなどがわかった。
  • 野崎 文男, 森川 清
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1568-1573
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報で担体付ニッケル触媒中ニッケルの結合状態を化学的方法で調べ,担体物質と化学的に結合したニッケルと遊離のものとが存在することを報告した。本報においてはこの点をX線回折法,赤外線吸収スペクトル法および示差熱分析法などの手段によって確認し,その結合状態をさらに検証しようと試みた。そこで担体物質および触媒調製法の異なる種々の触媒粉末試料(500℃,2hr焼成処理をした)につきX線回折および赤外線吸収スペクトルの測定を行ない,さらに試料の焼成温度の高低によるX線回折図の変化を検討し,また未焼成粉末試料について示差熱分析を行なった。その結果α-アルミナ上の酸化ニッケルは明瞭な結晶構造を有するが,シリカおよびアルミナなどゲル状態から出発した表面積の大きい担体上に分散した酸化ニッケルは,無定形の微細構造であること,N-S-水熱処理触媒およびN-A-共沈触媒においては,特殊な化合形態が生成すること,およびN-A-共沈触媒中の酸化ニッケルは500℃以上に加熱焼成すると,NiAl2O4のスピネルを生成することがわかった。なお赤外線吸収スペクトルから,N-S-水熱処理触媒には触媒の構成成分であるNiOおよびSiO2には認められない幾つかの特性吸収帯が現れることなどを観測した。
  • 大平 和夫, 篠田 清徳, 市毛 偉喜
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1574-1576
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジクロルアセトアルデヒドを水酸化ナトリウムで処理すると,反応の進行度に無関係に3molのアルカリを消費し,2molの塩素イオンを遊離するという事実をみいだした。分解反応生成物はグリコール酸のナトリウム塩であることを赤外線吸収およびp-ニトロベンジルエステルをつくり確認した。反応は
    CHCl2CHO+3NaOH=CH2(OH)COONa+2NaCl+H2O
    によって進行すると考えられる。
    更に,反応速度論的な検討を行なった結果,分解反応は濃度が薄い場合はアルカリに関して2次で,濃くなると1次となり,それぞれ反応速度定数k2=3.41×1019e-24,800/RT,k1=1.47×1019e-23,700/RT(l/mol・hr)を得た。
  • 中島 磯吉, 外山 修之
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1577-1580
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    3種のオキシステアリン酸メチルの流動パラフィン溶液の耐荷重性を曽田式四球形摩擦試験機で測定し,ステアリン酸メチルおよびオレイン酸メチルと比較した。一般にオキシステアリン酸メチルはステアリン酸メチルにくらべて耐圧性がよく,これは金属面で吸着層をつくっている分子中にある水酸基が分子間水素結合をつくり,物理的強度の大きい構造をつくるためと考えた。さらにそれら遊離脂肪酸の低濃度流動パラフィン溶液の低荷重領域での摩耗こん(痕)を測定し,直径増大率を吸着層の物理的耐圧強度判定の指数に使った。DL-10-オキシステアリン酸およびDL-12-オキシステアリン酸は予想された耐圧性向上効果がみとめられたが,D-12-オキシステアリン酸はステアリン酸とほとんど差がない。
  • 楢崎 英男, 鈴木 洋
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1580-1583
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    N-n-ドデシルピリジニウムブロミドに同系のN位およびα 位に長鎖親油基をもつもの(N-n-オクタデシルおよびNn-ドデシル-α-トリデシル・ピリジニウムブロミド等)を少量(1/15~1/200mol%)添加した場合の諸性質の変化を検討した。
    混合物のC.M.C.は通常2成分の相加平均より低い曲線を描くが,2成分中の低い方のC.M.C.より低くなることはない。表面張力の特徴は添加剤のそれに近づくが,C.M.C.は表面張力対濃度曲線の最小値を示す濃度とは一致しなかった。浸透性では浸透性のよい添加剤を加えると相乗効果を示すが,起泡,乳化性では大きな変化はみられなかった。ベンゼンに対する可溶化力は0.1mol/l以上の濃度で,2-エチルヘキサノールに対しては0.1mol/l付近のみに大きな相乗効果がみられた。n-ヘプタンに対しては効果はなかった。
  • 重松 弘, 鈴木 政二, 石井 義郎
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1583-1588
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    活性水素化合物とプロピレンオキシドとの反応生成物は,オキシラン環の開裂位置により,異性体を生ずる。この異性体は, 反応基である水酸基に, 1 級2 級の差があり, 次段階の反応速度に影響するため, 多モル付加体の反応は複雑になる。著者らは,この反応の初期段階の解析を行なった。
    NaOH触媒を用い,アルコールとプロピレンオキシドとを反応させ,得られた生成物を精留して,付加モル数分布を求め,これからWeibull分布式を用いて,分布定数cを計算した。1級アルコールではc<1,2級アルコールではc>1となった。また,赤外吸収スペクトルにより,生成物の構造を調べた。つぎに,各種アルコールとプロピレンオキシドとの反応速度定数を求め,アルコールの鎖長,構造,水酸基の級種によるちがいを検討した。これらの結果から,アルコールと触媒から錯化合物生成の平衡定数を推定し,またオキシラン環の開裂位置のちがいを説明した。
  • 大城 芳樹, 落合 正周, 小森 三郎
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1588-1592
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    N,N-ビス(2-オキシエチル)アルキルアミンが低温無触媒下で酸化エチレンと反応し,N,N-ビス(ポリオキシエチレン)アルキルアミンになることから,OH基への酸化エチレン付加反応に塩基性窒素原子が低温で触媒作用を示すものと考えられる。そこで,塩基性の異なる9種の3級アミンを触媒として用い,9種の飽和,不飽和アルコールと酸化エチレンとの反応を検討した。
    1)3級アミンの塩基性が強いほど触媒能力は大であるが,N-置換基によって大きく左右される。2)アルコールのアルキル基の大なるほど見かけの反応速度は減少し,同一炭素数のものについては飽和よりも不飽和の方が反応速度は大であった。3)塩基性の異なる触媒を用いても,いずれも80℃に反応速度の最大点があった。4)アルコール1molに対し,触媒0.3molまでは急速に反応速度が増加するが,0.5mol以上ではほとんど一定の値になった。5)低温反応(70~90℃)では3級アミンを触媒とする方がKOHを触媒とするよりも効果的であった。
  • 小森 三郎, 川原 義朗, 大塚 勝利, 伊藤 信治
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1592-1598
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキルアミン(炭素数9~18)と尿素より長鎖アルキル尿素を合成して,その時の反応条件を検討した。モルアルキル尿素の合成には, アルキルアミンの塩酸塩と,4~10倍モル量の尿素とを水溶液中で反応させる方法がよく, ジアルキル尿素の合成には尿素に対してアルキルアミンを2倍モル量用いて直接反応させる方法が良好であった。これらアルキル尿素類は水にほとんど溶けないので,酸化エチレンを付加させて新しい非イオン表面活性剤を合成して,それらの界面活性能を測定した。
  • 船久保 英一, 永井 利一
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1598-1608
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    吸着等温式q=f(c)がf''(c)<0の非直線型系のクロマトグラフィーにおいて,2成分混合試料溶液の注入量v0と,それを分別するのに必要な最少の吸着剤量Wmとの関係を検討して次式を得た。
    Wm/v0=m/1/2Rg-1/1Rgただし,1Rg,2Rg(1Rg>2Rg)は,それぞれ成分1および2の成長率で,mは単位液量を保持する吸着剤量である。本式は,試料溶液をカラムに注入する(成長)操作に重点を置き,展開操作を簡略にすることによって,比較的少ない吸着剤量で大量の試料を処理する方式のクロマトグラフィーに適用出来,この方式は,1Rg,2Rgの比率が大きく吸着容量の大きな系ほど有効である。
    ピクラートのアルミナクロマトグラフィーは,2成分混合系のクロマトグラフィーとして取扱うことが出来,本式を適用して,その操作条件選定の目安をつけ得ることを実験的に確認した。
  • 永井 利一, 船久保 英一
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1609-1616
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    成分溶媒が,ヘキサン,ベンゼン,ジオキサン,エタノールの2成分混合溶媒系で,アントラセンのアルミナカラムにおける吸着帯移動率(R)を混合溶媒組成を変化させて測定し,一方,混合溶媒系における溶質の吸着量が,成分溶媒単独系における吸着量を直線的結合することにより,得られるものとして導いた計算R値と比較した。その結果,上記の系ではいずれも,混合溶媒系における移動率は,強吸着性溶媒系のそれに片寄り,一見,各成分溶媒単独系におけるR値の平均的な値をもつと見なされるヘキサン- ベンゼン系においても, 実測値は計算値を上回ることがわかった。また,ジオキサンやエタノールを含む系では,純粋な一溶質成分であるアントラセン吸着帯が,あたかも2成分溶質系のごとく,カラム内で移動率および螢光色調を異にする2種の吸着帯に分割するいわゆる「Double Zoning現象」が認められた。なお,溶媒の展開作用と溶解度や,極性の大きさとの序列の間には必ずしも平行関係のないことがわかった。これらの事実から,混合溶媒系のクロマトグラフィーでは成分溶媒の吸着を無視出来ないことを述べた。ぜ一では,溶媒の吸着を無視することが出来ないことを推論した。
  • 船久保 英一, 谷口 宏
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1617-1620
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    従来,石油系製品中の炭化水素成分タイプ分析法として使用されて来たFIA法をコールタール系軽油の成分タイプ分析に使用するために諸条件を詳細に検討し,飽和炭化水素5%以下0.2%までの試料油の分析に適用しうるように改良した。この改良法は微量の飽和炭化水素のみならずオレフィンおよび芳香族炭化水素をも同時に定量することができる。さらに,従来のKattwinke1法と比較して本改良法の精度を吟味してその優秀性を確認し,次いで,本邦のタール軽油製品を分析してその適用例を示した。
  • 谷口 宏, 船久保 英一, 岸野 弘
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1620-1623
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    置換展開クロマトグラフィーによる液状炭化水素混合物の分離および分析法の成否は,吸着剤としてのシリカゲルの性能に左右されるが,われわれは,分離性能以外にシリカゲルの持つオレフィン重合変質性もまた重要であることを認め,その測定法を定め,その原因について検討した。
    重合性能は,シリカゲルと接触させたジイソブチレンの屈折率変化より測定した。シリカゲルの重合性は,主としてそれの酸性度によることを認めた。
    分離性は,イソオクタン-トルエン混合液を完全分離するに必要なシリカゲルの重量によって評価する方法を採った。
  • 上野 隆三
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1624-1625
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石炭酸カリウム塩と炭酸ガスとのKolbe-Schmitt反応においてp-オキシ安息香酸がモノおよびジカリウム塩として生成する。p-オキシ安息香酸ジカリウム塩は熱に対して比較的安定であるが,モノカリウム塩は分解する。p-オキシ安息香酸の生成反応におけるモノカリウム塩の動向を明らかにするため,炭酸ガス加圧下におけるp-オキシ安息香酸モノカリウム塩の熱分解について検討を行なった。p-オキシ安息香酸モノカリウム塩の分解は200℃より始まり,220~230℃ではp-オキシ安息香酸の約50%が分解する。更に炭酸ガスの圧力が高いほど分解が進み,分解生成物としてサリチル酸が得られた。また水分の存在はp-オキシ安息香酸モノカリウム塩の分解を促進する。
  • 谷山 雅一, 長岡 武, 高田 利宏, 岡内 工
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1626-1628
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    α-アミノ酢酸,γ-アミノ酪酸,ε-アミノカプロン酸またはその誘導体とヒドラジンヒドラートの反応により,下式に示すような4-アミノ-3,5-ビス(ω-アミノアルキル)-1,2,4-トリアゾールを収率よく合成した。
    (I)(n=1,3,5)(I)とフェニルイソシアナート,安息香酸エチルエステルの反応により,それぞれジフェニル尿素-,ジベンゾイル-誘導体が好収率で得られ対応するトリ-置換体が得られないことから,(I)の3つのアミノ基のうち,3,5位の2つのω-アミノ基に比して,トリアゾール核に直結する4-アミノ基は遙かに反応性が乏しいことが明らかとなり,(I)が新しい2官能性物質(ジアミン)として縮合系線状高分子の合成原料となり得ることがわかった。
  • 桑田 勉, 熊野谿 従, 風間 清治
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1629-1633
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    天然漆の増量剤として用いうるウルシオール関連物質を合成する目的で, カテコール核に長鎖不飽和基を付加する反応について検討した。反応生成物は天然漆に混合して塗布し,塗膜の常温における乾燥性からラッカーゼに対する活性をしらべた。また結果のよいものについては,天然漆10部に対し,6部の割合で加え,そのすぐうめ化物の常温乾燥膜の物性を「ねじり振動法」によって測定し,増量剤として天然漆に加えた場合の漆膜特性に及ぼす影響をしらべた。活性白土を触媒とするカテコールと,アマニ油脂肪酸の付加反応では,脂肪酸の重合による二重結合の減少が著しかったが,付加物のアリルエステルは増量剤としてよい結果を与えた。プロトカテキュ酸またはホモプロトカテキュ酸とアマニ油アルコールとのエステル,およびプロトカテキュ酸-アマニ油脂肪酸混酸基グリセリドは,高温無触媒反応で二重結合の減少がほとんどなく,好収率で得られ,増量剤として極めてすぐれたものであることが確認された。
  • 高木 行雄, 浅原 照三
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1634-1636
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    CCl4+C6H6およびCCl4+n-C7H16混合溶媒中におけるエチレンのテロメリゼーションをアゾビスイソブチロニトリルを開始剤とし,“容量比”0.20および0.30,反応温度90℃で行なった。希釈剤の種々な混合割合を用いると,容量比が同一でもC2H4/CCl4のモル比を著しく増大することができるから,低圧(60kg/cm2)においてもその反応結果は,希釈剤を加えない場合の100~200kg/cm2の圧力に相当している。一方,希釈剤の混合割合が増加するにつれて,開始剤1g当たりのテトラクロルアルカン収量が減少する。
    希釈剤の混合割合が一定の場合は,C2H4/CCl4のモル比の増加とともに高分子量テトラクロルアルカン収量が増加し,CCl4+n-C7H16混合溶媒が良好であった。
  • 高橋 彰, 香川 毓美
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1637-1640
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高分子電解質の一般的な分別法を見出す目的で,ポリアクリル酸ソーダを試料とし,まず試料の純水溶液に各種有機溶剤(メタノール,エタノール,プロパノル,アセトンおよびジオキサン)を添加した場合,ジオキサン以外はほとんど沈殿を起さないことを認めた。次に一連の濃度を変えた各種塩類(NaCl,NaBr,NaI,NaSCN,NaOHおよびCH3COONa)溶液を溶媒とした場合,ポリアクリル酸ソーダ-塩類溶液に相分離温度(Tp)が存在し,Tpが各塩類について,その濃度とともに特異的に変化し,ほぼTpがCH3COONa>NaSCN>NaI>NaBr>NaOH>NaClの順に低くなることがわかった。また定濃度の塩溶液中ではTpは分子量とともに高くなる。更にポリアクリル酸ソーダ-水-NaOH-メタノールの4成分系の相分離温度について検討し,メタノールの存在がTpをかなりに上昇させることを見出し,メタノールを沈殿剤として沈殿性を測定し,これが高分子濃度および重合度についてSchulzの式に適合し,分別沈殿の可能性が示された。この結果を利用して,ポリアクリル酸ソーダの分別を試み,回収率は若干悪いが,十分分別法として適用できることを明らかにした。
  • 高橋 彰, 香川 毓美
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1641-1642
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸ソーダ水溶液と,セチルトリメチルアンモニウム・クロリド水溶液との混合によって生ずる沈殿(コンプレックス)が,n-ブタノール,メチルエチルケトンに溶解し,ポリエチレンフィルム上に薄膜状に付着させうることを見出した。また,このコンプレックスは,中性塩の濃厚溶液に溶解するので,NaCl濃度の変化による溶解度曲線を求めた。これらの結果を利用して,階段的に濃度をかえたNaCl溶液によるポリエチレンフィルム上のコンプレックスの分別溶解を行なった。結果を分別沈殿法と比較すると,分別効果は分別溶解法においては,はるかに劣っていることがわかった。しかしながら,この活性剤による高分子電解質の沈殿方法が,天然高分子電解質の一分離法としては有効であることを推論した。
  • 松川 哲哉
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1643-1648
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高分子塗布洗浄法(仮称)が,油性の汚れだけの場合にも適用して効果をあげ得るかどうかを検討する予備段階としてカーボンブラック量にくらべて遙かに大量の流動パラフィンや硬化牛脂を混合して用いた汚染布の塗布洗浄率を,カーボンブラックだけを汚れ成分とする場合と比較し,またオクチルアルコール等の難揮発性の溶媒を分散媒として調製した汚染布への適用効果を,標準の四塩化炭素分散のものと対照するなどして,油性汚れだけに対する高分子塗布洗浄法の効果を推察しようとした。
    人工汚れとしての油性物質が,流動パラフィンやオクチルアルコールなどのように液状のものであると,Na-CMCその他の高分子電解質は,それらを単独で塗布に用いても著しい洗浄効果を示すが,牛脂のような固状のものであると,高分子だけの塗布による洗浄効果は低い。
    しかし,高分子と界面活性剤との混合液を汚染布に塗布する“混合塗布洗浄”の場合には,汚れの油性成分が液状であっても固状であっても,また試験布がモメンでもポリエステル繊維(テトロン)でも,油性成分を全く欠くカーボンブラックだけによる汚染布へ適用した場合にくらべて洗浄性がかなり高く,しかも,この混合塗布洗浄の際には,メチルセルロースやポリビニルアルコールのような非電解質高分子もまた著しく効果を高めることを認めた。
    以上のような実験結果から推察すると,カーボンブラック等の固型粒子を全く含まない油性汚れだけが布に付着している場合にも,高分子および界面活性剤を適当に選択使用するならば,高分子塗布洗浄法はその効果を十分に期待できるものと考える。
  • 松川 哲哉
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1648-1652
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高分子水溶液を被洗布に塗布し,その乾燥後に水洗浄だけを行なうことにより,通常の洗浄方法によるよりも遙かに高い洗浄性が得られるとこを認め,これを“高分子塗布洗浄法”(仮称)として,その諸現象を検討して来たが,前報までには陰イオン界面活性剤を主としたので,本報には高分子と非イオン界面活性剤との混合液を塗布した場合の基礎条件について吟味し,前報までの諸結果との比較をした。
    非イオン界面活性剤だけを高分子なしで被洗布へ塗布した場合には,この方法による洗浄率は,界面活性剤のHLB13~15の範囲に極大値を示すが,カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)との混合液を使用すると,逆にそのHLB範囲のものは洗浄率の極小値を示す。メチルセルロース(MC)との混合では,界面活性剤のHLBの増加とともに洗浄率はほぼ低下をし,また全般に高分子塗布の著効は現われない。
    この高分子と界面活性剤との混合塗布後の水洗浄率を,高分子だけの塗布による場合よりも高めるのに必要な界面活性剤の量は,CMCとの混合の際にはごく僅かであり,陰イオン界面活性剤を混合した時に現われたような負効果は認められず,しかも20℃ での低温洗浄率をかなり増進させる。
    ところがMCや,ポリ酢酸ビニルアルコール(PVA-Ac)などの非電解質高分子との混合では,非イオン界面活性剤の混合量を増すと,塗布後の水洗浄率はかなり上昇するが,CMCとの場合には及ばず,またそれらの洗浄率は,界面活性剤だけを塗布したものとの間に大差がない。したがって,これらの非イオン性の高分子と非イオン界面活性剤との混合塗布からは著効を期待しにくい。
  • 広田 致
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1652-1654
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ペクチン溶液に中性塩として食塩を添加した時の解離性状および粘性の変化を調べるために,エステル化度66%の遊離ペクチニン酸を試料とし,Staudingerのいわゆるゲルおよびゾル溶液を代表するものとして,それぞれ当量濃度約0.7・10-2および0.5・10-3Nの溶液について,食塩を飽和濃度近くまで添加して行く時のpHおよび粘度の変化を測定して次の結果を得た。
    (1)食塩濃度の高まるにつれて解離度は増し,これとともに解離定数は中和,希釈の場合と逆に増加する。また,これらの増加はペクチンに対し1~4倍当量の食塩を加えた所において始まり,かつゾル溶液の方が変化の割合が大きい。(2)食塩濃度の高まるにつれて,粘度は減少して行き,その程度はゾル溶液の方がはるかに著しい。またこの粘度変化は添加食塩のペクチンに対するグラム当量比よりもむしろ食塩のイオン強度に関係が深いようであった。(3)ゲル溶液においては食塩量の増加により粘度は極小値を経て再び増加した。ゾル溶液ではこの傾向は食塩の飽和濃度に達するまでの範囲ではほとんど認められなかった。
  • 山下 千明, 大橋 貞夫, 栗山 捨三
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1655-1659
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    SP廃液をアルカリ性で加熱すると,バニリンが生成することは既によく知られた所である。われわれは,工場のSP廃液を使用して工業的にバニリンを製造するための条件を確立するため,使用するアルカリの種類,アルカリとリグニンのモル比,蒸解の程度,触媒の種類とバニリン収率との関係について再検討し,使用するアルカリが強アルカリであるほど,バニリンの収率は大であり,またある範囲内ではバニリン収率はリグニンに対するアルカリのモル比に比例的である。蒸解の程度は,本実験の範囲内ではバニリンの収率に無関係であり,触媒の使用はバニリンの収率を増加せしめることを確認した。
  • 京極 与寿郎, 藤井 俊太郎, 八浜 義和
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1659-1662
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    椈の木粉を中性でスルホン化して易溶性リグニンスルホン酸(LSA)を抽出し,さらにこのスルホン化木粉からKullgren法で低スルホン化度(低S)LSAを分別抽出した。この各試料および低S・LSAを酸性で縮合と再スルホン化した試料について,アルカリ性ニトロベンゼン酸化分解を行ない,バニリン(Va)およびシリングアルデヒド(Sy)の生成量から,その核構成の不均一性と不均一性の変化について考察した。
    易溶性LSAは全アルデヒド収率およびSy/Vaの比がともに低く,低S・LSAとはあきらかに異なっている。また低S・LSAについても,分別抽出の順序に従って全アルデヒド収率,Sy/Va比ともに低下して行く。これらのことは原木粉中のリグニンに,核構成の不均一性のあることを示している。
    低S・LSAの酸性での縮合,再スルホン化によってアルデヒド収率は急激に低下するが,その程度はVaよりもSyの方が大きく,Sy/Va比は低下して行く。このことは酸性での処理によるLSAの縮合が,シリンギル核の方にグアヤシル核よりもはげしくおこることを示す。
  • 高椋 節夫, 八浜 義和
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1662-1664
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    木粉に放射線を照射するとBraunsリグニンの収率が増加することはすてに報告したが,このBraunsリグニンを抽出した残りの赤松木粉を次いでジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)で抽出するとリグニン-炭水化物結合体(1ignin-carbohydrate complex,LCCと略す)の収率も増加することが認められた。その収率は未照射のもので0.3%,8×107および1.1×108rep.照射したものでは,それぞれ1.7,6.9%であった。
    このLCCはさらにDMF-エタノール系で分別し,各区分のリグニンと炭水化物の結合状態をペーパークロマトグラフィーにより,また酸加水分解によりその糖組成を検索した。その結果,リグニンと炭水化物との結合も明らかに認められ,炭水化物はおもにアラビノース,キシロース,マンノースなどを含むヘミセルロースであるが,グルコースも20~35%含まれており,リグニンとセルロースとの結合の可能性も示唆された。
  • 岡島 三郎, 菊地 哲也, 吉武 悌一
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1665-1668
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱処理により人絹の膨潤度を低下させる研究はいろいろ試みられているが,ここでは熱処理時の水の存在状態におもに着目した。すなわち,一方は封管中で繊維と所定量の水を十分平衡状態としたのち熱処理し(I形式)他方は封管中に繊維と水を分離して入れ,熱処理時にアンプルを毀し過熱水を繊維と接触させた(II形式)。そして,水分量を変えた一連の試料をえた。
    これらの試料につき,X線,ヨウ素吸着等より結晶性を調べ,膨潤度を測定し,また機械的性質,赤外線吸収スペクトルを検討した。その結果,この2形式は,熱処理時の挙動を異にしていることを認めた。I形式処理の方が,より少ない水量で低い膨潤度を示し,繊維の崩壊も少ない。また,赤外線吸収スペクトルにおいて,11μ の吸収強度は膨潤度の低下とともに増大する。
  • 福本 修
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1668-1670
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位により得られるε-カプロラクタム中には種々の不純物が含まれ,十分精製しないとポリカプラミドを汚染し,また重合の障害となる。本報では粗ラクタムを蒸留する際その初留分および残留物中に含まれる不純物について検索した。粗ε-カプロラクタムの蒸留残留物を水で抽出し再蒸留した際得られる初留分より酸性酢酸アンモニウム,アニリン,γ-カプロラクトン等を確認した。また粗ε-カプロラクタムを蒸留した際の初留分にアニリン,γ-カプロラクトンの存在を確認した。またニトロベンゼン,δ-カプロラクトンと推定される物質も存在する。
  • 井本 三郎
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1671-1676
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール(PVA)皮膜の熱処理を120℃から195℃の間で行ない,過ヨウ素酸処理した後の膨潤度,溶解度を測定した結果,熱処理による結晶化は主として熱処理前にすでに存在している微結晶を核として成長が行なわれると推定された。
    またPVAの皮膜を30℃から80℃の間の温度で作製しそれを熱処理した場合,製膜温度の上昇とともに膨潤度は小さくなる。
    これは熱処理前の微結晶の分布が同一熱処理温度で受ける結晶化を支配していると考えられる。さらにこれらの皮膜または繊維の熱処理物の過ヨウ素酸処理後の溶解度を定量的に検討した結果,過ヨウ素酸処理を施したPVAは非晶領域にある1,2-グリコール結合で分裂され孤立ミセル構造をとっていると考えられる。したがってPVA皮膜の過ヨウ素酸処理した後の膨潤度,溶解度は微結晶の発生状態と特に密接な関係にあり,ラテラルオーダーの間接的な目安になると考えられる。この結果過ヨウ素酸処理した後,種々のフェノール濃度の溶液で分別溶解し,フェノール濃度に応じたラテラルオーダー分布を測定することが可能となリ,熱処理PVAの微細組織を具体的にあらわすことができるようになった。
  • 井手 文雄
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1676-1681
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコールを幹ポリマーとして,セリウム塩を開始剤に用いてメチルメタクリレーナのグラフト重合を検討した。
    (1)触媒濃度に関しては重合率について極大値を示す曲線関係がえられた。非常に低い触媒濃度においても,極あて高い収率を示す。熱水抽出でえられた未反応ポリビニルアルコールの重合度は,触媒濃度の増大とともに低下し,しかもその量も多いことから,ブロック重合の可能性が大きい。(2)幹ポリマーの重合度はグラフト重合に無関係である。(3)セリウム塩は,ポリビニルアルコールを酸化して主鎖の切断をおこす。セリウム塩の濃度の増大とともに,ポリビニルアルコールの重合度は低下する。切断数とセリウム塩濃度との関係を求めた。(4)硝酸濃度の増大とともグラフト量は大きくなるが,硝酸が存在しない場合は,ほとんどグラフト重合は進行しない。この点セルロースの場合とかなり異なっている。(5)ポリビニルアルコール膜の結晶化度とグラフト量との関係を検討した。結晶化度の増大とともに,グラフト量は直線的に減少し,グラフトは非結晶部分におこる。(6)ポリビニルアルコール--メチルメタクリレートグラフト重合物を,ピリジンと無水酢酸のアセチル化剤で完全にアセチル化を行ない,ポリ酢酸ビニル--メチルメタクリレート重合物を合成し,その溶解性等を検討した。
  • 橋本 静信, 古川 功, 柳川 鉄之助
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1682-1686
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    4種の有機リン酸ジアリルエステルを酸塩化物より合成し,このものにBPOを添加して重合を行ない,その重合性ならびに生成樹脂の物理的性質につき比較検討した。
    一般にホスホネート類は硬い樹脂,ホスフェート類はやや軟かい樹脂となるが,ホスホナイト,ホスファイト類は固化するまでにいたらなかった。
    また,ホスホネート類の耐溶剤性は,クロロホルム以外の溶剤に対してはほとんど変化が認められない。耐燃性はホスホネートが最も良好で自己消火性を示したが,ホスフェート類は良好な結果を示さなかった。この両者の差異は,熱分解率の結果から,重合鎖員中の側鎖の加熱による脱離の難易に関係あるものと推定される。
  • 山崎 升, 住江 太郎, 古浜 暉英, 神原 周
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1687-1690
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    TiCl4-Al(C2H5)3系チグラー触媒によるスチレン(M1)とイソプレン(M2)との共重合反応をおこない,樹脂状からゴム状の生成物がえられた。重合生成物の分別沈澱,組成分析および赤外吸収スペクトルの研究から,生成物は2種類の共重合体からできていることがわかった。これよりこの触媒系には2種またはそれ以上の重合活性中心があり,この場合一つは自由イオン,他の一つは配位陰イオン重合をおこなうことを推論した。計算された単量体反応性比はそれぞれr1=0.63±0.39,r2=1.8±0.9およびr1=11±14,r2=0.08±0.84である。
  • 高木 行雄, 浅原 照三
    1961 年 64 巻 9 号 p. 1691
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1961 年 64 巻 9 号 p. A93-A103
    発行日: 1961/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the formulae etc. in the original papers. Editor
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