ポリ-2-ビニルピリジン(P2VP),ポリ-4-ビニルピリジンを電子供与体とし,TCNQ,I
2,五塩化アンチモン,p-クロルアニルを電子受容体とする錯体を合成し,赤外吸収スペクトル,電子スペクトルによる化学特性の変化,電気的性質として比抵抗の温度変化,電流-電圧特性を求めた。更に光伝導測定として,光電流-光強度,光電流-波長特性を測定した。
赤外吸収スペクトルからは,TCNQ分子の場合,CN基の吸収は1本である。しかし錯体では,明瞭に2180cm
-1,2130cm
-1の2本に分離することが認められた。これは,M
+(TCNQ)〓(TCNQ)
0,M
+(TCNQ)〓の2通りの結合形式に相当すると考えられる。また電気特性では, 錯体は5.0V まではオームの法則に従い, またρ=ρ
0 exp (Δ
E / 2
kT ) に従う半導性を示し, P2VP -TCNQ : 6.3×10
9Ω-cm, P4VP-TCNQ : 1.4×10
9Ω-cm, P2VP-I
2 : 4.2×10
7Ω-cmなどおよそ10
6~10
12Ω-cmの比抵抗のものが得られた。
光電流(i
p) - 光強度(L) 特性からは, i
p ∝ L
2 の式が成立し, 光電流- 波長特性の結果からは, 電子スペクトルの395mμ に相当する部分には高い光伝導度が認められたが, 電荷移動吸収帯である700~850mμ に相当する部分には光伝導が認められなかった。
なお,受容体としてのTCNQはヒドロキノンの加圧接触還元法により,従来法(7%)よりも高収率(20%)の方法で合成したものを用いた。
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