工業化学雑誌
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68 巻, 10 号
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  • 中島 和久, 北原 雅夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1811-1815
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イソブチレン,アンモニア,および空気からのアンモオキシデーションによるメタクリロニトリルの合成を,V2O5-MoO3-P2O5(アルミニウムスポンジ担持)触媒を用いて行なった。
    合成条件(反応温度,接触時間等)と生成物の関係,触媒と担体との付着比と,メタクリロニトリル生成成績※1との関係,ならびに触媒上でのアンモニアの酸化挙動等を検討し,つぎの結果を得た。
    1 . 触媒の重量配合比がV 2O5:MoO3:P2O5=1:4.5:0.55,触媒対担体の重量比2:5の触媒の場合, 反応温度436℃,接触時間0.8秒で,メタクリロニトリル生成率12.9%,選択率23%の結果が得られ,本配合触媒がかなりのメタクリロニトリル生成活性を有することを見いだした。
    2.反応生成物として,メタクリロニトリルの他に,メタクロレイン,アセトニトリル,青酸等の生成を認めた。
    3.また,反応の追跡結果から,メタクリロニトリルとメタクロレインの生成の最適温度は,前者が比較的低温側にあるのに対し,後者は500℃ 以上の高温側にあること,また,かかる高温域ではアンモニアの酸化分解が著しく,メタクリロニトリルの生成が減少すること等がわかった。
    これらの結果から,1段合成法ではメタクリロニトリルの収率に限界があり,むしろ,メタクロレインとメタクリロニトリルの生成を,それぞれ分離した反応帯域で行なわせる2段合成方式が有利であると考察した。
  • 中島 和久, 北原 雅夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1815-1822
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    V2O5-MoO3-P2O5(担体アルミニウムスポンジ)系の触媒を用いるイソブチレンよりメタクリロニトリルの2段合成法について,メタクロレイン経由のアンモオキシデーションの詳細を研究した。
    まず, 触媒について酸化バナジウム(V)(V2O5)と酸化モリブデン(VI)(MoO3)の配合比, 触媒成分と担体との付着比,ならびに担体自身の触媒能等を調べ,重量配合比がV2O5:MoO3:P2O5=1:4.5:0.55,担体に対する付着比2/5の触媒がメタクリロニトリル生成率として,最高30.5%(対イソブチレン)を与えた。またアルミニウムスポンジ自身も,メタクリロニトリル生成にかなりの選択性を有することを見いだした。
    つぎに,この触媒について,反応温度,供給ガス混合比,供給空間速度,触媒量等の反応の基礎的諸条件を検討し,収率への影響を明らかにした。
    また,アンモオキシデーション効率の向上のために,触媒に対する第4成分の添加効果およびアンモニアの酸化分解状況とその抑制法(多段分割供給の効果)等についても検討を加えた。これらの実験結果を解析して, 本触媒によるアンモオキシデーション効率として, メタクロレインより約6 4 % , イソブチレンより約20%がメタクリロニトリルに変換されることを認め,2段合成法が1段法よりも収率的に有利であることを明らかにした。
  • 中島 和久, 北原 雅夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1822-1827
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    V2O5-MoO3-P2O5(Alスポンジ担持) 触媒によるメタクロレイン(MA)のアンモオキシデーションについて, 接触合成の基礎的な諸事項(触媒成分の配合比,担体に対する触媒付着比,反応温度,原料供給比,供給速度,および触媒層の温度分布等)を検討した。その結果,メタクリロニトリル(MAN)収量への最も支配的な反応要因は,反応温度とNH3供給比であり,反応温度450℃,供給モル比MA:空気:NH3:水蒸気=1:30:9.2:24,供給ガス空間速度3100hr-1の条件で,MAN生成率67%(MA変化率100%)を得た。また,この触媒のMAN生成活性は50時間の反応使用にも全然低下を認めなかった。
    空気を供給しない場合にも,MANの生成は認められたが,触媒活性は反応時間とともに急低下した。
    また, MAおよびMANの高温空気による被酸化性を触媒共存系および無触媒系で調べ, MANはM A よりもかなり安定であることを認めた。これらの結果から,メタクロレインのアンモオキシデーション系内での副反応として,酸化分解がNH3,MA,MANの大きさの順で起こっているものと推論した。
  • 野崎 文男, 助野 敏雄, 小林 正弘, 森川 清
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1827-1831
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    担体付触媒においては一般に担体物質の種類いかんによってその触媒活性が異なることが多い。本報では担体物質がシリカとアルミナと異なる場合,担体付銅触媒の活性の相異の原因を触媒の水素による還元性状,触媒中酸化銅の希硝酸への溶解抽出性状などの相異から検討した。その結果,銅-アルミナ触媒の方が銅-シリカ触媒より水素による還元が困難であり,また触媒中酸化銅が希硝酸に溶解抽出され難い。一方エチレンの水素化反応に対する触媒活性は,後者の場合の方が大きく,反応の活性化エネルギーおよび反応速度の圧力依存性も両者で若干相異した。これらの実験結果から,担体付銅触媒中には担体物質と化学的に結合した銅と遊離の状態にある銅の2種類があることがわかった。一般にアルミナ担体は銅と結合し易く,その結果より不活性な触媒を形成する傾向がある。これに比してシリカ担体はこの傾向が小さい。
  • 野崎 文男, 渡辺 孝, 森川 清
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1832-1835
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    5%(wt)Ni-SiO 2 触媒を使用して反応温度440℃,反応圧力1~16atm,水素対トルエンの供給モル比1~10で流通法によりトルエンの水素化脱メチル反応の速度を測定した。そして実験データを解析し反応速度表式および反応模型の推定を試みた。そして, つぎの結果を得た。すなわち反応速度の圧力依存性は特異なものであって, 2atm付近までは圧力とともに反応速度は増大し,それ以上は圧力が増大しても反応速度はほとんど一定値を示した。一方,常圧においてトルエンと水素の供給モル比を変えて実験した結果から, 反応速度γ は次式で整理されることがわかった。
    γ=k'PT0.2・PH2-0.96・PB-0.5 γ=
    また反応模型として, トルエンのメチル基がまず脱水素し, この脱水素したメチル基が触媒表面に吸着し, このように解離吸着したC6H5・CHxと別の吸着点に解離吸着した水素(または分子状の水素)との表面反応が律速過程であると推論された。しかしトルエンのメチル基がどの程度脱水素されて反応に与かるのかはまだ明らかでない。
  • 野崎 文男, 森川 清
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1835-1838
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本報は担体付ニッケル触媒にアルカリ性物質を添加したとき,触媒の活性および選択性にどんな影響があるかに注目して研究したものであって,対象とした反応はトルエンの核水素化および水素化脱メチル,メチルシクロヘキサンの脱水素および水素化分解,エタンの水素化分解,プロピレンの水素化などの諸反応である。その結果,一般にアルカリを添加するとC-C結合の分解能が大きく低下するのにたいして,C-C結合の分解を含まない反応にたいする接触能には影響が少ないことがわかった。またトルエンの核水素化反応においては触媒中ニッケル濃度の大小によりアルカリ添加の影響が著しく異なること,およびメチルシクロヘキサンの場合には,アルカリ添加の有無により反応の選択性に影響をおよぼし,アルカリ添加によりC-C結合の分解が抑えられて,脱水素反応にはほとんど影響のないことなどが明らかになった。
  • 助野 敏雄, 三村 政義, 野村 平典
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1838-1841
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    担体付モリブデン触媒中のモリブデン酸化物の化合形態を調べるため,まず担体物質としてアルミナ,シリカおよび活性白土を選び,モリブデン酸化物のアンモニア水による抽出性状と水素による還元性状を検討した。つぎにこれらの触媒をシクロヘキサンの脱水素反応に用いて,触媒の化合形態と活性との関係を調べた。
    550℃ で水素還元すると,アルミナ担持酸化モリブデン(VI)(A)はMoO2(平均組成)まで還元が進むが,シリカ担持触媒(B)はMoO(平均組成)まで還元が進む。300℃ 以上に焼成した触媒をアンモニア水で抽出すると,A中の酸化モリブデンの一半は抽出されないが,B中のそれは大部分抽出される。シクロヘキサンの脱水素反応にたいする活性は,AはBと比較するとかなり小さい。
    これらの事実を総合すると,既報の酸化ニッケルの場合と同様に,酸化モリブデンはアルミナゲル担体とは化合し易く,シリカゲル担体とは化合し難く,この差異が,両担持触媒の性状,活性の相違を招くものと推定した。なお活性白土は担体としてシリカに近い挙動を示した。
  • 長谷 昌紀
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1842-1845
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硝酸アンモニウムにオクタデシルアミン,その硝酸塩,またはその酢酸塩を0.5~0.2wt%添加し,微粉砕するとV〓II転移を起こさせることがでぎる。この転移について示差熱分析, およびX 線回折法によって研究した。この転移は中間相(V*)を経てV〓V*〓IIと2段階で起こる。転移温度はV〓V*約42℃,,V*〓II約45℃である。どちらもλ転移の特徴を示し,アンモニウムイオンについては温度上昇に伴なってorder-disorder的に静止(回転振動),束縛回転,自由回転と状態が変化していくものと考えられる。
  • 安藤 淳平, 松野 清一, 小笠原 安弘, 金城 巌
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1846-1851
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    抄紙助剤としての曳糸性の良いポリメタリン酸カリウムを焼成法で製造するために,少量のアルカリ土類の添加が効果的であることを認め,これに関して研究を行なった。リン酸一カリウムにリン酸一マグネシウムやリン酸-カルシウムのようなアルカリ土類リン酸塩を1~5%程度添加し,730℃ に30分程度焼成すれば,溶融徐冷法による製品に近い曳糸性,粘性を持つポリメタリン酸カリウムが得られる。
    アルカリ土類の効果は,融点を下げ,焼結を促進して結晶粒子が繊維軸方向に発達することを助けるとともに,アルカリ土類金属がリン酸の連鎖同志をむすびつける架橋的作用をすることによるものと思われる。溶融徐冷法で製造する場合は,アルカリ土類塩を加えても偏析を起こすので効果はなかった。軟化溶融温度を低下させる効果はMg>Ca>Sr>Baの順であった。
  • 奥脇 昭嗣, 鈴木 孝宏, 伊藤 宏, 岡部 泰二郎
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1851-1854
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫酸銅, 硫酸亜鉛混合溶液から, 経済的に銅を分離する方法, および塩基性硫酸銅の亜硫酸アンモニウムによる還元について研究した。硫酸塩形態の銅と亜鉛の分離法は種々考えられるが,本湿式銅製錬法には,アンモニアを用いる塩基性硫酸銅の分別沈殿分離が最適であり,銅の82%が沈殿するまで,塩基性硫酸銅の純度は平均95.5%である。更に得られる塩基性硫酸銅は亜硫酸アンモニウムによって容易に還元可能であり,反応温度,亜硫酸初濃度,Cu2+/SO32-モル比の還元に及ぼす影響は硫酸銅の亜硫酸アンモニウムによる還元と同様で,高収率で金属銅を得ることができる。
  • 中川 一兵, 桐原 朝夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1854-1857
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    還元法,電解法でえられるタンタルの粗金属を電解精製により高純度タンタルを製造する目的で本研究を行なった。
    その製造法は,アルカリハライドの融解塩中で粗金属を可溶性陽極に用い,この粗金属と塩化タンタル(V)の反応で生成する低次塩を原料とする電解精製法である。
    電解精製における製造条件について,最適範囲を求めると,(1)温度:800~850℃,(2)投入TaCl5の濃度:2%(wt%)以下,(3)陰極対陽極の面積比:1/8以下,(4)陽極電流密度:5mA/cm2以下,(5)陰極電流密度:20mA/cm2 以上となった。最適条件下で電解精製したタンタル中の不純物( 金属成分) の分離は良好であり, 高純度(99.9%以上)の金属が得られた。
  • 楯 功, 大門 信利
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1858-1861
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    先報では,羽子板型白金ルッポの下部に種結晶,上部に原料を充填し,種結晶の一部と原料を溶融してルツボを降下させ,フッ素金雲母結晶の劈開面に垂直な方向ヘブック状結晶を育成させる条件を報告した。当報告では(1)開き角45°,ルツボ降下速度0.1mm/hr,(2)開き角30°,ルツボ降下速度0.4mm/hr,温度勾配は共に15℃/cmの条件で劈開面に垂直方向へ育成したブック状結晶の光学的性質とa軸の方位を測定し,HFガスによってetchした劈開面の観察の結果,次のことを明らかにした。
    (1)得られた結晶は種結晶の光軸角の大小にかかわりなく,1M型(単層単斜晶系)に属する単結晶であると考えられる。(2)育成初期は局部的に結晶の転位の密度が大であるが,育成が進むに従って減少していた。(3)ルッボ降下速度が早いものほどHFガスによるetch pitの成長速度も早い。
  • 国富 稔, 功刀 利夫, 山田 勝巳
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1862-1865
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    人工水晶に着色性不純物を導入しその難易と着色分布を系統的に研究した。種々の着色性イオンをそれぞれ水酸化物,炭酸塩,酸化物などの異なる化合物を用いて添加して導入の難易を検討し,あわせておのおのの最適濃度範囲を決定した。その結果,不純物を水酸化物,炭酸塩として用いるのが適当であるが,それぞれの最適濃度範囲は異なることがわかった。
    また溶媒では炭酸カリウム溶液が着色に効果的であった。着色はほぼ全元素について得られたが鉄,ニッケル,コバルト,マンガン,セレンでは着色は比較的容易であるがバナジン,銅では濃い着色が得がたい。クロム,チタンでは同一条件で銀内張り製オートクレーブで育成したところ相違する色調を得たことから腐食による材質イオンの混入が考えられる。着色分布は主としてZ面(0001)に観察され,均一な場合のほかに着色縞,色調や濃淡の変化などが見られた。また鉄では結晶方位によって全く色調の相違する現象が観察された。
    結論として水晶構造への不純物イオンの導入はそのイオンの結晶学的適合性と最適濃度を育成期間中保持することが要求される。
  • 村上 徹朗, 石井 栄善
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1865-1868
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    セレンの1,8-ジアミノナフタリン試薬による呈色反応を利用して,鉱石中のセレンならびに電解銅中の微量セレンの光度定量に適用するため諸条件を検討した。この呈色反応は鉄イオンが共存すると妨害を受けるので,主成分および混入する鉄からセレンをあらかじめ分離する必要があり,これにはヒ素を添加し,塩酸酸性で塩化スズ(II)による還元でセレンをヒ素と共沈する方法をとればよかった。ヒ素添加量は1mgでよく,加熱還元のとき還流冷却器をつけてセレンの損失を防ぐ必要があった。銅鉱石中のセレン定量に本法を応用した結果は3,3'-ジアミノベンジジン法による値とよく一致し,さらに本法で電解銅中の0.5μg程度のセレンを精度よく定量し得た。
  • 鴻巣 久雄, 益子 洋一郎
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1868-1872
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    空気中の有害ガスおよび蒸気の濃度測定を行なうために非分散型紫外線ガス分析計を試作した。本分析計は標準ガスと試料ガスとの紫外吸収の差異を全波長領域について一度に測定する装置である。光源は水素放電管を用い,光学系は複光路方式で,ガスセルは長さ50cm,受光管は2次電子増倍管を使用した。本分析計により6種の試料を測定し,検量線を作成した。試料およびその検出限度(ppm)は二酸化イオウ3,二硫化炭素28,ベンゼン27,アセトン32,メチルエチルケトン3 4 , トリクロルエチレン1 3 である。相対誤差は二酸化イオウの場合100ppm以下では±9.0%,100~1000ppmでは±4.0%,1000~1250ppmでは±1.5%であった。本法によれば測定値は1 分以内で得られ, 操作も簡単であるから,本分析計は労働環境などにおける有害ガス・蒸気の定量および爆発下限界の測定にも適用し得る。
  • 西川 元, 田中 忠雄, 村山 義夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1873-1877
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    パラアルデヒドの硝酸酸化によるグリオキザール生成の最適条件を得る目的で,この反応の誘導期および初期の急激な発熱反応の様相を知るため,パラアルデヒド分割仕込法により実験を行なった。
    得られた結果は〓であり, 初期の急激な発熱現象は直接の酢酸生成(b)と, 生成グリオキザールの酸化分解( c ) とによるものである。
    反応に使用する原液への初期ギ酸添加は,使用する硝酸濃度を低下させ,誘導期を短縮し,かつグリオキザール生成を向上させるのに有効である。
    誘導期経過後,反応混合物の組成を一定に保つ連続操作法によれば,よく知られているパラアルデヒド滴下の半連続法にくらべグリオキザール収率は良好となり,反応制御も容易となる。
  • 神谷 佳男
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1877-1880
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸からミリスチン酸にいたる多種類の脂肪族酸溶媒中でテトラリンをコバルト触媒を用いて液相空気酸化し,連鎖開始(k1),進行(k3)ならびに停止(k6)などの反応速度定数を比較した。開始反応,すなわちヒドロペルオキシドの分解速度はコバルトについて2 次, ヒドロペルオキシドについて1 次であった。k 1はペラルゴン酸溶媒中では酢酸中の10倍であった。dROOH/dt=k1(Co)2(ROOH)。しかし, k 1 は酸濃度の2 乗に逆比例し, k1=k″/(Acid)2におけるk″は酸の種類に関係なくほぼ一定であった。分解速度は酸の種類ではなくモル濃度によって変化する。触媒濃度と酸化反応速度の関係を求めたところ,高濃度における限界反応速度は,炭素数の多い,従って誘電定数(D)の小さい脂肪酸ほど低い値を示したが,低濃度ではk1が大きく,炭素数の多い脂肪酸の方が高い値を示した。log(k3/k61/2)と溶媒の(D-1)/(2D+ 1 ) の相関は極めて良好であった。実験的に求めたk1とk3/k61/2から計算した低触媒濃度における反応速度〓は実験値と良く一致した。誘電定数の大きいモノクロル酢酸では限界反応速度が大であったが,触媒が徐々に不活性化された。酢酸溶媒中の反応について種々の有機酸の添加効果を検討したが,シュウ酸は等モルのコバルトを不活性化する作用を示した。
  • 三木 彦一, 斎藤 真澄, 井村 隆, 伏崎 弥三郎
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1881-1885
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルキリデンシクロヘプタンとして,メチレンシクロヘプタン,イソプロピリデンシクロヘプタンをえらび,種々の条件で自動酸化の反応速度を測定し,それより自動酸化の機構を動力学的に調べ,すでに行なった不飽和脂環炭化水素の自動酸化について得られた結果と比較し,分子構造の反応性におよぼす影響を考察した。
    メチレンシクロヘプタン, イソプロピリデンシクロヘプタンは, α - ブロム酢酸エチルエステルおよびα - ブロムイソ酪酸エチルエステルとシクロヘプタノンをそれぞれ縮合させ,脱水,ケン化,熱分解を経て合成したものを使用し,装置ならびに反応条件はいままで行なった場合に準じた。酸化は50~75℃ の範囲で,酸素分圧は50~750mmHg,試料濃度を0.46~1.58mol/l,BPO濃度を試料1molあたり0~0.04mol,紫外線強度を32~100%の間で変化させて行なった。得られた反応生成物からこの自動酸化反応では,主として2の位置にそれぞれヒドロペルオキシド(HPO)が生成していることが明らかになった。そして,この生成量は酸化の初期では酸素の吸収量に比例することが認められた。酸化の速度はいずれの試料においてもBolland,Batemanらが提出したオレフィンのそれと一致する。これらの反応中心における水素引抜きのエネルギーはメチレンシクロヘプタンでは, 11kca/mol,イソプロピリデンシクロヘプタンの場合には9kcal/molであり,5員環化合物よりも小さいが,4,6員環化合物よりも大きいことがわかった。
  • 中島 和久, 北原 雅夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1885-1889
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    気相接触法によるイソブチレンよりのメタクリロニトリルの生成経路は,つぎのようにメタクロレイン経由の(1),(2)の反応よりなるものとみとめられる。
    イソブチレン〓メタクロレイン〓メタクリロニトリル
    (1)および(2)の各反応を前報の触媒を用いる流通法で行ない,各主反応と副反応(完全燃焼など)の速度を検討し,それぞれの反応速度定数および見掛けの活性化エネルギーを求めた。また,反応速度定数比より,それぞれの主反応と副反応の生起割合を比較考察した。
    これらの結果より,アルミニウムスポンジ担持のV2O5-MoO3-P2O5触媒がメタクリロニトリル生成の良好な活性と選択性を有することを明らかにした。
  • 鵜飼 哲雄, 宗像 秀明
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1890-1893
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-(1,2-ジブロムエチル)-1,3-ジオキソラン, 2-(1-ブロムエチル)-1,3-ジオキソランを, ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)存在下,130~135℃ で反応させた結果,3-ブロムプロピオン酸-2-ブロムエチル,プロピオン酸-2-ブロムエチルが,それぞれ高収率で得られることを見出した。この反応に対して,アセタールラジカルの強い求核的性質および臭素ラジカルの強い求電子的性質を考慮して,分子内の臭素転位を伴なった,エステルへの転位機構を考えた。
  • 鵜飼 哲雄, 宗像 秀明
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1893-1896
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-イソプロピル-1,3-ジオキソランと2-ブロムプロピオン酸エチルを, ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)存在下,135 ℃ で反応させて, イソ酪酸-2-ブロムエチルおよびプロピオン酸エチルを得た。2-イソプロピル-1,3-ジオキソランとベンジルブロミドを同様な条件下で反応させて,イソ酪酸-2-ブロムエチルおよびトルエンを得た。2-メチル-1,3-ジオキソランに対する,p-置換ベンジルブロミドの相対反応性を求め,その結果,この反応がアセタールラジカルの臭素-炭素結合に対する求核的反応であることを推論した。これらの反応機構についても考察した。
  • 大竹 俊樹, 玉手 英四郎
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1896-1900
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ショ糖脂肪酸モノエステルは,多重展開薄層クロマトグラフィーにより5個のスポットにわかれ,Rf値の小さいものから,M1,M2,M5となづけると,量的順位はM2>M1>M5>M3>M4であった。ショ糖モノパルミテート水溶液に酵母インベルターゼを作用させると,M2,M4,およびM5のみ,加水分解される。その際,M2の分解によって単生じる糖モノエステルが結晶状に得られ,元素分析および呈色試験から,グルコースモノパルミテートの異性体の一種と考えられる。また結晶性ショ糖ジエステル(D1)の部分エタノリシス生成物から少量のM 2 をともなったショ糖モノエステルM 1 を得た。M 1 の加水分解によって生じた単糖モノエステルの呈色反応, およびM 1 が酵母インベルターゼの作用をうけないことから,M1はフラクトース側に置換基を有するショ糖モノエステルと推定した中含量が。D1はショ糖ジエステル最も多く,M1およびM2の置換位置双方に置換基をもつショ糖ジエステルと考えられる。以上の結果とメチル化分析等によった他の研究者の結論を総合して, M 1 は6' , またM 2 は6 位置置換体と推定した。結晶性ジエステルD1は6 , 6'位置ジ置換体と考えられる。
  • 須本 操, 長谷川 幸教
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1900-1906
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    二塩基酸とグリコール類とから,直接ポリエステルを合成する場合の,とくに反応初期における動力学的研究を行ない,反応機構について考察を行なった。反応はすべて密閉系で行ない,カルボキシル基に対する水酸基のモル比OH/COOH(G)を0.44~8.0とし,130~235℃の温度範囲で実験した。
    反応の経過は未反応カルボキシル基を定量することによって求めた。
    その結果,カルボキシル基の解離によって生成したH+が触媒として作用するとしたときの,2.5次の可逆反応速度式によく適合し,Floryらによって指摘された反応初期における動力学的次数の増加は認められなかった。強酸触媒の存在する場合は2次式によく適合した。速度定数はGの増大につれて減少し,そして触媒濃度の1乗に比例することが見出された。グリコールのメチレン基およびカルボン酸の酸強度の増加は速度定数の増加をもたらす。
  • 永井 芳男, 長沢 孝太郎
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1906-1909
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ビオラントロン(III)は重要な建染染料, および染料中間体であり, また有機半導体研究の素材の一つとして, しばしばとりあげられている。著者らは,3,3'-ジベンゾアントロニル(II)を常圧または窒素気流中減圧下, 加熱融解することによって, 純粋なビオラントロンをほとんど定量的に生成することを見出した。しかしながら, 原料の3 , 3' - ジベンゾアントロニルの従来の合成法によっては, その収率は高くはない。著者らは, 硫酸- ポリリン酸混合溶媒中で二酸化マンガンによりベンゾアントロン(I)を酸化し, 3,3'-ジベンゾアントロニルを高収率( 対理論収率85.7%)で合成しえた。また, 一般に酸性溶媒中, 酸化剤によりベンゾアントロンを酸化し, 3 , 3'-ジベンゾアントロニルを生成する際, 副生する, その酸化生成物についても検討し, これをカセイカリ融解して木綿布をあかるい灰青色に染める染料をえた。
  • 永井 芳男, 西 久夫, 長谷川 日吉
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1910-1914
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1)p-ベンゾキノンと5-メチルアントラニル酸を酢酸中で縮合させて2,5-ビス-(2-カルボキシ-4-メチルアニリノ)-1,4-ベンゾキノン(I)とし,これを熱濃硫酸またはポリリン酸中で閉環させ,2,9-ジメチル-キノ-[2,3-b]-アクリジン-6,7,13,14-(5H,12H)-テトロン(以下2,9-ジメチル・キナクリドン・キノン)(II)を合成した。この化合物の精製を目的として粗製品を水酸化カリウムと処理してモノカリウム塩(III)とし,ついでこれを酢酸と煮沸してIIを再生させ,硫酸閉環法では79.2%,リン酸閉環法では84.3%の収率(それぞれIからの通算収率)で純粋かつ鮮明な燈黄色結晶性粉末を得た。IIIは褐色結晶である。
    また,IIを塩酸とスズで処理し,ロイコ・2,9-ジメチル・キナクリドン・キノン(IV)の青色粉末を得た。収率98.6%。
    2)p-ベンゾキノンと4-クロルアントラニル酸を酢酸中縮合させ, 2,5-ビス-(2-カルボキシ-5-クロルアニリノ)-1,4-ンゾキノン(V)とし,これを熱濃硫酸または,ポリリン酸中で閉環させ,3,10-ジクロル-キノ-[2,3-b]-アクリジン-6,7,13,14-(5H,12H)-テトロン(以下3,10-ジクロル・キナクリドン・キノン)(VI)を合成した。この化合物の精製を目的として粗製品を水酸化カリウムと処理してモノカリウム塩(VII)とし,ついでこれを酢酸と煮沸してVIを再生させ,硫酸閉環法では82%,リン酸閉環法では78.5%の収率(それぞれVからの通算収率)で,純粋かつ鮮明な黄色結晶性粉末を得た。VIIは赤褐色結晶である。また,VIを塩酸とスズで処理し,ロイコ・3,10-ジクロル・キナクリドン・キノン(VIII)の紫青色粉末を得た。収率98.9%。番号を付した化合物はすべて文献未記載である。
  • 木村 光雄, 醍醐 博, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1915-1918
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ビス(サリチルアルデヒド)-o-フェニレンジイミン金属錯塩およびビス(サリチルアルデヒド)-1.8-ナフチレンジイミン金属錯塩(いずれも金属は銅またはニッケル)にアリールアゾ基を導入し,三環型金属錯塩染料としての適用性を検討するため, アミラン(6-ナイロン)および, ビニロンを染色し, その色調, 染着性, 鮮明度, 堅ロウ度などを調べた。1,2,4-(NH2)(R1)(R2)C6H3[R1=H,NO2, R2=COOH,NO2]をジアゾ化し, サリチルアルデヒドにカップリングせしめ, アゾ化合物を合成し, これをo-フェニレンジアミン, 3,4-ジアミノ安息香酸および1.8-ナフチレンジアミンに縮合せしめた。また, p-アミノ安息香酸をジアゾ化し,1.8-ナフチレンジアミンにカップリングせしめ, これをサリチルアルデヒドおよび5-ブロムサリチルアルデヒドに縮合せしめた。さらにこれらの縮合化合物を金属塩と処理して金属錯塩化した(縮合化合物と金属の比は1:1)。そして分散染色法でアミランおよびビニロンを染色した。染色布の色調はいずれも赤味黄ないしだいだい色,または紫色であり,アミランに対する染着性は特にすぐれていた。各種堅ロウ度試験結果は日光5~6級,洗たく(汚染,変退色共)4級,摩擦4級程度以上のものが多く,これらの染色結果は既知の1:2型金属錯塩染料の場合および既報のサリチルアルドオキシム系,サリチリデンアニリン系の金属錯塩染料の場合と同等程度であった。
  • 丸山 雄士, 腰本 晋輔, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1919-1923
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    3-位のフェニル基を通して共役するアゾール環(ベンズイミダゾール, チアゾール, オキサゾールおよびナフトリアゾール) を有するクマリン誘導体を合成した。これらの化合物は可視部にケイ光を示し, ジメチルホルムアミド中のケイ光強度は1×10-5mol/lで比較してトリアゾール> チアゾール>オキサゾール>イミダゾールの順であり, 極大波長は強度度の大きいものの方が短波長側にある。これらの化合物を用いて各種合成繊維( アセテート, ビニロン, アミラン, テトロンおよびポリプロピレン) を増白し, その増白効果およびこれら増白布をカーボンアーク灯退色試験機中で照射し, そのケイ光強度の低下を測定することによって耐光性を試験した。3-(p-(ベンズイミダゾリル-(2))-フェニル)-クマリンおよび5 , 6-ベンゾクマリンのアゾール誘導体は, 繊維上でそのケイ光が長波長側に移り, 増白効果は十分でない。しかしベンズチアゾール, ベンズオキサゾールおよび1,2-ナフトトリアゾール環と共役するクマリン誘導体は, アミランおよびテトロンに対して良好な増白効果を示す。これらの耐光性はアミラン上では劣るが, テトロン上では比較的良好な結果が得られた。
  • 渡辺 鋼市郎, 中村 亦夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1923-1925
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルカリセルロースをつくるとき,無水グルコース単位に対し,エピクロルヒドリンを0.02mol以下作用させることにより,高粘度でしかも透明度の良いセルロースグリコール酸ナトリウムをつくることができる。この方法によれば同-パルプで,製品の粘度を約200cpから1500cp(25℃,1%水溶液)の範囲にわたり任意に調節することができる。
  • 渡辺 鋼市郎, 中村 亦夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1926-1928
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1回のエーテル化を行なうだけで,DS1.0以上のセルロースグリコール酸ナトリウムをつくることができた。しかし,それ以上のDSになると,モノクロル酢酸の有効利用率が50%以下となり,1回のエーテル化だけでは困難である。またエーテル化剤としてモノクロル酢酸の代りにモノクロル酢酸ナトリウムをもちいた場合も,ほとんど同じ結果である。
    そこで1 回エーテル化して得られたセルロースグリコール酸ナトリウムを, 2 回あるいは3 回とエーテル化を繰り返すことにより,高DSの製品を容易に,しかも高い収率で得られることがわかった。すなわち,2回のエーテル化によりDS1.40,3回のエーテル化によりDS1.74の製品を,それぞれ使用したモノクロル酢酸の70%および58%という高い有効利用率でつくることができた。
  • 高橋 彰, 寺町 信哉, 尾関 義信, 香川 毓美
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1929-1932
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    未分別ポリオキシメチレン・ジアセテート(POM)のフェノール溶液(90℃)の浸透圧測定,ならびに末端基定量によって分子量を測定し,またフェノール(90℃)およびジメチルホルムアミド(140℃)溶液の粘度測定より次の粘度式を得た。
    (1)[η]=7.1×10-4Mn0.65:フェノール(90℃)
    (2)[η]=1.2×10-3Mn0.57:DMF(140℃)得られた結果は,鎖の拡がりを推定するためにはかなりの不確かさをもってはいるが,実験誤差を考慮して行なった倉田・Fixmanプロットから求められたKθ は,
    (a)フェノール(90℃ ):Kθ=(2.4±0.2)×10-3dl・mol1/2/g3/2
    (b)DMF(140℃):Kθ=(2.1±0.3) × 10- 3dl・mol1/2/g3/2
    であり,これから評価される“Characteristic Ratio”σ=(<r02>/<r0f2>)1/2は,(a)フェノール:σ=1.8±0.1,(b)DMF:σ=1.7±0.1であった。
  • 杉浦 正昭
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1932-1936
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール(PVA)を含む臭化銀ゾル中で臭化銀粒子表面に吸着されるPVAの状態を研究するために,PVAの低い濃度で(凝集沈降し始める前の比較的安定なゾルの状態で)臭化銀粒子の電気泳動移動度およびゾルの濁度を測定した。ケン化度および分子量の異なるPVAを用いたが,ケン化度の低いもの(ケン化度90~100%の範囲で)および分子量の大きいPVAにおいて,その分子と臭化銀表面との結合力が大きい傾向を示した。表面をPVAによっておおわれた臭化銀および,おおわれない臭化銀粒子の電荷密度とPVA分子の荷電量から臭化銀粒子表面におけるPVAの吸着量の算出を試みた。
  • 山下 岩男, 芹沢 実
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1937-1940
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の五酸化リン量の存在下で,塩化亜鉛あるいはジエチル亜鉛をもちいて,プロピレンオキシドの塊状重合を行なった。生成ポリマーはリンを含んでおり,プロピレンナキシドのホモポリマーはほとんど存在しなかった。このポリマーのリン含量は,仕込み五酸化リン量に依存しており,重合時間や塩化亜鉛あるいはジエチル亜鉛の量には無関係であった。低リン含量のポリマーのIRスペクトルは,低分子量のプロピレンオキシドのホモポリマーとほとんど変らなかった。しかしながら,高リン含量のポリマーでは,リン酸エステル(P-O-C)およびホスホリル基(P=O)に関連する特性吸収帯があらわれる。そしてリン含量の増加にともなってこの特性帯の強度が増加する。ポリマーはシクロヘキサンで可溶部(I)と不溶部(II)に分別された。(II)のリン含量は,(I)のそれよりも高く,(II)は約200℃ で分解する。これらのことはポリマー(I)および(II)ともに,ポリプロピレングリコールと,リン酸あるいは縮合リン酸から重縮合反応によって得られると考えられるような化学構造をもっており,さらに(II)は,橋かけ構造をもっていると推定できる。
  • 松岡 公明, 竹本 喜一, 井本 稔
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1941-1947
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化ビニルとプロピレンおよびイソブチレンとの共重合を種々の条件下で検討し,単量体中のプロピレンおよびイソブチレンのモル分率が増加するにしたがって重合速度がいちじるしく減少するとともに,共重合度が低下し,また重合収率の増加とともに,共重合体中の塩化ビニルのモル分率が低下し,さらに温度上昇による重合速度の増加はいちじるしく,また重合収率および重合度が溶媒に影響されることが見出された。さらに開始剤の違いにより重合収率および共重合体の性質の異なるものが得られた。
    また塩化ビニル(M1)とプロピレン(M2)およびイソブチレン(M2')の反応性比は60℃においてγ 1=2.27,γ2=0.3およびγ 1 =2.11,γ2' =0.34と求められ, これよりQ,eはプロピレン, イソブチレンのいずれの場合についてもQ =0.02,e=-0.4と算出された。
    さらに共重合体についての性質を検討したほか,脱塩酸速度の測定を行ない,塩化ビニルの単独重合体のそれと比較検討し,また二,三の共重合体についてX線的研究を行なった。
  • 金井 宏俶, 槇本 勉, 鶴田 禎二
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1947-1956
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチル,エチル,イソプロピル,t-ブチルおよびそのほかに二,三のメタクリル酸エステルのラジカルならびにアニオン重合を行ない,得られた重合体を加水分解してポリメタクリル酸とし,さらにメチル化してポリメタクリル酸メチルに変えた後,NMRによって各ポリメタクリル酸メチルの立体規則度を定量した。Bovey,Miller,Coleman,笛野らがそれぞれ定義した“persistance”の確率, σ , Pddd,Pdld,ρ,σ2を求めると, “penultimate” 効果の寄与はエステル基,触媒,溶剤,重合温度によって変化し,さらにエステル基の効果はフリーラジカルとフリーイオン重合とで異なり,また配位アニオン重合においては金属の性質によって影響を受けることを認めた。
  • 新 祐治
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1957-1963
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(III)-トリエチルアルミニウム系触媒によって,3-メチルブテン-1の重合を45~90℃ で検討した。同じ触媒によるエチレン,プロピレン重合と異なり,触媒成分のモル比(Al/Ti)が重合活性にいちじるしい影響を与え,モル比1.5付近で活性は最大となり,重合体の結晶性はモル比の大きいものほど低下する。このような特異性を考慮して,3-メチルブテン-1の重合機構をエチレン,プロピレンの重合機構と比較考察した。重合反応の見掛けの活性化エネルギーは,45~75℃ で約6kcal/molとなった。触媒にn-ブタノール,ジブチルエーテルなどの第3成分を少量添加すると,重合速度をいく分増大しうるが,プロピレン重合の場合と異なり,重合体のアイソタクチック度の増大は認められなかった。重合によって得た粉末重合体は比較的結晶化度も小さく,融点は240℃ 程度であるが,300℃ 以上で一度溶解すると結晶化度が上昇し,融点は290℃ 程度となる。しかし,この場合,結晶構造の変化は認められなかった。
  • 岩月 章治, 山下 雄也
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1963-1966
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-ジオキセン(PD),無水マレイン酸(MAnh)およびアクリル酸β-クロルエチル(CEA)のラジカル三元共重合を行なった。三元共重合体のPD,MAnhの組成比は仕込モノマー組成比に無関係に1:1であることおよびCEAがかなりの量入ることがわかった。
    前報のアクリロニトリル(AN)を含む三元共重合と同じ結果を得た。PD-MAnhの錯合体とCEAとの二元共重合の取り扱いで共重合反応性比はつぎのとおり求まった。γ1K(complex)=2.3±0.5γ2/K(CEA)=0.48±0.05
    ここでKは錯合体生成の平衡定数である。以上の結果からPDとMAnhの交互生長段階がモノマー状態で錯合体を生成しその錯合体が重合に関与することおび錯合体の性質について考察した。CEAとMAnhおよびCEAとMAnhの二元共重合も行なった結果つぎの共重合反応性比を得た。
    CEA-MAnh共重合γ1(CEA)=6.2±0.5γ1(MAnh)=0.03±0.5
    CEA-PD共重合γ1(CEA)=12.9±1.0γ2(PD)=0.0±0.1
  • 岩月 章治, 村上 昌宏雄, 山下 雅也
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1967-1969
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-クロルエチルビニルエーテル(CEVE),無水マレイン酸(MAnh)およびアクリロニトリル(AN)のラジカル三元共重合を行なった。三元共重合体のCEVE,MAnhの組成比は仕込モノマー組成に無関係にほぼ1:1であること,およびA N がかなりの量入ることがわかった。前報のp-ジオキセン(PD),MAnhとANまたはアクリル酸β-クロルエチルの三元共重合のPDとMAnhの挙動と同じである。したがって,CEVEとMAnh間のモノマー状態の相互作用がこの共重合の場合に無視できない。CEVEとMAnhの間に錯合体が生成し,それが重合するとして錯合体とANの二元共重合として解析することも可能で共重合反応性はつぎのように求まる。
    γ1K(complex)=8.4±0.6γ2/K(AN)=0.07±0.05
    ここでKは錯合体生成の平衡定数である。CEVEとANのラジカル共重合も行なってつぎの共重合反応性を得た。γ1(CEVE)=-0.07±0.1γ2(AN)=1.0±0.2
  • 麻生 忠二, 曾我部 正照
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1970-1973
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジアリルエーテル(DAE)の重合中における環化の可能性を検討するため,四塩化炭素やクロロホルム中でテロメリゼーションを行ない,DAE,溶媒各1分子よりなる環状生成物が,それぞれ得られた。クロロホルム中で得たものは,分析,IR,NMRスペクトルなどよりみて, 〓の構造をもつものと思われる。これは環化のさい,6員環よりも5員環が優先して生じたことを示している。つぎに2-メチル-5-ビニルピリジン(MVP),アクリロニトリル(AN)と共重合を行ない, つぎの反応性比(MRR)を得た。
    DAEのアリル基(M1)-MVPγ1=0,γ2=80(70℃ )
    D A E のアリル基(M1)-ANγ1=0.01±0.01,γ2=4.9±0.3(80℃ )MVPとの共重合では,DAEの反応性は極めて小さく,むしろ連鎖移動剤として働く傾向を示し,みかけの連鎖移動定数比Cs=2.14×10-3を得た。
  • 国友 哲之輔, 谷本 重夫, 小田 良平
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1973-1976
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シクロペンタジエニル酢酸メチル, シクロペンタジエニル酢酸エチル, β-シクロペンタジエニルプロピオン酸エチルおよびω-シクロペンタジエニルカプロン酸メチルを合成した。このうちからシクロペンタジエニル酢酸メチルをえらび,これにdienophileとして, アクリル酸メチルを反応させてビシクロ[2.2.1]-ヘプテン-2誘導体をえた。さらに, これを水素添加して飽和のジカルボン酸ジメチルエステルであるビシクロ[2.2.1]-ヘプタン誘導体をえた。これをエチレングリコールと縮合させて, ポリエステルを, ヘキサメチレンジアミンと縮合させてポリアミドを合成した。しかし, 出発物質であるシクロペンタジエニル酢酸メチルが構造異性を有するので, えられたポリマーのくり返し構造単位はノルボルナン構造であるが, それの構造異性体の不規則に配列したものと考えられる。
  • 国友 哲之輔, 谷本 重夫, 小田 良平
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1976-1979
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-ビニルベンジルメチルカルビノール, p-ビニルフェニルエチルカルビノール, p-ビニルフェニル- n-プロピルカルビノールおよびp-ビニルフェニルジメチルカルビノールをグリニャール反応によって合成した。これらはすべて新しいビニルモノマーである。BPOを触媒としてこれらを塊状重合させてポリマーをえた。かくしてえられたポリマーを無水酢酸とピリジンで処理してアセチル化物にした。しかし,ポリ-p-ビニルフェニルジメチルカルビノールについてはおこなっていない。また,ポリ-p-ビニルベンジルメチルカルビノールおよびポリ-p-ビニルフェニルエチルカルビノールについては,これらをケイ皮酸クロリドとピリジンで処理して感光性樹脂を合成した。
  • 原田 宏, 東 広巳
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1980-1985
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジフェニルケテンと酸素との反応を検討し,それによって生成する重合物の構造を明かにした。ジフェニルケテンの酸素吸収速度を種々の溶媒中で測定した結果,ジフェニルケテン1molに対しほぼ酸素1/2molが吸収されることがわかった。生成する重合物は有機溶剤により分別しおのおのジオキサン中で氷点降下法による分子量を測定したが, 非極性溶媒中で重合せしめるほど分子量は大きく, 極性溶媒中では低分子量重合物やベンゾフェノンが生成する。また同様な現象に対して重合温度の影響を検討したが, これは重合溶媒の極性ほど顕著な影響はおよぼさない。同時に, 生成するジフェニルケテンの酸化重合物の構造を調べた結果重合物は元素分析値および赤外吸収スペクトルからC14H10O2のくり返し単位を有するポリエステルと推定できたので,さらにこれを確認するためベンジル酸を出発物質とする他の方法で重合物と同一構造を有すると思われる物質を合成し,これら両者からLiAlH4による還元分解で収率よくα,α'-ジフェニルエチレングリコールが誘導されることを知り, 酸化重合物の構造は〓であることを確認した。
  • 多田 紘一, 三枝 武夫, 古川 淳二
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1985-1989
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2官能性の無水ピロメリット酸と3員環,または4員環エーテルとの共重合を希薄溶液中で行なうと,重合系はゲル化せずに有機溶剤に可溶の共重合体が得られた。IRスペクトルでしらべると,酸無水物基が全部消費されており,また生成物が可溶性であることおよび氷点降下法,末端基定量法による分子量がほぼ一致したから,このものの構造はべンゼン核を橋かけにして, その両側で酸無水物と環状エーテルとが交互共重合した“はしご”状ポリマーであると推定した。ただ共重合体の組成は3 員環エーテルとの組合せでは3 員環エーテルの方が酸無水物基より多く入っており, 完全な“はしご”ではなく, エーテルの連続した部分も存在し, 部分的に“はしご”構造が乱れているようであった。
  • 須本 操, 磯崎 哲正
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1989-1994
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高分子原料としてピペラジンを利用し,しかも溶解性に富み,高結晶性,高融点の高分子化合物をつくる目的で,ピペラジン環を含む各種二塩基酸エステルを合成し,それとジアミン類とを反応させることによって,ポリアミドおよびポリ尿素を合成した。
    反応はプレポリマーを合成する第1段階と,高重縮合体を合成する第2段階とに分けて行ない,溶媒,触媒の存在する場合についても研究した。
    得られたポリアミドの多くは,メタノール,エタノール等のアルコール類,四塩化エタン,酢酸および水(酸性)に溶解した。耐熱性はそれぞれ良好でないが, ピペラジン- N , N' -ジプロピオン酸ジメチル, ピペラジン- N , N ' -ジ炭酸ジフェニル等は各種ジアミンと反応して,容易に高融点,高結晶性のポリアミドおよびポリ尿素を与えた。ポリアミドに比べポリ尿素の方は,溶解性は劣るが,耐熱性はまさった。
  • 西崎 俊一郎, 不可三 晃
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1995-1997
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p,p'-ビビスクロルメチルジフェニルエーテルとジメチルジクロルシランのグリニャール反応生成物を加水分解, シロキサン縮合平衡化を行なって, 〓型の共重合体をえた。IRスペクトルでは,839cm-1に特有なバンド,また1030~1080cm-1領域の吸収位置がシロキサン含量によってシフトすることを示した。y/x比が1.0,2.6,4.6の重合体I,II,IIIの窒素中の熱天秤では350℃ 以上で分解がはげしく起りシロキサン含量の高いものほど主分解の温度が低い。350℃ 定温熱分解でも,I,II,IIIの順に分解速度が大きいことがわかった。Iの熱分解の活性化エネルギーは,49.5kcal/molであった。II,IIIの熱分解留出物のなかには,ジフェニルエーテル誘導体のほかに,環状トリシロキサンも含まれていた。
  • 遠山 一郎, 中村 富三
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1998-1999
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 松尾 力, 船田 俊佑, 篠崎 晶夫
    1965 年 68 巻 10 号 p. 1999-2000
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 松尾 力, 船田 俊佑, 原 英樹
    1965 年 68 巻 10 号 p. 2000-2001
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
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  • 林 孝雄
    1965 年 68 巻 10 号 p. 2002
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
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  • 1965 年 68 巻 10 号 p. A99-A110
    発行日: 1965/10/05
    公開日: 2011/09/02
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    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers
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