工業化学雑誌
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65 巻, 4 号
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  • 三山 創, Paul H. Kydd
    1962 年 65 巻 4 号 p. 461-462
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    C2H2+H2+2O2混合気体の爆轟波よりの発光を,4163Åの光を透過する干渉フィルターおよび光電子増倍管を用いて測定した。波面直後の部分を除いて発光強度の時間的変化は爆発論より計算したCOとOの濃度積[CO][O] の変化と一致しこの発光がCO+O→CO2+hvなる反応により生ずることがわかった。また初圧が高い場合には二重爆発波の現象が見られ,この現象のあらわれる圧力は前報で報告した爆速が急激に変化する圧力に相当している。
  • 野田 稲吉, 稲垣 道夫, 加藤 肇, 田中 満
    1962 年 65 巻 4 号 p. 463-466
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    市販プロパンガスを人造黒鉛製発熱体上に分解,蒸着させて,熱分解黒鉛を作り,その中での黒鉛結晶子の配向度に対する生成温度(1,600~2,400℃)およびガス流量(45~1,110cc/min)の影響について考察した。また生成黒鉛についてのX線回折線図形からその黒鉛化性について検討した。結晶子層面の配向状態を示す配向関数をX線透過写真を用いて測定し,生成温度が高くなるほど,またガス流量が小さくなるほど生成黒鉛中における結晶子の配向が進んでいることが明らかとなった。2,000℃ 以上で生成した黒鉛の横断面は明らかに光沢の異なった2~3層に分れており,内層は外層に比べて黒鉛化が進んでおり6.720Å 以下のc0値を持ち,結晶子の配向もきわめて良好である。生成黒鉛のほとんどが非対称的な(00l)回折線図形を持っており,それらは見掛け上6.72Å と6.86Å のc0値を持った2種の図形からできているように思われる。
  • 中川 雅直
    1962 年 65 巻 4 号 p. 466-470
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    主として径5mmの石英反応管中で四塩化ケイ素を水素によって還元し,反応条件による収率と排ガス中のシラン分の量の変化について調べた。反応温度は1050,1100,1150および1200℃, 流速は6~153l/hrとし, H2/SiCl4のモル比は約40~520の間で変化させた。
    得られた結果は次のとおりである。すなわち1100℃ 以上では収率はほとんど流速に無関係であり,H2/SiCl4のモル比だけに左右される。そのモル比が小さいときはその値の増加に伴なって収率が高くなるが,その値が300~400以上になるとほとんど収率は一定し,その場合の1100および1200℃ における収率はそれぞれ約66および86%であった。排ガス中にはシラン性水素を有する化合物が含まれ, そのシラン性水素とケイ素との割合H/Siの値はH2/SiCl4のモル比の増加に伴なって大きくなる。しかしモル比が約60を越えるとH/Siの割合はほぼ一定の値をとるようになる。また反応温度が高くたるにつれてH/Siの割合が大きくなることがわかった。このような傾向を示すシラン分は主としてトリクロルシランであり,それはHClの濃度が高くなる反応管の出口付近で生成するものと考えられた。
  • 石 源三
    1962 年 65 巻 4 号 p. 470-473
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    亜塩素酸ナトリウムによる酸性漂白の際に,発生する二酸化塩素ガスを抑制するため,過酸化水素が使用されることがあるが,その機構は不明であった。そこで二,三の実験を行ない,次の結論を得た。すなわち亜塩素酸ナトリウムと過酸化水素の反応は希薄な所では無視しうるが,二酸化塩素と過酸化水素とは反応してHClO2となり,引つづき分解して次式のようになる。
    2ClO2+H2O2=2HClO2+O2 2HClO2=HClO3+HClO HClO+H2O2=HCl+O2+H2O
    第1段の反応が,発生する二酸化塩素ガス抑制の原因となっている。
  • 三根 剛四郎, 鈴木 尚, 清山 哲郎, 坂井 渡
    1962 年 65 巻 4 号 p. 473-478
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    一酸化炭素で還元したニッケルについて,X線回折,電子顕微鏡によってその微細構造あるいは状態を調べた。ニッケルとしては,特に格子不整は認められず,結晶子の大きさの相違は,試料の還元条件やその他の性質との関連性を有しなかった。還元時に副生する析出炭素については,電子顕微鏡によって薄膜状や線条型など数種の形を見出した。これらはグラファイト様構造を有している。
    次に化学反応性を調べるため,50℃で1N硫酸への溶解速度を測定した。また,硫酸に還元剤その他種々の塩類を加えて溶解性に及ぼす影響を見た。それらの結果を総合すると,還元ニッケルの微細構造,析出炭素,表面の酸化被膜,出発物質の化学形態などの影響は認められず,種々の要因の中でイオウ分の影響がもっとも顕著で,試料中に不純物として微量含まれる時,あるいは溶液中に加えた場合,いずれもイオウ化合物は試料の溶解性を促進することが見出された。
  • 三根 剛四郎, 鈴木 尚, 清山 哲郎, 坂井 渡
    1962 年 65 巻 4 号 p. 479-484
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    還元ニッケルの性質とくに希硫酸への溶解性に及ぼすイオウの影響とその機構を明らかにするため,0.011~0.563%の範囲でイオウ分を添加して製した試料について系統的に溶解性とイオウ量(以下S量と略記)との関係を調べた。
    希硫酸への溶解性はS量とともに上昇する。溶解速度はS量にほぼ比例して増加し,全溶解量はS量0.13%以上ではほとんど100%となる。このような変化の原因を追求してまずX線回折で調べた結果,S量0.05%前後において還元ニッケルの結晶を微細化する効果のあることが認められた。
    またこの試料を成形して,希硫酸中で自然電位,分極特性など電気化学的測定を行なった。S量約0.1%を境として,その上下でイオウの影響は異なるが,結果的にはいずれも溶解を促進するように働く。希硫酸に少量添加した物質の中では,液中でH2SまたはSO2を発生するイオウ化合物が,溶解促進効果がある。
    以上のイオウの影響は局部電池のアノード,カソード双方の分極を減少させるためであることがわかった。しかし,その現われ方は極めて複雑であった。
  • 矢野 元威, 森山 昭, 井本 立也
    1962 年 65 巻 4 号 p. 485-489
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    純粋なヘマタイト(Fe2O3)の還元を水素により,200~400°の反応温度範囲,50~300mmHgの水素圧力で静的状態において行なった。還元過程は2 段階よりなると考えられる。第1 段階はヘマタイトがマグネタイト(Fe3O4) にまで還元される段階である。この場合50mmHg以上の水素圧力のもとで還元を行なうと,還元速度は水素圧力の1次に比例する。50mmHg以下で還元を行なったときには,還元速度は
    であらわされる。第2段階はマグネタイトが鉄に還元される過程であって,反応速度は水素圧力に無関係であり,反応時間の平方根に比例し,いわゆる放物線則が適用される。
    試料のX線解析の結果から,還元率11%以下では金属鉄はあらわれず11%をすぎて金属鉄の生ずることが明らかとなった。
  • 市川 英一, 大戸敬 二郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 490-493
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石灰窒素水浸液を炭酸ガスで中和して得られるシアナミド水溶液を濃縮して,結晶シアナミドを製造する方法について研究を行ない,その工業的方法を確立した。まず著者らは従来この濃縮結晶化工程を著しく困難にしていた原因が,溶液の塩基性化にあることを明らかにし,この現象はシアナミド溶液中に溶解してくる微量のカルシウム(カルシウム炭酸塩類に基因する)によることを見出した。検討の結果,この溶解カルシウムの除去には上記シアナミド溶液をカルボン酸型イオン交換樹脂と処理する方法が最も効果的であり,かつまた,この脱カルシウム溶液は全く安定に濃縮脱水を行なうことができ,したがって定量的収率で結晶シアナミドを製造し得ることが明らかになった。この工程におけるカルシウムの許容量は, シアナミドに対し0.15%程度であり, また5%程度のシアナミド溶液中におけるAmberliteIRC-50のカルシウム交換容量は3.6mmol/g, dryresinであった。これらの結果から本方法は結晶シアナミドの工業的製造法として十分実施し得るとの結論を得た。そのほか石灰窒素の多段浸出によって得られる20%程度のシアナミド溶液に対する本法の適用性や,製品結晶シアナミドの保存試験等,実際製造に必要な基礎的問題についても検討し満足すべき結果を得た。
  • 中井 康雄, 横田 良助
    1962 年 65 巻 4 号 p. 494-496
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    Sb2O3-Al2O3-K2O-Na2O-GeO2ガラスは,溶融条件によって2種類の性質の異なるガラスとなる。著者は,この原因をガラス構造論的立場より解明しようと試み,赤外分光器を用いて研究した。その結果,酸化性溶融のガラスは均一なものとなるも,中性,還元性溶融では,無定形部分に微少な結晶部分を有する構造の可能性を推定した。水に対する性質,失透のし易さ等のガラス性質と構造との関連を論じた。
  • 向坊 隆, 雨宮 武男, 西宮 辰明
    1962 年 65 巻 4 号 p. 497-500
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フッ化水素酸に侵されにくい透明材料を得ることを目的として,新しいフッ化物ガラスを研究した。フッ化物ガラスとしてはフッ化ベリリウムを主成分とするものが知られているが,吸湿性なので他のフッ化物について調べた結果,フッ化アルミニウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化マグネシウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸カリウム系のガラス化組成範囲を決定した。
    フッ化アルミニウム-フッ化マグネシウム-メタリン酸ナトリウム系の試作ガラスに比較的よく無水フッ化水素酸に耐えるものが得られた。その一例はフッ化アルミニウム32.5mol%,フッ化マグネシウム27mol%,メタリン酸ナトリウム40.5mol%の組成のものである。この系で組成を変えたガラスについてはフッ素対酸素の原子比の大なるほど,フッ化水素酸に対する耐食性が大であり,この比が1付近でこの影響の著しいことを見出した。またフッ化水素酸中の水含有量がこの系のガラスの腐食に大きい影響を与えることが見出された。前記組成のガラスは無水フッ化水素酸による腐食は非常に少ないが,90%あるいは80%のフッ化水素酸では腐食速度は約10倍になる。ケイ酸塩ガラスではフッ化水素酸濃度の高いほど腐食速度は大きく,無水フッ化水素酸には激しく侵される。
  • 松下 徹, 鈴木 国幹
    1962 年 65 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成雲母結晶生成に対する着色性イオン,アルカリ,アルカリ土類金属イオンの影響はすでに報告した。
    ここではホウ素,チタン,鉛イオンの影響を報告する。これらのイオンを添加した溶融体から合成雲母が析出する際における結晶析出温度を測定し,そして,これらの析出雲母塊から雲母結晶をはがしとって化学分析した。その結果,これらのイオンは雲母結晶中にきわめて置換しにくく,雲母結晶の析出性に対する阻害度もきわめて小さい。そしてこれらのイオンを添加すると合成雲母の結晶析出温度も低くなる。これらの傾向は,ほかの元素を添加した場合の傾向と一致する。
  • 大門 信利, 天野 隆司
    1962 年 65 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    先に引下法に種結晶を使用することによって,ルツボの内容物全体をいわゆるブック状の結晶となし得ることを報告した。本実験はこの方法を用いて結晶育成に対する最適条件を得ようとするものである。劈開面を揃えて重ねたフッ素金雲母種結晶を底面5mm角,高さ65mmの白金ルツボ中に入れ,その上に原料として雲母粉末を溶融して結晶塊としたものを入れて密閉し,堅型白金電気炉に入れ,種結晶の上部および原料を溶融後ルツボを引下げることによって未溶融の種結晶を核として結晶を育成した。
    育成結晶は温度勾配に沿って劈開面が成長するが,成長途中で壁開面が種結晶のそれより偏向をきたすことがあり,そのため劈開面に不揃をきたして光の透過率を悪くする。透過率最大の結晶を得る条件が一応育成の最適条件と思われる。この条件を満すものとして温度勾配は40℃/cm,引下速度は遅い方がよいという結果を得た。また育成結晶を顕微鏡観察すると, 種結晶付近に他鉱物(苦土カンラン石) があることもあったが, それ以外の場所には雲母結晶以外のものは認められなかった。
    育成結晶の光軸角は種結晶のそれと等しいものが多いことを知った。
  • 大門 信利, 大場 幸満, 平尾 穂
    1962 年 65 巻 4 号 p. 511-513
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ルツボ法による雲母結晶製造研究では従来は縦型炉が用いられてきた。特に種結晶を使用してブック状結晶を得たのは引下法によるものであった。当研究にては横型炉を使用して種結晶を用い引下法と同様にブック状結晶を得ようとした。
    奥行き25mm,幅10mm,高さ10mm,または奥行き25mm,幅5mm,高さ5mmの白金ルツボの一端に劈開面を揃えた種結晶をその劈開面を水平にして挿入し,この横にこれに接して原料を充填してこれを横型電気炉(時には幾分傾斜のある)中に装置したのち,炉の温度を上昇させて原料およびこれに接する種結晶の一部分を溶融させてからルツボを種結晶の挿入してある方向へ移動させて結晶を育成させた。
    種結晶として粉末結晶を用いた場合にはその壁開面を揃えることが難かしく,従って育成結晶はブック状ではなかった。ルツボの幅と同じ大きさの結晶を切り出して劈開面を揃えて使用した場合には縦型電気炉の場合と同様にブック状の結晶を得た。
  • 広田 致
    1962 年 65 巻 4 号 p. 514-515
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ペクチン-鉄(III)塩凝析物中の鉄分のOH/Feモル比を知るために,トリオキザラート鉄(III)錯塩形成反応を利用した。すなわち試料にシュウ酸ナトリウムを作用させ,遊離するカセイソーダを逆滴定した。この方法により水酸化鉄(III)沈殿は3に近いOH/Fe比を与えた。ペクチンを塩化鉄(III)-炭酸アンモニウム混液で凝析させて得られる沈殿物について同様な方法を用い,ペクチンに結合する鉄イオンの平均組成を推定した。
  • 広田 致
    1962 年 65 巻 4 号 p. 516-519
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化鉄(III)によるペクチンの凝析挙動を明らかにするため,エステル化度67%の遊離ペクチニン酸液を試料とし,0.2mol/l塩化鉄(III)液およびこれと0.2mol/l炭酸アンモニウム液とを混ぜてつくった鉄コロイド液を凝析剤として,種々な条件の下に凝析を行ない,得られた沈殿物について結合鉄分の量,OH/Feモル比などをはかった。その結果は次のとおりである。
    (1)塩化鉄(III)液を用いて凝析を行なう場合,液のpHが低い(pH<2)とペクチンと鉄との結合は著しく妨げられる。PH2.5付近においては凝析は主にFe3+とペクチニン酸との間の塩形成(架橋)にもとづいて起り,凝析効率がもっとも高い。pHがさらに高まると塩基性鉄イオン類の結合もこれに加わった。
    (2)鉄コロイド液を用いて凝析を行なう場合,その炭アン/Feグラム当量比の増加とともに,また鉄コロイド液調製後時間の経過とともに,その中のFe3+イオンの加水分解が進んで塩基性鉄イオン類およびその縮合イオンの量が増す結果,凝析効率は低下した。
    (3)鉄コロイド液による凝析の場合は塩形成のほかに塩基性イオンの吸着もかなり起こるようであった。
  • 石井 英一, 大角 泰章, 中根 正典, 三宅 義造
    1962 年 65 巻 4 号 p. 520-523
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高純度金属ヒ素または亜ヒ酸をうる目的で,その中間体である塩化ヒ素(III)の各精製操作における微量不純物,とくにアンチモン, セレンの挙動についてそれぞれ125Sb,75Seをトレーサーとして用い検討した。塩化ヒ素(III) の塩酸洗浄においてはアンチモンの分離がよく,塩酸の濃度の変化により分配比38~98を示した。加水分解操作では析出する亜ヒ酸の最初の10%中に共存セレンのほぼ96%が共沈する。また蒸留精製ではアンチモンは99%除去できるが,セレンは硫酸ヒドラジンを用いた場合に除去率80~90%であった。なお,セレンは活性炭などの吸着剤処理を行なうことにより非常によく吸着除去されることがわかった。この活性炭を精留管に充填して蒸留を行なうとアンチモン,セレンともに最初の共存量の5,000分の1以下にすることができ,塩化ヒ素(III)のすぐれた精製法であることが認められた。
  • 塩川 二朗
    1962 年 65 巻 4 号 p. 524-527
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    分別結晶法によって希土類元素相互の分離精製を行なった。本報では,分別結晶法に用いる試料酸化物の製造について述べた。セリウム族元素に重点をおき, 原鉱にはモナズ石を用いた。150メッシュに粉砕したモナズ砂鉱を濃硫酸で加熱分解し,水で抽出,その抽出液について分別沈殿を行ない,トリウムを完全に分離除去した。溶液中の希土類元素はシュウ酸塩として分離し,これをバイ焼して酸化物とした。セリウムの分離には硝酸塩の分別分解法を用いた。すなわち,上記酸化物を熱濃硝酸に溶解し,蒸発乾固したのち水で抽出,セリウムを不溶性の塩基性硝酸塩として分離した。セリウム以外の希土類元素は抽出液中に溶存し,これはシュウ酸塩として分離後バイ焼して酸化物とし,分別結晶法の試料に供した。
    モナズ石(R2O3 61.95%,ThO2 8.82%含有)75kgを処理し,供試試料酸化物21.4kgを得た。その組成はLa2O323.4%,CeO2 1.2%,Pr6O11 13.1%,Nd2O3 57.5%,Sm2O3 3.1%,Σ[Y2O3]1.7%であった。また,以上のほかに粗酸化セリウム(純度97.1%)22.3kgおよび粗酸化トリウム(純度90.7%)7.1kgを得た。
  • 塩川 二朗
    1962 年 65 巻 4 号 p. 528-530
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸マグネシウム複塩の分別結晶法によって希土類元素,とくにセリウム族元素相互の分離を行なう際の晶出条件の影響について検討した。晶出条件としては,濃縮熱溶液をI:放冷,静置して結晶を自然成長させる晶出法,II:水冷,かきまぜを行ない微結晶とする晶出法,III:放冷,かきまぜを行ない微結晶とする晶出法の3方法を選んだ。
    試料の組成はLa2O3 23.4%,CeO2 1.2%,Pr6O11 13.1%,Nd2O3 57.5%,Sm2O3 3.1%,Σ[Y2O3]1.7%であった。セリウム族元素中最も分離の困難なプラセオジウムとネオジウムを代表に選び,吸収スペクトル法でこれらを分析し,その挙動を追跡して分離の効果の優劣を判定した。
    それぞれの晶出法によって分別結晶を50回ずつくり返して行なった結果,晶出法IIIの場合に最良の結果が得られた。
  • 武久 正昭, 安本 昌彦, 保坂 義信
    1962 年 65 巻 4 号 p. 531-536
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素を連鎖移動剤とするエチレンのテロメリゼーションを300ccの加圧反応器を用い,回分式で2000cの60Coを用いてγ 線照射により行なった。反応温度-16~120℃,反応圧力15~80kg/cm2,照射線量1~10MradでCCl3(C2H4)nClの一般式で示される反応生成物を収率よく得ることができた。
    反応は酸素により禁止される誘導期を示し,その後の反応期においてエチレンの消費速度はほぼエチレン量の1次に比例する。反応速度は線量率の0.63乗に比例し,連鎖の終結は主としてラジカル間の再結合によるものと考えられる。総括反応速度としてG値を使用すると実験範囲でG(テロマー)は200~2000であり,見掛け上約3kcal/g-molの活性化エネルギーを示す。
    主反応生成物はn=2ならびにn=3のテロマーであり,組成は反応時間によりほとんど変化しない。見掛け上の連鎖移動定数は温度によらず0.12であり,反応生成物の平均重合度が同じであれば,反応条件の相違はテロマーの重合度分布にほとんど影響しない。
  • 武久 正昭, 安本 昌彦, 保坂 義信
    1962 年 65 巻 4 号 p. 537-539
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    加圧下における四塩化炭素のエチレン飽和溶液の容積は,エチレン溶解前の四塩化炭素の容積と比較して容易に数倍に膨張する。反応条件下における容積増加を知ることは反応を安全な条件で行なうためにも,また実験結果を解析するためにも必要である。
    本報告では温度20~75℃ において,3以下の範囲にある容積増加比(E=エチレン飽和溶液の容積/四塩化炭素の容積)を溶解ガス量測定による簡易法により算出し,上記目的にはほぼ満足すべき結果を得た。すなわち本実験範囲ではEは次式で与えられる。
    E=1+(溶液のエチレンモル分率)(溶液中のエチレンの見掛け分子容)/(1-溶液中のエチレンモル分率)(四塩化炭素分子容)
    ここである温度,圧力における四塩化炭素中のエチレンモル分率,四塩化炭素の分子容は既知であり,溶液中のエチレン分子容は実験範囲において温度のみの関数とし,圧力に無関係として十分実験結果を定量化することができた。この値は実験範囲において75~95mlであった。
  • 古沢 源久, 武内 次夫
    1962 年 65 巻 4 号 p. 539-541
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチルの工業的製法として,現在行なわれている一般的製法はRöhm&Haas法である。この合成過程中のエステル化工程を検討するためには,合成過程中の各種共存物中のメタクリル酸メチルの定量法が必要である。エステル化工程の反応生成物中には,各種の共存物が存在するが,その中のメタクリル酸メチルは多量の水とメタノール,酒石酸ナトリウムを加えて蒸留を行なえば,加水分解することなく多量の共存物質より定量的に分離し得ることを見出した。この留出物中には,少量のメタクリル酸が含まれているので,メタクリル酸メチルとメタクリル酸との合量を臭素法により求め,別にアルカリ滴定によりメタクリル酸のみの量を求めれば,この差よりメタクリル酸メチルを定量し得る。
  • 宇佐美 四郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 542-545
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸ソーダを支持塩とする無水メタノールおよび微量含水メタノール中における酢酸ビニルと酢酸亜鉛との反応のポーラログラムについて検討を行なった。酢酸亜鉛は無水メタノール, および微量含水メタノール中でともに-1.00V付近に還元波を示すが,酢酸ビニルと酢酸亜鉛の共存の場合は無水メタノール中にて-0.75V付近に安定した1段波を示し,微量含水メタノール中では反応初期に-0.75V,-1.00V付近に2段波がえられるが,時間の経過により第1波は減少し,第2波が増大する。この結果にもとづき酢酸ビニルは酢酸亜鉛と水との存在下で加熱されると,比較的低温でアセトアルデヒド,クロトンアルデヒドを生成することを認めた。
  • 宇佐美 四郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 545-547
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール製造工程における微量成分の検討の一環として,回収酢酸中の不純物を検討のため,前処理として試料の回収酢酸を分留し,各留分についてガスクロマトグラフ法,ならびに質量分析法の併用により検討を行なった結果,85%シリコーン油DC.510-15%ステアリン酸を固定相担体DM-13Aに担持したカラムによるガスクロマトグラムにて,従来の化学分析で検出されなかったイソブチロニトリル,イソプロピルアセテート,プロピオン酸ビル,イソ酪酸ビニルを分離確認した。
  • 加藤 二郎, 小松 隆, 伊藤 民生, 若松 八郎, 岩永 良治, 吉田 統一
    1962 年 65 巻 4 号 p. 548-551
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報においてはβ-シアンプロピオンアルデヒドがアクリロニトリルのオキソ反応により容易に得られることを述べ,その物理的性質について報告したが,本報ではその基本的な化学的性質について研究した。
    酸化反応として過マンガン酸カリウム,過酸化水素,酸化銀,硝酸を用い,それぞれβ-シアンプロピオン酸,コハク酸モノアミド, コハク酸イミド, コハク酸とシュウ酸を得た。
    還元反応としては本アルデヒドのアセタールをナトリウムとアルコール,またはニッケル触媒を用いて接触還元を行ないγ-アミノブチルアルデヒドアセタールを得,つぎにアミノ基をベンゾイル化して保護したのち酸化してN-ベンゾイルピロリドンを得た。また遊離アルデヒドの接触還元,水素化ホウ素による還元によりγ-ヒドロキシブチロニトリルを得,これからブチロラクトンを得た。
    さらに本アルデヒドをアンモニアの存在下で還元,加水分解してγ-アミノ酪酸に誘導した。本アルデヒドは重合し易く微量の鉱酸の存在で4量体を与え,また鉱酸と加熱すれば解重合して再び遊離アルデヒドを生じた。
  • 加藤 二郎, 林 泉, 野田 一郎, 岩永 良治, 吉田 統一
    1962 年 65 巻 4 号 p. 552-556
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルのオキソ反応により得られたβ-シアンプロピオンアルデヒドを原料として,グルタミン酸の合成を行なった。この際,シアン化水素をシアン化水素のアンモニア溶液として使用するのが有利であることを見出した。
    従来,シアン化水素はアンモニアの存在下では不安定で重合し易いと考えられていたが,シアン化水素のアンモニア水溶液中での安定性を実験し,シアン化水素に対し0.5~1.0倍molのアンモニアが存在するとき,シアン化水素の重合による損失が最も著しく5 倍m o l 以上存在するときは安定であることを明らかにした。シアン化水素の重合はシアン化水素分子によって行なわれ,大量のアンモニアが存在するときは,大部分のシアン化水素はイオンに解離しており,安定化されているものと考えられる。
    この事実に基づき,通常シアン化水素の工業的合成法として行なわれるAndrussow法により,シアン化水素を合成し,シアン化水素を含む反応生成ガスを,残存アンモニアとともに直接アンモニア水に吸収させ,シアン化水素のアンモニア水溶液を得た。この溶液はグルタミン酸のみならず,ストレッカー反応による各種のアミノ酸の合成に利用される。
  • 好野 雄, 木島 一郎, 杉山 岩吉, 金沢 正浩
    1962 年 65 巻 4 号 p. 556-559
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    芳香族アミンを用いて四塩化チタン,各種クロルアルキルチタネートからのテトラアルキルチタネートの合成について研究した。脂肪族アミンに比べて塩基性は小さく, 立体効果の大きいアニリン, モノメチルアニリン, o - ニトロアニリン,o-トルイジンはともにテトラアルキルチタネートへの縮合作用を示しているがo-トルイジン以外のアミンを用いた時にはn-ブチル,sec-ブチルチタネートには少量の塩素が検出された。しかしtert-アルキルの場合には塩素は認められなかった。同様な結果はテトラアルキルチタネートとアニリン塩酸塩との反応においても見られた。また四塩化チタンにモル比を変えてアミン,アルコールを反応させることにより選択的にクロルアルキルチタネートを合成し得ることがわかった。
    四塩化チタン,クロルアルキルチタネートと芳香族アミンの反応熱の測定を行なった結果,脂肪族アミンに比べて著しく小さい値を示した。
  • 木島 一郎, 分島 郁子, 好野 雄
    1962 年 65 巻 4 号 p. 559-561
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    四塩化ジルコニウムとアルコールとの反応ではジアルコキシジルコニウムジクロリドZ r(OR)2Cl2以上には置換反応は進まずテトラアルキルジルコネートZr(OR)4の合成は不可能である。ジルコニウムのテトラアルキル誘導体を得るには金属塩化物とアルコールとの反応に塩基の存在が必要である。塩基としてアンモニアを用いる方法はすでに詳細に研究されているが,アミンを縮合剤として用いる方法はまだ研究されていないので,ジルコニウム塩化物とアルコールの反応におけるアミンの縮合剤としての作用を検討した。その結果アミンのうちでトリメチルアミン,トリエチルアミン,モノ-n-ブチルアミン,ジ-n-ブチルアミン,ピペリジンの5種は縮合能力をもつがアニリン,モノメチルアニリン,ジメチルアニリン, ピリジン, トリ-n-ブチルアミンの6 種は縮合能力をもたないことがわかった。トリ-n-プロピルアミンではジルコニウムテトライソプロポキシドとトリアルコキシジルコニウムモノクロリドとの混合物が得られた。
  • 下土 居豊, 村田 二郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 561-566
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-アセチル-6-メチル-2,3-ジヒドロピラン(I)を加水分解してえられるオクタン-3-オール-2,7-ジケトン(II)から,1,4-ジ[5-(5-メチルヒダントイン)]-1-ブタノール(III)がえられた。
    Iに通常のヒダントイン合成反応を行なうと,反応初期には5-メチル-5-[2-(6-メチル-2,3-ジヒドロピラニール)]ヒダントイン(IX)がえられるが,反応時間を延長するとIIIと組成が同じであるが物理的性質が異なる物質III-aがえられた。IXのピラン環を加水分解すると5-メチル-5-(1-オキシ-5-オキソヘキシル)ヒダントイン(X)がえられた。これはIII-aに変えられた。III-aはIIIと同じく加水分解するとα,α'-ジアミノ-α,α'-ジメチル-β-オキシスベリン酸(IV)になる。このような結果から,著者らはIをシアン化ナトリウムと炭酸アンモニウムと処理すると,IXのピラン環が加水分解されたのちIIIの立体異性体と考えられるIII-aが生ずるものと考えた。
  • 森田 栄太郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 566-568
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    赤松パルプを3~4%NaOH,つぎに8~10%NaOHで抽出し,抽出液にフェーリング液を作用させて,マンナン銅を得,マンナン銅を希酸で分解し,熱水で抽出し,酒精による分別沈殿などの操作により,8画分に分割し,各画分を加水分解して構成単糖類の組成を決定した。加水分解生成糖としてキシロースを生成する画分と,キシロース,マンノース及びグルコースを生成する画分とに区別され, N a O H および熱水で抽出した画分の糖組成はグルコース: マンノース:キシロースの比はそれぞれ1:1.6:4.1,1:1.7:2.4および1:1.6:1.0で,キシロースの割合はアルカリ処理をくり返すごとに減少するが,マンノースとグルコースの割合は一定であることを認めた。またウロン酸がほとんどすべての画分に認められた。
  • 松田 住雄, 吉川 彰一, 内田 章
    1962 年 65 巻 4 号 p. 568-574
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    タール油中のメチルナフタリン,ジメチルナフタリン留分を,高圧水素の存在下に,各種触媒を用いて脱メチルさせる際,触媒としては,活性アルミナ(以下アルミナと略称),ヨウ素が比較的有効で,アルミナ触媒を用いて550℃で60分間処理した場合には,40wt%前後のナフタリンが得られた。本研究では連続式高圧反応装置を用い,主として実験計画法に従って,反応温度,反応圧力,滞留時間等の反応条件と,ナフタリン収率その他の特性値との関係を検討した。その結果,アルミナ触媒を用いてタール油の220~260℃ 留分を原料とした実験において,反応温度600~650℃,反応圧力30~50kg/cm2,滞留時間20~30secの作業条件の範囲内では,温度,圧力は高い程,ナフタリン収率が向上することを認めた。
  • 内田 章, 松田 住雄
    1962 年 65 巻 4 号 p. 574-577
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    クレゾールの脱アルキル化反応の生成物の定量分析にガスクロマトグラフィーを応用するため,ベンゼン類,フェノール類の保持時間比,およびアニリンを内部標準物質とする定量法を検討して基礎的な知見を求めた。その結果,ベンゼン類,フェノール類においては,保持時間比の対数と,沸点,メチル基の数等との間に直線関係が成立し,またアニリンに対する各成分の面積比が重量比にほぼ等しいことを認め,ガスクロマトグラフィーにより迅速に確認・定量を行ないうることをみとめた。
  • 内田 章, 田中 峯雄, 松田 住雄
    1962 年 65 巻 4 号 p. 577-582
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    クレゾールを水素加圧下に種々の触媒とともに450~500℃ に加熱すると,脱メチルして相当量のフェノールを生成する。実験結果にもっとも大きく影響すると思われる反応温度と反応時間の均一保持に注意してo-クレゾールを脱アルキルして,フェノール収率と,触媒の種類,反応温度および含水率との関係を検討した。
    用いた触媒は,アルミナまたは軽石を担体とする触媒,シリカ-アルミナ型触媒など19種類で,実験の結果,コバルト-シリカ,活性アルミナおよび酸化バナジウム-軽石が有効であった。フェノールの最高収率は500℃,含水率0で酸化バナジウム- 軽石で処理した場合の43.8wt%(究極収率)であった。また各触媒の反応機構の特性について考察を加えた。
  • 木村 光雄, 川崎 仁士, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1962 年 65 巻 4 号 p. 583-586
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メトキシ基,エトキシ基,ベンズアミド基,カルボキシ基などを有するナフタリン系およびアントラセン系のアゾ染料とスルホンアミド基,カルボキシ基,メトキシ基,ベンズアミド基などを有するピラゾロン系のアゾ染料を,それぞれ1molずつ混合しクロムおよびコバルト原子と結合させた非対称1:2型金属錯塩染料三十数種を合成し,その構造やアミラン,ビニロンに対する染着性,色調,堅ロウ度などについて検討した。その結果ベンズアミド基を有するナフタリン系のアゾ染料を用いたコバルト錯塩の場合は,他の場合と異なって非対称錯塩染料のみは生成し難く,対称錯塩染料も混在するためその染色布は緑ないしオリーブ系の色調を示し,他の場合は赤茶ないし紫色系の色調を示した。また,染着性,堅ロウ度は一般にアミランに対しては良好であったが,ビニロンに対してはアミランに対する程ではなかった。
  • 川端 成彬, 鶴田 禎二, 古川 淳二
    1962 年 65 巻 4 号 p. 587-591
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報において報告したのと同じ方法を用いて,カチオン重合の生長反応におけるポリマーカチオンとモノマーの間の共役安定化エネルギー,ECM,を次式によって四つの部分にわけ,実験事実と比較した。
    ECM=EC0M0+EC+EM++E'CM
    ここでEC0M0 はポリエチレンカチオンとエチレンモノマーとの間の共役安定化エネルギーである。EC およびEM+ はそれぞれEC0M0を基準とした場合の(置換ポリエチレンカチオン-エチレンモノマー)系および(ポリエチレンカチオン-置換エチレンモノマー) 系の共役安定化エネルギーの増加量である。E'CM はポリマーカチオンおよびモノマーの双方に置換基がついた場合の共役安定化エネルギーに対する効果が,それぞれの置換基の単独効果の和,EC+EM+,に一致しないために生じてきた補正項である。E'CM の値は二, 三の例外を除いてほとんど0であることが分った。このことはカチオン重合においてはラジカル重合の場合と異なり大部分の場合r1r2≒1になることと対応する。カチオン重合の場合でも生長反応の速度定数kCMとモノマーの一般反応性の項QM+,ポリマーカチオンに特有な項PC+,ポリマーカチオンとモノマーの各組合せに応じて定まる補正項eCM+ の間にkCM=PC+QM+exp(-eCM+) が成りたつことはラジカル重合の場合と同様であるが,カチオン重合では大部分の場合e+の項がほとんど0になっているのである。カルボニウムイオンに対する各モノマーの相対反応性はラジカル重合の場合のQ値に相当するQ+値であると考えられるが,この相対反応性の実測値の対数とEM+値との間には直線関係が見出された。
  • 下土居 豊, 村田 二郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 591-594
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリメチルビニルケトンと種々のアミンとの反応を行なった結果,その反応率はアミンの分子容およびpKbにより影響されることが分った。また反応率はアンモニア,ヒドロキシルアミンおよびヒドラジンの場合を除いて一般に低かった。ポリメチルビニルケトンとアンモニアとの反応生成物はポリメチルビニルケトンのオキシムを塩酸と処理して得られるポリマーと同じくピリジン環を含むポリマーであることが分った。
  • 下土居 豊, 村田 二郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 595-599
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリメチルビニルケトン(PMVK)のヒダントイン誘導体はPMVKに直接シアン化ナトリウムと炭酸アンモニウムとを反応させても,PMVKとシアン化水素との反応によってえられるポリシアンヒドリンと炭酸アンモニウムとの反応によってもえられた。このポリヒダントインは水酸化ナトリウム水溶液で加熱加水分解させるとポリアミノ酸になる。PMVKを塩素または臭素と反応させると,それぞれ塩素分析値57%,臭素分析値57%の反応生成物がえられた。PMVKと五塩化リンとの反応では少量の塩素をふくむ生成物がえられた。PMVKとホルムアルデヒドとの反応を種々の条件のもとで行なった結果,反応率はpHが高くなるほど,反応時間が長くなるほど高くなることがわかった。
  • 松崎 啓, 久保田 秀雄, 石田 彰, 江藤 和良, 板垣 孝治, 祖父江 寛
    1962 年 65 巻 4 号 p. 600-603
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸n-ブチル,イソブチル,sec-ブチルエステルに,広い温度範囲で,放射線重合,グリニャール試薬を触媒とする重合および過酸化ベンゾイルを触媒とする熱重合を試みた。n-ブチルエステルの放射線重合では,重合率がある値を越すと重合が加速され, ゲル効果が認められた。重合の活性化エネルギーは3.1kcal/molであった。n- およびsec-ブチルエステルの-78℃~室温における放射線重合体の赤外吸収スペクトルには温度による変化がほとんどない。またグリニャール試薬(主にsec-ブチルマグネシウムブロミド)によるn-ブチル,イソブチルおよびsec-ブチルエステルの重合体も,広い温度範囲にわたり同じような赤外吸収スペクトルを与える。放射線重合による重合体とグリニャール試薬による重合体の赤外吸収スペクトルには, 前者に750cm-1および1065~1070cm-1に顕著な吸収があるほか両者に多少の異なる点が認められ,ポリメタクリル酸メチルのスペクトルと比較して前者はシンジオタクティック,後者はアイソタクティック構造を持つと考えられる。過酸化ベンゾイルによる重合体は放射線による重合体と同じ赤外吸収スペクトルを示す。また,光学活性のメタクリル酸sec-ブチルエステルのグリニャール試薬による重合体は,ラセミエステルの重合体と同じ吸収スペクトルを示した。すべての重合体が,結晶性は低いが結晶性と思われるX線図を示した。
  • 石塚 修, 松村 茂雄, 小林 恵之助, 堀尾 正雄
    1962 年 65 巻 4 号 p. 603-605
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    結晶性ポリプロピレンの未延伸繊維のX線干渉図には,分子軸が繊維軸に平行する分子配位による干渉点のほかに特異な二つの4点干渉が認められる。これは分子軸が繊維軸に垂直であるような分子配位の存在に由来するもので,延伸によってこの構造はネッキングとともに解体され,分子は繊維軸の方向にほぼ配向し,同時に4点干渉は消失し,さらに高度の延伸でパラクリスタルの干渉図を示すに至る。
  • 長岡 武, 高田 利宏, 讃山 一則, 谷山 雅一
    1962 年 65 巻 4 号 p. 605-609
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリピロリドン(PP)の湿式紡糸を塩化亜鉛または塩化亜鉛と硝酸マグネシウムの混合水溶液を溶剤として,凝固液としては硫酸ナトリウム水溶液を使用して行なった。
    凝固液の組成,温度,浴長およびポリマーの分子量,紡糸液中のポリマー濃度,溶剤の塩濃度などの最大紡糸速度,最大延伸率および生成したPPフィラメントの強度に及ぼす影響について調べた結果,適当な紡糸条件のときは3m/minの紡糸速度で4.5倍に延伸され3g/d以上の強度を持つものが得られた。
    PPフィラメントの種々の性質をナイロン6フィラメントと比較したが,PPフィラメントの比重は1.22~1.24(20℃),湿乾強度比約70%,ヤング率13g/d,吸湿率9.8%(相対湿度65%,20℃),良好な耐熱性を有し特に直接染料に対して高い染着度を示すことが明らかにされた。
    PPフィラメントはスキンとコアの不均一断面構造を有し,X線回折写真から十分な配向性を示していないことが認められたが,この原因は凝固過程において延伸前に凝固糸の結晶化が速やかに起り延伸性を低下させることに基づくことを明らかにした。
  • 浜田 英郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 609-612
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    常温で酸性の水溶液において,ジメチロール尿素ジエチルエーテル(DME)は過剰の尿素と反応し,主としてジメチレントリ尿素を生ずる。この反応に関してはジメチロール尿素(DM)のような速度論的取扱いが困難である。そこでDMまたはジメチロール尿素ジメチルエーテル(DMM)の反応と次の点すなわち
    (a)尿素との反応におけるメチレン結合の生成量と反応時間との関係
    (b)希薄水溶液においてCH2OC2H5基あるいはCH2OCH3基がそれぞれ完全にメチロール化される時間
    を比較してCH2OC2H5基の反応性を検討した。その結果,メチレン結合の生成速度はDM>DME>DMMの順に小さくなり,メチロール化速度もDMEの方がDMMより大きいことを知った。したがってカルボニウムイオン(…NHCH2)+を生ずる次の素反応(1)の速度定数の値は,DM>DME>DMMの順に小さくなることがわかった。
    …NHCH2OX+H+→(…NHCH2)++XOH (1)(X=H,CH3,C2H5)
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 吉岡 伸治, 上原 敏男
    1962 年 65 巻 4 号 p. 613-615
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 井口 悌三
    1962 年 65 巻 4 号 p. 615-618
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱硬化性芳香族炭化水素樹脂を合成する目的でポリ-2,4-ジメチルスチレンとホルムアルデヒドとの反応を行なった。ポリ-2,4-ジメチルスチレンの単量体単位である2,4-ジメチルエチルベンゼンとホルムアルデヒドとの反応を過塩素酸触媒にて酢酸溶媒中で行なった結果,初期反応速度定数および活性化エネルギーはm-キシレンとほぼ同程度であった。ポリ-2,4-ジメチルスチレン,ポリビニルトルエンおよびポリスチレンとホルムアルデヒドとの反応を過塩素酸触媒にてべンゼン酢酸溶媒中で行なった結果,ポリ-2,4-ジメチルスチレンのホルムアルデヒドに対する反応性はポリビニルトルエンより高く,ポリスチレンはこの反応条件下ではホルムアルデヒドと反応しなかった。
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 井口 悌三
    1962 年 65 巻 4 号 p. 618-621
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱硬化性炭化水素樹脂を合成する目的でm-キシレンスルホン酸を触媒として,m-キシレンホルムアルデヒド樹脂とポリアセナフチレンとの硬化反応を行なった結果,m-キシレンホルムアルデヒド樹脂の分子量が小さく,含酸素率の高いものが高い硬化性をもつことを知った。またポリアセナフチレンの単量体単位であるアセナフテンとm-キシレンホルムアルデヒド樹脂中間体との反応を行ない,中間体中のエーテル結合およびメチロール基がアセナフテンど反応することを確認した。これよりm- キシレンホルムアルデヒド樹脂とポリアセナフチレンとの硬化反応機構を推定した。
  • 黄 慶雲, 桜井 富士雄, 井本 稔
    1962 年 65 巻 4 号 p. 622-625
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱硬化性芳香族炭化水素樹脂をつくる目的で,m-キシレンホルムアルデヒド樹脂(以下XF樹脂と略す)とアントラセンをm-キシレンスルホン酸触媒の存在下で,反応温度,触媒量,反応モル比,XF樹脂の含酸素率等の条件を変化せしめて反応し,所定時間毎の試料の分子量変化,軟化点,生成樹脂の残存含酸素率より反応性を追跡した結果,いずれの条件においても反応条件を酷にすると分子量が増大するが,熱硬化性樹脂を得るにいたらなかった。一方,XF樹脂の初期縮合物を合成し,アントラセンとの反応生成物から反応機構を検討した結果,アントラセンは主として9,10の位置で2官能基として反応することがわかった。
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 桜井 富士男
    1962 年 65 巻 4 号 p. 626-629
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    m-キシレンホルムアルデヒド樹脂と,メシチレンとの反応により,熱硬化性芳香族炭化水素樹脂をつくる目的で,反応温度,反応モル比,触媒濃度,m-キシレンホルムアルデヒド樹脂の含酸素率を変化させ,所定時間毎に試料を取出し,反応による分子量の増大と含酸素率の低下を検討した結果,完全な相関関係があって,反応の進行と含酸素率の低下が認められた。この場合,前報のアントラセンと同様硬化に到らなかったが,生成した樹脂はほとんどC,Hからなる芳香族炭化水素樹脂によって構成されることがわかった。
    一方m-キシレンホルムアルデヒド樹脂の初期縮合物を合成し, これとメシチレンとの反応機構を検討した結果, 3官能性として, 反応するものと考えられるメシチレンは, 160℃までの低温度では, 2官能性として反応することがわかった。
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 倉矢 忠男
    1962 年 65 巻 4 号 p. 630-632
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱硬化性炭化水素樹脂の製造を目的として,m-キシレンホルムアルデヒド樹脂,およびナフタリンホルムアルデヒド樹脂をアセナフテン,アセナフチレン,アセナフテンホルムアルデヒド樹脂等と,m-キシレンスルホン酸触媒下に反応させ,諸条件下における反応性を種々検討した。
    その結果, m - キシレン・ホルムアルデヒド樹脂に対するアセナフテン, アセナフチレンのモル比が3 ~ 3 . 5 : 1 で, 最高の不溶化部を生成し,この大きさから見た反応性は,
    アセナフテンホルムアルデヒド樹脂>アセナフテン>アセナフチレン
    の順であり,アセナフテンでは170℃,60分,触媒3%で硬化させ,ベンゼン抽出残部として得た不溶化部は95%以上である。また,ナフタリンホルムアルデヒド樹脂と,アセナフテンでは不溶化部はほとんど得られず,平均分子量の増加のみが認められた。これらの硬化物の組成元素はいずれも99%以上が炭素,水素からなり,3次元の不溶,不融性の硬化樹脂であることがわかった。
  • 井本 稔, 黄 慶雲, 板倉 穰
    1962 年 65 巻 4 号 p. 633-636
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    m-キシレンのクロルメチル化による4,6-ジ(クロルメチル)-m-キシレンの合成条件を検討し,ついでこの物質とアルカリとのオートクレーブ中加熱加圧下での反応について研究を行なった。その結果,アルカリの添加量がクロルメチル基の加水分解に要する当量以上の場合には主として4,6-ジメチロール-m-キシレンを生成し,一方,アルカリ添加量を加水分解当量以下にして反応させると一挙にポリエーテル型樹脂が得られることを見出した。得られたポリエーテル型樹脂の平均分子量は条件により1000以上となった。この場合4,6-ジ(クロルメチル)-m-キシレンが,いったん加水分解して4,6-ジメチロール体となり,ついで系内の酸により脱水縮合してポリエーテルが生成するものと考えられる。
  • 井本 稔, 黄 慶雲
    1962 年 65 巻 4 号 p. 636-639
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    4,6-ジメチロール-m-キシレンを原料とし,スルファミン酸触媒下で180~220℃ で加熱し,脱水してポリエーテル型の新らしいm-キシレンホルムアルデヒド樹脂を合成した。この樹脂生成における二,三の条件変化の及ぼす影響と,このポリエーテル型キシレンホルムアルデヒド樹脂と, アセナフテンホルムアルデヒド樹脂どの硬化条件を検討した結果,m-キシレンとホルマリンとより生成した樹脂に比して高い硬化率を示し,条件によっては90%以上の高い硬化率を示した。ここに得た樹脂はほぼC,Hのみによって構成される熱硬化性芳香族炭化水素で不溶,不融性を示す。
  • 荒井 義, 加藤 二郎
    1962 年 65 巻 4 号 p. 640-641
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 林 和夫, 山口 久福
    1962 年 65 巻 4 号 p. 641
    発行日: 1962/04/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
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