工業化学雑誌
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69 巻, 11 号
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  • 笠岡 成光, 阪田 祐作
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2029-2034
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    一連の触媒粒子の固有活性(速度定数:k)や粒子内有効拡散係数(De)が同じであっても,これらの複数個を用い,単位量(質量あるいは容積) を基準に求めた反応速度は粒径分布や形状の相違によって, かなりの差異が生じる場合がある。そこで, これらの関連性を定量的に評価するために,粒径(2R0)や形状(Vp/S0;Vp:粒子見かけ容積,S0:粒子見かけ外部表面積)のみ異なる触媒粒子混合系[i) 異径球, ii) 異高円柱, iii) 異径・異高球- 円柱, iv) 異高, 異孔リング, など] の場合に対して, 外部物質移動抵抗の存在しない条件下での全混合粒子総括有効係数の数値的検討を行なった。すなわち,等温1次反応系総括有効係数(η0)は次式のように,η0=Σfi・η(φi);〓,fi=Vpi/ΣVpi各粒子の有効係数[η(φi)] と容積分率(fi) の積の和として, 表示されるが, 混合粒子数が10 個以内では, Vp/S0 にほとんど無関係に, また, 多くの粒子混合系では, Vpi/S0の最大値が最小値のほぼ1.5 倍以内にあれば, 混合粒子の代表特性長さとして,ΣVp/ΣS0を,すなわち,φiの単一粒子形状相関モジュラス〓の代りに,〓を採用し, η(φm) を算出することによって, η(φi) やfiが未知であっても, 総括反応速度( =η0kC ) に影響を与えるη0 をかなり精度よく近似評価[η0≒η(φm)] できることを明らかにした。
  • 菅 健一, 古川園 竜蔵, 欅田 栄一, 大竹 伝雄
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2035-2040
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    接触的な熱分解,あるいは脱水素反応などの多くの炭化水素の反応では,触媒表面上に炭素状付着物,いわゆるコークが付着する。この付着物の蓄積は触媒活性を低下させる。そのため定期的に再生を行なわなければならない。この触媒の再生には一般に空気によるコークの燃焼という方法がとられている。
    本研究では, アルミナ- クロミア触媒に付着したコークの燃焼機構をとりあつかう。燃焼速度は微分反応管で500~700℃ , latmで測定した。反応途上にある触媒粒子を切断し,その断面を調べ,この反応に殻状モデルを適用し,実験データによって,その反応の律速段階としてのガス境膜拡散,粒子内拡散,界面反応の3段階について検討した。この結果,粒子内拡散過程が律速であることがわかった。またコーク燃焼速度は次式で示される。

    ここで〓は粒子内拡散係数, Co2g は気相中の酸素モル分率, ρC は触媒粒子内のコークのモル密度, L は触媒粒子の半径, nC ,nC0はそれぞれ触媒粒子内の残留炭素量および初期炭素量である。
    上式に基づいて実験結果から,反応状態の酸素の有効拡散係数が算出される。この値は隔膜法によって測定された窒素の拡散係数を反応温度における酸素に換算したものとよく一致した。
  • 大平 一昭, 釣谷 泰一
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2040-2049
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    印刷インキの原始状態における流動特性を考究する目的をもって, まずプランジャー型進入度計の非ニュートン流動に関するレオロジー方程式を誘導した。ついでプランジャー型進入度計を試作し, 数種のワニス, 印刷インキの流動性をしらべるために, 流動曲線を画き,その結果をスプレッドメーターの流動曲線と比較検討した。そして次のようなことがわかった。
    (1)ニュートン流動を示す液体やワニスでは5×103ポイズ以上の高粘度になると,装置に原因する摩擦係数等の影響と,浮力の影響があって, スプレッドメーターとの間に若干の差があった。それらの定数を補正することによって, 流動直線は一致することがわかった。また2×103ポイズ以下ではそのような補正は必要がない。
    (2)ベキ数則に従う非ニュートン流動の原始状態の液体やペーストでは,荷重に対する影響が大きくて,スプレッドメーターの流動曲線と一致する荷重の限界があり,原始状態におけるレオロジー的構造の研究には興味ある課題である。
    (3)ビンガム流動体を示すワニスやペーストでは,低荷重でない限り,よく一致する。
    (4)印刷インキ用号外ゲルワニスの原始状態における静的粘弾性挙動をしらべ,温度,荷重に対する影響は顕著で,特に回復における定常粘性率η3は∞であり,おくれ粘性の温度依存性の大きいことから,単純な線型粘弾性物質でないということがわかった。
  • 谷 忠昭, 菊池 真一
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2049-2053
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    写真の分光増感作用の研究に,あるいは実用面において,各種写真増感色素の吸収極大波長(λmax),および,感光極大波長(Smax)の知識はきわめて重要である。著者らは,半経験的LCAO-MO法を用いて,写真増感色素として代表的な23種の対称型シアニン色素の, λmaxとSmax を計算した。その結果, シアニン色素の最大波長の吸収はB1 に属し, 最高被占準位から最低空準位への電子遷移に相当し,色素分子の長軸方向の遷移モーメントを持つことを確かめた。また,種々の溶媒,およびハロゲン化銀のλmax に対する影響をMcRae の溶媒效果の理論式を用いて検討し, これらと色素との相互作用が, 広義のvan der Wa-als力(分散力,配向力,誘起力)で説明できることを明らかにした。以上の結果をもとにして,色素の最高被占準位と最低空準位のエネルギー差の計算値を,λmaxおよびSmaxの実測値と対応させたところ,きわめてよい一致が得られた。
  • 谷 忠昭, 菊池 真一
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2053-2056
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    写真の分光増感,および減感作用の機構を明らかにするためには,写真用色素とハロゲン化銀のエネルギー準位の位置の相対的関係についての知識が必要である。分子のエネルギー準位に関する知見は, 間接的にポーラロ半波電位から得ることができる。すなわち, 芳香族炭化水素など種々の化合物について, 最低空準位εlv の計算値とポーラロ半波電位E1/2 との間に直線関係が認められている。本研究では,前報で得られたシアニン色素とナフタリンのεlvの計算値をE1/2と比較し,両者の間に直線関係の成立することを確かめた。これらをもとにして,各種シアニン色素の気相の電子親和力,およびイオン化エネルギーとして,それぞれ1.1~2.2eV,および6.4~7.8eVを得た。一般にメチン鎖が長くなるほど,電子親和力は大きく,イオン化エネルギーは小さいことが明らかになった。
  • 杉浦 正昭
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2056-2059
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    希薄なボリビニルアルコール(PVA) 溶液に, 硝酸銀と臭化カリウムより生成した臭化銀ゾル( 臭化カリウム過剰) を混合し,さらに種々の濃度の界面活性剤( 陽イオン, 陰イオン) を加えて, 凝集沈降を起こさない条件でこれらのゾルの電気泳動および濁度の測定を行なった。陽イオン活性剤を添加した場合,活性剤濃度の増大と共にゾル粒子の負のζ電位はしだいに低下し,そして正の電位に逆転するが,ある活性剤濃度以上で急激に正の電位を上昇する。濁度はζ電位0付近の活性剤濃度において最大値をとるが,正の電位が急激に上昇する濃度においても再び濁度の上昇が認められた。陽イオン活性剤を含むPVA溶液の電気泳動および粘度測定では,PVAに対する活性剤の吸着は認められない。陰イオン活性剤を添加した場合は,ゾルの電気泳動,濁度の測定値にほとんど変化を与えない。しかし多量に添加した場合,PVA溶液の電気泳動,粘度測定から,活性剤がPVAに吸着する傾向が認められた。
  • 井野 司郎, 富沢 敏, 外山 茂樹, 児玉 堅次郎, 神谷 国雄
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2060-2065
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    人形峠ウラン鉱を移動充テン層により連続塩素化を行なった時の脱水,塩素化条件とウランその他の鉱石成分の反応および挙動について検討した。移動充テン層による連続脱水では,炉内の水蒸気分圧が高いため,少量の試料に比し著しく長時間を要し,また,高温で長時間加熱するとウラン揮発率は低下する。塩素化ガスを希釈することなく塩素化を行なえば,鉱石中にウランの蓄積を見る。希釈したガスで塩素化すれば,ウラン揮発率は向上するが,希釈不十分の時は,長時間の塩素化で次第にウラン揮発率は低下の傾向を示す。これらは生成する塩化アルカリの作用によることを明らかにした。
  • 小林 悦郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2065-2070
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸アンモニウムは濃厚リン酸, 縮合リン酸などのアンモニア化によってつくられているが, 生成過程における酸性溶融塩による反応装置の侵食が問題になっている。本研究はその点を改善するため, 原料にリン酸二水素アンモニウムと尿素と適量の水を用い結晶状縮合リン酸アンモニウムを合成した。
    NH4H2PO4,(NH2)2CO,H2O(mol比1.0:0.5~2.0:1.0)の混合物を反応容器に採り,120~160℃で30~60分間加熱すると,混合物は90±5℃で融解し,直ちに作用しはじめ,NH4H2PO4(NH2)2CO系の融点118℃を越えると著しい脱水反応が行なわれる。熱処理によって得られた溶融塩は容器より取り出し,冷却後結晶状塊に固化させた。
    反応生成物は水に可溶性,窒素18~30%,リン13~27%を含有し,その組成値は原料の混合比によって調節できる。適当な反応条件で得られたものは中性で肥効成分(N+P2O5)が70~76%の高濃度に達し,縮合リン酸塩(重合度2~10位)に70~95%転化,若干の未反応尿素を残留するが,ビウレットの副生は0.3%以下で化成肥料として期待できる。なおこの反応系にKH2PO4を添加した場合についても検討した。
  • 本岡 達, 石崎 睦美, 野津 晴代, 小林 正光
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2071-2077
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    最近, 工業界でウルトラ領域縮合リン酸塩が盛んに用いられている。このものは従来使用されていたピロ, トリポリおよびいわゆるヘキサメタリン酸塩などよりも有効であるとされている。そこで著者らは, その大きな原因の一つとみられる封鎖作用を調べつぎのような結果を得た。すなわちウルトラ領域縮合リン酸塩は
    1)Tl+およびCd2+に対してはオルト,ピロ,トリポリリン酸塩よりすぐれた封鎖力を持っている。
    2)とくに低pH領域ではEDTAよりすぐれた封鎖力がある。
    3)Fe3+に対しては,EDTAと同程度の封鎖作用を示す。
    4)加水分解すると,Cd2+に対する封鎖力は減少する一方であるが,Fe3+に対してはある程度加水分解したものの方が封鎖力が強い。
  • 荒井 康夫, 永井 彰一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2077-2082
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸アンモニウムは高度化成肥料用原料として注目されている。縮合リン酸塩肥料に関する研究の一端として, 25 ℃ のNH3-H4P2O7-H2O系における結晶相の生成および安定性について検討をおこなった。(NH4)2H2P2O7,(NH4)3HP2O7・H2O,(NH4)4-P2O7の3種のピロリンー酸アンモニウムがNa4P2O7溶液のイオン交換によってえられたH4P2O7溶液(0.9N)をpH1.45から9.0の範囲でアンモニア化し,結晶相の析出まで真空蒸発することによってえられた。
    結晶相の安定域をp H 範囲でしめすと, 1.8~4.6 で(NH4)2H2P2O7, 4.6~7.5 で(NH4)3HP2O7・H2O, 7.5 以上で(NH4)4P2O7であった。pH1.45~1.8の範囲では蒸発によって粘調の高い液相がえられるだけで結晶の析出はみられなかったが,これにメチルアルコールを加え脱水することによって結晶性のよい新相が晶出した。X 線回折値および化学組成から, この相はNH4H3P2O7であることがたしかめられた。5 種のピロリン酸アンモニウムおよび2 種のオルトリン酸アンモニウムについて吸湿試験がおこなわれ, 常温付近において(NH4)3HP2O7・H2O〓(NH4)3HP2O7 および(NH4)4P2O7・H2O〓(NH4)4P2O7の平衡が認められ, いずれも湿度によりいちじるしく影響をうけることがわかった。
  • 荒井 康夫, 永井 彰一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2082-2087
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸塩の水溶液は金属イオンを錯化する特性が知られ, 土ジョウ中においてオルトリン酸塩と異なる挙動をしめすことが期待される。3種のピロリン酸アンモエウムおよび2種のオルトリン酸アンモニウムが土ジョウにおかれたときの溶解,拡散,反応の三つの挙動が観察された。供試土ジョウは粘土質火山灰土ジョウで, その主成分はアロファンである。リン酸アンモニウムを添加する前に土ジョウ中に少量の水溶性p H 指示薬を混合しておくと, リン酸アンモニウム溶液の移動を識別することができる。
    高アンモニウム塩は低アンモニウム塩よりも溶解も拡散も大である。同じ原子比N / P ではピロ塩はナルト塩よりも溶解, 拡散ともに大であることが認められたが,その差は大きなものではない。リン酸アンモニウムの拡散域は過リン酸石灰の主成分であるCa(H2PO4)2・H2Oの拡散域の2~3倍のひろがりをしめす。ピロ塩もオルト塩も,土ジョウコロイドによりすみやかに固定されるが,ピロ塩との反応生成物はオルト塩のそれよりも,ペーテルマンクエン酸アンモニウム溶液や2%クエン酸溶液にたいして高い溶解率をしめす。
  • 飯田 武揚, 山岡 一彦, 野尻 成治, 野崎 弘
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2087-2095
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    四塩化チタンを加水分解する際に, 四塩化チタンの重量モル濃度を0.42~5.27mol/1000g H2O の間で変えて結晶の生成過程にっいて調べた。その結果, 四塩化チタンの重量モル濃度が1~5mol/1000g H2O のあたりでは結晶の粒径が10~30μ にも及び,結晶型はルチル型となり, 四塩化チタンの濃度が0.7~0.4mol/1000g H2O のあたりでは結晶の粒径が0.1~0.5μ になり, 結晶型はアナターゼ型を示す。その間の1.0~0.7mol/1000g H2O ではルチルとアナターゼの混合物が得られる。これらの結晶生成過程は液相からの核生成過程とそれに続いておこる結晶生長過程にわけて説明することができる。H2O 1000gに対して四塩化チタンの濃度が1~5molのところでは核生成後の結晶生長が支配的に, 濃度が0.7~0.4mol のところでは核生成過程が得られる粒子に支配的な影響を与える。濃度が2.6~1.3molのところの反応を進行させながら生成物をぬき出して重量と粒子直径と結晶型を測定した結果,液相から急速に核生成が起こる初期においては,粒子直径も小さくアナターゼ型になっているが2~3時間後はそのまわりに結晶の生長が起こっており, それはルチル型になっていることが判明した。濃度が0.70mol 以下のところでは核生成が急速に進んで1時間でほとんど反応が終ってしまい,そのまわりに結晶の生長が認められず,生成物はアナターゼ型である。生成物の析出量Xと時間との関係から濃度の高いところではX∝t2.3となり,結晶表面の化学反応と結晶表面への拡散が律速であることがわかった。
    詳細な考察の結果,自由エネルギーの減少速度が極大をとる核生成過程では,ルチル型より規則性の低い準安定なアナターゼ型の原子配列をとり,自由エネルギーが徐々に平衝にむかって進行する結晶生長過程では規則性の高い安定なルチル型の原子配列をとる。
    反応系にルチルの種結晶を添加した場合,アナターゼのでぎる条件でもルチルができてくる。これは,種結晶の表面のcriticalpointからの生長を考えれば上述と同様に説明できる。得られた酸化チタンの電気伝導性と光電導性を測定し結晶の欠陥の変化にっいて調べた結果,アナターゼは一般に電気伝導性が高く,従って格子欠陥が多く,徐々に成長したルチルは電気伝導性が低く,格子欠陥が少なくなく,上述の結晶の生成機構を支持することがわかった。
  • 住吉 義博, 野田 稲吉
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2095-2098
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    合成フッ素金雲母の単結晶およびブック状結晶の熱膨張係数を押棒式熱膨張計で測定した。また水熱合成したフッ素水酸金雲母の熱膨張係数をX 線法によって室温~600℃ 間で測定した。
    熱膨張計法ではフッ素金雲母単結晶のa,b 軸方向の熱膨張係数はそれぞれ9.89, 9.31×10-6 でほぼ等しく, ブック状結晶では劈開面にそった方向は8.29~10.3,垂直な方向は14.1~36.3×10-6であった。ブック状結晶は欠陥の少ないものほど熱膨張係数は小さい。X線法ではフッ素金雲母のa,b,c軸方向の熱膨張係数はそれぞれ7.2,11.8,15.3×10-6であった。
    フッ素水酸金雲母の熱膨張係数はa,b軸方向ではフッ素金雲母と同程度であったが,水酸基イオンの含有量が多くなるとc軸長は大きくなるがc軸方向の熱膨張係数は小さくなった。
  • 日比野 泰三, 山崎 利二, 関谷 均
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2098
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジルコニアとシリカよりジルコンを合成するとき, メタバナジン酸アンモニウムとフッ化ナトリウムが存在すると, その反応温度は低下する。この反応機構を解明するためにフッ化ナトリウム, メタバナジン酸アンモニウム, 炭酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを異物質として単独に添加するときの影響,メタバナジン酸アンモニウムと他のナトリウム塩のいずれか一つとを同時に添加する加するときの影響,それらの添加量の影響,加熱方法による影響,および塩素などのふん囲気のおよぼす影響などを明らがかにし,その実験結果より,次のように反応機構を考察した。
    1)加熱温度700℃以下ではバナジン酸ナトリウムが生成されることがあるが,700℃で解離する。2)バナジン酸ナトリウムはジルコンの生成反応を促進しない。3)シリカ,五酸化バナジウム,フッ化ナトリウムなどより生成するガラス質とその中に含有される五酸化バナジウムがジルコン合成反応を促進する。
  • 加藤 誠軌, 谷口 雅男, 久保 輝一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2102-2108
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    NH4VO3の熱分解過程を高温X線回折法によって種々の雰囲気中で観察し,分解過程で生ずる4種類の新中間化合物を単離し反応の機構を明らかにした。
    真空ないし通風のよい条件下NH4VO3を155℃ に加熱すると中間化合物I がえられる。この化合物は空気中では230℃ で分解して無定形酸化バナジウムとなる。通風のよくない条件下NH4VO3を180℃ に加熱すると中間化合物II がえられる。この化合物は正方晶系の回折図形を示し, 280℃ まで安定である。中間化合物III は通風のもっとも悪い条件下NH4VO3を215℃ に加熱して得られる。この化合物の特徴回折線の面間隔値は製造条件によって差があり( d=8.0~8.6Å ) , 化学組成も異なっている。この化合物は280℃以上では分解する。
    H2ガスによるV2O5の還元過程において,最終生成物のV2O3は常に新中間化合物VOx(特徴回折線:d1=3.52Å,d2=2.98Å,d3=3.08Å,d4=6.2Å,d5=5.8Å)の生成,分解の過程をへて生ずることがわかった。
    V2O5の熱膨張はc軸方向に著しい(600℃で約3%)。
  • 加藤 悦朗, 長谷川 勝
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2108-2115
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    既報において複合焼結体の抵抗,ρに影響する若干の因子を基礎的に考察したが,本報では,ρに及ぼす次の製造条件の影響が検討された; 焼成時間(0.5~20hr), 焼成ふん囲気( H2, Ar, 真空, 炭素中) および成形方法( 押出, および乾式加圧とくに成形圧)。焼成時間の影響は焼成温度と本質的に類似で,1200℃までは焼成収縮により,また1300℃以上ではガラス相形成と化学反応により,ρは時間とともに減少する。焼成ふん囲気は反応による炭素の損失に関係し,特に水素中では試料表面の炭素が約1200℃でかなり消失するため,ρは異常に増大する。乾式成形における成形圧の増大は,亀裂が生じない範囲までは,主として炭素粒子間接触点の増大によりρを低下させる。しかし炭素混合率が低い場合,成形圧の増大は,1400℃焼結体のρおよびその温度依存性を増大させ,logρ対1/C曲線の傾斜は従って逆転する。これは化学反応よりもむしろガラス相の形成の過程の差により説明される。ρの異方性は, カーボンブラックの種類および焼成温度にほとんど関係がなく, 主として成形方法によって影響され,カオリン鉱物の配向に起因することを示す。
  • 加藤 悦朗, 長谷川 勝
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2116-2124
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭素複合焼結体の比抵抗(ρ)の温度特性を,炭素粉末のそれと比較して,また水蒸気や空気の吸着または表面酸化によるρの変化と関連して, 検討した。複合焼結体と熱処理炭素粉末は, γ の挙動( γ=-log(ρ20020); ρ200, ρ20 はそれぞれ200, 20℃でのρ)が互いによく一致し,その結果から実験した原料炭素を二つのグループに大別した。一グループの炭素およびその複合焼結体のγは, 焼成温度1300℃ 付近で最低値を示し, かつその値は比較的低いが, 他のものは焼成温度1200~1400℃でγは変化せず,かつ比較的高い値を示す。また前者の焼結体は250℃ までの加熱冷却の繰り返しに対Lρが安定で, logρ対1/ T 関係もほとんど変化しないが, 後者の焼結体のρは, 化学的吸着若しくは表面酸化によって低ドし, その脱着により増大する。酸化によるρの減少は,乾燥空気中一定温度で時間の平方根に比例する。これらの結果は電子構造の見地から考察され,二つのグループの炭素はその生成温度が1300℃以上であるか否かで区別されることがわかった。また比較的低温で生成されたカーボンブラック, あるいはとくに酸化物型表面皮膜を持つカーボンブラックが, 比較的低いγならびに加熱冷却に対し安定なρを持つ複合焼結体を与えることが結論された。
  • 浅尾 戍
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2125-2129
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタクロレインの常圧液相酸素酸化反応(Mn,Hg,Ag塩触媒使用)において,溶媒の種類が反応の速さおよび選択性に与える影響を調べた。溶媒の性質と誘導期および反応の速さの間に相関性は見出されなかったが,溶媒の誘電率とメタクリル酸選択率の間には次のような相関関係が見出だされた。すなわち誘電率の小さいn- ヘプタン, シクロヘキサン等の炭化水素類, および誘電率の大きいアセトニトリル, アルコール類等は比較的高いメタクリル酸選択率を与えたが, 誘電率が中位の酢酸等は低いメタクリル酸選択率を与えた。しかし,いずれの場合においても,メタクリル酸選択率は,メタクロレイン変化率20~40%において,常に60 % 以下であった。
  • 御園 生晃, 長 哲郎, 大勝 靖一, 武田 真
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2129-2133
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の溶媒中において,ナフテン酸金属塩M(Nap)およびアセチルアセトナート錯塩M(acac)を触媒としてアクロレインを酸素酸化した。生成物はアクリル酸, 過アクリル酸, アクロレインとアクリル酸の重合物などであり, アクリル酸はベンゼン溶媒中でかなり生成した。アクリル酸生成の誘導期間は一般にM (acac) の方が, M(Nap) より短かく, 前者ではCo<Mn≪Fe≈Cu<Ni<<Cr,後者ではCo<Mn≈Cr<Fe≈Cu<Niの順に長くなった。アクリル酸の最高収率はべンゼン中Mn(acac)3を用いて得られ(20.5%) , その選択率は52.5% であった。Co(Nap) を触媒とした場合の酸素吸収速度式-dO2/dt = k(触媒) 0.5 ( 酸素圧)1.04から連鎖開始反応がCH2=CHCHO+Co3+→CH2=CHCO+Co2+H+であることを推定した。さらに反応中のCo-アセチルアセトナート系触媒の可視スペクトル,磁化率,分子量などから,触媒は配位子としてアセチルアセトナート以外にアクロレイン,アクリル酸,それらのオリゴマーを有する6配位型となっていることが考えられた。
  • 宮野 壮太郎, 飛田 満彦, 橋本 春吉
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2134-2137
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エーテル類中でヨウ化メチレンと亜鉛- 銅カップルから得られる亜鉛- メチレン錯体をベンズアルデヒドと反応させ, スチレンを好収率で得た。同時に, 少量のベンジルアルコール, シクロプロピルベンゼンおよびスチルベンが副生した。亜鉛- メチレン錯体と金属亜鉛が共存しないと,大部分のベンズアルデヒドは未反応で回収され,スチレンを生成するためには金属亜鉛の存在が必要であることを認めた。
    ヨウ化メチレンに対するスチレンの収率はジイソプロピルエーテル中で30% , エーテル中で37% , テトラヒドロフラン中で67%であり,溶媒のエーテルの塩基性とともに増加した。また,テトラヒドロフラン中で対応するp-置換ベンズアルデヒドとの反応によりp - クロルスチレンを74% , p - メチルスチレンを52% , p - メトキシスチレンを48% の収率で得た。
    溶媒効果とp-置換基の影響から,このオレフィン生成反応は亜鉛-メチレン錯体のカルボニル基に対する求核的な反応と思われる。また,得られた結果から反応経路を考察した。
  • 岡田 博義, 橋本 春吉
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2137-2141
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化パラジウムにより接触されるスチレンの酸化において, 求核試薬のα-炭素およびβ-炭素への攻撃の選択性に影響をおよぼす種々の因子について速度論的に検討した。テトラヒドロフラン-過塩素酸水溶液中,窒素雰囲気下,14~52℃の範囲で,パラジウム塩とp - ベンゾキノンの共存下でスチレンを酸化した。ピリジンで反応を止めた後, 未反応スチレンと生成カルボニル化合物の濃度をガスクロマトグラフィーで定量した。
    反応速度は塩化パラジウムとスチレンの濃度にそれぞれ1次, p-ベンゾキノンの濃度に0次である。一方, 反応速度はp - ベンゾキノンの初濃度が増すと直線的に減少することがわかった。アセトフェノンの生成速度定数の対数は酸度関数に比例するが,フェニルアセトアルデヒドの生成速度は酸度関数にほとんど無関係である。反応はクロリドイオンにより強く妨害されるが,この傾向はフェニルアセトアルデヒドよりもアセトフェノンの方が著しい。そこで, アセトフェノンとフェニルアセトアルデヒドは同一の中間体から単なる競争反応で生成するのではないと考えられる。活性化エネルギーは16.4kcal/mol であった。反応経路について推定した。
  • 犬飼 吉彦, 間瀬 孝一, 江口 金満
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2142-2144
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    反応性高分子の原料モノマーであるシアン酢酸ビニルは, 硫酸第二水銀触媒の存在下において, シアン酢酸と酢酸ビニルとの酸残基交換反応から合成されているが, その収率が他のカルボン酸類のビニルエステル化に比べていかにも悪い。そのおもな原因をさぐる目的で, 反応生成物の検索を行ない, 主生成物のシアン酢酸ビニルの他に, エチリデンシアン酢酸, エチリデンジアセテート,エチリデンシアン酢酸ビニル(新化合物)等の副生物を確認した。これらの同定は,別途合成した標準品とペーパークロマトグラフ,ガスクロマトグラフ,赤外スペクトル法によって比較することにより行なった。
    以上の結果より, 副反応の主たる原因は, 酢酸ビニルの酸触媒加水分解で生成するアセトアルデヒドの, シアン酢酸の活性メチレン基との反応によるものと考えられる。なお, この反応はシアン酢酸に対してのみ起こり, そのビニルエステルについては起こらないことも確認した。
  • 谷本 重夫, 三谷 道治, 小田 良平
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2144-2146
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-ビニルプロピオフェノンにS-イリドを作用させて,1,2-エポキシ-2-(p-ビニルフェニル)ブタンを合成した。このものを塊状重合させて新しいエポキシ樹脂を合成した。また, 1,2-エポキシ-2-(p-ビニルフェニル) ブタンを加熱すると, 耐酸, 耐アルカリ性のすぐれた硬化樹脂が得られ, その内部構造に-OH , > CO , -O- なる基が存在することがわかった。このさいの変化がいかなる機構のもとにおきたかについては明らかでない。また, ポリアクロレインあるいはポリメチルビニルケトンにS-イリドを作用させると,部分的にエポキシ化される。得られたものはすぐれた接着性を示した。
  • 庄野 達哉, 木村 正歳, 奥 彬, 小田 良平
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2147-2149
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,2-ジビニルシクロプロパン型化合物の合成原料として,1,2-ジアセチルシクロプロパンおよび1,2-シクロプロパンジアルデヒドの合成について検討した。トランス- 1, 2-シクロプロパンジアルデヒドは, トランス- 1 , 2 - シクロプロパンジカルボン酸塩化物を水素化トリ- tert - ブトキシアルミニウムリチウムを用いて還元する方法, あるいはRosenmund 法によって合成した。いずれの方法においても,アルデヒドへの変化率は約50%程度であった。1,2-ジアセチルシクロプロパンの合成については,トランス-1,2-シクロプロパンジカルボニトリル,あるいはトランス-N,N,N',N'-テトラエチル1,2-シクロプロパンジカルボン酸アミドと,グリニャール試薬との反応による方法を試みた。この反応で単離された生成物は, いずれの場合も一方の置換基のみ反応したモノアセチル誘導体であった。また, トランス- 1 , 2 - ジベンゾイルシクロプロパンとWadsworth 試薬との反応生成物は, モノオレフィンのみであることを確認した。
  • 藤本 勉, 平尾 一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2149-2153
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    6,6,6-トリクロルヘキサノニトリルとべンゼンのフリーデル-クラフツ反応を無水塩化アルミニウムの存在下に行ない生成物について検討した結果,6,6-ジフェニル-5-ヘキセノニトリルと2-ベンズヒドリリデンシクロペンタノンの生成を確かめた。2-ベンズヒドリリデンシクロペンタノンはフリーデル- クラフツ反応中に6, 6-ジフェニル-5- ヘキセノニトリルより生成することを確かめた。また6, 6-ジフェニル-5-ヘキセノニトリルを濃硫酸と処理しても2-ベンズヒドリリデンシクロペンタノンが収率よく生成した。6,6-ジクロル-5-ヘキセノニトリルとベンゼンのフリーデル-クラフツ反応においても6,6-ジフェニル-5-ヘキセノニトリルと2-ベンズヒドリリデンシクロペンタノンが生成した。6,6-ジフェニル-5-ヘキセノニトリルと2-ベンズヒドリリデンシクロペンタノンの収率におよぼす塩化アルミニウム量,ベンゼン量,反応温度および時間の影響を検討した。
  • 阿河 利男, 南 享, 小森 三郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2153-2156
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報では種々のイソシアナート・マロン酸ジエステル付加体(I) の熱分解反応について報告した。本報ではフェニルイソシアナート・モノアルキル置換マロン酸ジエステル付加体の合成を次の二方法で試みた。1) フェニルイソシアナート・ナトリウムマロン酸ジエチルエステル付加体(II)を無水アルコール中で臭化エチルと加熱還流処理,2)ナトリウム触媒下でフェニルイソシアナートとエチルマロン酸ジエチルエステルの無水エーテル中での反応, 1) , 2) いずれの方法でも目的物は得られず, 次の結果を得た。前者の反応からフェニルエチルウレタン(III),エチルマロン酸ジエチルエステル,エチルマロン酸エチルエステルアニリド(IV),アセトアニリド,マロン酸ジアニリド,マロン酸ジエチルエステル,ジエチルマロン酸ジエチルエステル等の生成物を得,後者の反応生成物はトリフェニルイソシアヌレート(V),フェニルエチルウレタン(III),1,3-ジフェニル-5-エチルバルビツル酸(IV)であることがわかった。
  • 山本 隆, 角田 清治, 高橋 哲夫
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2156-2161
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長鎖アミン塩をエチレンオキシド(EO) や, プロピレンオキシドのようなアルキレンオキシドで四級化する反応を検討した。
    第二, 第三アミンでは容易であるが, 第一アミンでは困難であることを認め, これは途中に生成するR-N(C2H4OH)2 のβ-位のOHのNにたいする分子内水素結合に起因することをIRで確かめた。
    本反応の機構は, EO がまず酸に付加してアミンを一部遊離させ, これにEO が反応して第四アンモニウムヒドロキシドが生成し,これにアミン塩が作用して第四塩ができるとともに,遊離アミンが生じ,この反応がくりかえされる。(EO)-酸付加物もまた,第四アンモニウムヒドロキシドと反応して第四塩とEO になる。
    本反応は酸の種類によって難易があり,この原因は本反応の第1段階たるEOの酸に対する付加反応に差があるからで,付加の容易な酸の塩では容易で, 付加の起こらない, たとえば過塩素酸塩では四級化はまったくおこらない。有機酸は付加がおこらないのに, その塩は四級化されるのはその塩が弱酸塩であるために, 解離平衡によって遊離アミンができるためである。
  • 稲垣 慎二, 伊沢 康司, 小方 芳郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2161-2164
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    工業的に塩素化パラフィンとベンゼンの縮合により,直鎖モノアルキルベンゼンを製造するさいに副生する直鎖型ジアルキルベンゼン( m - 体とp - 体の混合物) のスルホン化を行ない, 得られたスルホン酸塩の界面活性を検討した。スルホン化剤として2 0%発煙硫酸を用いることにより,100℃で2,4-ジアルキルベンゼン-1-スルホン酸,および2,5-ジアルキルベンゼン-1-スルホン酸を得た(収率64%)。得られたスルホン酸のナトリウム塩,バリウム塩,ジエタノールアミン塩,モルホリン塩はすべて水に不溶で,油溶性である。これらスルホン酸塩のケロシン溶液の界面張力は,ジエタノールアミン塩,モルホリン塩がとくに低値(2.2~2.6dyne/cm,25℃)を示し,カーボンブラック分散力はバリウム塩,乳化力はモルホリン塩が最もすぐれていることを認めた。
  • 飯田 博子, 土居 勲, 飯田 弘忠
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2164-2168
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    新しい反応性染料を合成する目的で, ヘキサクロル- 1 - シクロヘキセン- 3 , 6 - ジオン(I) より, 1-(p-アミノフェニル)-3, 5, 6-トリクロル-4-ピリドン(IV)とペンタクロル-1-(p-アミノアニリノ)-1-シクロヘキセン-3,6-ジオン(V)とを導き,IVおよびVをジアゾ成分とする数種の水溶性染料を合成し,染色性を検討した。その結果,IVから得た染料の方が,Vから得た染料よりよく染着した。IVから得られた染料0.5%,炭酸ナトリウム2%,および尿素10%を含む水溶液を,ビスコースレーヨン布にパッドし,150℃,10分間乾熱処理すると,布に吸収された染料の約56%が繊維と反応した。
  • 田尻 弘水
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2169-2172
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    建染め染料全般についての展開分離をほぼ完全に可能とする展開剤を見出し, それを用いて主な建染め染料についてそれらのべーパークロマトグラムを作り,類似化合物を相互に比較することにより染料組成を推定する研究を行なった。
    用いた展開剤は次のものである。
    1)ピリジン:n-ブチルアミン:水:ナトリウムハイドロサルファイト(4:2:14:1)
    2)テトラエチレンペンタミン:n-ブチルアミン:水:ナトリウムハイドロサルファイト(4:2:14:1)
    3)ピリジン:4.5Nアンモニア水:ナトリウムハイドロサルファイト(5:15:1)
  • 浅原 照三, 巻島 徳雄
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2173-2179
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルと四塩化炭素とのテロメリゼーションを行ない,薄層クロマトグラフィーによって生成テロマーを分離し,濃度計を用いて各テロマーの定量を行なった。つぎに蒸留によって単離した1量体および2量体テロマーのIRスベクトルおよびNMRスペクトルを測定し, これらのテロマーが〓の化学構造を持つことがわかった。生成テロマーの平均分子量はテローゲンとタクソーゲンのモル比([S]/[M])が0.4~9において300~600であった。重合速度は開始剤濃度の平方根にほぼ比例し,[S]/[M]の増加とともに減少した。またテロマーの分子量分布から各テロマーラジカルに関する連鎖移動定数(Cn)を測定し,Cnが連鎖長の増加とともに増加することがわかった(C1=0.08~C7~8=1.1)。
  • 浅原 照三, 片山 志富
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2179-2188
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    β-プロピオラクトンの単独開環重合を酸,フリーデル-クラフッ触媒,アルカリ触媒,塩触媒を用いた塊状重合,種々の溶媒を用いた溶液重合によって行ない, その反応特性および生成ポリマー( PβPL ) の溝造を検討した。
    酸,フリーデル-クラフツ触媒では,触媒の種類によって爆発的反応とゆるやかな反応を起こす境界温度(「臨界温度」と命名)が存在し,ともに生成物は結晶性ポリエステルである。
    アルカリ,あるいは塩触媒では,触媒の種類,触媒濃度,反応温度に関係して,「臨界濃度」,「臨界温度」が定まり,この値を境界とする条件で,爆発的反応によっては無定形PβPLを,ゆるやかな反応では結晶性ポリエステルを生じる。
    無定形PβPLは結晶性ポリエステルが部分的にエノール化し,さらに,エノール化によって生じた2重結合が部分的に架橋重合した一連の構造のポリマーであると思われる。結晶性PβPLは無定形PβPLに転移可能であるが,その逆は不可能である。
    PβPLの繊維あるいは結晶構造の安定性はヘリカル構造>21らせん構造>ジグザグ構造の順になっていると考えられる。
    また,酸,フリーデル-クラフツ触媒によるPβPLの分子鎖末端に触媒断片は付加していないのに対し,塩,アルカリ触媒では触媒付加があり,これらの触媒作用機構の差がβ-プロピオラクトンの重合性,生成βPLの物性,構造のいちじるしい差異の原因になっているものと思われる。これらを詳細に検討して種々の知見を得た。
  • 町田 和夫
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2189-2194
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(III)-ナトリウム-水素系のプロピレン重合触媒を,2種の異なるオートクレーブを使用して合成した。一つは普通のふりまぜ式オートクレーブであり,他は小さな鋼球を入れたふりまぜ式オートクレーブである。そしてこれら2種の装置での実験結果は非常に異なっていた。鋼球による磨砕作用によって低温で合成することのでぎた触媒の方が,触媒活性,得られたポリマーの立体特異性ともに優れていた。つぎに触媒成分の塩化チタン(III) , ナトリウム, 水素のそれぞれについて検討したが, 塩化チタン(III)については,塩化チタン(IV)をアルミニウムで還元して製造した塩化チタン(III)と,水素で還元して製造した塩化チタン(III)とは,活性が非常に異なっていること,アルミニウム還元の塩化チタン(III)の場合は活性な触媒を与えるのに反して,水素還元の塩化チタン(III)の場合は,弱い活性の触媒しか与えないことを知った。
  • 原田 洋, 椎名 教, 箕浦 有二
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2194-2199
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジエン系ポリマーのn-ブチルリチウム(BuLi)によるリチウム化が3級アミンの共存下に促進されることを明らかにした。3級アミンとしてN, N, N', N'- テトラメチルエチレンジアミンを用い, ポリマー, BuLi , アミン濃度のリチウム化反応に及ぼす影響につき検討し, 反応機構について考察を加えた。ポリマーのn- ヘプタン溶液にアミンをBuLi と等モル添加し, 80 ℃ で60 分反応させるとポリブタジエン(PB) のモノマー単位として27 % , ポリイソプレン(PI) の9 % がリチウム化を受けた。リチウム化の見かけの活性化エネルギーはPB,PIについておのおの6.6, 8.4kcal/molとなった。得られたリチウム化ポリマーと種々の試薬(炭酸ガス,ミヒラーケトン,トリメチルクロルシラン,トリフェニルクロルシラン,ベンズアルデヒド,ピリジンなど)との反応により新しくポリマー誘導体を合成した。
  • 松浦 一雄, 井上 祥平, 鶴田 禎二
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2199-2205
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    グルタミン酸-γ-ベンジルエステル-N-カルボン酸無水物のD体とL体との共重合を,n-ヘキシルアミンを開始剤としてジメチルホルムアミド中,均一系で行なった。55%,87%のL組成モノマーのD,L-共重合においては重合初期に速度上昇が認められたが,ラセミモノマーの重合では測定時間内では,はっきりした速度上昇が認められなかった。生成ポリマーのトリフルオル酢酸中での旋光度測定,ジメチルホルムアミド中における旋光分散測定などの結果から,重合中にモノマーの不斉選択の起こることを確認した。また,重合中におけるモノマーの不斉選択,重合の加速現象と生成ポリマーのヘリックス含量,立体規則度との関連についても検討を加えた。
  • 井上 祥平, 松浦 一雄, 鶴田 禎二
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2205-2209
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    α-アラニン-N-カルボン酸無水物(NCA)とジアルキル亜鉛およびトリアルキルアルミニウムとの反応様式について検討した。ジ-n-ブチル亜鉛とDL-アラニンNCAとの1:1の反応においては,まずブチル基のNCAに対する水素引抜き反応だけが起こり,カルボニル付加反応は起こらないことが確認された。また,トリ-n-ブチルアルミニウムとDL-アラニンNCAとの1:1の反応では, ブチル基のカルボニル付加反応がかなりの割合で起こることが見出された。一方, NCA と有機金属化合物との反応における炭酸ガスの発生の有無を調べてみたところ,ジアルキル亜鉛,トリアルキルアルミニウムいずれの場合にも,炭酸ガスの発生が認められ,NCA環の開環が起こっていることがわかった。
  • 鶴田 禎二, 井上 祥平, 津熊 勲
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2209-2213
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジエチル亜鉛-アルコール系触媒によるプロピレンオキシドの重合の機構を解明するために,プロピレンオキシドとさまざまの亜鉛アルコキシドとの反応をしらべた。亜鉛ジメトキシドとの反応では,プロピレンオキシドの開環はほとんどメチレン-酸素結合のところでおこることがわかった。ジエチル亜鉛およびエチル亜鉛メトキシドはプロピレンオキシドと反応しない。1-メトキシプロパノール-2の亜鉛ジアルコキシド(プロピレンオキシドと亜鉛ジメトキシドとの反応の第一段の生成物)のプロピレンオキシドに対する反応性は,亜鉛ジメトキシドに比し,いちじるしく低い。一方,CH3O[CH2CH(CH3)O]nH(n=11~12)の亜鉛ジアルコキシドはプロピレンオキシドに対してかなり高い反応性を有している。以上の結果から,亜鉛ジメトキシドによるプロピレンオキシドの重合の開始ならびに生長反応について考察を加えた。
  • 中出 伸一, 船 山潮, 五味 亮
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2214-2216
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸溶媒中, 過塩素酸触媒によるN-エチルカルバゾールとホルムアルデヒドの反応の研究を行なった。生成物の検討から反応は付加縮合反応のみで進行していることがわかった。また速度論的研究から反応速度式R=k2(a-x)(b-x)(H-αa) , ここにa ,b,およびHはそれぞれエチルカルバゾール,ホルムアルデヒド,触媒の初濃度であり,αは65℃で0.0095の値を持つ定数である, および活性化エネルギー21.4kcal/mol を得た。
  • 成瀬 勉, 笛木 賢二, 九里 善一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2216-2220
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    放射線によるトリオキサンの固相後重合の機構を明らかにするために研究を行なった。照射温度,重合温度および種々の添加物の濃度に対する重合速度の依存性を研究した。照射温度は25℃から196℃まで変化させておこなった。重合速度は照射温度の増加とともに増大しO℃付近に極大を有し,さらに温度の増加とともに重合速度は減少する。後重合は40℃で始まり,その速度は重合温度とともに増加する。
    アンモニアは重合に著しい抑制効果を示した。電子受容体(クロロホルム,亜硫酸ガス等)の存在により重合は促進され,ラジカル捕捉剤である酸化窒素はいくぶん抑制効果があった。これらの結果から可能な機構を考察した。
  • 鍵谷 勤, 成沢 静夫, 市田 泰三, 太田 尚宏, 福井 謙一
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2220-2224
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    一酸化炭素とN-アセチルエチレンイミン, あるいはN-ベンゾイルエチレンイミンのようなN - アシル置換アジリジンとのγ線共重合反応が室温において研究された。一酸化炭素とN-アシル置換アジリジンは60Coによるγ線の照射下によって共重合することが認められ,非晶性の褐色固体の共重合体が得られた。生成共重合体の構造は元素分析,X線回折および赤外線スペクトル等によって研究された。
    一酸化炭素とN-アセチルエチレンイミンの共重合体は170~180℃ で溶融し, その組成比(mol) は約1 であった。またその構造はN-アセチルポリ-β-アラニンであると推定した。一酸化炭素とN-ベンゾイルエチレンイミンの共電合体は130~145℃ で溶融し,COとイミンのモル比は1以上であった。この共重合体の構造は一部アルデヒド置換体を含むN-ベンゾイルポリ-β-アラニンであった。
    γ線照射による一酸化炭素とN-アシル置換アジリジンの共重合反応におけるエチレン添加の影響を調べた。CO-N-アセチルエチレンイミン- チレン系の場合には, 3 元共重合体が生成したが, CO-N-ベンゾイルエチレンイミン-エチレン系の場合には, ポリケトンとさきにのべたCOとN-ベンゾイルエチレンイミンとの共重合体のみが得られた。
  • 嵯峨 基生, 庄野 利之, 新良 宏一郎
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2225-2228
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シュウ酸アミドラゾンと二塩基酸クロリドの重縮合を検討した。モデル化合物として,シュウ酸アミドラゾンと塩化ベンゾイルの界面あるいは溶液反応でN-ベンゾイル-シュウ酸アミドラゾンを得た。この物質はジクロル酢酸のような強酸中で加熱するとフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾール誘導体にすることができる。一方, 減圧下, 300℃ で加熱するとフェニル-1, 2, 4-トリアゾール誘導体に導くことがでぎた。シュウ酸アミドラゾンと種々の二塩基酸クロリドとの界面あるいは溶液中での重縮合で高分子量のポリ-N-アシルアミドラゾンを合成した。これらの方法で得られたポリ-N-アシルアミドラゾンをジクロル酢酸中で加熱すると対応するポリフェニル1, 3, 4-オキサジァゾールとなった。しかしながら, 真空下320℃ で加熱しても脱水環化によりポリフェニル-1,2,4-トリァゾールに誘導するのは困難であった。これらのことから,ポリ-N-アシルアミドラゾンの2次処理では脱アンモニア環化によるポリフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾールの生成が脱水環化によるポリフェニル-1, 2, 4-トリアゾールの生成よりもおこりやすいものとおもわれる。
  • 犬飼 鑑, 牧 保夫
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2229-2230
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 猪川 三郎, 野田 健爾, 尾形 強
    1966 年 69 巻 11 号 p. 2230-2231
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 69 巻 11 号 p. A115-A125
    発行日: 1966/11/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers.
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