工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
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69 巻, 2 号
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  • 上西 玄一, 鳥海 達郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    工業的に重要な高圧下の気液平衡の中,液体炭酸を一成分とし,水素,窒素,酸素との各系に対する気液平衡を-40~+25℃,200atmまで測定し次の結果を得た。(1)三つの系の液相線(等温線)は全圧に対して臨界点付近までほぼ直線関係を示し,かつ,窒素,酸素との系の場合はそれらはほぼ平行に近いが,水素との系の場合は60~90atm付近で交わり,それ以上の圧力では温度の高い方の溶解度が逆に大きくなる。(2)気相中の炭酸ガス濃度は,どの系においても高圧下の一般気液平衡線図と同様の傾向を示す。(3) 著者らの実測温度範囲では, 酸素, 窒素との系の臨界圧は約80 ~ 160 atm の間にあることが予知されたが, 水素との系では臨界圧はさらに高い。(4) 各系に対してlog f2/x2 とではP はほぼ直線関係を示すことがわかった。(5) 気液相中の炭酸ガスの濃度比yCO2/xCO2 といわゆる理想平衡比K との差は圧力が高いほど大きい。
  • 山之内 昭夫, 落合 悦郎, 岩居 文雄
    1966 年 69 巻 2 号 p. 179-181
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    微結晶酸化亜鉛をシリコーンワニス,スチレン系樹脂などを粘結剤として薄層とし,電子写真感光層として用いることはよく知られている。酸化亜鉛は一般に可視部に光吸収を示さないから,可視部に吸収域を持つ色素によっていわゆる増感する方法が採用されているが,色素を使用せず微結晶酸化亜鉛表面を変性することにより,酸化亜鉛の写真的特性を改善することが可能である。
    著者らは硫化水素による変性酸化亜鉛試料について詳細に検討し,変性処理による効果を明確にすることができたので,変性酸化亜鉛に関する研究の端緒としたい。
  • 加藤 正義
    1966 年 69 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    「アルミニウムの腐食に関する研究」の一環として,クエン酸のようなアルミニウムに対するキレート化剤が,アルミニウムの腐食に対していかなる影響を及ぼすかを知るための基礎的知見を得るために表題のような研究を行なった。
    測定は滴定法によった。すなわち硝酸カリウムによってイオン強度を0.1に保った,クエン酸単独液,クエン酸とアルミニウムイオンとを1 : 1 モル比に混合した液および2 : 1 モル比に混合した液を標準濃度の水酸化カリウム溶液で滴定し, その滴定曲線からキレートの結合比と安定度定数を求めた。
    その結果pH = 3.7 ~ 4.5 の範囲内では, アルミニウムはクエン酸と1 : 1 のモル比で結合し, クエン酸のもつ水酸基も配位に与かることを知った。またその安定度定数K= [AlCit-] / [Al3+] [Cit4-] は1014±0.1であると計算された。
    3.7よりも低いpH域では酸性キレートがAlCit-と共存すると考えられ,また4.5よりも高いpH域ではアルミニウムイオンが加水分解する反応と, AlCit- にさらに水酸基が配位して(OH) AlCit2- という塩基性キレートが生ずる反応とが併発するものと推定された。加水分解生成物をBrosset に従いAl6(OH)153+ と考えて, この(OH) AlCit2-の安定度定数K' = [(OH)AlCit2-] /[AlCit-][OH-]は106.6±0.3と計算された。
  • 加藤 悦朗
    1966 年 69 巻 2 号 p. 188-195
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    複合焼結体の電気抵抗の20 ~ 200 ℃ 間の温度特性を, 炭素かさ密度C および比抵抗ρ に関して検討した。またカーボンブラックおよびその混合物の粉末状態抵抗の温度特性を測定し,複合体の導電のメカニズムを考察した。すべての場合に,抵抗は負の温度係数を示し, log ρ 対1/T のプロットはそれから求めた見掛けの活性化エネルギーがT の上昇とともに増大する方向に僅かに彎曲した。抵抗温度変化率は1/C の増大とともに増大し, log ( ρ 200 / ρ 20 ) 対1/C ( ρ の下つき数字は温度℃ ) 関係はlog ρ 対1/Cの関係に類似した。カーボンブラックの熱膨張係数は約4.2×10-6 / ℃ と評価され, この値はカオリン焼結体の測定値, 3.8×10-6 /℃に大体等しいので,これは抵抗温度特性にほとんど影響がない。実験結果は,二つの異種抵抗からなる並列回路-その一つは集中抵抗であり,他は多分障壁抵抗である-を考えることによりよく説明することができる。
  • 加藤 悦朗
    1966 年 69 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    複合焼結体の抵抗温度特性γに及ぼす焼成温度(800~1400℃)の影響が,カーボンブラックおよび複合体の粉末状態におけるγへの影響とともに検討された。γを-log(ρ20020)で表わすと-ρは比抵抗,下つき数字は測定温度(℃)-γは約1300℃までは焼成温度の上昇とともに減少するが,それ以上では一定のρに対しγの増大する傾向が認められ,この増大は特に高いρ領域の複合焼結体および複合体粉末の場合一層急であった。一定の炭素かさ密度Cで比較した曲線では,高い炭素かさ密度において同様の傾向が得られたが,炭素かさ密度の低い複合体の場合にCによるγの差は焼成温度とともに縮少し,1300℃以上でのγの増大の傾向は消失した。下記のことが結論された,-複合焼結体のγの変化は基本的にカーボンブラックのγの変化(カーボンブラックにおいても約1300 ℃ でγ は最低になった) に依存する。また高いρ 領域あるいは低い炭素かさ密度におけるγ 変化の異常は約1300℃ で起るカオリン分解物の局部的な還元の影響に基づく,従って最低のγの焼結体を得るために好適な焼成温度は約1300℃である。
  • 楯 功, 小山 恒夫, 大門 信利
    1966 年 69 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者らは種結晶を用い,ルツボ降下法によって,種々の育成条件の下で,フッ素金雲母のブック状結晶を育成している。
    この報告は,雲母結晶の絶縁抵抗の異方性とともに,絶縁抵抗と結晶育成条件の関係を検討したものである。雲母結晶の育成に際して,電気炉の最高温度は1410℃,温度勾配は30℃/cmであり,ルッボ降下速度はそれぞれ3mm/hrまたは12mm/hrであった。
    結晶の絶縁抵抗は, 温度30℃ , 相対湿度0% の下で測定した。さらに, 劈開面に垂直方向の体積固有抵抗と結晶の光軸角との関係を検討した。得られた結果は次のとおりである。(1)劈開面の表面固有抵抗,劈開面に垂直方向または平行方向の体積固有抵抗はそれぞれ,1016Ω,1016Ωcmまたは1014Ωcmの桁であった。(2)劈開面の表面固有抵抗と劈開面に垂直方向の体積固有抵抗は,いずれもルツボ降下速度が小さくなると,大きくなった。(3)劈開面に平行方向の体積固有抵抗はルツボ降下速度に影響されなかった。(4) 劈開面に垂直方向の体積固有抵抗は, 劈開面に平行方向のそれより2 桁大きかった。この相違は結晶構造の異方性によるものと考えられる。(5)体積固有抵抗は,結晶の光軸角の値にかかわりなく,同じ値を示した。
  • 天野 隆司, 大門 信利
    1966 年 69 巻 2 号 p. 206-209
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    雲母の劈開面をetchすると小さいpitと大きいpitが現われる。小さいpitの成因はある種の結晶構造の不完全さと言われているが,大きいpitの成因には不純物説と結晶中の線状欠陥(転位)説とがある。当報告は大ぎいpitの原因を明らかにしようとするものである。
    内熱法で製造した結晶をetch して, 向き合った劈開面の大きいpit の位置に完全に1 対1 の対応があることおよび薄い試料の上,下面の大きいpitに対応があることを知った。これよりpitの成因は線状欠陥(転位)のためと思われる。また試料を1350℃ で20 ~ 100 時間処理したものに線状欠陥の見えるものがある。これをetch して, 線状欠陥と大きいpit に1 対1 の対応があることよりpitの成因は線状欠陥によるものであることを確認した。
    異なったetchantを使用すれば,pitの形は異なると言われているが,この場合にもpitの形は異なっていた。
  • 菅原 勇次郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    各種酸性白土に濃硫酸を添加混練して成形し,この成形原土の硫酸処理条件を検討した結果,つぎのことが明らかとなった。(1)小戸成形原土は中条成形原土よりも一般に硫酸溶液処理時に崩壊しやすい。小戸原土の崩壊しやすさは,青色原土>白色原土>赤色原土の順である。(2)小戸原土は混練成形後,熟成時の温度高く時間長く,溶離時硫酸濃度の高いほど崩壊率は小さくなる。(3)各原土を通じて,熟成時の反応量(硫酸消費量)が増加すれば溶離時の崩壊量は減少する。ただし,崩壊率を少量(約5%以下)に止めるために必要な反応量は原土によって異なり,小戸原土では中条原土の5~8倍の反応量を必要とする。(4)中条白色原土と小戸青色原土について熟成時における生成シリカゲルの生成速度を測定した結果,前者は後者より早かった。(5)崩壊しやすい原土にケイ酸ナトリウムを添加してシリカゲルを生成させれば,成形原土の崩壊性は減少した。(6)混練成形後,熟成時における原土と硫酸との反応は近似的に硫酸濃度に対し一次とみられ,その速度定数はつぎのようである。
    中条原土:k=1.09×1010exp(-16,100/RT)
    小戸原土:k=6.77×107exp(-14,100/RT)
    すなわち,中条原土の方が小戸原土よりはるかに反応性が大きい。なお,活性化エネルギーの大きさからみて,熟成は拡散でなく化学反応が律速であると考えられる。
  • 菅原 勇次郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 214-217
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報では酸性白土の混練成形物の熟成時における化学反応と溶離時崩壊性との関係を明らかにした。本報では熟成した成型原土の硫酸溶液処理(溶離)時における化学反応と崩壊性との関係を追究し,つぎの結果を得た。(1)溶離時の反応は溶離の比較的初期において硫酸濃度の1次に比例し,反応速度定数は試験した中条産白色原土,小戸産白色原土,小戸産青色原土については大差がなかった。活性化エネルギーはいずれの原土でも約13.5kcal/molであって,熟成工程と同じく溶離工程も反応律速であることがわかった。(2)80~90℃溶離エ程における硫酸消費量と原上の重量減少量との間にはほぼ比例関係がなりたつ。(3)硫酸1molあたりの原上成分の溶出量と反応内容は原上の種類によって若干異なる。(4)X線回折と電子顕微鏡観察による各原土と処理白土の構造解析から, 熟成および溶離における反応状況を知ることができた。
  • 斎藤 進, 小林 秀雄, 重永 清
    1966 年 69 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ガスハイドレート法による海水,かん水の濃縮あるいは淡水採取の基礎試験の一部として,ハイドレート結晶として分離される水単位量当りのハイドレート剤ガスの圧縮動力費に大きな影響をおよぼす水和数をジクロルジフルオルメタン, ジクロルモノフルオルメタンおよびモノクロルジフルオルメタンについて測定した。ハイドレート- 水- M ( 気) の3 相平衡とハイドレート- 氷- 食塩水-M(気)の4相平衡におけるハイドレートの生成熱を用いて計算するde Forcrand法と塩分濃度の変化によって生じる生成圧力の変化に対し,質量作用の法則を適用するMiller&Strong法によって計算した。得られた結果を総括すると次の通りである。
    1.水和数はde Forcrand法,Miller&Strong法についてジクロルジフルオルメタンではそれぞれ16.7,16.3,ジクロルモノフルオルメタンでは17.6,19.2,モノクロルジフルオルメタンでは7.6,6.2であり,前二者は構造II型にまた後者は構造Itrans型に属する。
    2.Miller&Strong法にくらべてde Forcrand法によって求めた水和数は構造模型から導いた理論水和数によく一致する。
    3.de Forcrand法で求めた結合水1分子当りの生成熱はジクロルジフルオルメタンでは1.95kcal/mol・H2O,ジクロルモノフルオルメタンでは,1.92kcal/mol・H2O,モノクロルジフルオルメタンでは2.55kcal/mol・H2Oとなり,構造II型のハイドレートを作るハイドレート剤は構造I型のハイドレートを作るものよりも有利である。
    4.ハイドレート-氷-食塩水-M(気)の4相平衡における生成熱はジクロルジフルオルメタン,ジクロルモノフルオルメタン,モノクロルジフルオルメタンについてそれぞれ8.63 , 8.49 , 7.78 kcal/mol M である。
  • 鈴木 義仁, 石井 大道, 武内 次夫
    1966 年 69 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    サーミスタ検出素子を検出カラム中に設置し,イオン交換熱を検出する方法によって次の事項が明らかとなった。(1)食塩水を試料として基礎実験を行なった結果, 注入量(mol) とピーク高さとは直線関係が成立した。また検出器恒温槽温度は低い方が検出の感度がよかった。しかし分析時間を短縮する理由から分析カラム温度は高い方がよいが,検出カラムと分析カラムとの温度差を大きくすると分析に悪影響があると考えられる。したがって両者を考慮して適当な一定温度に設定する方が望ましい。本報では同一温度30℃を採用した。(2)つぎに塩酸,硫酸,硝酸等の展開液を用い,試料として塩酸,硫酸硝酸等の濃度がそれぞれ展開液濃度より濃い場合および希薄な場合の試料を注入した際のピークの現われ方( サーモグラム) を明らかにした。(3) 塩酸展開液において,種々の濃度の塩酸を試料として注入し,注入した塩酸の濃度とピーク高さとの関係(検量線)を求めたのち,未知濃度の塩酸の一定量を注入しそのサーモグラムから濃度決定ができた。また,展開液の濃度が0~2Nの範囲のものを用いた場合には展開液濃度の大きい方がピーク感度がよかった。さらに,硫酸,硝酸等についても注入濃度とピーク高さとの関係を求めることによって分析でぎることを明らかにした。
  • 武内 次夫, 鈴木 義仁
    1966 年 69 巻 2 号 p. 228-232
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アントラセン中の微量不純物の定性ならびに定量をガスクロマトグラフ法によって行なった。2種類の極性の異なるQF-1およびADGPを液相とする充填カラムを用いて定性分析を行なった。また定量分析にはADGPカラムを用いた。不純物の検出下限は0.01%であった。
    アントラセン類とフェナントレン類はガスクロマトグラフィーで完全な分離ピークとして流出させることは現在のところ困難である。従って試料を無水マレイン酸と反応させ,アントラセンをマレイン酸付加体として除去し,その除去前後のガスクロマトグラムを測定することによってこれらの分析を行なうことができた。また,分別沈殿,ゾーンメルティング等の精製法で得られるアントラセン中の不純物量をこの新しい分析法によって求めた。その結果,分別沈殿を行なったのち,帯域溶融を行なうことによって高純度(99.99 % 以上) のアントラセンが得られることが判明した。
  • 小南 直也, 中島 齊
    1966 年 69 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アクロレインの気相接触酸化によるアクリル酸合成反応の触媒探索の簡便迅速な手段として,ガスクロマトグラフとマイクロ反応器を直結し,反応物をパルスのかたちで供給するパルス法の適用を試みた。その際,クロマトグラムに脈動が現われ解析が妨げられたが,脈動が強吸着したアクロレインおよびアクリル酸が炭酸ガス等に変化して脱着する速度の変動に起因することを明らかにするとともに,その解決法を見出した。パルス法の結果から三酸化モリブデン>五酸化バナジウム>三酸化タングステン>二酸化セレン>二酸化テルル>五酸化ニオブ>五酸化タンタル>三酸化クロムが,この順序で,アクリル酸生成活性を持つことがわかった。三二酸化コバルトおよび二酸化鉛は単独ではアクリル酸生成活性を持たないが,リン酸を加えるとアクリル酸生成活性が現われた。単独でアクリル酸生成活性を持つ酸化物の電気陰性度は2.93以上であることがわかった。
    パルス法は流通法と良い対応を持つが,パルス法ではアクロレインおよびアクリル酸の一部が強吸着すること,および触媒が部分的に還元されることが結果に影響し,これらが流通法との対応に限界を与えることがわかった。
  • 小南 直也, 中島 齊
    1966 年 69 巻 2 号 p. 237-239
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    五酸化バナジウム触媒をもちいたアクロレインの気相接触酸化によるアクリル酸合成反応において,アクリル酸の収率を増加させる効果のある改質剤,ならびに触媒調製条件の探索をパルス法でおこなった。一部の触媒について流通法実験をおこない,パルス法と流通法との対応を調べた。改質剤の電気陰性度と改質剤としての効力の有無とのあいだに関連が認められた。すなわち,電気陰性度の大きいリン酸,硫酸,酸化モリブデン,ホウ酸,二酸化テルルおよび酸化タングステンがこの順序で改質剤としての効力をもつことがわかった。電気陰性度の小さい硫酸カリウムには改質剤として負の効力があり,電気陰性度が中程度である酸化クロム,酸化チタンおよび酸化スズには効力がなかった。酸化スズには別に反応温度を引下げる効力があった。五酸化バナジウム-リン酸触媒は前処理温度が高くなるにしたがって活性が低下するが,アクリル酸選択収率は前処理温度500℃の触媒がもっとも高く72%であった。パルス法を触媒の改質剤の探索あるいは触媒調製条件の検討に適用した場合,その結果は流通法と傾向がよく一致した。しかし担体の探索では両法の間に対応は認められなかった。
  • 広瀬 一豊, 井橋 良江, 田口 祥子, 吉沢 正夫
    1966 年 69 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリメチレンビスアクリルアミドCH2 = CHCONH (CH2)n NHCOCH = CH2 のn = 1~10 の化合物の合成, およびその重水素化を行なって, その赤外吸収スペクトルの帰属を行なった。n の数による吸収帯の変化, 規則性などについて検討し, アミドI , II ,III,Vの吸収帯を確認し,アミドI以外の吸収帯の波数はnの数に応じて同じような変化を示すことを認めた。さらに,CH2の横ゆれ振動の波数とn の数との関係は他の関連化合物であるジカルボン酸, n - パラフィンなどと同様で, 両端のアミド基による影響はほとんど受けなかった。
  • 小坂 勇次郎, 早田 正明
    1966 年 69 巻 2 号 p. 244-248
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化水素と酸素を用いるエチレンのオキシクロリネーションにより1,2-ジクロルエタンを合成するための新しい触媒について研究した。塩化銅(II)に硫酸水素ナトリウムおよび硫酸水素アンモニウムを組み合わせた触媒(モル比2:1:1)が比較的低い反応温度(200~250℃ ) において活性が高く, 1,2 - ジクロルエタンへの選択率も高いことが見出された。触媒活性は230 ℃ において最も高い。反応温度が高くなるほど,また接触時間が短かいほど副反応が起こりやすい。この触媒による1,2-ジクロルエタン生成反応の見かけの活性化エネルギーは40kcal/mol であった。
  • 松田 住雄, 吉川 彰一, 本村 甚三郎, 福島 三郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 248-252
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化ビニルとブタジエンとのディールス・アルダー反応を,反応温度165℃,反応時間4時間程度の条件で過剰の塩化ビニルの存在の下に行なうと, 約26 % の収量で4 - クロルシクロヘキセン- 1 (I) を生じるが, 同時に4 - ビニルシクロヘキセン- 1 (II) やシクロオクタジエン- 1, 5, ジビニルシクロブタン, シクロヘキサジエン- 1, 4 などを同伴することを知った。過剰の塩化ピニルを用いると,これに比例してIのIIに対する生成比が増加し,また適当な溶媒や,各種のラジカル禁止剤を用いると,Iの生成率が増加する。溶媒としてベンゼンを用い,同時に少量のヒドロキノンを禁止剤として用いてジエン反応を行なうと,ブタジエンのIへの転化率は約33 % , I とII とを合した総転化率は約85 % に達した。
  • 北条 舒正, 白井 汪芳, 鈴木 彰
    1966 年 69 巻 2 号 p. 253-255
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    PMIDはPMDAと炭酸アンモニウムと尿素から容易に合成される。PMIDとZn,Cd,Ca,Co,Hg,Cu,Pb,Ni,Bi,Mn等の塩化物,硝酸塩,酢酸塩等をジメチルホルムアミド(DMF)中で加熱反応してキレート生成を検討した。その生成量は金属イオンの種類によって異なり,同一金属イオンについてはアニオンにより差がある。これは塩がDMF中では完全には解離せず,カチオンに結合したアニオンの立体障害がキレート生成に好都合な条件を形成しているためと考えられる。生成したキレート化合物は沸騰水に耐え, 300 ℃ で3 時間空気中で加熱しても, Cu キレート以外はIR に変化をしめさない。キレート化によって元のイミドに比しCu以外は100~200℃分解点が向上される。Hgキレートは空気中で分解温度510℃,25℃における導電性は108Ω・cmで温度依存性もすぐれている。
  • 松田 住雄, 吉川 彰一, 林 隆俊
    1966 年 69 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ハロニトリルを添加剤の存在下にスズと直接反応させ,ニトリル基を持つ有機スズ化合物を合成した。スズはくに対して理論値の1.3倍量のICH2CH2CNのほかに,添加剤として少量のマグネシウムやテトラヒドロフランを三つ口フラスコに入れ,加熱しながらかきまぜて反応させた。130 ℃ で1.5 時間反応させ, 得られた結晶を再結晶するとmp 128~129 ℃ のI2Sn (C2H4CN)2 が得られた。この化合物は常温でアルカリ処理すると,ヨウ素は脱離してオキシドとなるが,シアン基は加水分解されない。これに塩酸または臭化水素酸を作用させるとCl2Sn(C2HCN)2またはBr2Sn(C2H4CN)2が得られた。またこのオキシドをアルカリと共に加熱すれば,Sn-C結合を保持したままでシアン基が加水分解され,塩酸で処理したあとでエステル化すればCl2Sn(C2H4COO・CH3)2となった。γ-ヨウ化ブチロニトリルやδ-ヨウ化バレロニトリルなどについても同様に検討した。
  • 福住 一雄, 郷 忠広
    1966 年 69 巻 2 号 p. 260-265
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    リノール酸ナトリウムコロイド水溶液(7.1×10-3 mol/l)の37.5±0.1℃(または30.0±0.1℃), pH9での自動酸化における金属イオン(主として10-5mol/l)の影響を検討したところ,コバルト,銅,鉄イオン中,コバルトイオンの接触作用が最大であり,前述の順にその作用が低下することが判明した。この実験を基礎として10-4mol/lの塩化コバルトを含む10-1mol/lのリノール酸ナトリウム水溶液に30.0±0.1℃,pH9で空気を16時間吹きこみ,その反応生成物を開始剤兼乳化剤として使用し,スチレンの新型乳化重合を50.0±0.1℃で行なった。そして従来の過硫酸カリウムあるいは過酸化ベンゾイルを開始剤とし, 脂肪酸ナトリウムを乳化剤とするスチレンの乳化重合と比較した。この新型乳化重合において,従来の乳化重合と大体において同程度のスチレンの重合速度, 重合度をえた。
  • 竹村 安弘, 森田 義郎, 山本 研一
    1966 年 69 巻 2 号 p. 265-269
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    炭化水素と炭酸ガスの反応によって水素と一酸化炭素を得る反応にっいてはメタン,プロパンを除いて全く研究されていない。著者らは炭化水素の部分酸化反応の基礎研究という見地からC6炭化水素(n-ヘキサン,シクロヘキサン,ベンゼン)と炭酸ガスとの反応について種々の実験を重ねてきた。触媒は酸化ニッケル-酸化アルミニウム系で,固定床常圧流通反応器を用い,反応温度,炭酸ガス/原料油比の影響などを調べ,反応の最適条件を見い出した。さらに反応を熱力学的に考察した。また反応時の触媒の構造をX 線回折で追求した。その結果, SV ( 対原料油) ≒ 1 のとき, 3 種の炭化水素の反応性は950℃ で, n- ヘキサン> シクロヘキサン>ベンゼン,850および750℃ではシクロヘキサン>n-ヘキサン>ベンゼンの順となる。またn-ヘキサン,シクロヘキサンの反応では添加炭酸ガス量が理論量の1.5~1.7 倍( 炭酸ガス/ 原料油= 9~10mol/mol) , ベンゼンで1.3~1.5 倍( 8~9mol/mol)のとき水素+一酸化炭素への変成率は最大となる。反応時に触媒中のニッケルは金属ニッケルの形態をとり,反応気流中に過剰の炭酸ガスを添加すると,ニッケルスピネルへと構造変化を起こし,不活性となることがわかった。
  • 八木 徹也, 広浜 三男, 岡崎 啓夫, 奥村 晋吾, 鍵谷 勤
    1966 年 69 巻 2 号 p. 270-275
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    潤滑油留分の無水硫酸によるスルホン化反応において,その構成成分である飽和,芳香族両成分の反応率および油溶性石油スルホン酸とスラッジの収率に対する,反応条件の影響について検討した。
    試料として, 平均分子量350 のタービン油(A) , および300 のスビンドル油(B) を用いた。
    両成分の反応率とスラッジの収率は,反応時間とともに増加した。スルホン酸は一定時間後に最大収率となり,以後は次第に減少した。また, 反応温度の上昇とともに増大し, 試料(A) については30 ℃ 以上, (B) では60 ℃ 以上で一定となった。一方,試料(B) , 温度60 ℃ において, スルホン酸の収率は, 無水硫酸の空気中での濃度が10 % 以上になると減少し, かきまぜの速度が900rpm以下では低下した。またこの収率は,原料油の平均分子量に比例することを認めた。
    両成分の反応速度定数の比と,反応温度および試料油の平均分子量との関係についても検討した。
  • 豊田 信義, 坂本 英夫, 八木 徹也
    1966 年 69 巻 2 号 p. 276-279
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石油潤滑油留分を無水硫酸によりスルホン化する際副生するスラッジ中のスルホン酸は,主としてモノスルホン酸およびジスルホン酸の混合物であり,平均分子量の小さな潤滑油より得たスラッジほど,モノスルホン酸を多く含むことが判明した。
    スラッジより水溶性スルホン酸ナトリウムを分離し,その水溶液の性質を測定考察した。モノスルホン酸ナトリウムを多く含むものほど,表面張力,比界面張力は小さく,浸透性,洗浄力は大きい。スルホン酸ナトリウムを水に添加することにより,極圧性は著しく向上したが,各スルホン酸ナトリウム間の差異は,ほとんど認められなかった。
  • 石井 忠雄, 森本 茂樹, 武谷 愿
    1966 年 69 巻 2 号 p. 279-282
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    北海道の泥炭地は総面積約20万ヘクタールにおよび未利用資源として重要な地位を占めている。泥炭は生成過程の差により成分組成が異なる。この報告では繊維素質物質が多量に残存しているサロベツ泥炭(北海道サロベツ川流域)の化学的利用法の一つとして泥炭の糖化反応の研究を行なった。この泥炭を塩酸ガス法にて糖化反応を行なうと, 乾泥炭の約43 % の還元糖が得られ,還元糖の約35%はペントースであった。加水分解残分は43~46%であった。また泥炭,加水分解残分,アルカリ可溶物質等の元素分析,示性分析を行ない,化学的組成を検討した。塩酸ガス法の主加水分解反応過程における分解速度を測定した結果,近似的に,水溶性物質に関して零次反応として表すことができた。
  • 長井 繁喜
    1966 年 69 巻 2 号 p. 283-286
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トルエンからスルホン化,酸化,アルカリ溶融を経てオキシ安息香酸を製造する目的をもって,p-およびo-スルホ安息香酸ジナトリウム塩のアルカリ溶融を試みた。
    アルカリ溶融の温度および時間ならびにカセイソーダのモル比などの反応条件,ならびに生成したオキシ安息香酸塩のアルカリ共存下における分解温度との関係を検討した結果,p-スルホ安息香酸塩,p-オキシ安息香酸塩ともに溶融カセイソーダに難溶,ならびに難融であるが, 330~340℃ の温度範囲において, ほとんど固体状態においてカセイソーダとの十分な接触をはかることにより, 98 % 以上の高収率でp- オキシ安息香酸がえられ, 340℃ までは安定であることを知った。
    一方o- スルホ安息香酸ジナトリウム塩のアルカリ溶融においては, サリチル酸塩の分解温度が低く, フェノールになりやすいが,分解温度以下において操作を行なえば,好収率でサリチル酸がえられることをみいだした。
    またトルエンから生成したo- , p- スルホ安息香酸ジナトリウム塩の混合物をアルカリ溶融すると, p- 異性体の最適条件においてサリチル酸塩は分解してフェノールとなるので,収率よくp-オキシ安息香酸およびフェノールが生成することがわかった。
  • 長井 繁喜, 河口 嘉夫, 福原 行雄
    1966 年 69 巻 2 号 p. 287-289
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-スルホ安息香酸ジナトリウム塩のカセイソーダによるアルカリ溶融反応においては,みかけ上固相で反応が進むが,好収率で純度の高いp-オキシ安息香酸がえられることはすでに報告した。このようにほとんど固体状において進むアルカリ溶融が,操作量を多くした場合にも適用しうるか否かをしらべるため,小規模ならびに中規模装置を試作して,いわゆる固相連続溶融を試み,その可能性をみいだすにいたった。本報にその経過を簡単に述べる。
  • 橋本 静信, 新開 一朗, 砂本 順三
    1966 年 69 巻 2 号 p. 290-301
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    10%ホルムアミド-アセトン溶液で処理したロ紙をもちい,シクロヘキサンを展開剤とするペーパークロマトグラフィーによってヒドラゾベンゼンの全ベンジジン転位反応生成物が同定された。塩酸触媒によるヒドラゾベンゼンのベンジジン転位反応を種々の条件下でおこなった。おのおのの場合,すべての転位生成物と不同変化による生成物がみとめられた。ベンジジンとジフェニリンの生成量は,溶媒のエタノール水濃度90vol%付近の点で最少値をしめした。しかしベンジジンとジフェニリンの生成比率は溶媒組成,酸濃度,転位温度などにほとんど関係なく,常に一定(約60:40)であった。
  • 永井 芳男, 松尾 昌年
    1966 年 69 巻 2 号 p. 294-297
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    o-位にアルキル基(メチル,エチル,t-ブチル基)を有する非対称(I)および対称p-ジスアゾベンゼン誘導体(II)の合成を試みた。
    Iは,o-アルキルアニリンをp-ニトロニトロソベンゼンと脱水縮合して,o'-アルキル-p-ニトロアゾベンゼン誘導体とし,これを還元して, o' - アルキル- p - アミノアゾベンゼン誘導体に変えた後, ニトロソベンゼンと脱水縮合して得た。
    p-ニトロニトロソベンゼンの代りにp-アセチルアミノニトロソベンゼンを用い,同様な縮合反応を行なった。IIは,o-アルキルアニリンをp-ジニトロソベンゼンと脱水縮合して得た。各縮合反応は,アルキル基の立体障害のため著しく困難であったが,o-t-ブチルアニリンを除き,すべて縮合に成功した。また,反応性には次の序列があった。
    メチル- > エチル- >> t- ブチル・アニリン アセチルアミノ- > 二トロ- >> ニトロソ・ニトロソベンゼン
  • 木村 光雄, 福井 真弥, 黒木 宣彦, 小西 謙三
    1966 年 69 巻 2 号 p. 297-299
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フェロセンが芳香族ジアゾニウム塩によって容易にアリール化されることに着目し,フェロセニル基を有するモノアゾ染料としてアリールアゾ基を有するアリールフェロセン類を合成し,アミラン(6-ナイロン),カシミロンF,ビニロン,絹などの繊維を染色し, その染着性, 色調, 堅ロウ度を検討した。まずアゾ化合物4 - (または3-) R-C6H4N = NC10H6NH2-4'′ [(I)R=4-COOH ,(II)R=3-COOH,(III)R=4-NO2,(IV)R=4-SO2NH2]を合成し,これらをさらにニトロシル硫酸法によってジアゾ化し窒素気流中で濃硫酸に溶かしたフェロセンと反応せしめアリールフェロセンを合成した(収率40~50%)。この際ジアリール化物と思われるものが少量副生した(収率5~10%)。これらは活性アルミナカラムクロマトグラフィーにより分離した。染色は中性染浴から分散染色法によって行なったが,染色布の色調はカシミロンFにおいてはいずれも赤紫色系であり,その他の繊維においてはだいだいないし赤色または紫色系であった。染着性はいずれも良好であり,特にカシミロンFに対してすぐれた結果を示すものが多かった。これはアリール化によってフェロセン環中のFeがカチオン化されるため,これがカシミロンF繊維への染着に寄与しているのであろうと思われる。堅ロウ度試験結果は,カシミロンFにおける場合が最もすぐれい,ずれも日光5~6級,洗たく(変退色,汚染共)4~5級,摩擦4~5級であった。その他の繊維においてはCOOH基を有する染料の場合の洗たく堅ロウ度が悪かった他はカシミロンF繊維に対する場合より若干劣る程度であった。
  • 長谷部 信康, 北川 稔, 樋口 修一郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 300-304
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ナフタリンを気相酸化して1 , 4 - ナフトキノンの合成を行なうための新触媒の開発と反応条件の検討を行なつた。まず, 反応のSVを増加し得る触媒担体の試作を行い,Si2を主成分とし,これがα-石英とα-クリストバライトの形態にあるように調製したものがきわめて有効であることを見出した。この担体を用いて触媒成分の探索を行ない, V2O5 - K2SO4 - K2S2O7 - WO3 を含む触媒を開発して,反応温度400℃, SV 1,000でナフトキノン収率36mol%, STY 21g/l・hrに達する成績を得た。このナフトキノン合成用触媒は酸性であることは好ましくなく,中性またはアルカリ性である必要を認めた。
    また,反応系へ水分や亜硫酸ガスを添加すると未反応ナフタリンと完全燃焼分が増加し,ナフトキノン収率は低下する。さらに, ナフトキノン収率は転化ナフタリンの50 mol% を越えないことやナフタリン転化率の低い方がナフトキノン選択率は大きいことなどをはじめ反応諸条件の効果を検討した。
  • 安田 浩, 丹田 幸孝, 高柳 素夫
    1966 年 69 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    デカリン希薄溶液から析出させたアイソタクチックポリブデン-1の結晶がNattaらによる結晶変態IIIに属することをX線回折により確認し,電子回折図形から変態IIIの格子定数a,bの値として,Hollandらの与えた値と一致することを確認するとともに,単結晶累積膜における分子鎖の配向を利用して繊維図形を撮影し,c=7.6Å(繊維周期)の値を評価した。つぎにこの結晶を加圧成膜した試料の動的粘弾性を測定した結果,これまで報告されていなかったポリブテン-1の結晶吸収が80℃付近に存在することがわかった。溶媒蒸発法により調製した同一ポリマーのフィルムについては,非結晶領域の分子鎖の運動に起因する主分散のみが著しく現われ結晶吸収は認められなかった。溶液から析出させた試料の動的弾性率温度特性には,変態IIIが変態IIに融解再結晶化することによるピークが102℃に観測された。変態IIIの変態IIへの転移機構としては,示差熱分析および粘弾性測定結果から固相転移よりはむしろ融解再結晶過程を経るものと考えた。
  • 川原 宏, 北条 卓, 鶴田 禎二
    1966 年 69 巻 2 号 p. 309-312
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アイソタクチック(isot-),アタクチック(atac-)およびシンジオタクチック(synd-)ポリメタクリル酸メチルを加水分解して得た3種のポリメタクリル酸(PMAA);ラジカル重合によって得たポリメタクリル酸(atac-PMAA)およびポリアクリル酸(atac-PAA)の5種類の高分子カルボン酸を触媒として,ジメチルホルムアミド中,49℃におけるグルコースの変旋光反応の速度を測定し,1次速度定数がつぎの順序に低下することを見出した。isot-PMAA>>atac-PMAA≅atac-PMAA>synd-PMAA>atac-PAA。
    低分子カルボン酸を触媒とした場合と比較して,高分子カルボン酸との挙動の相異ならびに高分子カルボン酸における立体規則度とその反応性との関連を検討し,この触媒反応では隣接カルボキシル基が非常に重要な役割を果していることを明らかにした。
  • 下村 猛, 山野井 公男, 土田 英俊, 篠原 功
    1966 年 69 巻 2 号 p. 312-316
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    液体アンモニア中でNaNH2 を開始剤として, メタクリル酸メチル(MMA) のアニオン重合を行ない-70~25℃ の温度範囲の生成低重合体について,主に赤外スペクトルによる構造解析から重合反応機構を検討した。この系の反応は重合温度に大きく影響され,低温ではMMAのβ炭素にアミノ基が付加する開始機構がほとんどであるが,高温になるほど次の反応が起り,メトキシドイオンがMMA のβ 炭素に付加して重合が開始される割合が増大したり, 重合体中の一部のエステル基がアミド基に変化し,あるいは上の反応式で生ずるメタクリルアミドの水素転移重合生成物であるポリ(α-メチル-β-アラニン)も生成する。
  • 山下 雄也, 布本 貞明, 三浦 定美
    1966 年 69 巻 2 号 p. 317-320
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジメチルケテンとアセトンとの交互共重合で,高融点脂肪族ポリエステルを合成する条件を検討した結果,トルエン,エーテルなどの溶媒中ブチルリチウム,グリニャール試薬などの触媒系が適当であった。ナトリウム,カリウム化合物系触媒や,ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒は, ジメチルケテン単独重合体を生成しやすい, 三元共重合の結果からカルボニル化合物の共重合性がベンズアルデヒド> アセトン~ ギ酸メチル> ジメチルケテンの順序にしたがうことがわかった。エチレンオキドシは交互共重合せず,イソシヤナートはランダム共重合することを認めた。これらの結果から,ジメチルケテンとカルボニル化合物との交互共重合は対カチオンにカルボニル基が配位したキレート中間体を通って起こることを推定した。
  • 池上 裕夫, 久村 寛治, 町田 和夫
    1966 年 69 巻 2 号 p. 321-326
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(III) - エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC) - ジ- n - ブチルエーテル(BE) 触媒によるプロピレン重合について研究した。結果はBE/EASCモル比によって最もよく整理された。重合速度はBE/EASC≈1.5,ポリマーの立体特異性は0.75~1.0にて最大となり,ポリマーの平均分子量はBE/EASCとともに増大した。その他のEASC三元触媒もBE系と同様に整理された。本触媒の機構について考察し, BE/EASC≦1.0 の領域では, 2Al2Et3Cl3 + 2n- Bu2O → (AlEt2Cl)2 + 2(AlEtCl2・n-Bu2O)によって生成するジエチルアルミニウムモノクロリドが活性化剤として,残存するEASCが禁止剤として作用すること,1.0<BE/EASCの領域では,(AlEt2Cl)2+n-Bu2O→1/2(AlEt3)2+(AlEtCl2・n-Bu2O)によってトリエチルアルミニウムが生成していることなどを推定した。
  • 池上 裕夫, 久村 寛治, 町田 和夫
    1966 年 69 巻 2 号 p. 326-329
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(III) - エチルアルミニウムセスキクロリド- ジ- n - ブチルエーテル触媒(1:1:1 モル比) によるプロピレン重合を行なってプロピレン濃度および重合温度の影響を検討し, 他の典型的ナッタ触媒と比較した。得られた結果から, 本研究における三元触媒が,典型的ナッタ触媒とほぼ同様の速度論的挙動を示すことが確認された。
  • 藤岡 修二, 篠原 康夫, 林 晃一郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 330-334
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ブタジエンとSO2の混合系に放射線を照射することにより,1対1の交互共重合体を得た。紫外吸収スペクトルでその存在が確認されたが,重合以前に共モノマー同志の1対1の分子錯合体(コンプレックス)を形成し,このものが活性種の攻撃で重合する可能性が推論された。また温度変化の実験より, いわゆる“ 天井温度” が観測され, このブタジエン- SO2 系では70 ℃ である。ラジカル禁止剤の存在下での重合,あるいは重合速度の線量率依存性の結果から,重合はラジカル機構で進行するものと考えられる。
    また,生成ポリマー中のブタジエン単位のミクロ構造はcis-1,4,trans-1,4の両結合が存在し,1,2-結合は存在しないことが明らかになった。
  • 藤岡 修二, 篠原 康夫, 林 晃一郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 334-337
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    通常のラジカル重合では退化的連鎖移動( Degradative Chain Transfer ) のため, 重合速度の非常に遅い酢酸アリルがSO2 と非常に大きい速度で交互共合重し,半透明の硬い樹脂が生成する。両モノマー同志が錯合体を形成し,このものが生長反応に関与するものと思われる。生成したポリ酢酸アリルスルホンの熱分解を空気中,真空中で行ない,一次分解速度定数,分解の活性化エネルギーを求め,いわゆる“ Zipper - type ” の熱分解を起すことを明らかにした。
  • 原田 洋, 椎名 教, 箕浦 有二
    1966 年 69 巻 2 号 p. 337-340
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,4-シス-ポリイソプレンとn-ブチルリチウムを窒素気流下にキシレン中で反応させ,ポリマーのリチウム化につき研究した。カーボネーション反応,ミヒラ-ケトンとの反応によりわずかながらポリマーのリチウム化のおこっていることを明らかにした。なおこの場合反応時間とともにポリマーの重合度が低下し,不飽和度も減少することを認めた。更にこれらリチウム化ポリマーを用い,アクリロニトリル,メチルメタアクリレートを重合させ,グラフトポリマーが得られることを明らかにした。
  • 箕浦 有二, 座古 寛三郎
    1966 年 69 巻 2 号 p. 340-344
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エチレンジメルカプトアセテートおよびプロピオネートとN N' - メチレンビスアクリルアミドおよびジアリリデンベンタエリトリットとの重付加によって,ポリマーを合成し,用いた触媒がポリマーの構造と性質におよぼす影響について検討した。これら2種のジメルカプタンとN,N'- メチレンビスアクリルアミドの重付加によって得られたポリマーの構造を赤外吸収スペクトルと,NMRスペクトルによって調べた結果,ラジカル触媒(BPO,紫外線照射)および塩基触媒(t-BuONa)を用いると,Markownikoff則に従わない異常付加によるポリマーが得られたが,酸触媒(p-トルエンスルホン酸)を用いた場合には正常付加によって,側鎖にメチル基をもったポリマーが得られた。また,ポリマー中のサルファイド結合を過酸化水素によって酸化し,融点の高いスルホンポリマーを得た。ジメルカプタンとジアリリデンペンタエリトリットの重付加においては,塩基触媒による重付加ポリマーを得ることはできなかったが,紫外線照射および酸触媒を用いると,半固体状の重付加物が得られ,これらの構造を検討した結果,付加の位置は前者の場合とおのおの一致していることを認めた。
  • 箕浦 有二, 鈴木 康之, 坂中 靖弘, 土井 弘之
    1966 年 69 巻 2 号 p. 345-349
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリメチルスズビニル(TMSnV)およびトリブチルスズビニル(TBSnV)のイオン,ラジカル,および放射線による単独重合では高分子量ポリマーは得られなかった。スチレン(ST) あるいはメタクリル酸メチル(MMA) とはラジカル共重合し, スズ化合物とSTあるいはMMAとの共重合反応性比およびTMSnV , TBSnV のQ , e 値は次のように求まった。ST - TMSn V : r1=49.0,r2=0.001 ; TMSnV : Q=0.005, e=0.937, MMA-TMSnV : r1=25.1, r2=0.03 ; TMSnV : Q=0.036, e=0.933。ST-TBSnV : r1=16.0, r2=0.005 ; TBSnV : Q=0.017, e=0.822, MMA-TBSnV : r1=27.9, r2=0.03 ; TBSnV : Q=0.031, e = 0.822 。上で得られたQ およびe 値からTMSnV およびTBSnV の重合性を考察した。
  • 東浦 浩
    1966 年 69 巻 2 号 p. 349-354
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    スチレン(St) およびメタクリル酸メチル(MMA) の重合をフェユルアセチレン(PA) , 1 - フェニル- 1 - ブチン(PB) またはべンゾニトリル(BN) の存在下にα , α'- アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として60 ℃ で行なった。数平均重合度より求めたPA,PBおよびBNの連鎖移動定数(Cs)はStの重合でそれぞれ9.83・10-3,3.43・10-3,5.30・10-4,MMAの重合でそれぞれ2.23・10-3,1.08・10-3,1.62・10-5であった。
    PAによる抑制重合をKiceの方法で動力学的に解析すると,PA1分子が2個のポリマーラジカルを停止せしめることがわかった。したがって三重結合のπ 電子が関与する連鎖移動機構が考えられた。PB ではCs がPA と同程度に大きいが, 重合速度抑制効果が少いために三重結合に隣接するメチレン基の水素原子が反応する連鎖移動を,BNではCsがベンゼン,ハロゲン化ベンゼンなどのCs とともにHammett 則を満すので, それらの置換ベンゼン類と同様の連鎖移動をそれぞれ考えた。
  • 須賀 恭一, 渡辺 昭次
    1966 年 69 巻 2 号 p. 354-355
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 69 巻 2 号 p. A11-A20
    発行日: 1966/02/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to from a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended torefertothetables, thefigures, theformulaeetc. intheoriginalpapers
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