工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
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69 巻, 9 号
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  • 関 集三
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1563-1571
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 天谷 和夫
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1571-1579
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 千原 秀昭, 菅 宏
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1579-1584
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 斎藤 進六
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1585-1590
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 田中 敏夫, 松林 玄悦
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1590-1598
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 大坪 義雄
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1599-1602
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
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  • 神戸 博太郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1603-1608
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
  • 向坊 隆, 益子 洋一郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1609-1612
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 関 集三
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1612-1613
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
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  • 吉本 敏雄, 金子 征也
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1614-1619
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    とくに長時間にわたる微少な反応熱を測定する目的で,高感度双子型伝導熱量計を試作した。35×20×20cmのアルミニウム・ブロック中に左右対称に2.6φ×10cmの銅製の反応容器を配置し,温度差測定用の熱電対として銅-コンスタンタン熱電対を容器とブロック間の4方向に対称に各25対ずつ計100対用い.さらに,この熱量計と組合せて使用する直流電圧計はフルスケール1μVのものを試作してドリフトを10-8V/hr以下におさえ,2.5×10-6℃の温度差検出が可能な高感度,かつ高安定度の熱量計をうることができた。
    この熱量計を用いて,アルコールのモル分率が10-4台における各種の無極性有機液体との混合熱を追加混合法により測定し,n-ブチルアルコールとn-ヘキサン系の無限希釈溶解熱より,アルコールの平均的な水素結合エネルギーの値として5.3kcal/molを得ることができた。
    また,フェノールの水溶液中における6-ナイロンの膨潤,溶解熱を測定して非晶部分の状態がかなり異なっている二つの試料間の相違を観測することができた。さらにゴムを伸張後収縮させた時に吸収する微少な熱量を観測することができた。
  • 篠田 孝子, 阿竹 徹, 千原 秀昭, 益子 洋一郎, 関 集三
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1619-1622
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    常温で気体または液体の物質の固体領域および液体領域における比熱と,潜熱および蒸気圧の測定,ならびに融点の精密測定により物質の純度決定を目的とする断熱ネルンスト型熱量計を試作した。動作温度は液体ヘリウム領域より窒温までである。常用温度計としては,白金抵抗温度計およびゲルマニウム抵抗温度計を用い,国際温度目盛および熱力学温度目盛(<90°K)に準拠している。15°K以上における比熱測定値のばらつきは0.08%以内である。圧力測定は,U字管水銀圧力計と,標準尺により,誤差±0.02mmHgである。測定例として,一酸化炭素の比熱,転移点,転移熱,三重点,融解熱,蒸気圧の測定を固体・液体領域にわたって行ない,また本装置で決定した純度を他の方法による分析値と比較した。決定された定数は,次のとおりである。転移点61.570°K,圧力28.94mmHg,転移熱150.2cal/mol,三重点68.150°K,圧力116.03mmHg,融解熱200.3cal/molである。
  • 三浦 政治, 直野 博光, 岩木 貫, 加藤 俊, 林 正尚
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1623-1626
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    サーミスターをブリッジの一辺に用い,ブリッジバランスのくずれを増幅記録させる方式を採用して, ±1.7×10-5℃ までの温度差が検出でき,精度±1%の自記記録式湿潤熱測定装置を試作した。この装置を用いて,酸化チタン,シリカゲル,シリカアルミナおよびγ-アルミナの湿潤熱を測定し,これまでに報告されている値と比較した結果よい一致が見られた。つぎに酸化チタンについて,水蒸気吸着量と湿潤熱との関係を求め,水蒸気吸着に対する粉体表面の不均一性ならびに系のエントロピー変化を調べ た 。
  • 村上 幸夫, 藤代 亮一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1627-1631
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    サーモモジュールHTM 0516を感熱体兼伝導体とする混合熱測定用熱量計を製作した。この熱量計の性能を調べるために,比較的精度良く測定されている四塩化炭素+ベンゼン系の混合熱を25.0±0.01℃で全濃度領域にわたって測定した。その結果は文献値と比較して大体良い一致を得た。さらにこの熱量計を用いてベンジルアルコール+シクロヘキサン,ベンジルアルコール+エチルベンゼン,ベンジルアルコール+トリエチルアミンおよびトリエチルアミン+シクロヘキサンの各系の混合熱を測定した。これらの混合熱の結果を用いて,ベンジルアルコールとトリエチルアミン間の分子間水素結合エネルギーを前報の方法で評価した。その値はΔH=-34.9kJ/molとなった。またベンジルアルコール同志の水素結合について考察した。
  • 長崎 誠三, 前園 明一, 岡本 寛, 市橋 正彦
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1631-1635
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長崎-高木法の断熱型比熱測定の自動化について,この二,三年来,開発してきた新しい試みおよび改良について報告した。
    (1)高温用カロリメーターと低温用カロリメーターの構造。
    (2)断熱制御技術の改良。PID-SCR制御回路の採用により,試料とその外側の断熱容器間の温度差は,±0.005~0.01℃の範囲に制御できる。
    (3)比熱の絶対値の測定。指定温度におけるネルンスト型の比熱測定の自動記録により,比熱の絶対値の較正ができる。
    (4)精密な熱分析。断熱型の比熱測定と同時に,温度上昇曲線を精密に記録し,融点などの転移点の測定感度を~±0.01℃に高めることができる。
    (5)微少熱量変化の測定。断熱型の比熱測定に付加して,差動熱量測定装置として,合金の析出エネルギー,再結晶エネルギーなどの微少な熱変化を自動記録することができる。
  • 長崎 誠三, 前園 明一, 市橋 正彦, 坂本 武照
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1636-1639
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱分解反応,熱重合反応などの活性化過程を解明するためには,速度論的な解析が必要である。最近,恒温測定にかわって,ただ1回の一定昇温速度の熱重量分析や示差熱分析によって,速度論的に解析することが試みられている。
    断熱型の比熱測定法は,一般に平衡論的な熱分析に用いられてきたが,この測定方法を用いて,反応速度を解析する方法を新たに見出した。これにより,エポキシ樹脂の熱重合反応,規則格子合金の不規則→規則化反応,ガラス状態の再結晶化反応,およびシュウ酸カルシウム(CaC2O4・H2O)の脱水分解反応の,反応速度の解析を行なった。この方法は,熱重量分析や示差熱分析による方法に比して,より精度のある,包括的な解析法と考えられる。
  • 山本 明, 丸田 道男, 大浦 伸一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1640-1645
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    室温から850℃までの温度範囲で,連続的に比熱変化を測定するための二重相対断熱形熱量測定装置を試作したので,装置の詳細について報告する。試料は2×10-4mmHg程度の真空度の下で,一定電力の内部ヒーターによって連続的に加熱し,その際の熱損失は可能な限り少なくする構造とした。試料とその周囲には,PID温度調節器2台を用いて,二重に断熱制御し,前置増幅器なしで±2μV(C-A熱電対で±0.05℃に相当する)以内に断熱制御できた。石英粉末のα〓β転移の熱ピークから判断して試料内部の温度分布はかなり良好であると考えられ,しかもこのピークの熱量の再現性は±1%以内であった。
  • 大津 秀夫, 内田 博, 安田 俊一, 増田 五市郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1646-1650
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高温X線回折と熱重量変化の測定を共用できる装置を試作した。この装置は炉の中で試料を固定したり,浮動状態にしたりすることによって,X線回折と熱重量変化の測定を交互に行なう方法をとっている。試料の固定と浮動は,炉の中で試料holderを約3mm上下させるだけでできるよう,試料holderと炉の構造が工夫されている。
    炉はBeO製の炉材にPtRh20電熱線を巻きつけたもので,試料を空気中で1200℃以上の高温に加熱することができる。試料はPt製の試料holderに充填され,直示天秤によって秤量される。
    試料を固定したり浮動状態にすることを繰り返した場合の,固定位置の再現精度を,Si粉末試料を用いてX線的に測定した結果±0.02°(2θ)以内の再現誤差であることが確認された。また,試料holder付近の温度分布については,ほぼ±0.5°/mm程度の傾斜であり,対流が秤量値に及ぼす影響は±0.3mg以内(1000℃までの昇温で)である。
    この装置を用いた測定例として,CaCO3(Calcite)を加熱したときのX線回折と,熱重量変化の測定結果が挙げられており,CaCO3(Calcite)→CaOの変化過程が示されている。
  • 志村 義博, 野田 英男
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1650-1653
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    -100℃より+300℃の温度範囲を連続して加熱,冷却制御できる示差熱測定装置の試作を行なった。
    実験の結果急速な加熱,冷却にも極めて良好な制御のできることがわかった。
    応用例として硝酸アンモニウムおよび硝酸カリウムの加熱,冷却による示差熱測定を行なつたが,従来の諸研究に照し,満足すべき結果が得られた。
    転位の解析や高分子の結晶化の解析など,今後広範な利用面が考えられる。温度制御範囲も-160~1000℃までに拡張することも容易である。
  • 武谷 愿, 石井 忠雄, 牧野 和夫, 上田 成
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1654-1658
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高圧下の気-液相反応に使用し得る高圧示差熱分析装置を試作し,この装置を芳香族化合物の液相高圧水素添加反応に適用した。
    装置の主要部は,同じ形のオートクレーブ2個と,これを加熱するアルミニウム加熱炉を,断熱炉に納めたものである。この装置は,反応温度として最高500℃まで,圧力は常用200kg/cm2までのものに適用できる。反応室には気液または触媒との接触を均一にするためのカキマゼ装置が設けてあり,また両室には熱電対のほかに微小電気ヒーターが入れてあり,反応熱,装置感度を測定することができる。この装置は示差熱を測定すると同時にガス圧の変化も測定できる。標準室,反応室に肉厚容器を用いたにもかかわらず,再現性と測定感度は良好であり,昇温速度によって異なるが,2℃/minの時,反応室内に5cal/minの発熱がある場合にも明らかに発熱ピークが検出された。またピーク面積は発生熱量に直線的に比例した。
    この装置を用いてベンゼン,フェノール,ジフェニルエーテル,α-ナフトールなどの液相高圧水素添加反応を20~400℃の温度範囲で行ない,その際の示差熱,示差圧曲線および生成物の分析から得られた結果は,示差熱分析以外の方法で得られた従来の結果とほぼ一致し,高圧反応過程の研究に対して有用な装置であることを認めた。
  • 山本 明, 秋山 純一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1659-1663
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    加熱線法により液体試料の熱伝導率を迅速に測定する装置を新しく開発試作した。従来の同測定法では時間の対数計算をする必要があり,また多量の試料を要するため温度分布が悪く対流の影響を受けて,測定精度の低下の原因となっていた。本装置では,全く対称なブリッジを使用し,一方を標準側,他方を試料側とし,各ブリッジの出力をX.Yレコーダーのそれぞれの軸に入れて記録し,λx=Aλy tanαより熱伝導率が求められる。測定時間5秒,試料量1~1.5ml,加熱線として0.02mmφのPt-Rh1%線,15Ωを使用し,形状はコイル状,あるいは直線状とした。熱的に対称な位置におかれた二つの加熱線は,加熱線のリードからの熱損失,温度分布の状態による影響は相殺され,対流の影響も監視でき,角度αの測定のみで直接熱伝導率を知ることができる。常温から200℃までの測定が可能で,水を標準として市販1級のグリセリン,メチルアルコール,n-プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,ベンゼン,四塩化炭素などについて測定を行ない,測定精度は2.5%であった。
  • 山本 明, 大浦 伸一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1664-1667
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    時間-温度曲線から試料の凝固点,融点を求める装置の検討について述べる。温度検出端としてMayers形の白金測温抵抗体を用い,試料量は50ml程度で,非常に簡単な操作で凝固点,融点が0.01℃の精度で測定できる。p-キシレンに不純物としてエチルベンゼンを添加した場合について氷点降下度の測定を行ない,試料容器について測定条件を検討した。
  • 山本 明, 丸田 道男, 津山 光
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1668-1672
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    示差熱分析(DTA)によりステアリン酸,安息香酸,アントラセンの融解の熱ピークを種々の条件で求めた。その結果,ピーク面積は主として雰囲気ガスの影響を強く受け,試料量20~100mgの範囲では試料の種類,加熱速度が異なっても,面積と試料量は良い比例関係をしめした。これを面積と熱量の関係として表わすと雰囲気ガスが等しい場合,どの測定結果もほとんど同じ勾配の曲線となり,各曲線はほぼ同じ位置に集まること,すなわちDTAピークと熱量を関係づける比例定数はほぼ一定であることがわかった。空気中と熱伝導性の良いヘリウムガス中の測定とをくらべると曲線の勾配は約2:1であった。したがって,DTAによって熱量を求める場合試料内の熱伝達は主として粒子間に存在する雰囲気ガスの影響をうけることを考慮しなければならないことがわかる。
  • 高島 巌, 米山 勝久, 渡辺 国雄
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1672-1677
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    複雑な化学反応の厳密な動力学的検討は容易に行なうことができない。そこで実際の工業的反応装置の設計の立場で必要となる反応熱と反応速度論の見掛けの値を双子型熱量計により測定し, その実用性を検討した。
    実験装置は双子型熱量計でそのおのおのは約600mlのガラス製2重槽にカキマゼ機, サーミスター, マンガニン線ヒーターおよび試料だめを有する。各熱量計の2重壁の間の空隙には伝熱抵抗を調節するために水を注入してある。各サーミスターはブリッジ回路の2辺に入れ, その温度差を連続的に記録した。
    この熱量計は有効熱容量で1.25%, 伝熱抵抗の逆数で2.09%の標準偏差を持っている。精密な反応速度の測定には, その反応の活性化エネルギーの値にもよるが, 大概の場合に反応による温度上昇は1℃程度以下におさえることが必要である。
    この装置を用い, 無水酢酸の水和反応について反応熱と反応速度に関する実験を行なった。反応熱は無限希釈度に外挿した値としてQ∞=16.1kcal/mol, 反応は実験した濃度範囲では1次とみなされ, その速度定数は, k=(40.0×10-4)exp(-11.64/RT)sec-1を得た。これらの値は混合熱や混合速度も含まれたもので見掛けの値である。
  • 大塚 良平, 今井 直哉, 西川 元治
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1677-1680
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    新潟県赤谷鉱山から結晶度の高いα-セピオライトが著者らの1人(今井)によって発見された。本報には,まずこの試料の肉眼的および光学的性質,化学組成,X線粉末回折データを簡単に記述した。次に,このセピオライトの脱水の挙動を詳細に観察する目的で次のような実験を行なった。1
    .熱分析(A)DTA,TGAおよびDTGAの同時測定(B)手動式熱天秤による測定
    2.加熱試料(250,450,620,730および860℃各温度に各2時間保持)の構造変化の観察
    この結果,本試料は4段階にわたり脱水し,とくに結合水は2段階にわたり不連続的に脱水することがわかった。この試料の結合水と構造水の量比は4:1.60ないし1.75であり,さらに脱水相の1/2単位胞が酸素原子32個を含むとして計算した構造式は(Si11.79Al0.12)12(Al0..02Fe3+0.23Fe2+0.16Mn2+0.56Mg6.99)7.96O32であることから,著者らはセピオライトの結晶構造に関しては,Nagy-BradleyモデルよりBrauner-Preisingerモデルの方がより妥当であると推定した。
  • 須藤 俊男, 下田 右, 西垣 茂, 青木 正治
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1681-1685
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    示差熱天秤と熱重量変化率測定装置と比熱・示差熱測定装置(断熱式熱量計)を用いて,粘土鉱物の脱水過程に見られる活性化エネルギー,またエネルギー変化(熱量変化)を求めた。
    熱量変化は,同時または相前後して記録された熱重量変化曲線より求めた重量減(ここで取り扱かった試料ではいずれも脱水量と見ることができる)を基準とした値で比較した。上記の測定値に影響する因子は多いが,ここに得られたデータでは水分子または(OH)に結合するイオンの種類,濃度の影響以外のものについては読み取ることができなかった。取り扱った試料は,蛇紋石鉱物,モンモリロナイト,緑泥石,混合層粘土鉱物(成分層はモンモリロナイト,雲母,dioctahedral型の緑泥石)である。蛇紋石鉱物の活性化エネルギーは,約70kcal/molであり,エネルギー変化は17kcal/H2Omolである。他の鉱物については,ケイ酸塩層の(OH)水の脱水について,モンモリロナイトでは,9.8kcal/H2Omol,混合層粘土鉱物(雲母-モンモリロナイト,およびdioctahedral緑泥石-モンモリロナイト)では,12.4~13.4kcal/H2Omol。ケイ酸塩層の脱水については,モンモリロナイトで,17.7kcal/H2Omol,混合層粘土鉱物(雲母-モンモリロナイト)で,16.8~17.5kcal/H2Omol,緑泥石で19.3kcal/H2Omolである。水酸基層の(OH)脱水については,緑泥石で19.3kcal/H2Omolである。なお比較のため,石英のα⇔βの転移熱を求め,140cal/mol(ピークの温度573±1℃)を得た。測定値の再現性はいずれも±5%の程度である。
    粘土鉱物研究には古くから,示差熱分析が定性判別の目的で広く用いられている。この研究は,できるだけ定量的論議が行なえるような熱データを得る目的で行なったものである。機械の細部の仕組についての検討,ならびに厳密な外気条件の制御のもとでの実験は将来の問題として残る。
  • 加藤 忠蔵, 土井 章
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1686-1689
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    粘土鉱物の吸着水,層間水および構造水の大気圧下における脱水現象については数多くの報告がある。また,加圧下あるいは真空中の脱水についても数種の報告があるが,大気圧より真空まで種々の窒素ガス減圧下において,示差熱分析法により研究したものはない。そこで著者らは試料として3層構造をもつモンモリロナイト,2層構造のカオリナイトおよびハロイサイトを用い1~760mmHgの種々の窒素ガス圧下において,DTAとTGを行ない,粘土鉱物の保有する水の安定性について検討した。得られた結果よりVan't Hoffプロットを行ないClapeyron-Clausius式を用いて脱水熱を求めた。
    その結果,各粘土鉱物の吸着水,層間水,および構造水の脱水温度は窒素圧力の減少と共にいずれも低温側に移行し,その低下割合はモンモリロナイトよりカオリナイトおよびハロイサイトの方が大きかった。吸着水および層間水は減圧にしただけで室温でも脱水してゆくが,構造水は圧を減じただけでは脱水は容易に始まらず,ある温度以上で急激に脱水することを示した。実験結果より計算したモンモリロナイト,カオリナイトおよびハロイサイトの構造水脱水熱はそれぞれ415,186,162cal/gとなり,3層構造内のOHの方が結晶表面に出ているOHより脱水されにくく安定であることを示した。
  • 加藤 忠蔵, 綱島 豊
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1690-1693
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    多孔質ガラス,シリカゲルその他の固体物質に対する水の吸着現象に関しては種々の方法によって研究されているが,0℃以下のDTA法により研究したものは少ない。著者らはこれらの物質に対する水の吸着状態を,室温~-90℃の低温におけるDTA法により検討した。固体物質に水を加えた時,自由水による凍結・融解のピークが普通みられるが,多孔質ガラスやシリカゲルにおいてはこの他にもう一つのピークが現われた。低温赤外吸収および低温X線分析の結果とあわせ考えて,これらの二つのピークのうち高温側ピークは自由水の凍結・融解によるものであり,低温側ピークは毛管内にあって,固体表面近くに吸着された毛管内吸着水の氷Iへの相転移によるものであることを明らかにした。またこれらのピークより吸着水,非吸着水の分類,吸着水の相転移温度,転移熱の算出および吸着水の定量などが可能であることを見出した。たとえば多孔質ガラスにおいては,吸着水の相転移温度は-23℃,転移熱は19cal/gおよび最大吸着水量は14.5%であった。
  • 向坊 隆, 劉 洋右
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1693-1698
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    水素化アルミニウム錯体の標準生成エンタルピーを求める目的で自動温度記録式の断熱熱量計を試作した。熱量計の正確度を判定するために,試作した熱量計を用いてマグネシウムを塩酸で処理したときの反応熱を測定し,従来報告されている文献値とほとんど等しい値を得,水素化アルミニウム錯体の標準生成エンタルピーを測定するのに十分な正確度を有することを確かめた。水素化アルミニウム錯体としてまずリチウムアルミニウム水素化物を選び,これを塩酸で加水分解したときの反応熱を測定し,25℃における標準生成エンタルピーとして-28.0kcal/molなる値を得た。またリチウムアルミニウム水素化物の常温における熱安定性について考察した。
  • 関谷 道雄, 瀬戸山 克巳
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1698-1700
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究は水和熱の精密測定を通じて半水セッコウの変種について検索したものである。水和熱の測定は塩酸溶解法により,JISR5203のセメントの水和熱測定法に準拠して,試製高精度カロリメーターを用いておこなった。試料には現在まで既知の諸方法にもとづく条件で調製した5種の半水セッコウを供試した。
    その結果β型半水セッコウの水和熱は4800cal/molであったのに対し,α型ではほぼ4100~4200cal/mol前後であるが,純水を媒液として用いたものは4450cal/molと高く,一般にいわゆるα型に属するものの中にも水和熱の相違が認められ,2~3種の安定性の異なる相の存在する可能性を認めた。それらはほぼマクロ的な結晶性に関連することも考えられた。
  • 斎藤 進六, 福長 脩, 山岡 信夫, 尾崎 義治
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1701-1704
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高圧下のDTAによって45kb,600℃までの硝酸カリウム(KNO3)の状態図を研究した。用いた装置は単段式ピストンシリンダー型である。DTAのためのケネディプレスの改良,試料内の圧力測定,高圧下の温度測定等の問題について論じた。KNO3の新しい変態であるV,VI,VII相が確認された。
    (1)ケネディプレスの副ラムを下方に移してスペーサーの取付けを容易にし,熱電対導線の切断に対する方策について述べた。
    (2)Bi,Tlの電気抵抗変化を用いてタルク-塩化銀セルの圧力測定を行なった。室温基準の補正曲線はP=0.97 L-4.7(kb)が適当である。
    (3)アルメル-クロメル熱電対の圧力による起電力補正は31kb,600℃で20℃程度と推定された。
    (4)14kb以上のKNO3の状態図はBridgmanの提出した硝酸セシウム(CsNO3),硝酸タリウム(I)(TINO3),硝酸ルビジウム(RbNO3)の状態図と類似する。
  • 野口 哲男, 水野 正雄, 小塚 健
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1705-1709
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    太陽炉を用いその焦点で金属酸化物を加熱溶融し,熱平衡に達せしめた後放物面反射鏡への入射光を急速にしゃ断して試料を急冷し,輝度温度計により冷却曲線を求めてこれより凝固点の輝度温度を求めた。次いで試料の0.65μにおける分光反射率を測定してこれより分光放射率を算出し,これと輝度温度とより凝固点の真温度を求める方法について述べた。
    酸化ジルコニウム(ZrO2),酸化ハフニウム(HfO2),酸化アルミニウム(Al2O3)の凝固点としては,それぞれ2979±20°K,3026±20°K,および2322±15°Kがえられ,それらの凝固点における規則反射面の分光放射率は0.81,0.91,および0.96であった。CaOの冷却曲線においては沸点に該当する点で発熱現象が認められたが,この点については分光放射率がえられないので輝度温度で示した。
    なお15種類のランタニド属金属酸化物の凝固点の測定結果も併せて述べた。これらの酸化物の凝固点はほとんど2500°K以上であった。
  • 内川 浩, 槻山 興一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1710-1715
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    バリウムアルミナ耐火セメントの主要構成化合物であるBaAl2O4について,水和時の発熱量,水和硬化物の加熱時の変化および機械的強度の変化などについて調べ,バリウムアルミナセメントを使用する際に有効ないくつかの知見を得た。伝導熱量計による水和時の発熱過程より水和の機構を推定し,水和熱の測定より水和物の転移を確認した。BaAl2O4の水和硬化物の熱天秤試験より示差熱分析でみられる吸熱は,すべて水和水の脱水にあることを確かめ,示差熱分析の吸熱温度に対応する温度における高温X線回折およびその温度に加熱した試料の顕微鏡観察,制限視野電子線回折より加熱時の構造変化を追跡し,加熱に伴うBaAl2O4水和生成物の構造変化と機械的強度との関係を明らかにした。
  • 大坪 義雄, 新田 敦彦, 金子 元久, 岩田 靖久, 植木 彰
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1716-1721
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    AgI-CdI2系:Ag2CdI4なる化合物の存在を見出した。室温安定相の構造は面心立方超格子(α0=12.70Å)であり,DTA曲線は145℃(分解,CdI2+六方AgI相),170℃(六方-体心立方),255℃(CdI2の溶解終了),405℃(融解)に吸熱ピークを示した。この化合物は熱履歴を示し加熱冷却物はAg2CdI4(六方副格子,a0=4.45,c0=7.75Å)と未反応のAgI,CdI2からなる非平衡混合相であった。DTA状態図には分解転移型化合物(AgI,0.66mol,145℃),包析(AgIO.87mol,170℃),共晶(AgIO.30mol,335℃)があった。
    AgI-HgI2系:室温では存在しない中間相AgHgI3(180℃,六方,a0=4.49,c0=7.34Å)の生成を見出した。そのDTA曲線は40℃(Ag2HgI4の転移),130℃(AgHgI3の生成),220℃(六方-体心立方),360℃(融解)に吸熱ピークを示した。Ag2HgI4のDTA曲線は50℃(規則-不規則),165℃(面心立方-六方),185℃(六方-体心立方),405℃(融解)に吸熱ピークを示した。これらの事実をもとにしてStegerによる状態図に中間相区域(AgIO.20~0.75mol,120~250℃)を追加した。
    Ag2(Cd-Hg)I4系:室温の面心立方超格子相および高温の体心立方相は,それぞれ連続固溶体を形成し,規則-不規則転移曲線(50~145℃)および体心立方への転移曲線(185~255℃)は共にほぼ直線的であった。この両曲線で狭まれる中間温度区域は面心立方,六方,体心立方およびCdI2相よりなり,一部が3成分系であるため複雑であった。Ag2CdI4側では熱履歴が認められた。
  • 山口 和夫, 大坪 義雄
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1722-1723
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸化鉄系脱水素触媒であるβ-型触媒(K-β-酸化鉄系触媒)の構造を,示差熱分析で明らかにした。
    β-型触媒には,三つの特性熱ピーク495℃(K-β-酸化鉄反強磁性ネール点),687℃(クロム酸カリウム結晶転移),993℃(クロム酸カリウム融解)があった。
    β-型触媒に硝酸ナトリウムを加え,クロム酸カリウムと固溶体をつくらせることで転移温度を低下させ,酸化鉄(III)の有無を調べたが,酸化鉄(III)は検知されず,β-型触媒は多結晶K2Fe14O22とクロム酸カリウムを主体とすることをたしかめた。
  • 目黒 謙次郎, 小石 真純, 相沢 政男, 内野 則之, 松本 宏一, 木元 晴久, 熊木 洋子, 沢井 英男
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1724-1727
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    銅-,ニッケルフタロシアニンは一般に常温で不安定型であるα型と,安定型であるβ型の2種の同質異晶型が存在する。これらの結晶構造の違いはX線回折,電子顕微鏡などで詳細に研究されているが,その表面構造の差異,すなわち表面の物理化学的性質の差に関してはまったく報告がない。α→β型の転移法にはいろいろあるが,本実験では特に溶媒による転移を取り上げ,有機溶媒によってα型の結晶をβ型に転移成長させることにともなうその表面の性質の変化を調べた。また同時にフタロシアニンの中心金属が変化することによって,表面の性質がどのように変わるか,ということも調べた。このために比表面積の変化および10%エタノール水溶液に対する湿潤熱を測定し次の結果を得た。
    銅-,ニッケルフタロシアニンとも,その単位面積当りの10%エタノール水溶液による湿潤熱はα型に比較してβ型の方が大きい。また銅フタロシアニンのα型とニッケルフタロシアニンのα型の10%エタノール水溶液による単位面積当りの湿潤熱を比較すると,ニッケルフタロシアニンの方が大きく,同様にβ型においてもニッケルフタロシアニンの方が大きい。
  • 真鍋 和夫, 久保 輝一郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1727-1732
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酢酸ニッケル4水和物の熱分解の過程を,熱重量分析,示差熱分析,X線回析法,赤外分光分折,質量分析,化学分析などの方法で追跡した。
    酢酸ニッケル4水和物の示差熱分析図形は,試料充てん層の厚さと共に著しい変動を示す。試料充てん層の厚さ2mmの時は,吸熱ピークおよび発熱ピーク,おのおの1本であるが,試料充てん層の厚さ20mmの場合は,3本の吸熱ピークと1本の発熱ピークに明瞭に分離し,さらに,無水物の熱分解による吸熱ピークの直前にきわめてわずかな発熱ピークが現われる。
    4分子の結晶水の脱水は約70℃から始まるが,脱水の過程には1つの未知水和物が生成する。この水和物は,0.5水和物に相当するものと考えられる。
    無水物は,100℃以上の温度では徐々に分解するが,分解の過程に中間化合物を生成し,ついで金属ニッケルに分解する。中間化合物は,10Ni(CH3COO)2・3NiOの組成をもつと推定される。
  • 真鍋 和夫, 久保 輝一郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1733-1736
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    酢酸鉛3水和物の熱分解の過程を,示差熱分析,熱重量分析,X線分析,赤外分光分析,質量分析および化学分析などの方法で追跡した。
    酢酸鉛3水和物の分解反応の示差熱分析図形は,試料充てん層の厚さにより著しい変動を示し,連続的に生起する二つの分解反応の結果として,1本の吸熱ピークが現われ,きわめて複雑な挙動を示す。
    3分子の結晶水の離脱は約40℃から開始するが,脱水の過程に一つの未知水和物が生成する。
    無水物は200℃以上で徐々に分解するが,分解する前に融解する。無水物の分解の過程には,二つの中間化合物が連続的に生成する。ついで金属鉛に分解し,空気中の酸素により酸化されて酸化鉛となる。この二つの中間化合物は3Pb(CH3COO)2・2PbOおよび2Pb(CH3COO)2・3PbOの組成をもつと推定される。
  • 服部 信, 南 努, 田中 雅
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1737-1740
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カルコゲン化物ガラスの熱的性質に関する報告は非常に少ない。この研究はヒ素-イオウ系ガラスの熱伝導率を測定し,その組成依存性を構造論的に考察することを目的として行なった。
    ヒ素含量が18.7~44.1原子数%の組成範囲にある試料を常圧蒸留法によって生成し,溶融石英を標準試料として比較法により熱伝導率を測定した。室温より約80℃までの平均温度範囲で,熱伝導率は温度上昇にともない,わずかに増大する。室温付近における値は(6~10)×10-4cal/cm・sec・℃の範囲であった。ヒ素含量が0から約40%(硫化ヒ素(III)As2S3に相当する組成の近傍)までの範囲で,熱伝導率はヒ素含量の増加にともない増大する傾向を示す。プラスチックイオウ(S)nに添加されたヒ素原子が分岐点となって起こるガラス骨格中での〓構造や,〓As-S-As〓構造の形成が,分子鎖内および分子鎖間の熱伝導を促進すると解釈でぎる。硫化ヒ素(III)の組成をこえて,さらにヒ素含量が増加すると,熱伝導率の変化は組成に対して敏感でなくなる。これは,S-S結合やAs-S結合よりかなり結合エネルギーの小さいAs-As結合が生じ,熱抵抗を増大させる効果をもつためであろう。
  • 佐藤 長英, 小山 陽造
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1740-1743
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    吸着物質の吸着状態の研究の一手段として示差熱分析法を利用できないものかを検討する目的で,ベントナイトに層間吸着されたポリビニルアルコール(PVA)の示差熱分析を試みた。ベントナイトは,ナトリウムモンモリロナイトを主成分とする豊順産の細粉を用い,PVAは市販1級品を用いた。示差熱分析装置は手動式のものを大気中および減圧8mmHgで用いた。X線回折図よりPVAを23%含む生成試料では2層のPVAの層間吸着が,またPVAを54%含むものでは3層以上の層間吸着が考えられる。
    吸着PVAでは,PVAの融点と考えられる218℃の吸熱ピークが消失し,270℃付近の第1段の分解反応ピークはかなり高温側にずれ,さらに層間に残留した分解残分の酸化による発熱ピークが著しく高温側にずれる。このピークのずれの程度はいずれも,54%PVA試料よりも23%PVA試料において著しい。つまり2層までのものは,固体表面の酸素原子との水素結合でかなり強く表面に吸着されているが,3層以上のものでは吸着力がかなり弱まることを推定させる。
  • 浅岡 忠知, 島崎 長一郎, 久住 勝也, 坂東 裕好
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1743-1749
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    トリクロルイソシアヌール酸の熱処理による性質の変化および熱分解機構を解明する目的で,熱分解過程を示差熱分析,熱天秤および赤外吸収スペクトルによって追求し,熱分解はイソシアヌール酸を経由してシアン酸になることを確認した。そして実験結果を説明するために,熱分解過程としてつぎの5段階を経るものと推定される。
    (1)138℃での含有水分の蒸発,および含有水分との反応による塩素の離脱,(2)194℃のケト型からエノール型への転移,(3)235℃での融解,(4)245℃での塩素の離脱,(5)285℃でのシアン酸への分解である。熱分解の開始は主として(4)の段階より起こり,分解の仕方は(4)と(5)とは連続してほとんど同時に起こることがわかった。また分解の熱ピーク位置は塩素含量が多いほど低温側にずれる傾向にある。
    示差熱分析および熱天秤で昇温速度を変化させることにより,分解の活性化エネルギーを算出し,前者では19.7kcal/molの値を得,後者では20.8kcal/molの値を得て,両者の値はきわめてよく一致した。
  • 高岡 京, 泉沢 祐次, 外山 修之
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1750-1754
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    リシノール酸ナトリウムと水酸化ナトリウム,またはリシノール酸カリウムと水酸化カリウムを1:1に混合し,室温から350℃付近まで3~5℃/minで定速昇温して示差熱分析および熱天秤を測定し変化を追跡した。
    i)アルカリ分解反応は130~300℃で起こるが,リシノール酸アルカリと水酸化アルカリの混合状態および測定試料セルの形により分解温度が大きく異なる。
    ii)アルカリ滴定法による二塩基酸の生成率の測定では200℃以下では,中間生成物共存のため減量率からの計算値よりも小さいが,200℃以上では計算値と一致するため分解物はほとんどすぐ酸になると考えられ,230℃付近では95~98%が分解して酸となった。300℃以上では脱カルボキシル基反応が起こった。
    iii)分解留出物は180~300℃間では主としてオクタノール-2が生成し,オクタノン-2の含有率は10%以下であった。150℃の分解残留物中には10-オキシデカン酸が生成していた。酸化銅(II)をリシノール酸アルカリに対し5%添加すると分解残留物はほとんど二塩基酸となり分解留出物中のオクタノン-2含有率も39%を示した。
  • 影本 彰弘, 村上 幸夫, 藤代 亮一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1755-1759
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前の報告において,ポリスチレン,ポリブタジエン,ポリメチルメタクリレート溶液の希釈熱を測定した。その結果,高分子-溶媒間の相互作用エネルギーが濃度および分子量に依存することを見出した。さらにポリエチレンオキシド-水系について相互作用パラメーターが濃度および分子量に依存するかを確かめるため,双子型カロリメーターを用いて,希釈熱を測定した。ポリエチレンオキシド-水系は発熱を示し,相互作用パラメーターは濃度に依存するのみならず,分子量にも大きく依存する結果を得た。すなわち分子量の増大と共にχHパラメーターの絶対値は減少する傾向にあり,これはHugginsの理論と同じ傾向を示している。
  • 永沢 満, 浅井 保彦, 杉浦 一郎
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1759-1763
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    高分子溶液の温度を変化させ相分離させると,高分子量成分は先に分離し,低分子量成分は後で分離する。また,その際の吸熱量は分離した高分子の重量にほぼ比例する。したがって相分離に際しての比熱温度曲線を測定すると,温度軸は分子量に対応し,比熱はその分子量の成分の含量を示すと考えてよい。本報はこのようにして微分分子量分布曲線を求める原理を説明し,ポリビニルメチルエーテル水溶液を用いて実験例を示す。
  • 武内 次夫, 天沼 清
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1764-1767
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    サーミスターを使用した双子型市販エブリオメーターを使用して,ポリエチレングリコール(PEG),ポリエチレン(PE)の分子量をベンゼン,トルエン,四塩化炭素を溶媒として測定し,装置の安定性,測定限界,試料濃度,溶媒効果について検討した。
    純溶媒沸点において,ベンゼンは±2.5×10-5℃,トルエンは±1×10-4℃,四塩化炭素は±5×10-5℃のノイズを生じた。高分子溶液ではさらにノイズが大きくなり,測定誤差の一因となった。
    PEGでは各溶媒とも,分子量9,000までは再現性のよい結果が得られた。一方,6,000以上の分子量では溶媒効果が現われ,溶媒によって異なった値を示した。また,末端基定量によって求めた分子量は,とくにベンゼンを溶媒としたときの分子量値とよく一致した。PEについては,分子量10,000のものを測定したが,溶媒により偏差3~10%の再現性を示した。
    一般に試料濃度0.15g/15ml以下では沸点上昇(ΔT)の異常現象が見られた。高分子量物質の測定は希薄溶液で行なうことが望まれる。しかしながら,低濃度異常現象と温度差検出感度,ならびにビリアル係数の問題を考慮し,適当な測定濃度範囲の設定が必要であった。
  • 吉本 敏雄, 宮城 新
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1767-1770
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    繊維状およびフィルム状ポリマーの比熱を精密に測定する目的で試料部の改造を試みた。試料部は中心に加熱ヒーターをおき,その上から試料を巻きつけた石英ボビンをかぶせる構造とした。試料部全体の熱容量をわずか0.3cal/deg程度におさえたため,熱平衡到達時間の短縮化と温度分布の均一化が向上し,500mg程度の少量試料10~100mW程度の微少供給電力による測定においても十分高い検出力と測定時間の短縮化をはかることができた。
    測定値の再現性はポリエチレンフィルムについて検討した結果条件を変えた測定においても1%以内の誤差範囲におさえることができた。巻き付けによる方法は試料の定長下における測定を可能にし6-ナイロン,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンなどの各繊維の定長比熱を求め,その変化について考察を加えた。
  • 吉本 敏雄, 宮城 新
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1771-1775
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    結晶性ポリマーの融解,およびガラス転移現象におけるサーモグラムの異常性を走査型差動熱量計(DSC)により測定した。試料はポリエチレン,6-ナイロン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレンなどを扱った。
    従来,分枝の多いポリマー,共重合体,ブレンド物などの均質度の低いポリマーなどにおいて,とくに認められた融解におけるサーモグラムの多重化が,均質度の高い直鎖状のポリマーにおいても,わずか1分間の等温熱処理を異なった温度で加えることにより観測することができた。6-ナイロン,PETのガラス転移におけるサーモグラムの吸熱異常ピークの変化を,きわめて精度よい温度制御下におくことにより,確認することができ,その際の吸熱量を求めることが可能となった。
    DSCによる精度の高い転移現象の観測は,ポリマーの熱加工履歴の研究に有効なものである。
  • 武内 次夫, 柘植 新, 山口 芳之
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1776-1781
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    6-および66-ナイロン共重合物の分析を示差熱分析法(DTA)および赤外吸収スペクトル法(IR)により研究した。
    融点,結晶化開始温度および冷結晶化開始温度などの熱的な諸性質を測定し,単独重合物および共重合物の組成およびFloryの融点降下式と関連させて検討を行なった。以上のような熱的データによって,ランダム共重合物であるか,ブレンドであるかの判定ができる。同時にこれらの熱的データと,赤外吸収スペクトルのデータを関連させて,共重合物に関するよい知見が得られる。
    赤外吸収スペクトルは共重合物の薄膜により測定した。いくつかの吸光度比を検討したが,それらの中でA1115/A1375とA1140/A1375の二つの吸光度比と共重合物の組成との関係から,共重合物の組成が決定できることを見出した。
  • 渡辺 良文, 近藤 嘉男, 飯田 栄一
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1781-1784
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の重合度のポリ塩化ビニル(PVC)について示差熱測定を行なった。昇温速度10℃/minの示差熱分析(DTA)曲線によると,210℃より250℃の間に吸熱ピークがみられた。
    この吸熱ピーク温度(Tm)と重合度(P)との間には直線関係があり,次の実験式が得られた。Tm=196.5+0.0385P
    希釈剤としてDOPを混合することにより,ピーク温度は低下し,またPVCを塩素化することによってもピーク温度は低下した。熱処理を行なうと,吸熱ピークは2カ所に現われ,高温側のピークの位置は上記のピーク温度より数℃高く,低温側のピークの位置は熱処理温度に大きく依存した。以上の事実より,これらの吸熱ピークはPVCの結晶の融解によるものであると判断した。
  • 金綱 久明, 前田 勝啓
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1784-1789
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の微細構造におよぼす乾熱処理,熱水処理,および延伸の効果を示差熱分析およびX線により研究した。cold crystallizationの最低温度以上で,乾熱処理した未延伸PET繊維および熱水処理した未延伸PET繊維の示差熱分析曲線中には,処理温度より少し高温のところに吸熱ピークが現われる。このピークは結晶の変態の融解による吸熱ピークではなく,熱処理により発生したmetastableな状態の融解による吸熱ピークである。同一処理温度で処理された試料については,熱水処理した未延伸PET繊維の吸熱ピークは,乾熱処理したもののピークより少し高温に現われる。熱水処理は,熱水処理温度より13℃高温の乾熱処理と同等の効果がある。熱処理により未延伸PET繊維中に生じたmetastableな状態は極度に配向したPET繊維中には発生しない。
  • 前田 勝啓, 金綱 久明
    1966 年 69 巻 9 号 p. 1789-1793
    発行日: 1966/09/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン(PP)未延伸繊維の微細構造におよぼす延伸・乾熱処理の効果を示差熱分析およびX線により研究した。
    得られた結果は次のようである。乾熱処理により発生するmetastableな状態の融解に相当する小さな吸熱ピークが,熱処理温度より少し高温の示差熱分析曲線上に現われる。未延伸繊維を室温で延伸することにより,metastableな状態が発生し,このため,延伸倍率の増加と共に延伸繊維の融解の吸熱ピークは未延伸繊維の場合より次第にブロードになる。
    延伸繊維の乾熱処理では,熱処理温度に対応して発生するmetastableな状態は,無緊張処理の場合130℃以下で,緊張処理の場合150℃以下では発生しにくくなる。
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